血液型性格診断を考える

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 最近、血液型性格診断についてのテレビ番組がはやっている。「血液型性格診断には科学的根拠がな い」という批判を気にしていたのか、一時期、この手の番組は消えていたのだが、就学前の幼児を血液 型別の集団に分けて一定の行動をとらせると、血液型性格診断で言われているような行動パターンをと る、という実験方法が見つかってから、こうした実験の映像を用いて血液型性格診断には科学的根拠が あるかのようなテレビ番組がつくられ、人気を博してきた。
 これに対し、テレビ・ラジオ局などがつくっている放送倫理・番組向上機構(BPO)放送と青少年に 関する委員会が2004年12月8日、「『血液型を扱う 番組』に対する要望」を発表し(要望全文) 、「血液型をめぐるこれらの「考え方や見方」を支える根拠は証明されておらず、本人の意思ではどうしよ うもない血液型で人を分類、価値づけするような考え方は社会的差別に通じる危険がある」「こうし た番組に接した子どもたちが、血液型は性格を規定するという固定観念を持ってしまうおそれがある」 「血液型によって人間の性格が規定されるという見方を助長することのないよう要望する」と表明した 。表現に自由とのかかわりがあるため、ここまで踏み込んだ要望を公表することは異例のことで、血液 型によって子どもたちの間でいじめや差別が生じている、といったことを考慮した、と同委員会は述べて いる。
 心理学界では「血液型と性格の関係にはない」というのが定説であるが、これは普通に心理テストを 繰り返し行った結果を踏まえている(さしあたり、菊池聡『超常現象の心理学』平凡社新書、1999を参 照。同書の巻末の引用・参考文献には、そうした実験結果を検討した論文名も示されている)。04年末 放送のTBSの血液型特番(タイトルは忘れた。国分太一司会で、「ホムンクルス」の特番のようなつくり だった)では、血液型と性格に因果関係を示 す心理テストの結果が示されていたが、同番組によれば、このテストは生まれつきの性格が強く出るよ うに工夫されたものである。血液型によって性格が規定されるのならば、それは生まれつきの要素 ということになるから、もし血液型と性格が関係があるのであれば、この種の特殊な心理テストを用 いるしかない、ということになる。私は心理学は素人で、一般向けの心理学の本を少し読んだことがあ るだけだが、専門家から見たら、ここで用いられた心理テストが科学的に適切な処理をされたものかどう かについても争いがある可能性がある。このテスト結果を受け入れたとしても、性格は生まれ つきの要素と成長過程で形成される要素との両方で成り立っているのだから、生まれつきの要素が強く 現れる、という心理テストを行うことの意味があるのか、という問題があるし(同番組では、このテス トは、アメリカの多くの企業で採用されている、として権威づけをしていたが、これが本当だとすると、 そんなに生まれつきを重視するそのアメリカの現状は寒々しい、と言っていいだろう)より一般的な心 理テスト では血液型と性格に因果関係が現れない、というのと矛盾するわけではない。なお、同番組では、その 特殊なテストの結果として、鈴木紗里奈がA型だけど「B型っぽい」性格だったり、ビビる大木がO型だ が「A型っぽい」性格である、ということを示して、血液型性格診断があてはまるかどうかについては 個人差がある、としていたことは、先のBPOの要望に不充分ながら配慮をしていたことを付言しておく。
 また、同番組では幼児を用いた実験も行っているが、やはりBPO要望に配慮して「この実験には科 学的実証性はありません」とのテロップをつけていたが、これはアリバイづくりにしかならない。「科 学的実証性がある」というは、同じ方法・同じ条件では誰が実験しても同じ結果となることや実験事例 やサンプル数の積み重ねによって統計的な蓋然性を検証する必要がある、といったことの説明がなけれ ば、視聴者には何のことかわからないからだ。
 たとえ、この実験に血液型性格診断の根拠となるものがあると仮定しても、この実験のやり方自体に、 実は問題が含まれている。前段で述べたようなこの仮定そのものへの疑問 は、本段では凍結して考えることにする。また、BPO要望には、実験対象の幼児の人権の問題にも警告を 発しているが、ここではそれもおいておく。この実験は、「就学前の幼児」を「同じ血液型の集団にする」と いう特殊な条件を設定している、ということに自覚的でなければならない。まず、就学前の幼児は人 生経験が少ないため、当然ながらその性格には生まれつきの要素が強い、ということ。多くの人が経 験することだが、子どものときの性格と大人になってからの性格にはかなりの違いがある。これには、 成長過程で性格に新しいことが付け加わるということだけではなく、知能や人格の発達にともなって 生じる性格の変化もある。また、同じ血液型の集団をつくるということの意味だが、違う血液型の幼児 を混ぜてしまったら、ある種の「中和」が起こって、性格の違いが浮き彫りにならない、ということが 1つ。もう1つは、同じ血液型のなかにある個人差が、集団をつくることによって弱められて、血液型に よる性格の違いを純粋抽出する効果をもたらす、ということである。逆に言えば、この特殊な2つの条件を そろえなければ、血液型による性格の違いは現れないということで、私たちの日常生活では、血液型に よる性格の違いを問題にできるような状況はまずない、ということである。幼児のカップルを用いたり、 小学生や大人を用いた実験も紹介されることがあるが、これは幼児の集団を用いた実験よりもさらにそ の根拠が薄いものになっていて、血液型性格診断で説明できる結果であることなのかどうかもあやしい ものである。
 なぜ、日本で一般に血液型性格診断が信じられているか、ということについては、心理学者たちは、 その「診断」の内容が、実はかなり広い範囲に該当するようになっていて、「言われてみればその通り」 という効果があるからだと考えているようだ。だから、同じ人が、実は思っていたのと実は違う血液型 だということになっても、その血液型の「診断」にも、「言われてみればその通り」となる、という。 また、血液型のようなわかりやすい基準で性格がわかるというのは楽しいことで、話のネタとして面白い から人口に膾炙するのだ、とも言われる。なお、韓国では日本の影響もあって血液型性格診断は盛んだ が、他の国ではまったく話題にならないらしい。外国人には、自分の血液型を知らない人もたくさんい て、日本人によく血液型を聞かれるのをけげんに思うようだ。

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