ああフクシマよ きみを泣く
〜福島県に住む人びとを思いて〜

植田謙一

ああフクシマよ きみを泣く
きみ死にたもうことなかれ
貧しくそだちしきみなれば
原発やむなきはまさりしも
事故のゆえんで放射能
放って死ねよ、と思いしや
他人に迷惑かけんとて
四十年も思いしや

北の田舎のまち・むらの
おくゆかしさをしるしとし
おとなしすぎるきみなれば
きみ死にたもうことなかれ
彼らの儲けがあがるとも
あがらぬとても何事ぞ
きみ知るべきや 何人も
むざむざ死ぬはなかりけり

きみ死にたもうことなかれ
権力者は現場では
役に立つ能力ありませぬ
形見に放射能をまき散らし
知らざるうちに死ねよとは
安全だと言うことも
善意ならばなおさらに
その責任をいかんせん

ああフクシマよ 原発に
きみ死にたもうことなかれ
寒い季節の北国の
仮設住宅や自宅にて
日々に生くるをひたすらに
心配を安心と自己暗示
わが子を案じ、気を遣い
復興の声が聞こゆるも
いまだ被災は続きぬる

不安を打ち消し助け合う
心に染み入る安全神話
きみ囚わるるや なびきぬや
ふるさと奪う行いに
怒る心ぞ美しき
この世ひとりのきみならで
ああフクシマよ きみを泣く
きみ死にたもうことなかれ

与謝野晶子「君死にたまふことなかれ」より