2009年04月28日(火) 初版
2017年08月06日(日) 02版

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降雨減衰の説明図

【1】大雨が降ると何故、衛星放送の映像が乱れるのでしょうか?
衛星放送で使用している周波数は地デジで使用している周波数に比べて非常に高く、大雨の中を通過すると電波が吸収されて電波が弱くなり映像が映らなくなります。
地上デジタル放送が使用している周波数は500MHz付近(470〜710MHz)、GHzで書くと、0.5GHzであり(0.5〜0.7GHz)、比較的低い周波数です。BS放送は、12GHz帯(BS:11.7〜12.2GHz、CS:12.25〜12.75GHz)という非常に高い周波数を使って放送しています。12GHzをMHzで書くと、12000MHzです。ここまで高い周波数だと、雨が降るとBSの電波(波長25mm)が雨粒(大雨の時の大きさ5mm)に吸収されてしまいます。土砂降りになると、吸収が激しく、地上まで電波が届かなくなり、映像が乱れたり、途切れたりします。
雨粒の大きさと衛星の電波の長さ

地デジの電波の波長は長い為、雨の影響をほぼ受けません。
また、地上から衛星へ打ち上げる電波は更に高い周波数、17GHz帯を使っており、雨の影響は12GHz帯より大きくなります。この為、衛星へ電波を発射する(アップリンク)局では、多くの雨が振り、衛星へ届く電波の強さが弱くなった場合、発射する電波を強くします。もしくは、送信する地球局を雨の弱い地域の他の局へ切り替えます。
【2】通信衛星で使用する周波数
周波数と雨の影響度

業務用の通信衛星が主に使っている周波数は4〜6GHzです。この周波数帯は、雨の影響を受けにくく、通信に適しています。ただし、使用するパラボラアンテナが大きくなってくる為、放送向きではありません。(他に10GHz帯を使っている衛星もあります)また、4〜6GHzは地上の通信及び通信衛星で使用済みであり、放送に割り当てる事は出来ませんでした。この為、衛星放送では12GHz付近を使用しています。12GHzは周波数が高く、雨が降ると減衰し、放送が途切れやすいです。
【3】衛星が静止している位置
衛星の位置

静止衛星は赤道上空35,786kmと非常に遠くにあります。赤道上の地球の半径は6357kmなのでとても遠くから電波を発射しています。衛星から発射している電波は1つの電波中継器(トランスポンダ)あたり120Wです。東京スカイツリーから発射している地デジが10kWとハイパワーなのに比べると衛星の電波は非常に弱いです。
【4】雨の中を通る衛星の電波
通常の雨の中を通る衛星電波

通常の雨雲は1500m程度から雨を降らせます。衛星の電波は斜めの方向から来るため、より長い距離を通過してきますが、2.6km程度です。
台風の中を通る衛星電波

発達した台風は高い位置から雨を降らす為、衛星電波が通る距離も長くなります。
【5】降水による影響
降水量と衛星電波のC/N

雨の量が多いと衛星放送の映像が乱れます。上記の図は雨の量が増えると衛星電波が弱くなり、C/N(Carrier to noise ratio、搬送波対雑音比)が小さくなる事を示しています。通常のフルハイビジョン放送放送は最低C/N=10.7dBが必要です。NHK-BSの降雨対策放送は最低C/N=4.4dBが必要です。NHK-BSでは雨で受信状態が悪い地域があると判断すると、通常のフルハイビジョン放送の帯域を削り、降雨対策放送を同時に送信します。C/N=10.7dB以下になるとフルハイビジョン放送にブロックノイズが乗るようになります。この状態で降雨対策放送を選択すると、画質が悪いが映像が見える状態が保たれます。民放は降雨対策放送を行わない為、C/N=10.7dBを下回ると映像が乱れ、映らなくなります。雨が激しく、C/N=4.4dB以下になると、降雨対策放送でさえも映らなくなります。
注意:降雨量と衛星電波の減衰量は一定ではない事、BSアンテナの性能で雨の影響が変わる為、この図は一例です。
【6】雨の影響を減らすには
雨の影響を減らす為には大きなアンテナを設置する事になります。
アンテナサイズと性能

なお、ブースターは雨に対しては全く効果が無く、無意味です。
【7】BSブースターの正しい使い方
地デジ電波が弱い時にブースターで電波を強くすると綺麗に映る事があります。BS/CSを見ている時に大雨や雪など天候が悪く、ブロックノイズが多いのでBSブースターを使えば改善するでしょうか?
実は、電器店で売られているBSブースターを使っても受信状態は改善しません。
では、どういった時にBSブースターを使うのでしょうか?そもそもお店で売っていると言う事は、何かしら改善するから売っているはずです。
でも、BSブースターが一般家庭で活躍する事はマレです。
■BSブースターが効果的な場面とは?
1)BSアンテナからBSチューナー/テレビまで数100mとか非常に長い同軸ケーブルで接続している為、ケーブルの損失が多いので、損失を補償する為にアンテナの直後に入れる。
一般の家庭であればBSアンテナからテレビまで100mも離れている事はありません。しかし、BSアンテナを設置出来る場所がテレビから非常に離れている等の理由で長い同軸ケーブルを使わざるをえない場合、同軸ケーブルで信号が弱くなり過ぎてテレビが映らない事があります。
この状態の場合、事前にBSブースターで増幅して信号を強くしておけば信号が遠くまで届き、テレビが映るようになります。
2)マンション等、衛星の電波を50部屋、100部屋へ分配している為に1部屋当たりの電波の強さが非常に弱くなる場合。
集合住宅では屋根でBSの電波を受信して各戸へ分配します。1戸へ分配する場合でも、1戸で4部屋、1部屋で2口のアンテナコンセントがあれば、8分配します。更に64戸の集合住宅であれば8分配×64戸=512分配となります。2分配だけでも信号が半分になってしまうのに、512分配したらテレビが映るはずがありません。
こういった時は分配前にBS(地デジも一緒に)ブースターで増幅してから分配します。1度に増幅すると歪むので、1度増幅&分配してある程度弱くなったら再度増幅&分配します。
1)と2)の場合だけBSブースターは有効ですが、一般的な家庭では使用する物ではありません。
■誤ったBSブースターの使い方とは?
大雨が降ると画面が乱れる・・・・・じゃあ、BSブースターを買ってきて使えば良くなる・・・・と思うかもしれませんが、全く効果がありません。
BSブースターが効果的な場面で記載した例では、同軸ケーブルの減衰や分配器で大幅に減衰する事が判っている時に、弱くなる前に増幅する為に使用しています。大雨で画面が乱れる時は、BSアンテナの受信部であるLNBに入って来る信号が弱くなり過ぎています。この状態でBSアンテナの後でBSブースターで増幅しても増幅するのはLNBが出す雑音だけで、衛星の電波は強くなりません。
BSアンテナの受信部であるLNBは、12GHzの衛星電波の周波数を1〜3GHzの低い周波数へ変換すると共に、強力に増幅する機能があります。言ってみれば、LNBにBSブースターの機能が含まれています。
衛星から来る非常に弱い電波を扱っていますが、LNB自身が雑音を出しています。パラボラアンテナで反射して集めた電波がLNBの雑音に負けてしまうくらい弱くなる=大雨で電波が吸収されて弱くなるとLNBから出て来る信号は雑音だらけでどんなに増幅してもテレビは映りません。
■じゃあ、どうすれば良いの?
元々衛星放送は雨で映らない時間がある事が想定されています。なので、映らない時は諦める事です。
どうしても改善したい場合、
1)10年以上前のBS/CSアンテナを使っている場合、最新のBS/CSアンテナに取り換える。
BS/CSアンテナの性能、LNBの雑音は年々改善されています。劇的な変化はありませんが、取り換える事で改善します。
アンテナの大きさと性能、弊害

2)大きなアンテナに交換する。
大雨の時にLNBへ届く電波が弱くなるので画像が乱れます。だったら、LNBへ集まる電波を強くする=アンテナの大きさを大きくする、これが効果的です。
ただし、アンテナを大きくする事には弊害もあります。
A)暴風時にアンテナの向きが変わったり、吹き飛ばされる可能性が高くなる。
大きなアンテナには大きいなりに強い力がかかります。その為、基礎をコンクリートで固める等、小さいアンテナに無い対策が必要になります。
B)設置方向がシビアになる。
大きいアンテナほど指向性が高くなります。45センチであればラフな調整で済みますが、60センチ、90センチと大きくすると、ちょっとのズレで受信性能が大幅に劣化します。
つまり、一般家庭向けではありません。
マンション等集合住宅では一般家庭とは異なり、多くの分配をする関係から最初から60センチ以上の大きなBS/CSアンテナを設置します。これは、分配過程でBSブースターを多く使う、ブースター=雑音源なので、家庭用の45センチでは受信性能が悪化する為に大き目のアンテナを選択しています。
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★ 参考にさせて頂いたページ
ケーブルテレビ局の説明リンク
降雨減衰ケーブルテレビZTVさんの説明
降雨減衰ケーブルテレビncmさんの説明
がんばる日記さん
ITproさん
降雨減衰分布特性(論文)
降雨強度分布(論文)
BSデジタル放送の概要とサービス(総務省)
BSアンテナの構造と動作の解説(アサヒデンキさん
静止衛星は静止しているか
受信システム設計集
マンション等の「BSパラボラアンテナ」の選定
デジタル放送受信について(DXアンテナさん)
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