母乳育児と母親の食べ物
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母親の食べ物は乳房トラブルに関係あるか?
「甘いものはオッパイをまずくすると聞いたのでガマンしています」
「カレーやキムチのような刺激の強いものはよくないと言われました」
「コーヒーはよくないと雑誌にあったので、水や麦茶を飲んでいます」
「脂っこいものや乳製品はオッパイがつまりやすいと聞いたのでひかえて
います」
「カタカナ食はひかえましょうと指導されたので、和食中心にしています」
などなど,食べ物に必要以上に気をつかったり、神経質になっている方が
多いように思います。
食べ物だけでなく、「水分は1日に2リットルは飲みなさい」と出産した
病院で指導されて、がんばって飲んでいる方もいます。
私が母乳相談の仕事を始めた頃(1990年代中頃)も、「乳質を良くす
る食べ物、悪くする食べ物」「トラブルをおこしやすい食べ物」などなど
言われていました。実際、ケーキを食べてつまった、お餅を食べて乳腺炎
になったという症例を見ていましたから、「少なめに食べてください」
と、私も話していました。
でも、いつの頃からか、食べ物は単なる‘きっかけ’なのかなと考え
るようになってきました。そして、今ではそれは確信に近くなっていま
す。
たしかに、ある食べ物を食べたあとにおっぱいがしこったり、乳腺
炎になったりということはあります。その方たちにわしく経過を聞いて
いくと、基本的なところに疲れ、運動不足、冷え、睡眠不足、ストレス
(精神的、肉体的)など、血液循環を悪くしている状態があることが多い
のです。
一人目の時はたびたび詰まったり、乳腺炎になったりしたのに、二人
目(三人目はもちろん)は何を食べても、まったくトラブルをおこさな
い人がけっこういます。赤ちゃんの世話にもなれているので、二人目の
育児はとても楽に感じ、ストレスが少ないためと思われます。
さらに、上の子がいるので、外にも行くし、家事も多いので自然に体
を動かしているため血液循環もいいし、消費カロリーも多いので、すぐ
に乳房のトラブルに結びつかないのでしょう。
母乳育児って、本来、おおらかでダイナミック!
母乳は母親の体内、乳房で血液からつくられています。食べ物や飲み
物はいわば母乳の原料ですから、あれダメこれダメなんて言っている場
合ではありません。
栄養が極端に偏ったり、カロリーが不足すれば、母親がやせてしまう
し、体力が落ちて病気にもなりやすくなってしまいます。母乳分泌も減
ってしまうので、赤ちゃんの機嫌が悪くなったり、体重が増えなくなっ
てしまいます。
『子育ての社会史』(横山浩司、頸草書房、1986)を読むと、本来、
母乳育児は母親がバリバリ働いて、たくさん食べて、ひじょうにバイタ
リティにあふれ、おおらかでダイナミックな育児法だと感じます。
電化され家事労働が楽になっている現代からは考えられないかもしれ
ませんが、私の子供の頃(1950年代)の記憶では、洗濯機も掃除機も
なく、洗濯板で手洗いし、外の物干し竿(さお)に干していました。
そうじはホウキではいたり、床の雑巾がけをしていました。
食べ物も現代とは比べ物にならないくらい質素でした。授乳中の母親
は「子持ち二人扶持(ぶち)」と言われ、おかずが少ない分、どんぶり
メシを食べていたと思われます。それでも、母乳分泌の良い人はあふれ
るほど出ていました。
電気冷蔵庫もないので、牛乳や卵を毎日食べるなんてありませんでし
た。動物性蛋白質や油脂も今ほど摂っていなかったと思います。ですか
ら、アトピー性皮膚炎とか花粉症などのアレルギーもありませんでした。
現代では、子供の数は少ない上に、洗たくは全自動の洗濯機が当たり
前です。家事が楽になって動かなくてすみます。そのわりに、食べ物は
豊かになり飽食気味です。体を動かさないのに、カロリーの高いものや
ジュースや果物、菓子などの嗜好品も多くなっています。
ちょっと話しがソレてしまいましたが、現代には、体を動かさないわ
りに、カロリーをとり過ぎてしまいやすいの状況があるということを言
いたかったのです。
実際、初めて赤ちゃんを育てているママでも、体の冷えに気をくばり、
活動的で楽天的なママは何を食べてもまったくトラブルを起こさない
し、赤ちゃんもマルマルと太って機嫌がいいのです。
そういうママたちを見ていて、もしかして、女性の一生の間で、思い
切り食べても太らないのが授乳期なのかな? と思うことがあります。
食べ物、食べ方はもっと科学的に考えよう!
そういうわけで、食べ物、食べ方はもっと科学的に考えて、授乳中
だからといって、不自然なことはしない方がいいと私は思います。
栄養学的にどの栄養素をどれだけとるかといった細かいことを理屈
で考えて食べるのではなく、体の生理に合っている食べ方、体の声に
耳をかたむける食べ方がいいのです(バランス感覚が必要)。
要は、摂取カロリーと消費カロリーのバランスが大切なのです。朝
起きてから、日中の体をよく動かす(働く)時間帯には、しっかり食
べることです。いろいろな食物をなんでも取り混ぜて食べる。和食と
限らずいろいろな調理法で食べるといった、ごく当たり前のことをす
るのがいいのです。
「和食」が世界遺産になりましたが、それとは別にふだん私達が食べて
いる食事は、味噌汁、ごはん、パン、うどん、肉じゃが、ひじきの煮物、
おでん、焼き魚、刺し身、焼き肉、ハンバーグ、玉子焼き、カレー、
焼きそば、酢豚、ラーメン、サラダ、パスタ、揚げ物、などなど、あげ
たらきりがありません。
私達日本人はいろいろな食材をいろいろな調理法、いろいろな味付けで
食べる‘雑食’の民族なのです。だから、味覚も発達していて、日々の食
生活が豊かで、体にも良い食べ方なわけです。
「カタカナ食はひかえましょう」なんて言われても、脂っこい料理だっ
たら活動の多い朝食や昼食に食べて、夜は寝るだけなので夕食はあっさ
り系の食事にしたらいいのではないでしょうか。
授乳中の食事は、一回の食事でドカ食いするよりも三度の食事のほか
に10時や15〜16時に、お菓子や果物だけですまさず、軽食を食べる
のがいいと思います。
家事をしながら、合間に「ちょこちょこつまむ」という人がいますが、
食事を大切に考える意味でも、胃のためにも、ある程度決まった時刻に
食べたほうがいいでしょう。
母乳育児を続けるために、食べることがとても大切!
母乳育児を続けるコツはいくつかあります。
最も大切なことは「ヤセないようにしっかり食べること」です。
実際やっていると、自分は食事を食べているつもりでも、体重をはかって
みると減っているというのはよくあることです。それくらい、体の中で
母乳がつくられるということは、ふだんより栄養やカロリーを必要とし、
代謝も高まっているのです。
母乳は吸わせてさえいれば自動的に出てくると思いがちですが、母親
が空腹だったり、のどがカラカラにかわいていると、出にくくなったり、
出る量が少なくなったりするのです。
ヤセないようにしっかり食べることは、お料理が好きな人、食いしん坊
の人には、決してむずかしいことでははないのですが、最近のママの中に
は、大変と感じる方も多いようです。
独身の頃からの「ヤセ願望で少食」「食べることに関心がない」「空腹
さえ満たせれば、なんでもいい」「食物や栄養に関して知識不足」「料理
を作れない」「料理する時間がない」「夫が家で食事をすることが少ない
ので、一人分を作るのがめんどう」などなど、そうなんだ・・・と考えさせら
れることが多々あります。
ここ1〜2年、いやもっと前からかもしれませんが、‘母乳育児の曲がり
角’である3ヶ月頃になる前(新生児期〜2ヶ月頃)から、赤ちゃんの体重
が増えなくなったり、母子手帳の成長曲線の枠からガクンとはずれてきた
ということで、小児科医からは母乳が足りていないのだから、ミルクを足
しなさい(増やしなさい)と言われたという相談が増えています。
中には、あまりにも体重が増えないので、大病院の小児科に紹介される
ケースもあります。そういう時、ママもやせていて、妊娠前の体重より減
っていることが多いのです。どんな食べ方をしているかを聞いていくと、
中にはとても‘母乳育児中と思えないような食生活’という人もいます。
朝起きられず朝食が抜きだったり、昼食はご飯を少しと前夜の残り物だっ
たり、食パンと水だけだったり。
もし、赤ちゃんの体重増加がよくなかったら、まず、ご自分の体重や食
べ方のチェックをしてみてください。「おなかがすかない」「食べたいと
思わない」という方は、生活のし方が運動不足になっていないか見直して、
気分の転換のため散歩や買い物など、短時間の外出でもいいのでしてみて
ください。
それから、お鍋やフライパン一つで作れるような煮物や炒め煮、蒸し煮
のような簡単レパートリーを少しずつ増やしていくと料理作りがそれほど
大変と感じなくなるのではないかと思います。
ではどう食べたらいいのでしょうか?
授乳中はふだんよりお腹がすくし、食べる量は増えるわけですが、いちが
いにこれだけと言うのはむずかしいです。というのは、初めての赤ちゃんな
のか、ほかに子どもがいて外で遊ばせたりで手がかかるのか、買い物も車な
のか歩きなのか、宅配であまり外に行かないのか、などなど活動量は人によ
って差があるからです。
一般的に言って、一日に500kcal(キロカロリー)は多く必要になります。
ふつうに盛ったご飯なら2.5杯分くらい、6枚切りの食パンなら3枚くらいに
相当します。
繰り返しになりますが、体をよく動かす(活動する)時間帯にはしっかり
食べる。いろいろな食物をなんでも取り混ぜて食べるといったごく当たり前
のことをするのがいいのです。
しっかり食べてもいいと言われても、やはり体重は元にもどしたいですよ
ね。とすると、朝は眠くてもダラダラ寝てないで起きて、朝食はたっぷり食
べる。昼食は多少脂っこいものも食べて、カロリーも栄養もしっかりとる。
それでもお腹がすくはずですから、間食におにぎりを食べる。ティータイム
には(自分の楽しみとして)お菓子や果物も適量食べる。
日中にしっかり食べていると夕食にドカ食いしなくてすみます。甘いもの
を食べてはいけないということはありません。適量なら疲れがとれますし、
ほっとするひとときとして問題ありません。
食事をきちんと食べていないと、体がカロリー不足をおぎなおうとして、
やたらと甘いものを食べたくなり、食べだすと止まらなくなります。
ふだん甘いものを食べない人も授乳中には食べたくなる人が多いのはそのた
めです。ちなみに和菓子より油を使った洋菓子やチョコレートの方がカロリ
ーは高くなることは知っておいた方がいいでしょう。
ふだんの食事で、ご飯をお茶碗1杯なら2杯は食べる。パンもいいけど、
ご飯の方が腹持ちもよく、エネルギーとして使われやすく(肥りにくく)、
体を温めるのでベターです。その上、便通もよくなります。
おにぎりにしておくといつでも食べられるので便利です。15〜16時の
おやつタイムに、おにぎりをまず1個食べてから、お菓子や果物を食べると、
食べすぎなくてすみますし、夕方頃の分泌不足もふせげます。
「おにぎり」は混ぜる具で変化させやすいし、乳幼児のおやつにも最適です。
菓子パン、スナック菓子やクッキー、ジュースなどのようにカロリーが高く
ないし、歯につきにくいし、子どもがおだやかになりますよ。
夕食は7時頃までには食べた方がいいと思います。ご主人の帰りを待って、
9時、10時に食事をするのは、ちょっと遅いかな・・・。
なぜなら、お腹がすくと、お菓子を食べたりしがちになり肥ってきます。
食事を食べていないので、母乳の分泌も少なくなって、赤ちゃんも母乳を飲
んでもすぐ泣き出したり、寝付くのにやたら時間がかかるようになります。
それに、夜中は寝ると分泌が良くなるので、遅い時間に食事をすると、さ
らに分泌が増えて、トラブルの原因になりやすいのです。
その上、遅い夕食は胃にもよくないし、肥るし、中年期以降には生活習慣
病をひきおこしやすくなります。
たいていの家庭では、夕食におかずをいろいろ作ったり、ボリュームのある
物を食べるのではないでしょうか。作れる時間に煮なおして食べられる煮物
やシチュー、豚汁、牛丼風煮物などをたくさん作っておいて、それを朝食や
昼食にも食べれば簡単です。ご主人や子どものお弁当を作るなら、ついでに
自分のも作っておけば、すぐ食べられるので楽です。
作る時間がない時は、レトルトのおかずや冷凍のおかず、お惣菜屋さんで買
ったものでもいいのです。ホットケーキやスパゲッティ、焼きソバ、焼肉、
ラーメンなど、脂っこいものも、日中に食べて、しっかり体を動かせば問題
ありません。夕食はあっさりした食事にすればいいのです。
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