弓道とは一言で言えば「礼」を重んじる競技である。もちろん勝ち負けは的に対して何本の矢が中たったか(=的中数)で競われるものだが、それ以上に精神面を切磋していく競技である。それは弓道の教義に「射法訓」と共に「礼記−射義−」が引用されていることからも明らかである。(下記参考を参照のこと)
究極的には「正しい射をすれば自ずと中たりが付いてくる」、中てるのではなく中たる、と考えられている(これを「正射必中」という)。その意味で目の前の的中数は問題ではなく如何に正しい、究極の射に近づけるか、が練習上のポイントとなる。
とはいえ、競技弓道ではやはり勝たなくては意味が無く、目の前の的中数を上げることに重点が置かれるのは仕方のないところ。大学で試合に何度か出させてもらった身で言わせてもらえば、これが結構なプレッシャーである。そのプレッシャーを楽しめるうちは良いのだが、試合形式の場合当然団体戦となるために、酷くなってくるとそのプレッシャーに押しつぶされることも度々あった。こうなるとせっかくの弓道も楽しくない。(現役引退後の方が楽しく、のびのび出来たという皮肉な結果も当然かもしれない。)やはり好きであることこそが上達への第一歩。これはどの競技でも同じであろう。
ここで弓道(和弓)とアーチェリー(洋弓)の違いを簡単に述べる。よく両者は比較されるがなんと言っても洋弓は中たってなんぼの世界である。的中するのを前提として的に点数がありその点数を競うのが洋弓。対して和弓は的に当たったか否かを競うもの、的の端であろうが真ん中であろうが中たりは中たり、○か×かのである。
洋弓の歴史が的中率を上げるため弓に改良を加えたことに帰因する。いかにも西洋的合理主義である。対して和弓は平安の時代より多少の試行錯誤や素材の変化があるにしても基本的には形は変わっていない。和弓は弓に変化を求めるのではなく人間自身に変化を求めたのである、そこが精神世界に繋がり、「道」となったのである。
弓道ははっきり言うと道具には金もかかるし手間もかかる。本格的にそろえたらそれこそウン十万円では済まないかもしれない。しかしだからこそ愛着も湧くし、手間も惜しまないというのもまた事実。ここでは標準的な価格で集めると一体いくらするか試算してみる。
尚、弓・カケについては下記コラムに選び方を書いておいた(当然独自の説)ので参照してもらいたい。
| とりあえず最低限必要な道具集 | ||
| 価格 | 備考 | |
| 弓※ | \23,000〜 | 竹・カーボン・グラスファイバーとある。 竹は高価な上に手間が非常にかかる。 |
| 矢 | \10,000〜 (4本組) |
竹・カーボン・ジュラルミンと種類豊富。 また、羽も鷹・鷲・鵞鳥とこちらも様々。 |
| \15,000〜 | 弓道家の命とも呼べる代物。「かけ」と読む。 右手にはめ、これで弦を弯く。 |
|
| 弦 | \350〜 | 合繊は安い。本来は天然麻弦を使うらしい。 |
| 道着 | \2,900〜 | 普段練習するときはこれを着る。 できれば2着ぐらいあったほうが良い。 |
| 袴 | \5,800〜 | すそを踏んだり、泥跳ねに気をつけよう。 |
| 帯 | \1,200〜 | 女性のはマジックテープになっているらしい。 |
| 足袋 | \1,000〜 | 規格外の足だと割高に。 |
| 胸当て | \400〜 | 女性は必要。 男子でも洋服で練習するのならば必要。 |
| これは手元に置きたい道具集 | ||
| 価格 | 備考 | |
| 矢筒 | ? | 移動するときに矢を入れるもの |
| 弓袋 | \1,000 | 移動するときに弓を入れる。 剥き出しのまま持っていくと捕まる、という噂 |
| ? | カケを購入するとおまけでくれる可能性大 | |
| 弦巻 | \600 | 弦が切れたときのための予備弦を巻いておく。 藤で編んであるものは非常に高い。 |
| 弓道教本 | \1,166 | 弓道の教科書。 昇段審査の問題はここから出題される。 |
| 巻藁矢 | \1,500 | 練習用の矢。 |
| あると便利な道具集 | ||
| 価格 | 備考 | |
| ギリ粉 | \120 | 松脂から油を抜いたもの。 カケに付ける滑り止め。 |
| 筆粉 | \120 | 灰。弓手(左手)につけ滑りを止める。 逆に滑りを良くするという説もある。 |
| 道宝 | \500 | 弦の矢を装着する部分を調節するために使用 |
| 的中定規 | \1,000 | 矢を装着すべきポイントを測るもの |
| 雨袋 | \400 | ビニール製で弓の雨合羽といったところか |
| 雪駄 | \1,000 | 足袋で移動するときには便利? |
| 和服 | ? | 高段位の昇段審査ではこれを着て行う。 |
因みに私の持っている弓は小山弓具製「直心U」(カーボン)の15sである。購入当時これが最新で皆に羨ましがられたものだ。価格は\45,000である。矢は何本か買ったが現在持っているのは4本組で\10,000。カケは標準のもので\15,000。
確かにこうしてみると弓具ってお金がかかるし、金持ちの道楽という側面は否めないが、但し、どれも一生ものである。大事に使えばこれ以上の大きな出費は無い。
ところが、弓道家の多くはやり込んでいくと段々今の道具に飽き足らなくなってくる。するともうワンランク上の道具をついつい買ってしまうのだ。例えばカケ。最初は市販のものを使用しているのがほとんどだがそのうちに自分の手形を取って弓師にわざわざ作ってもらったりしたくなるのだ。弓もカーボンやグラスファイバーを使っていたのが急に竹弓が欲しくなったりするのである。(但し、竹弓でないと高段位の昇段試験に受からないから、という説もある)竹弓は当然自然のもので作られているので湿度によって反り返ったり曲がったりするので管理維持が非常に面倒である。にもかかわらず、「そこがまた可愛い」とか言う分かったような分からないような理由で購入したりするのである。
弓道をやる場合、公立の道場が必ず一県に一つはあるのでそこで練習できる。大抵二時間で200円とか300円ぐらい。道具は高い分施設使用料は結構安い。
一人で練習するならばこれで済むのだが、初心者が弓道をやる場合、独学では決して上手くはなれない。やはりなにがなんでも指導者が必要だ。弓道場にはまず間違いなくそこをホームグランドとして練習している弓道会がある。まずはそこに入会することをお勧めする。ところがこれが端から見れば閉鎖された社会に見え、しかも高齢者ばかりなのでなかなか声がかけにくい。事実、私の友人で社会人になってある弓道会の門を叩いたが、紹介が無いために渋られたそうだ。とはいえ、決して入会を断られたわけではない。しかもこういった例は特殊の部類であろう。普通、来るものは拒まず、である。
また、弓道会に入ると市の弓道連盟・県の弓道連盟に加入出来るというメリットもある。これによって全国に通じる正式な弓道会員と認められるばかりか、昇段審査も受けることが出来るのである。昇段審査は「級」から始まり「九段」まである。級位は普通高校生以下が取るもので社会人・学生は初段より出発することになる。高校生ならばいざ知らず、社会人・学生ならばよっぽどのことがない限り弐段まではスムーズに取れるはず。試験は実技と筆記の2種類あるが筆記試験はほぼ弓道教本一巻よりの出題なのでよく読めば間違えることはない。但し、よく読めば、である。実技試験は一人一手(二本)を的前で打って行われる。県によって違いはあるが参段以上になると必ず二本のうち一本は中てておかないとまず昇段できない。
| 段位 | 資格 |
| 九段 | 範士 |
| 八段 | |
| 七段 | 教士 |
| 六段 | |
| 錬士 | |
| 五段 | |
| 四段 | |
| 参段 | |
| 弐段 | |
| 初段 | |
| 1級 | |
| 2級 |
因みに段位とは別に資格というものがある。この資格にも当然審査があるのだが、これをもらうと「先生」と呼ばれるものになるのだ。
それではここで練習編を書こうと思ったのだが、その前に弓道の基本を簡単に述べておこうと思う。用語などは独特だし。
一、使う筋肉
弓道は射法訓によれば筋肉など使わず骨で弯くそうだ。まあ理想は理想、実際にはやはり筋肉を使う。主に二の腕、背筋、臀筋、腿の裏、ふくらはぎといったところ。全体として人間の裏側の筋肉を使う。イメージとしては下半身を締め、上半身は大きく引き延ばす感じになる。この中で特に二の腕は普段の生活では使わない筋肉なので注意が必要。試しに時分の二の腕を触ってみてくれ。結構筋肉の締まった人でもここだけはぷよぷよしている人が多い。この筋肉を使うので見た目以上に体力を消耗するのだ。
二、弓手・馬手
因みにAtokでは出なかったがIMEでは一発で出た。なんだかなぁ。
弓道では左手を弓手(ゆんで)、右手を馬手(めて)という。これは最近知ったのだが、その昔騎馬武者が左手で弓を持ち、右手で手綱をさばいたことからきたものらしい。この弓手・馬手、昔の小説などにも使用されていることから結構一般的表現だったのかもしれない。
※人によっては弓手を押手、馬手を弯手とも。また、馬手を読みから妻手と書く場合もある。
以下は大学時代に私が行った練習方法である。場所によって違うとは思うが割と良い練習方法だと思うので引用しよう。
| 段階 | 名称 |
| 第一段階 | 徒手 |
| 第二段階 | ゴム弓 |
| 第三段階 | 素弯 |
| 第四段階 | 巻藁 |
| 第五段階 | 的前 |
第一段階徒手 徒手空拳の「徒手」である。(先ほど他のページを見てみたら「踊り」というそうだ。それよりはこっちの表現のほうが格好良いだろう。)弓を持ったつもり、矢を持ったつもりで何も持たずに基本動作を行う。初心者にはなかなかイメージしにくいところだがここで弓道の基本姿勢と射法八節とそのうちの「足踏」と「胴造」を学ぶ。
専門的な話はつまらないのでなるべく省略。ただ、打つ人間を大砲と例えるならばこの「足踏」「胴造」はまさに土台を築く行為である。この土台が安定しないと当然発射の際砲身がブレ精度が落ちる。因みに「足踏」はおよそ肩幅よりちょっと広く取るのが最適なのだが、バランスが悪いようならば微調整をする。左右にブレるようならば足の間隔を広く、前後にブレるようならば逆に狭くする。ところであんまり広く取りすぎるとふらふらと前後に揺れる。そこを後ろから指一本でちょいと背中を突かれると前のめりになったりする。まさにケン○ロウ、「お前は既に・・・・」状態になるので注意が必要だ。
![]() |
第二段階ゴム弓 ゴム弓とは写真を参考にしていただきたい。いよいよ初心者にとっては筋肉の使い方、弓の感覚というものがそこはかとなく分かってくる段階突入する。ここではとくに射法八節には載っていないが「大三」と呼ばれる箇所・及び「弯き分」「会」「離」「残身」を学ぶ。「大三」とは「打起」と「弯き分」の間の行為である。詳述すれば、「弓構え」の時弓手と馬手は向き合っている。これが「打起し」まで続き「大三」の段階で初めて弓手が的の方を向く。(グリンと腕を返すのだ!)ここが初心者にとって最初の難関、英語で言えば「三単現のS」並に難しいところだ。特に馬手の肘の張り方がポイントになってくる。これが上手くできるとゴムを離したときプラスチックの取っ手を軸にゴムがクルリと一回転する。上手くいかないと「ベチャッ」という鈍い音と共にゴムは下に落ちてしまう。 |
第三段階素弯 いよいよ弓を手にする時期に来る。素弯とは矢をつがえないで弯く行為。実は一番疲れる行為。ゴム弓との違いはなんと言っても弓手の手の皮の巻き込み方を学ぶことである。(ついでに言えばここで初めて「弓構え」「打起し」も学ぶ)実は「弓を弯く」と言う行為は親指の付け根と人差し指の間の皮を弓に巻き込むことから始まる。矢が弓から離れるまでは親指の付け根(=角見・つのみ)で弓を押し、結局巻き込んだ皮が戻ろうとする力を利用して矢を飛ばすのである。弓にも体にも負荷を懸ければ掛けるほどその戻ろうとする力を利用して勢いのある矢が飛ぶ。(質量保存の法則だ!)
余談だが、この時期になって私は早くも伸び悩み後から入ってきた女性達(もちろん初心者)に抜かされてしまった。才能無いのか?と悩み、辞めようかと何度思ったことか。しかし当時の主将が及び副将が何となく怖かったので辞めるに辞められなかった。今にして思えば辞めなくて正解だった。ありがとう先輩!
![]() |
第四段階 巻藁 左の図のように藁を巻いたものに矢を打っていく。いよいよ本格的に矢をつがえての練習である。私の学校では500本打つ。その後の射型をみて次の段階に上げるかどうか先輩が審査するという方式を採っていた。 いよいよ本格的な「離」「残身」を学び、射法八節の完成である(しかし当然完璧ではない)。初心者は初めて矢を放つわけであり、非常に危険な行為でもある。絶対に指導者の居ないところでやってはいけない。とはいえ指導者が居たら安全かというとさにあらず。この巻藁は普通1.5〜2Mの距離を置いて行う。にもかかわらず暴発などで外すことがある。かくいう私も大外しをしてしまい、しかもその矢が跳ね返り、私の後ろにいた先輩めがけて飛んでいくという信じられないような事をしでかしてしまった。「殺す気か!」と言われたが今でもその先輩とは懇意にしてもらっている。 また、初心者は弓の握り方が不十分で矢が発射した瞬間、弦で顔や腕をぶったりする。腕などをぶつと赤い線が出来て痛々しい。また顔、特に耳などをぶつと一瞬何が起きたか分からないが、後からジーンと激痛を知覚、ドロッとした涙が出てくる。読んでいると一瞬退いてしまうが、やっている本人からすれば打たれてなんぼ、そのうち慣れてくる。それこそこれも愛の鞭だ!と思えてくる。 |
第五段階 的前 いよいよ26M離れた36pの的に向かって打てる段階である。私の場合4月より始まって4ヶ月でここまで来た。長かった・・・。まあそれはそれとして、張り切って的前に立ったものの中たらない。中たるわけがない。20本打っても0中の日々が続いた。一本も中たらないのを皆落(かいらく)という。私の他にもう一人最初の時期中たらなかった友人がいて、彼は行射が終わると「ハロー皆落全部外したよイェイェ〜」(Byリンドバーグ)と歌っていた。ほろ苦い思い出だ。
最初のうちは先輩に見てもらう。なんと言ってもねらいの付け方すら分からないのだから。初心者は的まで届かず途中で失速したり、大外しして隣の的に中たったりという結構ショックなことも起きたりする。しかし初心者なのだからと開き直ろう。
| 射法八節 | |
| 一 | 足踏 |
| 二 | 胴造 |
| 三 | 弓構え |
| 四 | 打起し |
| 五 | 弯き分 |
| 六 | 会 |
| 七 | 離 |
| 八 | 残身 |
![]() |
一、弓返り 左図の図Aはわかりにくいとは思うが弓を普通に持ったときの形である。図@は上からの断面である。この二つを基に想像していただきたい。 この状態、弦は腕に対し45度外側を向いているのがお分かりいただけるであろうか?この状態から体を弦と弓の間に入れるようにして弯くのである。繰り返すようであるが、その反動を使って矢を飛ばすのである。反動が大きすぎると弦が元の位置を超えクルリと一回転する。これを弓返りという。弓返りは起こそうとして起きるのではなく自然に起きるもの。結局それだけの力が矢に伝わったとも言える。因みに下図が弓返りのイメージである。
|
|
| 図@ | ||
![]() |
||
| 図A |
二、ねらい
ねらいは右目で行う。顔をほぼ肩と並行にしているため、左目では弓が的を隠す格好になって見えないからだ。
詳しい話はまたいずれ。
(続く)
|
||
|
弓道をやる上で欠かせない道具に「カケ」というものがある。まあ野球で言うところのグローブみたいなものだ。この「かけ」、実は鹿の革で作られている。カタログを見ると「小鹿」というのもあるのでどうやら子供の鹿も使っているようだ。
ちなみに吉川英治「新平家物語」で平清盛のエピソードで清盛がカケを作るのに親鹿を射殺そうと思ったが子鹿がかわいそうで逃がしたというエピソードがあることから、平安時代には既に鹿革を使用していたのかもしれない。
ついでにいえば矢の羽。鷹や鷲の羽を使う。バリバリにワシントン条約に違反している種別の羽もある。昔は結構使われていたらしいが最近は鵞鳥などで代用しているらしい。
(かけ)
弓道家にとって、他人に弓矢を貸すことはあってもこれだけはまず貸さないし、貸せない。なんといっても世に同じカケなど存在しなく弯いているうちにだんだん形の変わる(癖が付く)ものだからだ。但し大抵の道場には予備のものがあり、初心者はそれを借りると良い。(この予備は当然中古品。)
ここで大学時代のエピソードを二つ。
@「カケ無いよ〜」事件
私が大学二年の時東北地方の大学が集まって仙台で大会があった。初日会場にて付け矢を行う(道場の感触を確かめるための練習、野球で言うところのシートノック?)。まあ初日はつつがなく終了。遠征のため、宿で一泊。この時我々二年男子は一つの部屋で寝ることに。
一夜明け、試合会場に向かうべく道着に着替えている最中に事件が起きた。いつもはクールで厭世的なA君が「カケ無いよ〜」と騒ぎ出した。んげ!周りの人間もそりゃ大事だ!と探索に乗り出す。しまいにはせっかく畳んだ布団まで引っぺがして大騒ぎ。その間彼は「カケ無いよ〜、これじゃあ試合に出られないよ〜」と結構情けない声を出す。もしかして試合会場である道場に忘れてきたのでは?という結論に達しかけたとき一人の人物(B君としておこう)が「あった!!」と叫んだ。なんとB君のバックに入れていたのだ。どうやら自分のかばんに入れるのが面倒だからB君のバックに入れておいたらしい。そのことを一夜たって失念していたそうだ。この時怒りとかあきれるよりもまず思ったのはあの、いつもクールなA君があんなに動揺するなんて、ということだ。
Aカケ借りる事件
これも大学二年の時、今度は全国の大学が一堂に会して行われる大会、全日本学生弓道大会(in神戸)で起きた話。この日だけ北は北海道、南は沖縄までの全大学の射を見ることが出来るのである。そういった意味では勉強になる大会だ。
さて、いよいよ我々の番が近づいてきた、という段階であれ?先輩がいない!こっちは点呼が始まっているのに肝心かなめの先輩がいないということであせる。方々を探した結果、二階で何が嬉しいのだがニッコニッコしながらタバコを吸っていた。まあそれでもどうにかこうにか捕獲・連行することに成功。ところがこれで終わらなかった。今度はC君が非常に怖い顔になる。どうやら彼はカケを忘れたらしい。うそ!控えの選手は本日で番は無いと当然思っているのでカケなど持ってきていない。それじゃあ、試合棄権?神戸まで来てそれはないでしょう。と一瞬思ったがそこは彼、しっかりしていた。試合の終わった別の大学の人から借りてきたのだ。ううむ、大物。上に欠いていたことと矛盾した話ではあるが、それは彼だから出来ること。普通の人は絶対こういったことの無いように出立前に指差し確認を。
再三述べているがこのカケは弓道をやるにあたって一生つきあっていくものである。そのためにもこのカケは慎重に選びたいものだ。一番良い選び方は先輩、もしくは弓具屋に聞くのが一番である。特に弓具屋さんは大抵おやじは無愛想だが、おばちゃんは親切だ。おばちゃんに聞けば喜んで教えてくれるだろう。ポイントとしては人差し指と中指がカケをはめた際、先端につくかどうかであろう。あんまりにもぶかぶかであると行射していくうちに弦でカケを痛めてしまう恐れがあるからだ。
←これがカケ!(写真はYahooのオークションからパクってきた)
弓は道場・指導者によって違うかもしれないが初心者はいきなり購入するべきではない。大抵の場合道場で貸してくれるはず。ある程度練習をこなし、一人で的前で弯けるようになったとき購入するのがベストである。そのときになって初めて自分のベストの弓の強さというものが見えてくるものである。
弓の強さはsで表されるが初期は当然そんなに強い弓が弯けるわけも無く、弱い弓で練習することになる。おそらく12s前後であろう。その後弯き方のコツなどを会得するにつれ強い弓に段階を上げていく。最終的に男性で18〜20s、女性で15s前後の弓になるのが一般的。勿論年齢・体格などによって違いはある。因みに私の弓は15s。はっきりいって男子では弱弓の部類、女性並の強さである。技術的に未熟であるのと体力的な問題からこれが精一杯といったところである。
テレビや写真・絵などで女子の弓道着姿を見る機会があることかと思われる。その場合大概長髪を白いハチマキで結わいている女性のはずだ。あのハチマキは別段気合を入れるために結んでいるわけではない。実は矢を放つ際弦が前髪などをかすめる恐れがあり、それを防止するために結んでいるのだ。(女性に聞いたところによると弦で髪の毛を打つと枝毛になるそうだ。)
というわけで本来の結び方は前髪の前にハチマキがこなければいけないのだが、最近は本来の用途を忘れおしゃれに額に直接結んでいる人が多い。
上述したが弓とは弓手の皮を巻き込んでその反動で矢を飛ばす。私がまだ的前に立って間もない頃、友人(前に出てきたA君)が私に「気分転換に弓手にオロ○インを塗ればいい」と教えてくれた。まだ弓道の知識が乏しい私は経験者の彼の言うことならば間違えないと思って塗ってみた。
いざ、的前に立って業射すると、当たり前だが弓手が軟膏のせいでツルツルと滑って皮を巻き込まない。結果として弦で腕を強打することになった。彼は最早忘れたと思うが痛い目に遭った本人は決して忘れることはない。しかしなぜ彼はそんなことを言ったのか、未だに謎である。
私はねらいの付け方をちゃんと教わらなかった。その後だいぶ経ってから教本を見て全然違ったところを狙っていることを知り愕然とした覚えがある。とはいうものの、そのころには的中率もアップしていたわけでなんでそんなねらいの付け方で中たっていたのか不思議と言えば不思議だ。因みに私のねらいの付け方はズバリ、勘!「おそらくこの辺かな?」と思ったらそのままターゲットをロックONして打っていたのだ。(こんなんで本当によく中たっていたなぁ。)
また、私は近眼の上に乱視の気が有るのだがしばらくの間裸眼で行射していた。これは裸眼で行うと的がぼやけ大きく見えて得したような気になったからだ。人間いろいろと試行錯誤を行うもの。これはまさしく間違ったアプローチの仕方である。
ついでにもう一つ。友人の高校時代の友人は私よりさらにひどい乱視だったらしいのにもかかわらずそれでも裸眼で行ったそうだ。この人の場合、的が大きくなるどころか一つの的が3つに見え、それはあたかもミッキー・マウスのようだったそうだ。こうなると最早ねらいなど有って無きに等しい行為だ。
![]() |
泣き所右の写真を見ていただきたい。これは某アイドルの写真なのであるが、そんなことよりも彼女が怪我をしてるのがお分かりだろうか?再三再四述べてきたが、まさにこの怪我こそ弓道をし過ぎによって発生したものであり、私も悩まされたものである。故に彼女のこの怪我、その痛さ、よく分かる。同時にこの娘は本物だ!(←?)弦を弓の外側に付けて堂々と写真集に写っているような人間とは違う!(コアな人間にしか分からないネタ) 私の場合、患部をテーピングでぐるぐる巻き付けて強引に塞ぎ行射したが、終わった後そのテーピングを取るのが恐怖だった。 結局、こういった怪我というのは弓の持ち方がそもそも悪いから起きるもので練習を重ねていくうちに直ってくる。 また、ペンだこと同じようによく怪我をするような所は知らず知らずに皮が固くなってくるのである。 この画像をどっから持ってきたか、この女の子は誰なのか、謎を残したままこの話は終了にしたい。 ※この女の子趣味は弓道と書いてあった。もしこの女の子が誰なのか分かった人がいたら連絡ください。記念品を贈呈します。 |
以下は大学時代に部日誌にも書いたことである。(こんなことするなんて当時から如何に暇だったか!)
問い:弓手・馬手それぞれ発射時点で許されるブレは何センチであろうか?
前提条件 的−36p/射位から的までの距離−26M/矢の弯き尺−90p とし、的の中心を狙っているものとする。
こうすると弓手から的までの距離は25.55M、馬手から的までの距離は26.45Mとなる。
計算方法は省略するが要は三角形の相似と比例を使えば導き出せる。
すると以下の結果が得られる。
弓手が全くブレず馬手だけがブレるとする場合−馬手の許容範囲は1.268p
馬手が全くブレず弓手だけがブレルとする場合−弓手の許容範囲は1.225p
となる。これ以上ずれると外れということになる。こうしてみると何気なく出している的中も、実は非常に高い精度の基に行われているのだなぁと感心してしまう。
矢道とは読んで字の如し、矢の通過する場所である。大概だだっ広い芝生になっている。幅は射場によって異なるが、長さは26メートル。
この土地不足の世の中矢が通るだけの道とはなんとも無駄な感じもしないでもないが、まさか人が通るわけにも行かない。行射中に人が通ったら命の保障はない。
そんな芝生もオフの時は小さい公園の様相を呈する。春にはプロレスをやったり花見をしたりと、わりと有効利用もされている(道着が芝だらけになるけれど)。しかしそれ以上の利用をした人物を以下で紹介したい。
私の代の主将をやった人物が高校の時分にはこの芝でゴルフをやったそうだ。しかも弓道部らしくボールやクラブなど使わず、上空に向かって矢を放ちそれを穴に向かって落下させるというプロゴルファー猿も真っ青なことをやったそうだ。一年の頃から「この人は違うなぁ」と思っていたがまさかこれほどまで大物だったとは思ってもみなかった。
もうひとり、これは前出「カケ無いよ事件」のB君の話。我が部では冬にスキー合宿を行うのだが、真面目(?)な彼は合宿前に雪が降り積もった矢道でスキーの練習をしたそうだ。こんな話顧問が聴いたら破門ものだろう。やつもやっぱりくせ者だ。
この前旅行に行って仕入れたネタを。やっぱり私の代に主将をやった人間の高校時代の話。
上にも書いたが矢道は芝生だけの広い空間である。これを無駄だと思ったのは何も私だけではない。
彼らはこの広い土地にスイカの種を蒔いたそうだ。このスイカは順調に育ちすくすくと弦を伸ばしていったそうだ。しかし、この高校の師範がこれにえらく立腹し、何と除草剤を散布なさった。おかげですいかどころか芝生まで全滅、立派なグリーンも一面砂漠と化したそうだ。
短期は損気、過ぎたるは何とやら、という良い見本だね。
ついでにもうひとつこれも旅行中に先輩に頂いたネタ。
ギリ粉とは上にも書いたが黄色い粉である。これは自分たちではなかなか作れるものではなく弓具屋で購入しなくてはならない。しかも弓具屋が近所にないため仙台にまでわざわざ買いに行かないと手に入らない、結構貴重なものである。
さてその貴重なギリ粉、何をトチ狂ったか某先輩3名が結託し、前出の先輩のタバコの中に詰め込んだのである。そうとは知らない先輩は美味しそうにギリ粉入りのタバコをプカーと吸ってしまった。気が付かなかったところを見ると大して味には変化がなかったのだろう。
さあ、これを怒ったのは一泊君、彼は当時備品担当、自分たちがわざわざ仙台まで行って買ってきたギリ粉を無駄に使われたのだ、そりゃ怒るのも無理はない。部日誌にその怒りのたけをぶつけていたのを今でもはっきり覚えている。(でも彼自身は忘れてしまったようだ)
ギリ粉に限らず何でも備品は大切に扱おう!イタズラを仕掛けるのならばもう少しかわいげのあるものにしよう!
弓道をかじった者ならばあこがれるのが扇の的と流鏑馬であろう。
弓具店に行くとちゃんと「扇」は売ってある。とはいえこれは飾りで決して的として使うものではない。弓道を始めて半年も経たない一年の夏、私は調子をこいてその禁を犯したのである。夏休みで練習がオフの日を狙い的前に天井の梁から紐で扇を吊したのである。これがまた風が吹いていい具合にゆらゆら揺れてちょっと那須与一気分?って感じぃ。
と、私が悦に浸っていたらあらぬ方向から矢が扇めがけて飛んでいった。後ろで練習していた小手指氏(後に我らの代の主将を務めることになる、弓道に対する情熱の人一倍熱い人間)がまさかの参加。さらに同じく道場にいた一泊君も含め三人で結局扇めがけて矢を打ち込んだのである。うーむ、馬鹿なことをしたモンだ。しかし、天網恢々疎にして漏らさず、弓の神様はちゃんといらっしゃるもので、運悪く当時の主将に見つかってぼそっと怒られた。いやー、悪いことは出来ないね。
さてさてここで出てきた小手指氏、彼にも色々逸話がある。中には後から尾ひれが付いたもの多数あるが。前出の矢道でスイカを育てた話もそうだが、今回も高校時代の話。彼は自転車を用意し(もう、察しの良い方ならば分かるよね)、弓を持って矢道を横切り流鏑馬を強引に行ったそうだ。凄いね!まさに暴挙でしょう。良くやったよ、天晴れ。ここまで来ると却って清々しいものがあるね。しかし、残念ながら上手くいかなかったそうだ。考えてみれば弓を射るときの基本である下半身が安定せず、しかも自転車を漕ぐ行為にも神経を注がねばならないので難しいかもしれない。
私も後5年若ければ・・・・。(何をだ?)
2003年5月、私と一泊君とべしとの三人は一泊君の故郷小田原で行われる弓道大会に参加。段位だけ見れば3段・3段・4段と割と凄いチームだがまさに張り子の虎状態である。練習不足・ブランクは否めず、とにかく無様な試合だけはしないことを誓い合ってこの大会に望んだ。
見所は練習不足をそれまでの経験(!)と技術でどれだけ補えるか、といったところか。
最初の立、
×○○○の3中で上出来すぎる滑り出し。おいおい、トップも狙えちゃうぞ!と欲に目がくらみ出す。とはいえ最後の4射目はギリギリの的中で実はこの頃からすでに矢に勢いが無く限界(エ!)に近づきつつあった。我ながらあまりにも情け無い。4本で限界とはさしずめ「ガラスの貴公子三杉君」といったところか。ちなみに一泊君は2中、べしは1中であった。
ほとんどインターバルもなく2立目の第一射、大三を取った時点で「ピシ!」と二の腕に痛みが走り、引き分けの時点で腕が振るえ出す。やばい!三杉君ピンチ!持病再発か?(違います)
結局会に入っても押さえが効かず二時の方向へ。第二射目もほぼ同じ方向へ。やばい、やばいぞ!これじゃあ入賞どころか情け無いことになってしまう。気合いだけが空回りし第三射もこれまた二時方向へ。うーん、3本皆同じ所へ行ってしまった。ま、これはこれで立派かな?・・・いやいや。的中しなければ意味がない。
最後、とりあえず「残」だけはしたくないので(因みに看的確認の時的中の場合には番号がついた丸い札を女子高生が的前で出すのだが「残」の場合、申し訳なさそうにこちらに向かってお辞儀をするのである。これはこれで残酷だ)、最後強引に引き分け、無理矢理会に持っていく。いわゆる「中てに行く」射だ。まさに技術の結晶的反則技。パンッと放たれた矢はぐるぐるとお尻を振りながら的に吸い込まれていった。まさにドライブシュート。結局
×××○、トータル8射4中ということで結果的に面目を保てたかな、といったところ。一泊君は結局8射2中、べしは8射3中であった。ま、やっぱり弓の神様は練習不足の我々には微笑んでくれなかったといったところであろうか。
余談。
この大会個人は30位まで商品が出る。が、始まりが10時で終わったのが18時近くであったため上位入賞者の中には帰ってしまう人もいる。この場合繰り上げ入賞が行われる。7中・6中の人は全て入賞資格があったが欠席者が多数のため結局5中にも「おこぼれ」が回ってきた。厳密な繰り上げではなく、受賞の仕方が特殊で欠席者の商品を30位以下に回すのである。で、結局最後小田原城内高校OGの女の子に4位の商品である矢筒が渡ることとなった。後、一本中たっていればあれは私のものだったのに。くそ、来年こそは!
余談2。
女性は弓道場内に更衣室があるのだが、何故か城内高校の女子高生がおいらの隣でいきなり着替えをはじめた。しかもおいら的に一番可愛いと思っていた女の子が、だ。一泊君がこの後のことについてなにか言いに来たが当然耳に入るわけもなく、顔は一泊君方を向きつつも全神経は女子高生の方に。っていうか今は一泊君が恨めしかった。女子の生着替えを間近で見られたことがおいらにとっての一番の賞品だったかもしれない。(2003/5/6)
![]()
![]() |
2003年11月前回の敗退に懲りずに、練習を全くせずに出場。 今回の立ち順も前回同様 大前 :うろたわ 中 :一泊君 御落 :べし であった。来てからエントリーすると3時間待ちなどというディズニーランドのアトラクションも真っ青な途方も無い待ち時間を強いられるので、我々が到着する一時間前に一泊君にエントリーしてもらった。おかげでそんなに待たずに弯くことができた。練習しないくせにこういったところに反省を生かしている。 因みに本番前に一応巻き藁で感覚を取り戻そうと弯く。が、2本で止めた。止めたというよりもこれ以上弯くと本番で弯けなくなる恐れがあり、止めざるを得なかったといったほうが正確な表現である。 結果は…やっぱり弓の神様は存在していたってところであろうか。練習しない者にはそれ相応の報いが待っていたのね。(逆を言えば8射3中は見事かな?) 来年は合宿をしてせめて5中を目指したいものである。 |
| 通称オダキュウ |