知っておきたい漆の知識

日当たりの良い所を好むウルシノキにとって、ジメッとした梅雨時のような菌の繁殖しやすい
条件下に傷を負ったなら致命傷である。そこで、ウルシノキは必死で樹液を出し、固め、我が身を守る。
これ故か漆が乾燥する条件は特殊で、約6度以上の温度、60%以上の湿度_が必要。
多湿の状況により漆はたちまち乾き、傷ついた_幹も強い塗膜で守られる。自然の力は不思議である。
また最近、漆の研究機関により、漆の抗菌性について検討した結果、黄色ブドウ球菌の発生を抑える効果があることが発表されている。
これほど豊かで多様な性質をもった天然素材は他にはない。野山に自生するこの効力のある木を、
我々の祖先が見逃すはずがない。縄文の昔より、漆は接着剤、塗料として使われていた。
そしてその恩恵を受けるのは人間だけではなかった。蜂の巣は根元を漆で固めているのだそうだ。
軒下に作るあの大きな巣が風にも揺れず、しっかり止まっているのを見ると納得がいく。
「ウルシノキ」は、日本以外では、中国、ベトナム、台湾、韓国、ミャンマーなど、東南アジア周辺に成育しており、
品質的には日本産が一番良いとされている。しかし、現在日本での漆消費量の約98%は中国の漆。
日本の漆に品質はもっとも近く、しかも価格が安価である。
日本の漆が採れる主な産地は、岩手と茨城。
いずれの地域も「漆
掻き」と呼ばれる漆液の採取作業の後継者不足といった深刻な状況が続いている。
漆掻きの仕事は、6〜9月、真夏の非常に暑い時期にあたるので重労働である。
しかも、 1本の木から漆がとれるのは、約200g 程度。1人の採取量は1シーズンで20 〜 100kgといわれ、
全体では年間で2tほど。対して中国では、 およそ2000t ほども採取されているようだ。
そのうち100t ほどが日本に輸入されている。過去に中国より漆が大量に輸入されたのは
戦時中のことで、その量は1300t ほどにもなった。
ほとんどが軍事需要で、大砲の砲弾の中に塗られていたり、錆止め塗料として使われていた。
戦後まもなく、漆の需要は極端に少なくなり、中国からの輸入がストップした時期を境に
、漆に代わるカシュー(合成樹脂塗料)が出回ることになる。
漆の種類
採取された樹液は
「荒味漆」と呼ばれ、20 〜 40 %の水分、木屑や虫などが混入し、
このままでは塗料にはならない。これらを濾過除去したものが「生漆」。
さらに、目的に応じ「ナヤシ」「クロメ」作業と呼ばれる精製加工がなされる。
それは長い年月によって培われた独自の勘や技をもって行なわれる。
常温でよく撹拌することを「ナヤシ」。漆成分が均一に分散され、粒子が細かくなる。
ナヤシの後、約38度前後で、加熱撹拌し、水分を飛ばすことを「クロメ」という。
「ナ ヤシ」「クロメ」の工程を 経て、水分を3 %ぐらいまで飛ばしたものが「透き漆」。
クリアではなく、飴色、琥珀色。漆には無色透明はなく 白い顔料を加えても純白にはならない。
赤や黄などの顔料を加えたものが「色漆」水酸化鉄で着色させたものが「黒漆」。
さらに目的に合わせ、艶のある漆、艶のない漆、金箔用の漆など、細かく分類され、
産地によって呼び方も違う。漆のメリット・デメリット漆には「乾燥が難しい、
紫外線に弱い、漆かぶれが起こる」などの性質がある。
今はそれをデメリットとし、かぶれない漆、紫外線に強い漆などの研究・開発ばかりが先行しているように思う。
たしかにかぶれるよりはかぶれない方が良いが、漆は長くつき合っていくうちに免疫がついてくるものだ
。むしろ、かぶれるからこそ4000年もの間、ウルシノキは野生に存在してきたのだと思う。
紫外線に弱いことも、天然素材であれば自然なことである。
けれども、漆塗りの部屋に住み、漆塗りの物に囲まれていると気持が安らぐというのは、
日本人古来の_生活に根ざしたものだからというだけでない。
実は、漆を紫外線吸収剤として考えると人間に害をなす紫外線を吸収している
という科学的な根拠があるものだったのである。天然素材のほとんどは直射日光を浴びると劣化していく。
これを欠点とばかりとらえないで特徴として考える方がよいだろう。
漆のメリットとしてあげられるのは化学塗料に含まれるような有害物質のない、自_然素材であることが第一。
樹液であるから、木との相性が良く、木材自身の呼吸をうまく調整してくれる、
木にとって防腐・防水・防汚のための最も良い保護剤なのである。
縄文時代の出土品に状態の良い漆製品などがあると、漆は数千年の耐久性をもつ、などと紹介されることがある。
耐久力だけならば、化学製品にもそれに匹敵するものはあるだろう。
漆は人間が生活するうえで十分な耐久性はあるが、やがては朽ちていくものだと思う。
けれども、いつかはちゃんと土に戻るものだ、ということが大切だと思っている。
建築における漆
私の家は、昭和31年、私の生まれた年に建てられた町屋造りの家で、内部の柱、天井階段、建具等の漆塗りは、
傷こそあれそのままの状態である。特に手入れもしていないが、階段は毎日の踏み重ねで今でも弁柄の深い赤茶色が浮き上がり、
独特の艶と味わいを残している。漆屋だから特別というわけではなく、北陸地方では20年ほど前まで、
一般の住宅にはすべてといっていいほど漆が塗られていた。それは和室の造作だけでなく、
トイレなどに至るまで。保護剤として機能性の高い漆は、台所や浴室などの水回りにも適しているのである。
かつて漆というものは 一般の生活に密着したものであり現代の生活にも、もっと生かせる素材のはずと思う。
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