| 11月19日 (木) |
夜中の電話 |
夜中、いつもならもう眠っている時間に携帯電話がなり、びっくりしながら電話機を手にとったら山崎努さんだった。今週の「週刊文春」の読書日記にも書かれていたように、山崎さんは現在、映画『宇宙戦艦ヤマト』の撮影に入っていて、来月中旬までは忙しいらしい。あれこれ秘密の話を10分ほど語っていただき、こちらは終始笑いっぱなしで聴いていた。最後は年内の再会を約束して電話を切る。 来年がぐっと近づく。 バージョンアップ。 |
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| 11月18日 (水) |
では、ご唱和を |
早速ですが、「もしもし亀よ亀さんよ」のメロディーでご唱和ください。
でぶでぶウータでぶウータ 三田界隈でおまえほど 肥った猫は見たことない 犬でもめったに見かけない〜♪ |
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| 11月17日 (火) |
労働と逃亡 |
逮捕された市橋容疑者はまだ食事をとってないらしいが、彼の逃亡中の行動が知られるにつれ思うのは、「働こうと思えば仕事はある」という事実だ。西成にしろどこにしろ、たとえその採用過程が怪しくとも、ある覚悟さえあれば働くことはできるのだ。彼の場合、死体遺棄の逃亡犯といういわば究極の状況下で生きながらえる覚悟である。極論すれば、「生きながらえる」覚悟があるなら人は働き、収入を得、どうにか暮らしていけるらしい。ここからさらに飛躍して逆説的に考えれば、おれたちは誰もが逃亡者であるとわかる。いったい何から? まず浮かんでくるのは、自身の死だろう。次にくるのは世間体あたりか。そして、逃亡に疲れたり嫌気がさした者は自ら死に近づき、逃亡を終わらせる。 市橋容疑者はまだ逃亡中。 1,836 |
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| 11月16日 (月) |
嫌な気分が残った |
| 10時半過ぎ、「あら喜」常連のNさんから携帯に電話。経営者ならではの気遣いにふれる。午後、「週刊朝日」の連載原稿。『リクルート事件・江副浩正の真実』(中央公論新社)を取り上げ、当時を回想しながら淡々と書く。取り調べの可視化をにらんだ取り調べの子細公開には価値があると思うが、予想以上に嫌な気分が残った。夜遅く、酔っぱらったA松から携帯に電話が入る。彼からの電話は10数年ぶりで、経営する会社の不調を素直に吐露。やんちゃが売り物だった彼の弱音を聞き、静かに感じ入る。その後、『哲学者たちの死に方』(サイモン・クリッチリー 杉本隆久/國領佳樹 訳 河出書房新社)を読了。 3,449 |
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| 11月15日 (日) |
ウータと散歩 |
朝、輪郭がくっきり見える富士山を玄関前から遠望していたら、ウータがドアの隙間から飛び出してきた。人間であれば還暦をすぎているウータ。この元気は珍しいと歓び、ならばと数年ぶりにウータと散歩に出かける。 マンションを出るところで中年の主婦に声をかけられ、公園では孫を連れた初老の女性から「あらまっ、猫ちゃんがお散歩!?」と感激される。最初は怯えていたウータも次第に落ち着き、自らあちこち散策。以前よりも活動的な態度に気をよくして滑り台に乗せてみたら、固まった。巨体に似合わぬか細い声で泣き出したところで帰途につくと、まるで子犬のごとくとことこ進み、すんなりとマンションへ戻った。でもまあ、家猫にとって散歩は強いストレスとに違いなく、少々反省。美しい富士山にちらっと目をやりながらウータを抱き、いつもの怠惰な空間に逃げこんだ。 1,711 |
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| 11月14日 (土) |
寒ブリの夜 |
19時過ぎ、旬の刺身が食べたくなって「あら喜」へ。まずは三つ葉としめじのおひたし、たらばガニの酢の物をつまみに生ビールを飲み、それから〆鯖と寒ブリをいただく。寒ブリ、絶品。つい不二才のロックが進んでしまい、カウンタ−に自然と集った常連さんたちと談笑。みんな仕事も立場もばらばらだけに気のおけない話がはずむのだ。 23時過ぎに帰宅、気がつけばソファで眠っていた。 8,820 |
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| 11月13日 (金) |
変種たち |
終日セルフ自宅軟禁。夜中、BS2でケラリーノ・サンドロヴィッチの新作『神様とその他の変種』を観る。3時間半にせまる長い作品ながら、厭きることがなかった。完成度はもとより、劇中での思索の展開自体を見せる手法が以前に増して練られ、ラスト、屋内に降る雨の場面では、観客がはっと我を省みるよう仕向けられていた。おれたちもまた豪雨の中にある。それはあらためて問題にすることではなく、その中で、それぞれが日常を送っている事実。 神にすがるより前に粛々と生きる変種たち。 サンドロヴィッチはおれたちをこのように描いた。お見事。 1,440 |
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| 11月12日 (木) |
麻布のガマ池 |
『タモリ倶楽部』のスピンアウト企画として楽しんでいる『ブラタモリ』(NHK)、今週は地元の三田・麻布編だった。三田二丁目のイタリア大使館が松平隠岐守の屋敷跡であることは知っていたが、その庭を観るのは初めて。堀部安兵衛ら赤穂浪士の一部が切腹した場所でもある。土地は記憶している、とタモリさんが語っていたが、大使館の手入れが行き届いていて、往時を偲ばせるにふさわしい景観だった。その後、つい一月前に散歩した二の橋脇の寺をタモリさんたちが抜けていく様子に共感し、彼らが元麻布のガマ池を探しだしたところで、我慢できずにこちらも古地図を取り出す。元は山崎主税助の屋敷にあった麻布伝説のガマ池は、現在の地図ではマンションの敷地内に残るのみ。そのマンションの名が「HOUSE GAMA-IKE」、すばらしい。タモリさんたちはオーナーの老女に案内され、外国人夫婦が暮らす3階のテラスから池を見おろした。予想外に広いガマ池に一同感激。おそらくは荷風もながめたに違いないその池は、マンションに囲まれながら古の風情をたしかに遺していた。 なお、麻布のガマ伝説については、麻布十番駅に近い十番稲荷神社の階段脇の看板で読むことができます。その看板の前には、山崎主税を大火災から守ったと云われるガマの像が置かれています。ってことで、みなさま、火の用心を。1,231 |
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| 11月11日 (水) |
男はバカです |
森繁久彌さんといえば、おれの中では映画、『夫婦善哉』がすぐに浮かんでくる。あの男のリアリティは長くまとわりついて、今も離れない。つまり、芯をくっているのだ。人が、男が、正しくは年をとった男の子が、普遍的に身につけてしまっている真実が、あの男から放出されている。身勝手、甘え、愛嬌、意気地、……一言でいえば愚かな感情の起伏に突き動かされている存在を、森繁さんはまるで実在者のように演じていた。何度観てもその演技は絶品で、それだけで織田作之助の原作を数倍も上回る表現物となっている。 三等重役や駅前社長シリーズも、そこに描かれているのは組織であたふたする老けた男の子たちの愚行であり、愛嬌だ。 とにかく。男はバカです。 だから、女の許容があってはじめて元気でいられるというやっかいさを、いわば宿痾のように抱えているのです。そんな根源をずっと直視すると、男は都合よく自殺や出家に憧れだします。浮かれぽんち、なのです。波に漂うピンポン球のようなもんです。もしもそれを制御され、ずいぶん時間が過ぎ、そしてそのことに慣れてしまった男は、女を求めなくなります。草食系とかいろいろ云われる昨今の若い男たちですが、おれは、彼らがいったいどのように『夫婦善哉』を観るのか、興味があります。とはいえ、たいした興味じゃないけど。 森繁さんの追悼記事やニュース番組にふれながら、おれはしみじみ「男の子の解放」について考えたのでした。(途中で”ですます”調に変わってしまったこと、お詫びします) 1,158 |
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| 11月10日 (火) |
あれこれ、あれこれ |
15時過ぎ、神保町の「古瀬戸」で理論社のY本さんと7ヶ月ぶりに会う。Y本さん、まだ鼻がぐずつくらしく、ちょっと声がくぐもっていた。雑談の後、次作の原稿を読んだ感想をあらためて聴き、細かい疑問点に答え、改善策を話す。あれこれ、あれこれ。作中人物たちはすでに懐かしい存在となっていて、それだけに客観的なアイデアが浮かんでくる。いつもならそのまま飲みにいってさらに想像をふくらますところながら、まだ完成稿が仕上がったわけではないのとY本さんの体調を慮って18時半、神保町を後にする。今月中に脱稿すると約束。気を整えて手を入れよう。 地下鉄で三田まで戻り、バスで三田5丁目に降り、歩いて「あら喜」。生ビールで喉を潤し、あら喜パパから政権交代後の役所(たとえば法務局)の劇的な態度変化について聞き、〆鯖、ロースハムの炙り、本ししゃも、鰻肝の串焼きを喰らいながら不二才のロックをくぴくぴ。途中、アルバイトのMさんから考古学に関する書籍について助言をもらい、Karenからは手製の表札を贈られる。「長薗」の2文字の隣に栗らしきものが掘られ、その上に「栗」の文字が添えられた角丸の木札。ありがたくいただく。 雨が降りだしたところで腰をあげ、コンビニに寄って帰宅。ソファで書見に戻るも、一文字も記憶に残せないまま即身成仏。 8,639 |
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| 11月9日 (月) |
さて、と起き上がる |
| 昨日に引き続き、資料読み。気分転換に「シムシティ2」をいじり、夜、ノート。休息が終わる。 2,684 |
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| 11月8日 (日) |
してから |
| 終日、書見。夜、散歩してから資料整理。 3,173 |
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| 11月7日 (土) |
猫を抱えて |
| 14時半、年に1度の3種ワクチン接種のためにウータを病院へつれていく。珍しくすんなりキャリーケースに収まったウータだが、その体重はあいかわらず重く、道の角々でケースを持つ手を左右交替させる始末。注射とともに左目の検診も受け、階下にあるペットショップでケースから出すと、ウータは2匹のショップ犬にからまれておじけ、肛門の臭いをかがれながらそこらをうろちょろ。それでもいつもと違う空間が楽しいらしく、徐々に快活に動き出す。しばらくそのまま見守り、店員さんと雑談してから帰途につく。晩秋らしい冷気を堪能しつつ、ウータの重みに手を痛めながら歩いた。 3,430 |
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| 11月6日 (金) |
記憶の接続点 |
| 予定していた打ち合わせが来週に延びたため、のんびりと自宅で過ごし、松井選手に関する新聞記事を読みあさる。この7年間の彼と、それを見続けた自分の時間が気ままにまじりあい、記憶の接続点にはまって意識の蛸壺で体育座り。気がつけば夜になっていた。いろいろあったもんな、この7年。 1,239 |
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| 11月5日 (木) |
松井万歳! |
9時50分、ワールドシリーズ第6戦を観るべくテレビの前へ。この「酔狂記」を長く読んでくださってる方はご存知のとおり、おれはずっと松井秀喜選手を応援してきた。その彼が念願のワールドチャンピオンに手をかけているのだから、他は何も手をつかない。異様な気が出ているのか、猫たちも寄ってこない。そんな構えで2回裏の松井選手の打席を見守っていると、球を迎える彼の体勢に泰然としたものを感じ、離れた場所からこちらを見ていたウータに向かって「秀喜がホームランを打つぞ」と叫ぶ。解説の伊東勤さんも「雰囲気がある」とつぶやき、その直後、松井選手はアッパーデッキに届く完璧なホームランを放った。拍手喝采。両の掌が痛みだすまで手を叩き、絶叫し、リビングをうろつき回り、デブ猫を追っかけてつかまえ万歳三唱。これでワールドシリーズ3本目のホームランとなり、「MVPだぜ!」と叫んでまた猫を担ぐ。ウータはほとほとうんざりし、床に降ろした途端、とぼとぼと廊下を歩き去る。次の3回裏、11時にカットを予約しているために着替えをしつつモニターを見ていると、2アウト満塁で松井選手がヒットを放ち、4−1となる。くわえていた歯ブラシが床に落ちたのも気にせず、拍手連発。これでヤンキースが勝てばMVP間違いなし、と確信して外出し、試合が終わる前に帰宅できることを念じつつ髪を切ってもらう。 13時40分、帰宅。試合は8回裏になっていた。ヤンキースのリードはさらにひろがっていて安心し、実況アナの声に耳をすます。すると間もなく、7得点のうち6点は松井選手の打点によるものと彼が語るではないか。……すげぇ。そして9回表、ついにヤンキースの優勝が決まって松井選手がNHKのインタビューを受け、感涙を我慢しているその顔を見て、こちらの涙がこぼれた。良かった、良かった。MVPに選ばれたことはニュース速報として流れ、幻の猫を抱えて再び万歳三唱。すると電話がなり、磐田市に暮らす実姉から興奮の声が届く。「松井はエライ! さすが!」と早口でまくしたてる彼女にただうなずき、二人で松井選手を絶賛。めでたいバカ姉弟はそれから15分ほど話をつづけ、気がつけば放送が終わっていた。 本音でいけばそのまま「ヤマト」にでも足を運んで祝杯をあげたかったが、16時半に大正大学に行かねばならず、もろもろの準備をして西巣鴨へ。来年からスタートする表現学部の立ち上げ説明会に出席し、18時からの懇親会にも顔を出す。おれと同じく客員教授となる元木・元「週刊現代」編集長、花田・元「週刊文春」編集長、松田哲夫・前筑摩書房専務やリクルート時代の先輩、倉田学さんらと旧交をあたため、終宴後、学科長の渡邊直樹さん、倉田さん、大島・元「SPA!」副編集長と一緒に近場の居酒屋へ流れ、松井選手の快挙を祝しつつ今後の奇策を話し合う。痛飲。 地下鉄に乗って最寄りの白金高輪駅まで帰り、コンビニで「ウコンの力」を2本買って帰宅。しかし、それを口にすることもなく「松井万歳!」と叫んで昏倒睡。11月5日はいい日でありました。 12,263 |
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| 11月4日 (水) |
初冬に熱帯 |
| 終日セルフ自宅軟禁。食事も自炊ですまし、「構造主義の父」レビィストロースを偲ぶ。 2,304 |
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| 11月3日 (火) |
芝大神宮から増上寺、そして焼肉 |
15時、レヴィストロース氏の訃報を気にしつつ、「週刊朝日」の隔週連載の原稿を仕上げて編集部に送信。それから冷えこむ外気に対応すべく着替えをすませ、タクシーで芝大神宮へ向かう。前から気になっていた「関東のお伊勢さん」に足を踏み入れ、横幅の広い階段を上ったところで、結婚式を終えたばかりの新郎新婦に遭遇。小声で祝福してお参りし、百度石や力石を見た後、御朱印をもらう。歌舞伎の『神明恵和合取組』のモデルとなった「め組の喧嘩」は、ここの境内で実際にあったもの。ちなみに、トラブルの原因となった半鐘は例大祭の期間中に限り観られるらしい。 参道を通って浜松町側に出てから増上寺までぷらぷら歩き、そのまま散策。いつ観ても、本堂とその右後ろにそびえる東京タワーのコントラストは異様で、美しい。これに近い構図は、麻布山善福寺と背後の超高層マンションの組み合わせあたりしか思いつかないが、これはこれで現代の東京の象徴となっている。そんな風景をたしかめて本堂の中に入り、パイプ椅子に座って若い僧侶の読経を聴きながら、正面の金色の仏像をながめつづける。堂内に響く木魚の音が快く、ふと我に返った時にはずいぶん時間がたっていた。 本堂近くの熊野神社にも参拝して敷地を抜け、寺猫とじゃれあったりしながらつらつら歩き、タイミングよくやってきたバスに駆けこんで魚濫坂下まで戻ったものの、風邪をひいてはいかんと思い立ってまたタクシーに乗り、麻布二の橋の「草の家」へ突入。いきなり芋焼酎のお湯割りを飲みながら五種類の焼肉セット、カキチョン、ネギサラダ、白菜キムチ、追加のロースを黙々と喰らい、体が暖まったところで生ビールをぐいっと空け、最後に白飯まで平らげた。寒風に吹かれながら歩いて帰宅しても体はじんじん熱く、あらためてニンニクの力に感じ入りつつ、ウータに息を吹きかけて逃げられた。 9,276 |
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| 11月2日 (月) |
キキの闇 |
今週の『週刊朝日』には、話題の結婚詐欺女の実名と写真が載っている。山口編集長の決断や良しである。しかし、おれにとっては、この号から始まった足立倫行さんの短期連載、「覆されるか『日本書記』」の方がうれしかった。昨今の研究成果をふまえたレポートが展開されていくと予想するが、初回の「神武天皇はどのように”創られた”のか」からして芯を食っている。『古事記』と『日本書紀』、いわゆる記紀が生まれる背景にひそむ皇室の歴史を知ることは、やはりこの国のあり方の根幹にかかわってくる。しかも、その取材と執筆を優れたノンフィクション作家である足立さんがされるのだから、期待は高まるばかり。この記事を読み、年初の計画どおり奈良への旅を実行すると決意。 まずは、纏向遺跡だな。 2,652 |
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| 11月1日 (日) |
日本賞雑感 |
世界各国の教育番組を対象とした「日本賞 JAPAN PRIZE」の表彰式を観る。『What's your news?』が大賞を受賞したが、印象に残ったのは、イギリス公開大学ワールドワイドが制作した『種の起源を実験する』。ダーウィンが自説を証明するために行った実験を再現する企画で、たしかに子どもたちでも取り組める内容となっていた。もしも今、自分が9歳だったら、きっといくつか真似をするだろうと確信。自然科学の入門経験というだけでなく、仮説と検証の重要性を体感できる素敵な内容だった。他には、上海に世界最高のサメ博物館を造り、運営していくシミュレーション・ゲーム、『シャーク・ワールド』。飼育と経営といったポイントを考えれば、これは大人だって楽しめる代物だ。ぜひ、コーエーあたりに国内販売を担ってもらいたい秀作である。 良い企画には顕彰が必要である。その点からも、小国スワジランドの受賞はよかった。アフリカで生まれる企画は、きっともっと面白くなる。 1,257 |
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| 10月31日 (土) |
土地の出自 |
| 今日は、森浩一さんの『古代史おさらい帖』(筑摩書房)を読む。古代の言葉、特に地名を表す言葉にふれると、それらの土地のイメージがありありと浮かんできて楽しい。土地の歴史、正確には「必然のようなもの」がそれらの地名に素直にこめられているからだろう。それは、いわば土地の出自である。だから、問答無用なのだ。 1,339 |
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| 10月30日 (金) |
ニュース、錯綜 |
| 心の友、松井秀喜の決勝ホームランに歓喜し、五代目円楽の訃報に黙し、森浩一さんの『僕と歩こう考古学の旅』(小学館)を少しずつ読み進めながらアイデア出し。しかし、今週はあれこれニュースが多い。まともにつきあっていたら、何も手につかなくなる。 2,736 |
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| 10月29日 (木) |
女医の白いバランス |
夕方、保険用の簡易検査を受けるために麻布十番にある某クリニックまで歩き、10分ほど彷徨った末にようやく目的のマンションを見つけて中に入る。ハロウィンのかぼちゃの飾りがかかるドアを開けると、真横に受付が。「こんにちは」と声をかけた先には、白衣を着たキャバクラ嬢が立っていた。んなバカな、とまじまじと向きあい、問われるまま訪問の理由を語り、玄関に置かれたベンチ風の長椅子に座る。隣にはラッパー風の兄(あん)ちゃんがいて、時おり、立派な背中を丸めては咳をしていた。おいおいマスクぐらいしろよな、と睨むと、兄ちゃん、さらに丸くなって虚ろな眼で呆然。兄ちゃんの先にある空間にはいろんな荷物が置かれ、衝立にはハロウィン用の帽子とマントが3人分かかっていた。そして、何よりおれを不安にさせたのは、このクリニックがワンルームをいろんな衝立で仕切っただけの代物だったこと。しかも、10分後に突然ドアを開けて入ってきたホステス風の女性が「トイレ貸して」とのたまい、迷わず受付の後ろを通ってトイレへ進んでいくではないか。なんじゃここは、と疑念が高まる中、20分後、受付キャバクラ嬢に名前を呼ばれ、彼女の先導でそのトイレへ。検尿があることはわかっていたからこれで驚きはしなかったが、案内されたトイレに併設されたユニットバスにゴルフバックを2個認め、言葉をなくしてしまった。 診察を受けた兄ちゃんが背中を丸めたまま去っていき、いよいよ自分の番になって衝立の向こうへ5mばかり進んで、おれは息をのんだ。剥げかけの金色の髪を後ろで束ねた、初老で、濃厚メイクで、肥満気味の女医さんがそこにいたのだが、彼女が座っていたのは椅子ではなく、バランスボールだった。白の。そこに立派な臀部を押しつけ、ちょっと険しい顔でこちらを迎えた彼女、淡々と業務をこなしていくものの、こちらに近づくたびにバランスを逸してまた座りなおすから落ち着かない。さらには彼女、傍らにある診察用のベッドに無造作に置かれた諸々の品から聴診器を取り上げ、こちらの胸と背中を調べながら安定しないボールの位置を気にしつづける始末。 2畳ぐらいしかない診察スペースでもっとも場所を占めているバランスボールの行方を見守るうちに検査は終わり、受付嬢に見送られて麻布十番を歩いて帰るうちに「女医の毒気を抜かねば」と思いたち、「あら喜」に寄ってアルコール消毒。地元に詳しい荒木家の人々によれば、彼女はその派手な暮らしぶりでよく目立っているとのこと。強烈だもんな……こうして思い出していると、白いバランスボールと彼女の白衣から透けてみえたピンクのシュミーズがが眼前にちらつき、また酒が欲しくなる。 7,101 |
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| 10月28日 (水) |
排尿障害の猫に思う |
ウータ、3月以来の排尿障害。”がっつ”が原因だろう。低温に設定された床暖房でどうにか安静を保ちつつも睡眠がとれず、とろとろとトイレに行って踏ん張ってみるも何も出ない。尿も、糞も。書見、メモを中断して様子を観察しながら夕方を迎え、じっくり風呂に入ってさっぱりし、髪が乾いたところでコンビニへ買い出しに出かけて戻ってみると、ウータが元気になっていた。すぐにトイレを覗いてみれば、ちろっと尿の跡が。小一時間後にはころっと糞まで排出し、いよいよ普段の愚猫に返って甘え出したと思ったら、すぐに”がっつ”をねだってくる。
「だめだ」 「アヒュ〜〜グルグルクルル」 「来年の誕生日までもうがっつ禁止」 「………………グル」 「水飲んで寝てろ」 「ギャル〜ゥ」 「今度つまったら、死ぬぞ」 「ヘギュヘギュヘギュ〜、………ガルルルルルr」
おれは毎日もう9年4ヶ月間、この猫と暮らしている。 幸福。 2,821 |
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| 10月27日 (火) |
考古学者が気になる |
終日、『シムシティ2』。合間に食事、そして、『マスターキートン』を読む。主人公の造形と抜群の画力にあらためて感心する。考古学者に関する本を大量に注文、ついでに気になる新刊の小説を5冊ばかり追加する。資料読みだけではちと悲しいからな。 夜は無理せず早々睡。小説の追いこみで身についた早起きサイクルは、なんとか維持したい。 1,313 |
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| 10月26日 (月) |
はたして、それまで |
午後、鳩山首相の所信演説を聴く。理念、体感を優先した内容。具体性にははっきり欠けていたが、政権交代を果たしたリーダーとしてはこれで良かったと思う。そこで思い出したのが、麻生前首相の去年の所信演説。野党ばりに民主党に質問を浴びせていた。末期を実感し、総選挙が近いことを認めていたのだろう、所信を掲げる前に敵に小石を投げつけるといった、実に痛々しいパフォーマンスだった。 変化が現実化するのは早くても2年後からだと予想しているのだが、はたして、おれたちはそれまで度量豊かに待てるだろうか。 1,192 |
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| 10月25日 (日) |
リセットの方法 |
| 「遺書、拝読」のゲラ戻しの他にはまともな仕事もせず、惚けるべくして惚ける。おそらくリセットして次の作品へいくつもりなのだろう、と自己分析。こういう時にはゲームがいいと判断し、長らく買い置きしてあったDS版『シムシティ2』をやる。古代と中世期の町づくりを終えたところで飽き、『虫眼とアニ眼』(養老孟司 宮崎駿 新潮文庫)を読みながら遠浅睡。 1,249 |
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| 10月24日 (土) |
胸焼けしながら |
5時、起床。ぼんやり書見後、8時過ぎに近くのカフェで朝食。肌寒く、そろそろオープンカフェでのんびりするのも厳しくなってきた。温かいカフェラテで暖をとり、四の橋界隈を散歩して一度帰宅し、無用となった本30冊余りを処分。それから白金ブックセンターで資料用に『マスターキートン』を探すも見当たらず、『夜中に犬に起こった奇妙な事件』(マーク・ハットン 小尾美佐/訳 早川書房)を求め、魚濫坂商店街で新しい急須と茶、そして「銀扇」の栗まんじゅうと胡桃まんじゅうを買って帰る。 熱い茶と栗まんじゅうで胸焼けしながらテレビで楽天・野村監督の至福の胴上げ、養老宮崎対談、中日ドラゴンズの無惨な敗戦を連続してながめ、22時前、ウータより先に仰天睡。 7,794 |
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| 10月23日 (金) |
がっつする? |
花がつおは、猫の間で「がっつ」と呼ばれている。 人間側からの使用例に「がっつする?」というものがあり、翻訳すれば「花がつお、食べるか?」となる。 「がっつする?」 「……カゥ」 「がっつする?」 「カゥカゥ」 にゃあ、とも、みゃあ、とも啼けない我が家の猫たちは、牛の真似をしながら腰をあげ、一足先にキッチンへ向かい、冷蔵庫の前でいざと身構える。冷蔵庫の上には花がつおの袋があることを彼らは知っている。声をかけて誘った責任から、こちらはおもむろに袋に手を伸ばして封を開け、いまだ柔かな曲線を保っている花がつおをつまんで宙に投げる。舞い上がり、そして落下していく花がつお。弱い左目のせいか肥満の影響か、ウータは手を伸ばした直後に濡れた鼻で食い止め、身軽なオランは両の前足で見事にキャッチする。まるで真剣白羽どり。 ちょっとしたにぎわいがキッチンで繰りひろげられ、猫たちが五、六片の花がつおを食したところで終了。猫たちはもっとよこせとばかりに全開の目でこちらを見上げるが、食べ過ぎれば尿路結石になりかねないから問答無用で袋を片づける。 ただし、年に二度、それぞれの誕生日の夜だけは「がっつ祭」が開かれ、猫たちがもういいとキッチンを去るまで花がつおが舞い続ける。 2,125 |
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| 10月22日 (木) |
神楽坂から銀座に流れれば |
4時、起床。ほどなく「遺書、拝読」第72回の原稿にとりかかり、13時半、脱稿。推敲して送信。ふらふらになってカレーを食べ、仮眠。起きてシャワーを浴び、しばらく書見の後、外出。地下鉄で飯田橋まで行き、神楽坂の「文楽」で角川書店のS本さんと会食。文庫シリーズのアイデアを話題に創作について活発に議論する。方向性、ほぼ見える。それにしてもS本さん、酒強し。しかも毎朝、フルマラソンの練習に走っているとのこと。素直に感心して飯田橋の駅前で別れ、一人、タクシーで銀座へ流れる。 「まり花」へ顔を出してみると、旧知のN島くんがいて再会を祝し、彼といっしょにいた「笑っていいとも!」のO川プロデューサーを紹介される。それからはO川さんと白ワインを飲みながら互いに敬愛するタモリさんについてあれこれ話し、テレビの現状を嘆き、赤塚不二夫さんを偲び、N島くんを見送ってからも話をつづけ、ボトルを2本空けたところで「Bar Colette」に移る。しかし、この時点でもうぐてんぐてんの二人、その後はまとまな会話をできないままカウンターでふらふらに揺れ、2時半、タクシーに乗りこむO川さんと握手して別れる。晩秋の夜気が気持ちよく、銀座と新橋をあきるまで徘徊してからタクシーをひろって帰宅。3時半、久しぶりの泥酔睡。 9,571 |
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| 10月21日 (水) |
メモ、2種類 |
| 4時、起床。どかっと届いていた雑誌類を夜が明けるまで読み、その後、庄野潤三作品について熟考し、メモをとる。さらに初期の代表作である『静物』(1960)を吟味し、「遺書、拝読」にとりかかるもしっくりせず、中断。『Nの肖像 統一教会で過ごした日々の記憶』(仲正昌樹 双風舎)を読み、別のメモを残す。夜、中日ドラゴンズの快勝をテレビ観戦しながら酢豚で食事をとって21時半、昏倒睡。 3,672 |
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| 10月20日 (火) |
黒船は曲がっていた |
本日もウータとともに未明に起きだし、連絡業務をこなして調べものをしていると夜が空けた。この時点ですでに20℃を超えたとテレビのニュースが伝え、ベランダに出てみたら朝顔が一輪、咲いていた。たぶん、これが今年最後の朝顔になるだろう。 14時過ぎ、「週刊朝日」の原稿を脱稿し、推敲、送信。それから「遺書、拝読」用に庄野潤三さんの年譜を読み、そして、未読だった日曜日の新聞を開いて加藤和彦さんの死をあらためて偲ぶ。あんなかっこいい人はいないな、と長く思ってきた。「センスのよさ」とはああいう人のためにある言葉で、実際には、めったに使う必要がない。加藤さんの場合、最期までその「センスのよさ」が徹底されたようにおれは感じる。その意味では、三島由紀夫に通じているのかもしれない。数紙に載った弔文を読んでみたが、北山修さんの文章がもっともよかった。理解者の感慨がそこにあって、頬がゆるんだ。 なぜか2枚持っているサディスティック・ミカ・バンドの『黒船』のアルバム(LP)を数年ぶりに手にとってみたら、1枚はくにゃっと曲がっていた。 2,500 |
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| 10月19日 (月) |
原稿206枚、ようやく手を離れる |
未明に起き出し、第二稿。9時20分にすべて終え、あらためてプリントアウトし、宅急便で理論社のY本さんに送る。206枚。到着は明朝と確認して部屋にもどり、放心。頭に言葉がなく、漫然と家の外内をながめたまま横臥する。 夜、中日ドラゴンズの勝利を見届けるなりまたも昏倒睡。 2,949 |
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| 10月18日 (日) |
恐るべし家電芸人 |
7時半から第二稿、昼食もとらずに17時までやって切り上げ、有楽町のビックカメラへ。懸案のファックス付き電話と加湿機能付き空気清浄器をぱっぱと購入。それにしても、「アメトーク」(テレビ朝日系)で紹介された商品にはそれとわかるシールがついていて笑ってしまった。恐るべし家電芸人の宣伝力。 その後、持ち帰る新しい電話が入った紙袋を持って駅の反対側へ向かい、イトシアの地下にある猿之助縁の「うまや」に入る。生ビールを飲み、空腹をなだめるべく豚バラ串焼き、鶏飯、もつ鍋を喰らって汗をかく。 帰宅後は疲れとほろ酔いでふらふらになり、どうにか中日ドラゴンズの辛勝を見届けてから豪快な昏倒睡。なんだか忙しい日々が続いている。 7,695 |
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| 10月17日 (土) |
猫の一日 |
| ここ10日余りの追い込みの疲れがどっと出たらしく、いくら寝ても体が起き出さない。自分が思っていた以上に入れこんでいたのだろう。無理をせず、素直に寝て起きて食って寝てをくりかえす。猫たちも呆れる猫の一日となった。2,940 |
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| 10月16日 (金) |
半睡の体 |
3時過ぎに起床し、3時半から推敲。その後は食事休憩をはさみながら14時まで作業をつづけ、どうにか最後まで。それからシャワーを浴びて銀行へ行き、都ホテルへ。15時より、ほぼ半年ぶりに顔をあわせた偕成社のS川さんとラウンジで打ち合わせ。疲れが残っているため頭いま一つ冴えず、コーヒーを何杯も飲んで対話し、考え、また対話する。が、まだスパっとはひらめかない。小石川植物園に行くのが先決か、と思う。 18時前にホテルを出て白金高輪駅まで二人で歩き、S川さんを見送ってそのまま麻布三の橋へ。1ヶ月ぶりに「あら喜」のカウンターに向かい、不義理をわびつつ生ビールをぐびっといただく。そして鰻の肝焼き、〆鯖、パセリの焼き味噌添え、いたわさ、銀ダラをつまみながら不二才のロックを飲み、常連のN味さんと談笑。その後はあら喜パパと戒名話で盛り上がり、22時半、ふらふらになって帰宅し、半睡の体でベッドへ倒れこむ。 9,025 |
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| 10月15日 (木) |
前半部 |
| 昼間はだらっと体を休め、夕方から脱稿した原稿の読み直しと推敲に入る。20時半までやり、久しぶりに前半部を振り返ってその挙動に笑ってしまう。3章で中断して遅い夕食をとり、眠気に襲われて早々睡。 2,248 |
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| 10月14日 (水) |
豪雨を横目に脱稿 |
終日、創作。20時過ぎ、突然の豪雨を横目についに脱稿。203枚。 いつもなら恒例の一人打ち上げに「あら喜」へ向かうのだが、半端じゃない雨に気をそがれ、とりあえずノン・アルコールのビールで祝杯をあげる。その一方で推敲のためにプリントアウトをほどこし、あらためてS田さんにいただいていた泡盛、「泡波」のロックをぐびっと飲む。それだけで疲れがどっと出てきて眠くなり、ソファで横臥したまま庄野潤三さんの作品を読む。 秋雷、いい記念になりました。 1,733 |
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| 10月13日 (火) |
セルフ |
| 終日、セルフ自宅軟禁。こんな暢気な生活だから、日々セルフっちゃあセルフなんだけど。 2,359 |
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| 10月12日 (月) |
新潟の推奨 |
朝、本日が体育の日と知って驚きつつ数日ぶりにメールをチェックし、T田さんからのメールで、『あたらしい図鑑』が新潟県の平成21年度の推奨図書に選ばれたことを知る。名古屋市に続く推奨だが、中学生の男子が一人でも多く読んでくれたら、おれは嬉しい。 小説、最終章の前半を終え、いよいよ惜別の情が湧きあがってきた。 2820 |
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| 10月11日 (日) |
怖い。素晴らしい。 |
未明から9時まで創作。それからやっと届いた『1968』(小熊英二 新曜社)を手にとる。上下巻で原稿用紙5000枚に及ぶ大著だけに、まえがきを読むだけでもずいぶん時間がかかる。ようやく第一章にたどりついたところで着替え、バスに乗って恵比寿ガーデンプレイスへ。 三越で文具、長袖Tシャツを買ってビアガーデンで昼食。ヱビスビールの生を中ジョッキでくぴくぴ飲みながらビアソーセージやステーキや生野菜をつまみ、腹を膨らませて東京都写真美術館へ移動。稲越功一さんの「心の眼」展と北島敬三さんの「コザ/東京/ニューヨーク/東欧/ソ連」展を観る。 今年2月に急逝された稲越さんとは何度か仕事もしたが、デザイナー出身らしい構図のあり方をあらためて眺め、そして偲んだ。北島さんは森山大道さんのお弟子さんらしい作品が並んでいたが、冷戦時代に撮られた東欧の写真群には、彼ならではのいびつさが出ていて足を止められた。何か得体の知れないものに長らく圧せられてきた市民の顔は、かくも倚なる表情に覆われてしまうのか……、怖い。素晴らしい。 徒歩とバスで帰宅した後は、溜っていた諸々の切り抜きを整理し、仮眠。夜中、最終章を少しだけ書き進める。 10,851 |
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| 10月10日 (土) |
大義の手本 |
創作、ついに最終章へ。気分がしんみりしてしかたがない。 さて、広島と長崎が共同で2020年のオリンピック開催に立候補するらしい。東京が落選した直後だけにあらためて「大義」が際立ち、素直に実現したらいいなと思う。両市は平和の祭典にもっともふさわしい土地であり、そこに世界から人々が訪れることは、(昨日の続きになるが)核廃絶の具体的で圧倒的な意義を伝達していく上でも素晴らしい。ここはぜひ、政府にも早々に支援表明をしてもらいたいところだ。 5854 |
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| 10月9日 (金) |
ダイナマイトと核爆弾 |
終日、創作。 ところでオバマ大統領のノーベル平和賞受賞、……期待をこめての選出とは思うが、まいっちゃうな。核廃絶にむけて取り組むと語っただけで”唯一の核爆弾使用国の責任者”が選ばれるのだから、結局、世界のリーダーとしてアメリカを再認定する行為だよな、これは。と同時に、ブッシュ前大統領への批判もあるのだろう。 ノーベル賞の選考レベルがどういったものか知らない。興味もない。特に平和賞については、佐藤栄作元首相が受賞した時から関心すら失った。いま問題になっている核持ち込みに関する密約の一件をみてもわかるように、その受賞理由は当時から限りなくグレーで、国民から歓声があがることもなかったと記憶する。 ダイナマイトを発明して巨万の富を得る一方で、その発明品が戦場で使われ多くの死傷者が出る現実を憂いたノーベル。彼の名を冠したノーベル賞は、まるで原爆作製に関わった後に反核運動をはじめた科学者たちのようだ。そんな視座からながめれば、平和賞はノーベル賞が根源的にかかえる矛盾の象徴なのかもしれない。 こうなったら理念の具体化にむけ、オバマ大統領にはせめて来月の訪日の際、広島と長崎に足を運んでもらいたい。そして、ぜひあの資料館を観てもらい、得意の演説で世界へ喧伝してほしいと願う。 1649 |
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| 10月8日 (木) |
未明の暴風雨 |
未明から机に向かい、ふと窓外をながめてその風雨の激しさに目を奪われて立ち上がり、慎重にベランダに出てみて驚く。2m余に伸びている山モミジが倒れている。まだ花をつけている朝顔も転がっている。玄関側に回って眼下の古川に目をこらすと、水は満々。都心の危険地域に指定されている古川橋地区だけに、その水位に緊張する。……どこかときめいている自分が、いる。そんな自覚を抱きつつ机に戻り、小説の読み直しを続けて朝を迎え、いきなり射してきた陽光に困惑しながら母に電話を入れる。 大府市は、台風が上陸した知多半島の付け根にあって名古屋市に隣接している。伊勢湾には面していないものの低地にかわりなく、伊勢湾台風時にはやはり大きな被害を出したらしい。 「どうだった?」 「もう、窓にあたる雨と風で目が覚めたわ」 「すごかったか?」 「あんな風は初めてだわ」 台風銀座と呼ばれて久しい鹿児島で生まれ育った母が驚く強風。それだけで今回の台風の猛威が伝わってきた。 昨晩の残り物で朝食を用意してニュースをながめ、それからMLBディビジョン・シリーズを観戦。松井秀喜選手の2ランホームランに歓声をあげ、ウータの石頭をなでまわす。そして、快勝のエンディングを見届けてから仕事にもどった。夜明けは近い。 4046 |
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| 10月7日 (水) |
母と孫 |
| 昼過ぎ、台風18号の進路予定図を見て愛知県大府市に住む母に電話を入れる。すでに十分な食材を買い込み、後は雨戸のない窓をどうするかと語る母の頼もしさに安心。衰弱していく父の面倒を看ながらの日々は相変わらず難儀そうだが、孫の話になると声が弾んでいた。その孫、つまりおれから見れば姪にあたる彼女も、今月で20歳になる。しばし呆然と天井を見上げ、じわっと祝福の思いが湧きあがる。できれば会って祝したいと思う。 1769 |
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| 10月6日 (火) |
壊れても壊れても |
| 連載原稿のゲラ校正を終え、さあ返送しようと固定電話のファックス機能を使ったらエラーとなった。やり直し、またエラー。どういうこった頼むぜベイビーえいっ! そんな作業を9回繰り返し、うんざりして諦め、結局、電話で訂正連絡。ついには電話まで途切れがちになる。三田に暮らしはじめて11年になるが、巨猫の遊び場のひとつとなっているためか、これで3台目の電話が必要となった。それでも、排出してくる紙をじっと見守っているウータの姿は愛くるしく、音声サービスにいちいち返事をするその声は可笑しい。だから、壊れても壊れても、やっぱり固定電話をソコに置いておこうと迷わず思う。 1170 |
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| 10月5日 (月) |
ダッコウとセンノウ |
| 午前中、「週刊朝日」の原稿。昼、脱稿して送信。午後、創作の詰めを思案して過ごし、夕、前夜のちゃんぽんで残った具材を使ってチャーハンを作る。腹一杯になって仮眠。夜、書見。洗脳システムについて考える。 3139 |
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| 10月4日 (日) |
そのベンチで |
中川昭一氏の急死に驚き、目が醒める。 夕方、バスに乗って氏神の春日神社に参り、帰途、慶応大学の本校キャンパスを散歩する。ここの建造物はやはり美しく、何度も足を止めてながめ、諭吉翁終焉の地にあるベンチでしばらく休息。今度、本を読みに足を運んでみようと思う。 |
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| 10月3日 (土) |
人類全体の鏡 |
ベランダの縁台で座禅を組み、仲秋の月を仰ぎ見る。雲の動きが早く、少し目を離した隙に隠れてしまうことも多く、その際には空は黒一色となっていた。それだけに再び現れた月は美しく、足もとに猫たちがいることにも気づかずに見蕩れてしまった。 月はやっぱり行くものではないよな。仰いで想うもので、その意味では人類全体の鏡のような存在だと思う。 |
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| 10月2日 (金) |
東京タワーを綺麗だった |
あまりに外出していなかったので、夜は「どんどん2号店」で食事をとる。同店の名物、牛スジ煮込み、鳥皮ポン酢を中心に焼き鳥・豚、キャベツの味噌和えを喰らい、生ビールと「克」のロックを飲んで帰宅し、夜半、IOC委員会の開催地決定の過程をテレビで見る。 1回目の投票でシカゴが落ちたのは(マドリードか東京が落ちると思っていたので)意外だったが、リオディジャネイロに落ち着いた点は予想どおり。”南米初”の大義を超える理念が他にはない以上、ロンドンが2012年に選ばれたことを根拠に"環境重視型"を掲げた東京をはじめ、他の都市が敗れるのは必然だったと思う。その点を察しているから都民も国民も積極的な支持をしなかったし、石原知事の独走に戸惑いと疑念を抱いたのだろう。サラマンチ前IOC会長の「私が生きているうちに」といった哀願ではないが、どこか個人的な思惑が先行している感は最後までぬぐえなかった。 五色に規則的に彩られた東京タワーを眺めながら快い夜風にしばらく吹かれ、長袖のTシャツを重ね着してから納得睡。 |
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| 10月1日 (木) |
現況にふさわしい眺め |
| 朝顔はついに花をつけなくなったが、山モミジはまだ紅葉する気配もない。そんな10月朔日。現況にふさわしいベランダの眺め。表面張力で川面を漂う1円玉のような日々、だ。 |
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| 9月24日 (木) |
ある〈意味〉 |
本日の新聞朝刊に掲載された宝島社の全30段広告、「女性だけ、新しい種へ。」が面白かった。 右15段で、〈このままいくと、女性と男性は、どんどん別の「種」に分かれていくのではないか〉という仮説を打ち出しつつ、日本人女性の独自の変化を支援表明し、〈発行部数No.1へ。宝島社の女性誌〉と訴求。左15段には、安野モヨコの全面カラーのイラストレーション(いかにも今風の若い女性)が飾られていた。 まあ女性が変化すれば、相対的に男性も変わっていくだけの話なのだが、おれが共感したのはそんな男女の変質論議ではなく、ボディ・コピーの最後にあった次の一節。
世界で、ある意味、もっとも平和で、もっとも進化した、この不思議な国で。
この客観は的を射ていると思う。ポイントは〈ある意味〉なるエクスキューズ。いったいそれがどんな〈意味〉なのか。この〈意味〉の解釈は、そのまま多くの表現者のモチベーションとなっているのではないか。大事小事にかかわらず、この国に生きている故に感じる、見える、奇妙な〈意味〉を把握する工夫。その方法としての表現。文学も音楽も美術も演劇も、……あらゆる表現がこの〈意味〉と対峙している。とはいえ、それはいつの時代もそうだったのだが、世界的に見た日本の奇妙な(アニメやkawaiiに代表される)存在感が際立ってきた昨今、その作業はかつてないほどに期待されているのではないか。村上春樹さんや野田秀樹さんなどがもうずいぶん前からその立場で創作にあたっているのは明白で、ここ数年の作品群は、この日本が知らずのうちに辿りついてしまった状況を検証、素材として活用している。 ある〈意味〉に接近するには近・現代史の見直しが不可欠だから、おれはほそぼそとそれらの書籍にあたり、考え、我が身や親族の個人史にも探りをいれながら構想を練っている。世界で、もっとも平和で、もっとも進化した、この不思議な国の〈意味〉を浮上させるために。 |
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| 9月23日 (水) |
いざ、出世の石段祭へ |
ベッドから起きて5分後、7時から机に向かって「遺書、拝読」を書き続け、12時半、脱稿。推敲してN西さんに送信。そのまま「週刊朝日」の”愛される理由”に移り、約束どおり15時に脱稿。推敲、送信。頭カラカラ。言葉の素が失せ、着替えて外出。タクシーで愛宕神社に向かい、16時に始まった「出世の石段祭」を見学する。 23区内で最も高い愛宕山(標高26m)から傾斜のきつい男坂86段を下ってくる神輿、それを担ぐ男衆の威勢の良さに手を叩きつづけ、祭ならではの高揚感にちょっぴり浸る。二つの神輿が無事下りきった後、男坂をどうにか上って山頂を訪ね、手水をすませて即生ビールを飲み、味噌田楽と一本きゅうりを喰らう。そして、あらためて手水を使い、参拝。御朱印をいただき、名物だるまくじを買い、神社に隣接するNHK博物館へ。高柳式テレビの復元模型にうなり、藤山一郎の部屋に戸惑い、放送体験スタジオで遊び、「終戦の詔勅」を聴き、ラジオ時代を回想する杉村春子の声に驚いて外に出る。ようやく暮れはじめた空の下、慎重に男坂を下ってタクシーに乗り、田町の駅前に移動。「ヤマト」で夕食をとるつもりだったが、お休みだった。そこで駅ビルの地下に行き、初めての蕎麦屋でまずはそば湯割りの芋焼酎を飲み、はもの板わさと冷やしトマトをつまみ、それからざると天ぷらの盛り合わせを注文。二杯目の芋焼酎をちびちびやりながら愛宕神社の資料を読み返し、がっつりそばと天ぷらを喰らってバスで帰る。 外出前62.4kgだった体重が、帰宅後に計ってみると63.6kgになっていた。 ああ、いつからおれは、こんなに太りやすくなっちまったんだろう………。 なす術もなく親鸞の言葉を朗読し、5分後には膨満睡。ナンマンダム、ナンマンダム。 |
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| 9月22日 (火) |
知らなんだ |
| シルバーウィークなんだって? 知らなんだ。「遺書、拝読」の書き出しを何度も練っているうちに日が暮れちまった。 |
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| 9月21日 (月) |
同じ戦慄 |
午前から昼過ぎまで創作。ひたひたとラストの光景がせまってきている。その後は散歩に出て、いくつもの寺に参りながら三田綱町を巡り、麻布十番の佐賀鍋島藩縁の寺で墓地探索。五輪の塔が立ち並ぶ先に巨大なマンションがそびえる異様な光景にしばし見とれる。増上寺本堂の背後に伸びる東京タワーを見上げたときと同じ戦慄を覚える。 暗闇坂を下って十番商店街にもどり、昼食をとっていなかったことを思い出してペペロンチーノを喰らい、東京ラスクを買いこんで家にもどる。それから「遺書、拝読」第71回の構成メモを記し、『テレビは見てはいけない』(苫米地英人 PHP新書)を読みながらテレビを見る。 |
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| 9月20日 (日) |
関西弁の『歎異抄』 |
漫然無為。山モミジが影をおとす縁台に座って、川村湊さんの訳による関西弁の『歎異抄』(光文社古典新訳文庫)を読む。
「ナンマンダブ」の念仏にまさる善えことなんぞ、ほかにあらへんのや。悪いことかて、恐るるに足らずや。アミダはんの本願を邪魔する以上の悪なんか、ほかにあるはずないんやから。
……これ、おもろい。 |
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| 9月19日 (土) |
悪い予感 |
| 悪い予感にしたがい、世田谷文学館で始まった「久世光彦展」のオープニング、およびパーティーを欠席、ひたすら自宅で過ごす。朋子さん、ごめんなさい。 |
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| 9月18日 (金) |
時空を超えるナビゲーター |
午前、書見。午後、創作。夕方、空腹で机から離れる。夜、「タモリ倶楽部」。江戸城の外堀跡を訪ねる企画につられ、『もち歩き 江戸東京散歩』(人文社)をひもとく。切絵図と現代図を併載したこの本は、いつ見ても楽しい。 京都や奈良ほどではないにしろ、かつての江戸地域にはそこかしこに歴史の証拠物が存在しているから、今の基層となった過去に直接ふれることができる。それは、ちょっとした化石との出会いに似ている。隔たる時間は恐竜や三葉虫にくらべれば圧倒的に短いが、それらを目にした途端、想像力がはじけだす。時空を超える愉楽。そのナビゲーターである古地図の人気が高いのもうなずける。1時間ほど切絵図をながめ、内幸町あたりを歩いている武士の気分のままウータと抱擁睡。 |
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| 9月17日 (木) |
酒井被告たちについて考えてはみたけれど |
夕方、酒井法子被告に歌ってもらった「すすめ! はっくしょんベイビー」を口ずさみながら彼女の会見を聞く。傍らには、歌にも絵本にも登場するウータとオランが寝そべっている。数分後、テレビを消す。 見事なPRショーでありました。これで酒井被告の芸能界復帰は約束されたようなものだと実感した。個人的には重要な女優と感じたことがないだけに、復帰しようがボランティアに勤しもうが、正直どうでもいい。あえて興味が残るとすれば、彼女の息子の10年後。両親がドラッグで逮捕され、国内どころか東アジアまでその事実が知れわたった現実は、思春期を経た後、まちがいなく彼の超えるべき大きな壁となる。両親が、特に母親までが手を染め、世間から非難を浴びたドラッグ体験は、彼にすれば最大の関心事と化していく。それは彼の自我にとって解明すべき対象として君臨し、その実態を自ら体験してみたいと彼が考えても何の不思議はない。むしろ自然だ。だから、おそらく彼は近づいてしまうだろうと想像する。むろん、その行為は法的には問題だが、一人の人間としては理解できる。つまり、母親のドラッグ体験は、すでに彼の中に芽吹いた壁であり、宿痾として成長していくまっとうな謎なのだ。 ところで、酒井被告の弟。「姉とともに薬をやめて更正したい」と福岡地裁で語ったらしいが、これが本当なら、苦笑するしかない。こんな依存性に満ちた幼児のような発言をしているようでは、またドラッグに手を出すことになるだろう。 因果応報を断ち切るには、科学が必要となる。幼児期に親たちの勝手にさらされ続けた酒井姉弟の場合、医学(薬物後遺症の治療とセラピー)の力が不可欠だ。だが、高相某の場合は、それだけでは無理だろう。せいぜい父親の徹底した監視下で暮らすしか、もはや手だてはないように思う。そして、親がいなくなって身上つぶしていく後半生をすごす道筋が、彼の応報なのだと予見する。……って書いてはみたけど、実際、彼がどうなろうが、あの夫婦がどうなろうが、やっぱりどうでもいい。もう、彼女たちについて考えることは止めることにする。 |
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| 9月16日 (水) |
静かに眠る |
テレビで鳩山民主党代表の首班指名を見届け、福田衣里子さんのインタビュー対応を微笑ましくながめ、日常にもどる。しかし、16時には外出し、いつものカフェで保険外交レディ二人組のプレゼンを受け、前日に亡くなった叔母の若かりし頃の顔を思い浮かべる。もう40年以上前の記憶だからどこまで正確な輪郭線を引いているのかはあやしいが、それ故に、彼女の特徴が際立っているのかもしれない。 世事のにぎわいとは対照的に静かな一日を送り、眠るべくして眠ることができた。 |
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| 9月15日 (火) |
オモロイ今後で酔狂夜 |
17時まで創作。終盤へと向かう登場人物たちへの惜別の思いがじわじわとわきはじめる。とはいえ、まだ2章も残っているのだが。 18時、麻布三の橋で渡邊直樹さんと待ち合わせ、「あら喜」へ。座敷で会食、痛飲しながらあれこれオモロイ今後について意見を交わし、アイデアを出しあい、その勢いのまま銀座へ移動。久しぶりに「まり花」に顔を出し、赤ワインを一杯呑んだところで中村誠一さんの息子さんがやっているバーに移る。その間もずっと話を続け、23時半、タクシーで帰宅される渡邊さんを見送り、よせばいいのに一人「まり花」へ戻る。そして、すごい読書家の某社社長と文学談に興じたり、Y子ママといつもどうりの身辺話をして3時、ふらふらの体で帰途につく。 帰宅して留守電に入っていた母の声を聴き、岡崎の伯母さんが亡くなったと知る。事前にもう長くないと聞いていたので冷静に受け止め、幼児期のかすかな記憶を思い出しつつ酔狂睡。 |
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| 9月14日 (月) |
保険の営業 |
14時、S生命保険の担当者とその上司(ともに妙齢の女性)が来訪され、近くの「Tis' table」に案内して説明を聴く。思えば、19年前に加入して以来、初めての会談である。19年前、つまりバブル景気の最終期に設定された利回りの良さを強調し、その果実として貯まっている金額を原資とした新たな契約を勧めてくる先方の上司。営業マンのスキルにはうるさいおれだが、その見事なプレゼンについ聴きいってしまう。無駄なくスムーズ、しかも泰然とした態度で間合い完璧。ロールプレイングなら90点の評価といったところ。このままでは言われるままに契約してしまいそうなので、胸にひめていた死亡時保証額の減額を要求し、そこを前提にした新たな提案をいただく約束をして終了。個人年金保険については現状維持となる。 それにしても保険とは因果なシステムよ、とあらためて感じいりながら15時過ぎに帰宅し、20時まで創作。それから「あら喜」へ行って生ビールを飲み、冷奴、牛ごぼう煮、いわし刺身、いわしの骨あぶりを喰らって不二才のロック。明晩の会食用に新たなボトルを注文し、自転車で転んで脇腹を骨折したあらきパパと談笑して帰る。即身成仏。 |
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| 9月13日 (日) |
体重3kg減らすべく |
5時、起床。昼食、仮眠をはさんで16時半まで創作。残り2章となる。脳がぽ〜となったところで、体重を3kg減らすべく5ヶ月ぶりにジムへ。しかし、事前のストレッチだけで鈍(なま)った筋肉がくぴくぴ痛む。それから、いつものバイクを止めてランニングマシンに乗り、1,5km走ったところで意識朦朧。不慣れなランニングでぜいぜいと気管支が荒れ、ついには咳きこむ始末。それでもその後に数種のマシンをこなし、血圧の低下から身の危険を感じてマットにへたる。これじゃ体に悪いと反省してジャクジーへ逃げ、体をぽかぽかにして帰途につく。 夜、早速痛みだしたアキレス腱と腰をかばいながらベッドに倒れ、そのままウータを抱いて昏倒睡。 |
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