子どもの時にダイジェストを読んだけれど、感銘を受けたのは19歳の時だ。カナダの本を読みたくて、開いたのだった。 作品のすばらしさに瞠目した。茅野美ど里さんの訳(偕成社)だった。文章はよかった。ただ、アンを描いた挿絵があると、想像がせばめられると思った。 松本侑子・訳(単行本)を買ったのは、この小説が英文学からの引用に満ちているそうで、その註がついているからだった。 手に取ると、花がたくさん描かれたカバーが美しかった。なんと、『詩とメルヘン』で惹かれていた牧野さんの画だった。これもうれしかった。 (初読1998年7月くらい)
集英社文庫になったものも読んだ。こちらは表紙が違った。全体が緑色。“グリーンゲイブルズ”と“スノークィーン”が描かれているのだが、ありきたりの絵に変わってしまったようで残念。
後日、松本さん監修となっているモンゴメリの伝記(学習漫画 世界の伝記 集英社版)の終わりのほうを見た。孤独で、苦しい死が描かれていた。
単行本のあとがきの書き出しはこうだった。
文庫本の「訳者あとがき」の書き出しは、単行本の格調高い調子ではない。「物語の魅力」という項目であり、
『Anne of Green Gables』を翻訳し、周辺を夢中になって調べていくなかで、変わったのではないだろうか。文庫は、すべてが新しいヴァージョンといえると思う。 (初読2000年5月) 単行本 牧野鈴子・装画 中島かほる・装幀 集英社 1993年4月第1刷発行 集英社文庫 2000年5月発行 W・E・バリー、M・A・ドゥーディー、M・E・D・ジョーンズ編 山本史郎・訳(原書房)1999年11月発行 | |||
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同じ出版社の、同じ東京大学大学院の教授による翻訳、J・R・R・トールキンの『ホビット ゆきてかえりし物語』の翻訳も態度も好きではないので、資料部分だけ読んだ。松本侑子さんの『誰も知らない「赤毛のアン」 背景を探る』よりも充実していると思う。 (初読2003年4月) メアリー・フランシス・コーディ 田中奈津子訳(講談社、2000年) モンゴメリーと小学校で同級生だった男性が、都会トロントで医者になって成功しているというのは、ありえそうな話だ。モンゴメリーを輩出したのだから。 モンゴメリーは小さな農村から、教育と文学的才能によって、より向上した生活へと進んだ。いわば貪欲と努力の人だ。この本でも、近年よく書かれている晩年の苦しみが、言葉を尽くして表現されている。ただ、松本侑子氏の本で引用されていた結婚式直前の日記がわたしのなかでは、彼女の苦しみを表すものとして一番印象に残っている。胸が痛くなるような絶望の書だった。 『旅路の果て』ではモンゴメリーが平和主義者みたいに描かれている。しかし、彼女は戦争に熱狂していたとか。また、この本は少女ローラを登場させて、モンゴメリーの悲劇的な死に救いを持たせている。これも真相はどうなんだろう。 新しく知ったこともある。たとえば、大英帝国勲位を授与されていたなんて。傑作を上梓したシェイクスピアも、ジェイン・オースティン(ジェーン・オースチン)も、エミリー・ブロンテも、そんな華々しい待遇は受けないまま死んだ。しかし、モンゴメリーはデビュー作『赤毛のアン』をのぞいては、大作家ではないのだ。欲にまみれていない、澄んだ目を持っていればこそ、苦しい。 2004/7/31 参考 ほんの感想 わたしの落窪物語モンゴメリ『青い城』 |