平成15年11月27日

 午後1時前、携帯電話に見知らぬ番号から電話が入る。少々ためらいながら「もしや」とも思い電話に出てみると予想は的中しました。オートバイショップからの「オートバイが入荷したので明日には納車できます」という知らせだった・・・。

 注文していたオートバイというのは、Kawasaki KSR110というオフロードのチョロバイという感じの4サイクル単気筒の原付二種車です。当初は、『ジェベル250XC』を予定していて見積りを済ませ発注寸前でしたが、その購入資金は丸々と新築住宅の追加工事代金へと流れてしまい、購入車種を変更せざるを得ない状況となってしまったのです。やむなく変更車両候補として、『セロー』『スーパーシェルパ』『BAJA』『レイド』等などの中古車を検討開始。しばらくして維持費の面で重要なことを忘れていたことに気付き愕然としました。割高な任意保険です。入らないという選択肢もあるのですが、事故が起これば自分で示談交渉をしなければならず、さらには高額な支払いを生ずる事態に陥る可能性もあります。好きで乗るバイクですので、自分の家族を守る為にもやはり任意保険には入らざるを得ません。そこでファミリーバイク特約が利用でき税金も安い原動機付自転車ならば、住宅ローンを抱える安月給のサラリーマンにも維持費の面で魅力的な存在であることに気付いたのです。

 今から21年前に初めて手にしたバイクが『ゴリラ』でした。僕のオートバイの原点といえるその小さなオートバイの魅力にどんどんと惹きこまれてゆきます。再び『ゴリラ』に乗れたらとは思うものの、想い描くいろいろな使用状況に対応させることは難しく思え、用途別にバイクを複数台所有することは今の僕には現実的ではありません。そこで、自動遠心クラッチに不安はあるものの原付二種車であり、クラッチキットが市販されている『KSR110』ならばミニサイズであって長距離や林道走行にも対応できるのではないかということで、記念すべき鉄騎馬乗りへの復活車両として、正式に採用を決定することにしました。以前、KSRが80の2サイクル車だった頃、ちょっとした出来心で漠然と欲しいと思っていたことも影響しているかもしれません。



 仕事を早めに切り上げて職場を後にする。向かう先はバイクショップ。ひとめ『KSR』を見たくなったのです。『XF342号』のペダルを漕ぐ足にも自然と力が入ります。秋留台地を東進し、平井川を渡り、草花丘陵を越え、多摩川を渡り、午後7時半に『SBS羽村』へ到着しました。

 ガラス越しの作業ピットを覗くと、少々埃っぽい『KSR』が緑色のタンクに蛍光灯の明りを反射させて、静かに佇んでいます。店内に入り店主と会釈を交わすと、急な来店にもいたって平穏な表情で「ナンバーはもう交付されているのでよければ納車は今日でも大丈夫です」とのこと。とりあえず作業ピットに入らせてもらい、『KSR』に跨ってみます。小柄な車体ですが思っていたほどには小さくありません。足回りは車格の割には本格的なディテールがあります。店主にエンジンを始動してもらい、そのかわいらしい排気音にしばし聴き入ります。本当に今日の夜の納車で無理はないのかあらためて訪ねてみると「あとは洗車とナンバー取り付けだけなので大丈夫」とのことなので、納車してもらうことにします。実はすでにポケットには車両代金をしっかりと用意していたのですが・・・(笑)。一度帰宅し身支度をして取りに行くつもりでしたが、オフブーツでの歩行は厳しいので家まで届けてもらうことにしました。

 自宅前の路上で待つこと少々、軽トラに積まれた『KSR』がやってきました。荷台から降ろされ、闇夜のなか街灯に照らされ佇む我が愛機となるKawasaki KSR110。はやる気持ちを抑えつつ、取り扱い説明を受ける。「それじゃ」とバイク屋さんが帰り、続いて家族に御披露目。妻いわく「ずいぶん大きいわねぇ」、長男「かっこいい〜」、次男「パパのバイク…」。跨ってシフトペダルに足を掛けるも足が入らない(ソリャソウダ)。レバーの位置を調整しないとオフブーツでのギアチェンジは無理なのだった(笑)。靴を履き替え「ちょっと出かけてくるョ」と言い残し、子供達の「いってらっしゃい〜」の合唱を背に出発。トコトコトコと発進いたしました!

 初乗りが夜となってしまい、しかもバイクに乗ることすら久しぶりであったので、街道走行は少々恐い。上限速度を50キロ程度に設定し、左端をトコトコ走る。左右にバックミラーはあるが写っているのは着膨れした僕自身。後方視界は良いとはいえない。新車ゆえかシフトは少々硬い感じ。シフトレバーを踏んだままアクセルをあおりシフトダウン!自動遠心クラッチに違和感を感じつつもとりあえず成功!今後は練習してコーナーの突っ込みでブレーキと併用しながらキレイにシフト操作ができるようになりたいものだ。ああ、自動遠心クラッチってどうにももどかしい感じ。

 最近『レイド』を購入したY氏宅に到着。携帯電話で呼び出し、玄関から出てきたY氏は『KSR』を見て驚いている様子。「本当に買っちゃったのかよ、まさか本当にこれを買うとは…」。『レイド』と並ぶと当然のことながら妙に小さい『KSR』である。しかしディテールだけはレイドに負けてはいない。まさにオフロードのチョロバイである。僕が缶コーヒーを二つ買いにコンビニに行っている間にいつの間にやらY氏宅前のスーパーマーケットの駐車場で『KSR』をトコトコと走らせているY氏。「結構いいじゃんこれ、50と違ってパンチがあるなぁ」などと面白がっている。1時間程バイク談義に花が咲く。お互いバイクに乗るにあたってはいろいろと裏技を駆使して奥方の承諾を得ている身分。独身貴族の方々からみればその手の努力は涙ぐましくせこいことをやっているなぁなどと思うかもしれない。「男の遊びを かあちゃん なんかに止められてたまるかよぉ」「そりゃそうだよ」などと気勢を上げる。もちろん小声でである。なんせここはY氏宅の玄関先である。

 Y氏宅からの帰り道、後方から迫り来るヘッドライトをミラーに確認。勢い良く僕を抜かしてゆくスープラに一安心。又しばらくして別の迫り来るヘッドライド。しかし今度は抜さず後ろをついてくる。まだ二輪に不慣れなもので、後ろをついてくるヘッドライドに不用意にプレッシャーを感じてしまう。後ろを意識しながら右に寄り交差点を右折、マンホールの鉄蓋に乗った瞬間、フロントがツルッと外にもっていかれる。挙動の速さにものすごく驚いた。バイクってこんなに滑る乗物だったのです。イメージと挙動が合致しない。油断していなかったつもりが、初心に帰っていたつもりが、それでも自身過剰だったようです。

 24時間営業のセルフ式ガソリンスタンドで給油。セルフ自体に不慣れで久しぶりのバイクへの給油なので少々緊張(元ガソリンスタンド店員です)。

無事帰宅。

back