平成15年12月7日
8時少し前に目が覚める。寝坊してしまった。窓を開ければ気持ちよく空は晴れわたっている。これは走らないという手はない。妻子はまだ寝ているので、起こさないように静かに出発の準備を整え、KSRのエンジンを始動させる。チョークの扱いが不慣れで、冷えたエンジンは安定してアイドリングしないが、暖まるにつれ徐々に単気筒サウンドを軽快に奏ではじめる。あらためて空を見上げれば青く澄み渡っている。慣らし走行には最高の一日になりそうだ。
一路奥多摩を目指す。ガソリン残量が少ないので小作坂下のモービルにて4.44g給油する。
そのまま奥多摩街道を西進する。前方に交機のパトカーが二台走っている。リアガラス越しに見るヘルメットを被った隊員の姿は、ゴツイ体格とは対照的に可愛らしく見えるのが可笑しい。街角には白バイも登場してきた。なにごとだろうか。東青梅の駅前を過ぎた辺りで、広報車が出現し『マラソンで通行止めご協力お願い云々』とスピーカーで言っている。あと1時間程でマラソンが始まるらしい。
青梅の市街を走る。ここは実に不思議な魅力のある街だ。城址、寺院、神社、鉄道、路地、山、川等が適度に散在しかつ密集していて、古き歴史は霧のベールに包まれているというような謎と不思議な心地よさが同居している魅力というようなものを感じてしまう。そんな訳でこの街にはかつて2年間ほど独り暮しをしていたことがある。妻との恋の始まりも青梅に住んでいたときだった。
青梅市街を抜け、街道は山間の道となってゆく。路面は乾いているので、一般車両にまぎれた巡航速度のペースではそれほど鉄蓋やペイントに気を使わなくてすむ。沿道にはマラソン関係者が増えてきたようで、一緒に走っている車列の半分は、二俣尾でマラソン関係者の群集の中に消えていった。御岳駅付近で後方からドカティ二台が迫ってきた。左端をトコトコ走る僕の右をスルリと抜いてゆく。古里駅手前の左カーブで突然の渋滞。カーブのすぐ先でマイクロバスが乗客を降ろしている。センターライン上には『ゴムの一反木綿』が林立していて、四輪は股下をゴム板で下回りを叩かれながらバスの脇を通過してゆく。思わず自分の股間を保護したいような気持ちにさせられる光景だ。渋滞で先ほどのドカティ二台に追いつくも、停車中のバス脇を過ぎればあっという間に華麗なバンクでコーナーの先に消えてゆく。僕はいたってマイペースで浮き砂利と濡れた路面に注意しながら、順調に巡航してゆく。昨日よりも多少は乗れてきた感じがする。ギヤチェンジや加減速もスムーズになってきてバンクの感じも掴めてきたように思う。
奥多摩湖畔の駐車場に到着。大型バイクが整然と並ぶその合間にKSRを止める。少し離れた位置から我が愛機を眺めて見れば、そこだけポツンと一台だけ小さいバイクが堂々と駐車している光景は実に爽快で気分がよい。僕のが最小排気量車らしい。先程のドカティ二台がいたが、なんと乗り手は五十歳代後半ではと思われる年齢の男性二人組で、その無駄のない華麗なライディングに納得したのでした。黄色いカタナ二台組も存在感があり、乗り手の方もベテランライダーでカッコ良かったです。そういえば、10代の若いライダーがまったくいない。今時の若者はスクーター一辺倒で『走り』になんか来ないのでしょうか。
売店に行くと店主が「あれ、どこかに泊まっているの?」と首を傾げて話しかけてきたので、「いや、新車なんで慣らし運転で昨日も今日も走りに来てるんです」と照れながら答えると、納得した顔で「なるほどねぇ、いい天気だしね」だって。アメリカンドックを頬張り缶コーヒーを啜る。バイクのほうに戻るといつの間にかKSRの後ろに人の輪が出来ている。なにごとか、と近づいてみれば両サイドの大型バイクのライダー達が談笑しているだけだった。一声掛けると、「あ、すいませーん」と礼儀正しく道を開けてくれました。駐車場所からKSRを通路に出し、キック一発でエンジン始動(当然か…笑)!視線を感じつつ(緊張)ギアを1速に入れ発進、2速、3速とチェンジし、2速にシフトダウン!左に軽くバンクさせR411の旅人となる。はぁ〜エンストとかギア抜けしなくて良かったぁ〜などとほっとしている小生なのであった。

国道139号に入ると、大きな小菅村の案内板があったので、ちょっと停車し記念撮影。そこからショートカットするルートもあったが、急ぐわけでもないので、几帳面に村役場前、小菅の湯下を通過してゆく。徐々に急勾配となってきたので四速での横着走行を断念し、ときどき三速にギアを落とす。上野原丹波山線に入ったあたりからは更なる急勾配が出現し、二速に落とす場面も。山を走るとパワーの無さはいかんともしがたいが、非力な小排気量車とはいえ、登り下りのカーブの連続はライディングの練習になるし面白い。幸い先程からずっと道路は独り占め状態。小さな車体は右に左に軽快にバンクし、『走る』ことに気持ちが集中できる。しばらく走ると前を走る軽トラックが見えてきた。追いついてしまったところ、軽トラは突然ペースを上げる。爺さんドライバー&息子の嫁さんナビという感じの地元車のようだが、後ろに配慮の若しくはKSRの追い越しを許さない走りをしているようです。慣らしツーリングなので無理に抜く気はないのですが、コーナリング中にナビが後ろを振り返りKSRの追走具合をドライバーに伝えている模様。彼の名は『丹波山のカンクネン』、又の名を『白い稲妻』といい、ここ丹波山をホームコースとしている・・訳もないか(笑)。どうか普通に走ってくださいませ。しばらく後、いづこかの庭先に軽トラは入っていった。
左カーブでバンク中、突然右遠方に雪景色の富士山が見えた。UターンしてKSRを左に寄せ、その美しい勇姿にしばし見惚れる。
県道522号に入り、レイク相模CCを過ぎた先で道が二手に分かれ、どちらに進むべきか迷う。地図を見てとりあえず左に進むと、どうやら正解だった。
陣馬街道の登りに入る。道端には三脚に据えたカメラで植物を撮影している人が多い。和田峠に到着。休憩所で売店で買ったカップ麺&缶コーヒーで昼食。妻と子供へのおみやげに柿を一袋買う。MOTO&CAR6輪館・ときじ氏も撮影していた案内板の前にKSRを移動して、記念撮影する(影響受けてますハイ)。

通行止めらしい醍醐林道に入ってみる。しばらく進むと向かいから数台のマウンテンバイクが登ってきた。この先、どうやら通れるようだ。軽く会釈を交わし、この上り坂を登ってきた体力に感心しながらすれ違う。道は曲がりくねった下り坂の落ち葉が敷き詰められた林道であり、心地よく適度な速度で走ってゆく。突然、フロントが右に跳ね、首筋に衝撃が走る!なんと落ち葉と同化した落石の破片に乗り上げてしまったのだ。幸いKSRに異常は生じていないようなのでほっとするが、油断と未経験による完全なる判断ミスだった。出口はゲート封鎖されていたが、自転車やバイクなら脇の斜面に道が出来ているので通行可能だ(本当はダメだけど)。
ダートを出て先に進むと介護人に付き添われたかなりの高齢のお婆さん二人が並んで散歩をしている。驚かしては気の毒なのでゆっくりと進み道を空けてくれるのを待つが一向に気付いてくれない。しばらく後「なにか音がするなぁ」と婆さんが喋っている。「んー」と後ろを振り返って「あれれ、バイクがいるわぁ、なぁーんの音かと思ったら」とおちゃめに笑っている。そしてやっと道を空けてくれました(笑)。
盆堀林道に入るつもりでしたが、入り口は単管パイプと針金で固定されたバリケードで塞がれていたので断念せざるを得ませんでした。しかたなく一般道を網代経由で走り無事帰宅。