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部活闘争編 本編 page.1
- 305 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 18:54:47 ID:VmBX0p50O
- 〜〜放課後〜〜
世界情勢「……………ふぅ…参ったなぁ…」
ラウンジ「世界情勢じゃん、何してんだ」
世界情勢「悩んでます……困ってます…」
『ちょwwwテンションヒクスwwwwwどーしたww』
世界情勢「…気にしないで下さい……どうしようも無い事ですから…」
ラウンジ「話してみたら、気分だけでも良くなるかも知れないぞ?」
『話したくないなら無理にとは言わないけどなwwww』
世界情勢「はぁ…ありがとうございます…。それじゃ、御言葉に甘えて。お二人共、最近校内で起きてる事件は知ってますかっ?」
ラウンジ「あれか?剣道部とか長刀部の部員がボコられて、色々揉めてるって奴?」
世界情勢「そうです。それの原因については?」
『全然知らんwww』
世界情勢「ですよね…。この間の学校祭で行われたトーナメントは知ってますか?」
『知ってるも何もwwww観て来たしww』
世界情勢「その優勝者と準優勝者は?」
ラウンジ「確か、剣道と」
『長刀だっけwwwつーかお前は何が言いたいwww』
世界情勢「それが原因なんですよ。彼等が勝った事がマズかったんです」
ラウンジ「そりゃまたどういう」
世界情勢「あの大会では、剣道や長刀に限り武器使用が許されていました。勿論真剣等は使用不可でしたけどね」
ラウンジ「それも観てきたよ」
世界情勢「そのルールを決めるにあたって、生徒会は賛否を出場予定者全員に聞きました。果たして結果は、九割以上が賛成したんです」
- 306 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 18:56:43 ID:VmBX0p50O
- 世界情勢「参加者の大多数からOKが出たので、大会は知っての通り前述のルールで行われ、前述の通りの結果で終わりました」
『めでたしめでたしwwww第三部完ww』
ラウンジ「勝手に終わらせんな」
世界情勢「…続けますね。彼等の優勝という結果に、参加者の中に不満を持った人達が沢山出たわけです」
ラウンジ「そいつらが襲撃犯と」
世界情勢「大体それで正解です」
『ちょwwwww待てww殆ど賛成したのにwww負けたら逆ギレかよww』
世界情勢「理屈では可笑しいですよね。でも、彼等にとっては理屈なんかどうでも良いんでしょう」
ラウンジ「プライドの問題ってとこか」
世界情勢「彼等は、強さとプライドとがイコールで結ばれていますからね」
ラウンジ「武器使用に賛成したのも、そこら辺の心情?」
世界情勢「過小評価も多分に有ったのかもしれませんけど……何より、【武具を使われたら勝てないから辞めてくれ】とは言えないでしょう」
『うはwwww武道家のプライドコワスww』
世界情勢「そこで彼等が始めたのが、状況を大きく変えての第二ラウンド、つまり実戦というわけです」
『つかwww幾ら調べたっていってもwwwお前詳しすぎねww?』
世界情勢「生徒会側に、犯行声明が来てますからね」
ラウンジ「はぁ!?テロじゃあるまいし…」
世界情勢「テロと言うよりは、牽制が目的と思われます」
- 307 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 18:59:18 ID:VmBX0p50O
- ラウンジ「牽制?」
世界情勢「はい。学校側、要するに運営陣に対しての、ですね」
ラウンジ「んー…。いまいち話が飲み込めないな」
世界情勢「というのも、生徒会は自治組織として、今回のような事態に対応するPKO的な部隊を所有しているんです」
『そいつら出せば早いじゃんwwwwうはww俺天才ww』
世界情勢「そう簡単な話じゃないんですよっ!標的にされてる剣道部と長刀部こそ、そのPKO部隊の中核なんですから!」
ラウンジ「じゃあ…生徒会としては、もう打てる手は無いと?」
世界情勢「物理的な強制力を持つ手段、実力行使はこれ以上は無理ですね」
ラウンジ「学校側は手を打ったりしてないのか?」
世界情勢「学校側は、自治組織の生徒会及び教職員に直接的な危害が及ばない限りは滅多に動きませんよ」
『アホみたいに自由な校風だからなwwwww』
世界情勢「つまり彼等の犯行声明は、攻撃を加えるのは標的の部のみで、学校をどうこうするわけでは無いという意味が含まれているんです」
ラウンジ「ん〜やっぱわかりづらいな。vipは?」
『【軍に個人的な恨みが有るというだけで、政府に反乱するつもりでは無い】ってところかwwwww』
世界情勢「だいたいそんな感じです。乱暴な言い方をすると、生徒会が喧嘩を売られたなら学校側が対処してくれますが」
ラウンジ「生徒会の手駒に喧嘩を売られただけじゃ、学校は干渉しない………恐ろしい放任主義だな」
『ガキの喧嘩はガキ同士で何とかしろって事かwwwバファリンの半分も優しくねえwww』
世界情勢「一応、生徒会からも増援を送ったりはしていますけど………余り芳しくはありませんね」
- 308 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 19:03:13 ID:VmBX0p50O
- ラウンジ「ちょっと、大体の両勢力の説明を頼む」
世界情勢「剣道・長刀が標的にされて、生徒会からの援軍として弓道と空手が加わってます」
ラウンジ「相手は?」
世界情勢「わかっている範囲では、ボクシング、キックボクシング、ムエタイ、テコンドー、レスリング、相撲ですね」
『ちょwwwわかってる範囲ってwww他にも居るのかよww』
世界情勢「恐らく、ですけどね」
ラウンジ「かなり厳しいな…」
世界情勢「質は負けていないとしても量で負けてますし、奇襲から始まってますからね………はぁ…」
ラウンジ「どうするよ。交渉は難しそうだけど」
『全員バールのような物で撃破してくるかwwww』
世界情勢「……あのー、最初に私の言った事聞いてましたっ?」
ラウンジ「最初?」
世界情勢「だから!はっきり言って、もう交渉とかの段階の話じゃないんですっ!」
『ならやっぱバールだろwww』
世界情勢「素人がバールだの何だので参戦しても足手まといですよっ!
大規模火災がバケツリレーじゃ消火できないのと一緒です!」
『どうしようも無いかwwww』
世界情勢「そう、どうしようも無いんですっ。だから…………」
ラウンジ「だから?」
世界情勢「今回、あなた達の出番は無さそうですっ☆」
『っうぇwwwおまwwwアジでふざけんなよwwww!?』
- 309 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 19:06:51 ID:VmBX0p50O
- 「さて、どうした物か」
本校舎の五階の廊下、木刀を持った男子生徒が一人ごちた。
その足元には数人の男子生徒が転がっている。意識の有無は定かでは無い。
「剣道、こっちは終ったよ」
良く通る声と共に、件の男子生徒のすぐ脇にある引き戸が開く。
その隙間からは、やはり同じように教室内に倒れている数人の生徒が見て取れた。
「早かったな、長刀」
「多人数相手は少し面倒だったけどね。それでも、どうという事はないよ」
喋りながら、声の主であり長刀と呼ばれた女生徒が姿を現す。
すらりとした体型に長い黒髪、その手には、彼女の得物であろう競技用長刀が握られている。
「参ったな、どうも」
「ほんっとこいつらしつこいよねー」
うんざりした様子で長刀が倒れている生徒達を見やる。
「弓道と空手は?」
「さぁ?大丈夫でしょ。便りが無いのは元気な証拠って言うし」
「それ使う状況間違えてないか?」
口では軽めにツッコミつつ、剣道は思索に入る。
先の独り言、「どうした物か」は倒れている連中の処遇を考えあぐねて発した物では無い。自分達の置かれた状況について、だ。
そもそも、生徒会の私兵とも言える自分達に正面切って対立を宣言する敵が現れる事自体、異例中の異例。
格闘技系の部の中でも自分達が単純に高い戦力を持つという事が理由の一端でもあるが、そんな事よりも遥かに大きな理由がある。
それは、生徒会お抱えの名の元に複数の部が結束しているという事だ。
この学校の格闘技系の部は、ほぼ全てが対立し敵対し牽制しあっているのが普通。
三すくみや四すくみどころか数十すくみの状態で、争いが絶える事は無い。それが自分達の日常。
ただし、争いといっても余程の事が無い限り、それは小競り合いの域を出るものでは無かった。
ほぼ全ての部が対立しあっているからこその膠着状態が保たれていたからだ。
- 310 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 19:10:20 ID:VmBX0p50O
- 何処かと本腰を入れて争えば、勝った所で疲弊した隙を突かれて何処かの部に負かされる。
全てが全てと対立しているが故に全てが個であり、繋がる事は滅多に無い。
だからこそ、たった四つの部の結束だけで、今まで全ての揉め事を処理できたのだ。
そしてだからこそ、今回の相手が六つの部の連合である事が、想定外の問題なのだ。
剣道部も長刀部も人数自体は決して少なくはない、むしろ多い方と言える。とはいえ、こちらから攻めいって鎮圧するには相手が巨大すぎる。
「…ぐ……。て、てめぇ………」
露骨なまでの敵意を込めた苦しげな声とともに、剣道からやや離れた壁際に転がっていた生徒の一人が、よろよろと起き上がった。
「さっすがレスリング部。タフだねー」
長刀の軽口を意に介せず、レスリング部員は目の前の剣道を睨みつけて構え、重心を低く腰を落とした姿勢で一気に突っ込んだ。
片足タックル。マットの上ならともかく、廊下の固い床の上で倒してしまえば、それだけで大方勝敗は決定する。
ただ、それは成功すればの話。
剣道の腕が尋常では無い速度で振るわれ、同時にすぱぁんと快音が響き、レスリング部員が崩れ落ちる。
一瞬だった。本当に一瞬の出来事で、剣道は虫を払うように敵を苦もなく撃破してしまった。
「私達はこんな雑魚が何回来ても、どうにでもなるんだけどねぇ……」
「部員はそうはいかないんだよな」
そう、懸念すべきは部員への被害だ。
正面からだろうと奇襲だろうと、自分達は余程の事が無い限りは無傷で切り抜けられる。
だが、自分達に比べると力量の劣る部員達はそうはいかない。
今も校内各所で散発的に戦っている部員達。奮戦しているとはいえど、形勢を考えれば彼等が傷つき倒れていくのは目に見えている。
そして、数日中には壊滅に追いやられるだろう事も。
- 311 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 19:12:21 ID:VmBX0p50O
- どうするべきか。いっその事、こちらの総力を挙げて攻め入ってみるか。
…無理だ。勝つ見込みが0%とは言わないまでも、例え勝った所で、こちらはほぼ壊滅状態になる。
そうなれば校内の治安維持どころか、部活動さえままならなくなってしまう。
何より、主将として部員をそこまで巻き込んでしまう事自体、抵抗がある。
剣道は、今回の争いに部員達を巻き込んでしまった事を悔いていた。
そもそも、相手の規模の大きさがわかった時点で、剣道は諦めかけていた。こうなる事は予想出来た。
守れば少しづつ削られ、かといって攻めるには戦力が足らない。
だから、だからこそ、騒動の一因である自らが単身彼等に特攻し、玉砕し、打ちのめされれば彼等の溜飲は下るだろうと。
そう説明した剣道に対し、部員達は「主将一人を犠牲にするわけにはいかない」と、言ってくれたのだ。
長刀も、弓道も、空手も同じように剣道に言ってくれた。
しかし、今思い返して見れば、自分の判断は間違っていたのでは無いだろうか?
自分一人が犠牲になれば解決したかも知れない物を、犠牲を増やし悪戯に時間を浪費してしまっただけではないだろうか?
考えれば考える程に、剣道の思考にはどんどんと影が差していく。
「うぐっっ!?」
不意に背中を衝撃と痛みが遅い、剣道は膝を付いた。
「また鬱ってるし。鬱に入るのは全部終わってからにしなさいって、前にも言ったじゃない」
長刀が、自身の獲物で剣道をぶっ叩いた、という事らしい。
「いってー……。殴る事は無いだろうが!」
声を荒げる剣道に対し、やれやれといった様子で長刀が諭す。
「どうせまた自分が犠牲に云々とか思ってたんでしょ?ここまで来たら今更遅いってば」
「…わかったよ」
「さ、それより行動あるのみ、でしょ?」
- 312 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 19:16:04 ID:VmBX0p50O
- 学校の敷地内の隅に立つ旧校舎。
使われなくなって久しいこの建物の二階、旧生徒会室に人影が六つ蠢いていた。
「あー…、はいはい。ご苦労さん」
携帯で話していた一人の男子生徒が通話を切り、側に居た大男に向き直る。
「全滅、だとさ」
「冗談だろ!?ウチの奴らが10人掛かりだぞ!?」
「マジマジ、恐ろしい事にマジだ」
狼狽を隠せない大男に対し、涼しい顔で感想を述べる男子生徒。
その外見は、金髪、中背に細い体つき。
かといって貧弱という印象を与えるような物ではなく、異常に引き締まった筋肉質な体が、真逆の印象を与えている。
「どうする?増員してもう一回やらせてみるか?」
「めんどくせぇよ。俺らが直に潰しに行けば早いだろ」
「私はむしろ逆で、もう少し時間、時間を掛けてじわじわ攻めるべきだと思うよ」
「時間と兵力を掛けるのはもう十分だ。こっちの部もこれ以上損害が出るのは頂けない」
口々に今後の方針を述べる四人。
つまるところ、彼等は先の二人を含め今回の騒動の中心である、六つの部のトップであった。
「まぁまぁ、これ以上あの四人に戦力投入しても無駄って事はわかったんだから、そろそろ決め時じゃないか?」
「決め時ってのは俺も同意なんだがな、何か良い策でもあるのかボクシング?」
ボクシングと呼ばれた金髪の生徒が、にやりと笑う。
「策と言えるような物じゃないけどな。向こうだって切羽詰まってるんだ。この話には必ず乗るさ」
- 313 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 19:18:32 ID:VmBX0p50O
- 「まずは空手と弓道と合流しないとな」
「場所は知ってるの?」
「電話すればわかるだろ」
「こいつら目覚ますとまた面倒だし、歩きながらにしようよ」
得物の刃先で、倒れているレスリング部員達を長刀が指す。
「だな」
応じて、剣道が携帯を耳に当てて歩きだしたその時―――――廊下の向こうから、歩いて来る人影が二つ、視界に入った。
遠目からでも服装でどちらも男子である事は確認できる。
その人影は、二人の2メートル程手前まで来ると歩を止めた。
片方はミディアムの茶髪に色白の肌。すらりとした体型で、近くで見るとかなり足が長い事がわかる。
もう片方は太めの坊主頭、背は高いがどちらかと言えば横に長い感じだ。
「直に話すのは初めてだね。というわけではじめまして」
「はじめま「誰あんた?」
茶髪に思わず挨拶を返した剣道の言葉に割り込む形で、長刀が問う。
「あれ、俺らの事知らないの?まいったなぁ、そこそこ有名だと自他共に認めてる筈なんだけど」
「だから誰?」
「俺が、君らと喧嘩してるキックボクシング部の部長。こっちが相撲…」
その言葉の途中で既に二人、剣道と長刀は動いていた。
長刀が相撲へ、剣道がキックボクシングへ、自身の得物で襲い掛かる。
「ちょっ、まっ!えぇぇっ!?」
「ぐっ!」
相撲は両腕を交差させて受け、キックボクシングは体を反らせて回避。
不意の一撃が失敗した事を瞬時に把握し、剣道と長刀が距離を取る。
「おいおいおいっ!話を聞けよ話を!血に飢えた野獣かお前らは!」
- 314 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 19:20:26 ID:VmBX0p50O
- 「話…だと?」
「そうだよ話だよ話!会話!トーク!いきなり殴り掛かる事無いだろ野蛮人!ブランカ!」
苦笑いをしつつ軽口を叩くキックボクシング。あくまでノリは軽いが、剣道と長刀は決して警戒は解こうとはしない。むしろ逆だ。
速度もタイミングも申し分ない不意打ちを、この男は軽々と避けているのだ。
直撃を防いだという意味では相撲にしても同じ事ではある。
長刀の一撃を腕で防ぎ、それで骨折……少なくとも腕が使用不能になった様子は見受けられない。
喋りをキックに任せて憮然とこちらを睨みつけている。恐るべき耐久力といえるだろう。
しかし、だ。防御と回避ではわけが違う。必要とされる能力が違うのは勿論の事だが、何より難易度と効果が違う。
それを考慮すれば、今のところ警戒すべきはキックボクシングの方、二人はそう判断した。
「そんなに身構えんなよ。話ってのはさ、ほら、あれだよ。頭同士でケリ着けちゃうのはどう?」
「頭同士?」
「そうそう。場所指定してさ、こっちの六人とそっちの四人でやり合うんだよ」
「あんた簡単な計算も出来ないの?六対四じゃ全然公平じゃないじゃない」
「んー…。そこら辺は諦めて貰うしか無いよね。公平な戦争なんて将棋やチェスじゃあるまいし」
「……何時何処でやり合うんだ」
「えーっと…一時間後、旧校舎だ」
「剣道、どうするの?」
「乗る。是非とも乗らせてもらう」
即答。当然訝る気持ちはあるが、罠に嵌って負けるかこのままジリ貧で負けるか、どちらにせよ負けるのだ。
それならば少しでも可能性のある方に賭ける。
- 315 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 19:25:28 ID:VmBX0p50O
- 「一つ、聞かせてもらいたい」
「ん?何?」
「頭同士でやり合う、その提案は大いに結構。……しかしそれによるそちらのメリットは?」
一拍おいてキックボクシングが答える。
「はっきり言って君らを綺麗さっぱり全滅させるのは可能だ。温存している部員達を一斉に駆り出せば今日中にケリは着く」
「へぇ、随分言うじゃない」
「君らを見くびっているわけじゃないよ。数の暴力で押し潰せば、君達各部のトップだって倒せる……ただし」
キックボクシングの言葉を引き継ぐ形で、相撲が口を開く。
「それには甚大な被害を伴う。何せレスリング部員10人を傷一つ負わず倒してのけるお前らだ。どれだけの部員がやられるやら」
「俺らも、この喧嘩が終わった後の事を考えなくちゃならないからね。質問はこれで?」
「あぁ。もういい」
「あ、忘れてた。まず一つ。旧校舎に君ら以外の助っ人を連れてきた場合、俺らはそれなりの対処をする事になる。
具体的に言うと、先程も言ったように総力戦で君らを叩き潰すって事。
こっちの被害も大きくなるけど、君らが約束守れないなら、仕方のない事だからさ」
「わかった。その条件、飲もう」
「それと、弓道君と空手君だっけ?あっちにも同じ話をしに行ってるから。君らが伝える必要は無いよ」
「それじゃあ、一時間後。旧校舎で」
そう言って、ひらひらと手を振りながらキックボクシングが、その後に相撲が去った。
- 316 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 19:28:33 ID:VmBX0p50O
- 〜〜同時刻・中庭〜〜
放課後の中庭に、音が響く。
肉が、骨がぶつかり合う音。拳が、足が振るわれる音。肘が、膝が風を切る音。
音の発生源は、向かい合い闘う二人の男子生徒。
片や精悍な顔つきに黒の短髪、片や日本人離れした顔つきに、銀髪のウルフ、上半身裸。
二人は今回の争乱で敵対している、空手とムエタイであった。
空手の左上段突きがムエタイの顔面へ真っ直ぐに放たれる。
それを体を捻りながら回転するように避け、その回転を利用してムエタイが右肘を繰り出す。
その肘を空手が膝を落として回避、右下段で足を刈る。
倒れる姿勢を逆に利用し、エルボードロップの形で右肘を頭頂部へ。
その肘をしゃがんだ姿勢のまま空手が掌打で払う。
ムエタイがバランスを崩した体勢から片足で辛うじて着地。
その隙を逃さず空手が右の中段突き。
左の肘と膝でブロックするも衝撃を殺しきれずムエタイが下がる。
そこへ空手が飛び込み、ムエタイもそれを迎え撃つ。
再び拳足と肘と膝が飛び交う。
ムエタイの下段蹴りが決まり、空手の膝が落ちる。その顔面へ、
「沈め」
とだけ呟いて、ムエタイが下からハンマーの様な膝を振り上げる。
そこへ風切り音。
「ぅぐっ!?」
呻き声を上げたのは空手では無い。膝を繰り出したムエタイだった。
その胸には青黒い痣が現れ、足元には板付きが硬質ゴムに換えられた矢が落ちている。
「――――今のが本物の矢なら、あるいはここが戦場なら、ムエタイさん、死んでましたよ」
空手の15メートル程背後、弓を構えた一人の女生徒が涼やかな声で、無表情に言った。
異様に長い茶髪に簪、彼女が生徒会側戦力最後の一人、弓道。
- 317 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 19:31:29 ID:VmBX0p50O
- 胸を押さえてうずくまったムエタイの頭へ、逆襲と言わんばかりに空手の下段蹴りが飛ぶ。
ガードするもののこれも衝撃を殺し切れず、ムエタイが芝生をごろごろと縦に転がる。
素早く体をバネの様に跳ね上げて起こし
「テコンドー!ぼさっと見てないであの弓女を何とかしろ!」
と怒鳴りつける。
彼の視線の先、中庭に植えられた木に背を預け、腕を組んで二人の闘争を見てい女生徒。
「あなたのやっている事はむしろ逆で、私達が来た目的は伝言、伝言だけだった筈でしょ?」
道着姿、セミロングの黒髪、彼女が六人の内の一人、テコンドーという事らしい。
「あぁ?んなもん知るかよ。始まったら最後の最期まで徹底的にやるのが実戦だろうが!」
「人に物を頼む態度としてその態度はむしろ逆で、気に入らないから私は戻る。戻るからあなた一人で好きにやって」
ふい、とムエタイに背を向けて立ち去ろうとするテコンドー。
「お、おい!ざけんな!待てよっ」
慌ててムエタイも後を追う。実力的にはともかくとして、立場的にはムエタイが下なようだ。
ふと、ムエタイが足を止めて空手達に振り返る。
「用件はさっき話した通りだ。伸るか反るかはてめえらの好きにしろ。どっちにしろ俺がてめえら全員潰して終わりだけど、な」
言いたいだけ言うと、ムエタイは足早にテコンドーの後を追って去っていく。
「六対四だと?ふざけてんのかあいつら」
「まずは剣道さんと長刀さんと合流すべきでしょう。話はそれからです」
- 318 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 19:34:09 ID:VmBX0p50O
- 「メールだ。空手と弓道は中庭。伝言の二人の内一人と少しやり合ったらしい」
「少しねぇ……無事なの?」
「あぁ、ほぼ無傷。さっさと行くぞ」
「あいつら、何を企んでるんだろ?」
中庭を目指して走りながら長刀が問う。「………今まで襲って来た部員達の数、覚えてるか?」
「数?そんなのいちいち覚えてるわけないじゃない」
一人。道中で遭遇した敵対部員を適当に叩き伏せながら、二人の会話は続く。
「言い方が悪かったな。各部の割合は?大体で良いんだ」
二、三人。
「うーん…テコンドー部とボクシング部の割合がかなり少ない気がする……」
四、五、六人。
「今まで襲って来たのは殆どその二つ以外だよな?」
七人。
「そう言われてみれば…どういう事だろう。あんまり乗り気じゃないのかな?」
八人。
「俺の考えが正しければ、この戦いはもっとややこしくなるぞ」
九、十人。
「だからどういう事なのよ!?全くまだるっこしい!」
十一、十二、十三人。
「まだ予想の段階だからな。ほら、着いたぞ」
十四人目を倒した所で、目の前には校舎内から中庭への開け放たれた引き戸。
「おせーよ馬鹿」
「ご苦労様です。それでは、戦の準備と行きましょう」
- 319 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 19:36:21 ID:VmBX0p50O
- 世界情勢「はい、もしもし。あっ☆剣道さんっ!大丈夫ですかっ??」
ラウンジ「剣道?あいつどうしたんだ?」
世界情勢「ええ、はい………駄目ですよそんなのっ!!殺されちゃいますよ!?」
『何話してんだよwwww』
世界情勢「はい、はい…わかりました。今すぐにメールで送ります」
ラウンジ「何が起きてんだ?」
『ちょwwwkskwwじゃなくてkwskww』
ラウンジ「kwskってどういう意味?」
『詳しくww詳細希望とだいたい同じ意味www』
ラウンジ「へー。じゃあ俺にもkwsk」
世界情勢「ちょっと二人とも黙ってて下さいっ!!後で説明しますからっ!!」
ラウンジ「す、すいません!」
『うはwww世界情勢怒ったの初めて見たwwこっえww』
世界情勢「あ、気にしないで下さい、こっちの話ですっ。本当に無事に帰れるんですか?聞く限りじゃ、勝算なんて皆無に等しいですよっ?」
世界情勢「……はい……はい…、こちらも何らかの手を打ちますっ!すぐに準備をします、それでは」
ラウンジ「あの…もう話しかけてもよろしいでしょうか?」
世界情勢「良いも何もこっちからお話しがありますよっ!二人共、事情を説明しますから今すぐ協力して下さいっ!」
- 320 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 19:40:21 ID:VmBX0p50O
- 〜〜一時間後〜〜
2ちゃんねる高校、その広大な敷地内の隅に追いやられた旧校舎。
三階建ての木造建築で、使われなくなって随分経った今ではすっかり寂れ切っている。
その正面玄関前に、剣道・長刀・弓道・空手の四人が集まっていた。
「世界情勢からの連絡は?」
「六人全員の画像と大まかな情報だけ。後は期待できそうに無いな」
長刀の問いに、それが当然の様に答える剣道。
「今さらどうこう言っても仕方ないでしょう」
「だよな、ここまで来たら、打ち合わせ通りにやるしかねーさ」
弓道と空手の言葉を最後に、四人は無言となる。
剣道が先頭となり、長刀、弓道、最後に空手が殿となって玄関の引き戸から入っていく。
下駄箱の先から廊下は前と左の二つに分かれていた。
正面の廊下は左右の壁に備品室や特別教室の扉が並び、突き当たりには体育館の扉。
その扉のすぐ側には二階への階段。
左は各教室の扉が両側に延々と並び、その奥は薄暗くて見通せない。
「剣道、どっちに行くよ?」
「正面だな。左は不意打ちには絶好の環境だ」
そう言って剣道が踏み出す。何時でも反撃が出来るよう、木刀を構えすり足で。
その刹那、下駄箱の影に妙な物を見つけた。
………足だ。誰かの両足だけが、下駄箱の影から覗いている。
全員が無言で目配せし、弓道と空手が背後を警戒、剣道と長刀が得物を向けつつ覗いてみると。
ムエタイと相撲とレスリングの三人が、折り重なるように倒れていた。
- 321 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 19:42:52 ID:VmBX0p50O
- 「ちょっ…ちょっと……何よこれ…」
長刀が絶句し、空手と弓道がちらりと振り返ろうとする。
「見るな!!」
剣道が二人を制し、倒れている三人を検分する。
顔面はパンパンに腫れ上がり、口・鼻・頭から流血し、全身に痣、三人全員が失神しているようだ。
突如、場違いなメロディーが鳴り響いた。剣道の携帯に着信が来ている。
《もしもし!主将、大丈夫ですか!?》
「あぁ、今の所はな。どうした?」
《どうもこうも無いですよ!いきなりあいつらが仲間割れしだしたんです!》
「……それで?」
突然の部員からの報告、しかし剣道は驚愕する様子は見せない。予想の範囲内だったからだ。
いや、正確に言うならば予想のギリギリ範囲内と言うべきだったのだが。
《相撲部とレスリング部とキックボクシング部、それにムエタイ部も壊滅状態です!》
「他には?」
《ボクシング部とテコンドー部とそれに……》
そこで、プツンと通話が切れた。
圏外でも電池切れでも無い。何かが電話の向こうで起きたようだ。
剣道の背中を冷や汗が伝う。
予想通り?予想のギリギリ範囲内?
実は、事態は全然予想範囲外なんじゃないか?
最後の【それに】とはどういう事だ?
- 322 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 19:45:31 ID:VmBX0p50O
- 予想はしていた。
敵の敵は味方。共通の敵を撃滅する為に組んだ敵。つまり一時的な味方。
じゃあ、その一時が過ぎたらどうなる?共通の敵を倒した後はどうする?
それを考えていたなら、いずれ来るその時に備えて戦力を出し惜しみする。
一時は組んだ敵が、敵の敵を倒した後に再び敵に戻る事を想定して叩く準備をする。
それは当然だ、至極当然な事だ。
しかし………まだ敵の敵、共通の敵が倒れる前に叩く、というのは早すぎないか?
自分だけでは倒せないから組んだのに、倒す前から裏切ってどうする。
それでは組んだ意味が無い。
………いや、本当は倒せるのか?
共闘中の仲間を切り捨てても勝てるだけの、とっておきの何かがあると言うのか?
「剣道!どうしたのよ!説明しなさいってば!」
「仲間割れ、内乱だよ」
長刀の問いに答えたのは、剣道では無い。弓道でも無く、空手でも無かった。
声を発したのは、左側の廊下にいつの間にか現れた一人の男子生徒。
その服装は制服では無くいかにもなミリタリーファッション、と言っても雑誌で紹介されるそれとは違い、まるでどこかの特殊部隊のような物だった。
「…そう言えばあんたらとは話した事が無かったな。俺がコマンドサンボ」
「件の大会にも出ていないから詮無き事だろう。俺達のやり方はえぐすぎるからな。俺がマーシャルアーツだ」
言葉を継いだのは、先の特殊部隊風の生徒の背後から現れたもう一人の男子生徒だった。
その服装も例に漏れず、いわゆる都市迷彩の施された軍服風。
「こいつらは嵌めたつもりが嵌められたってわけだ。馬鹿な奴らだ」
コマンドサンボが、倒れている三人を顎で指し示した。
- 323 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 19:49:52 ID:VmBX0p50O
- 「…さて、喋りに来たわけでもないし、やり合うとしようか」
コマンドサンボの言葉に反応し、四人がはっとしたように身構える。
「剣道、長刀、お前ら二人は、ボクシングとテコンドーから指名が入ってるからな。行っていいぞ」
マーシャルアーツの制止に、長刀が問う。
「ていうか、私達四人であんた達二人をボコボコにするって選択肢もあるんだけど?」
長刀の問いにさもおかしそうな忍び笑いを漏らしてコマンドサンボが答える。
「くく、戦力集中で各個撃破。悪くない戦術だ………しかしお前達は武道を学ぶ者として、それを良しとするのかな?」
「そ、そんなの知らないわよ!あんた達だって散々やってきた事じゃないっ!裏切りまでしてるし!」
「くくくっ!他はどうだか知らんが、俺達は良いんだよ。実戦的な殺人術を学ぶ者として、ルールに縛られる方がイレギュラーだからな!」
「行けよ。二人共」
「二対二、同じ数で負ける筈がありません。それともお二方は私達の実力を疑っているのですか?」
「……二人とも、本当に大丈夫か?」
「当たり前だ。殺人術?それがどうした。実戦的なのは空手も同じだ」
「ほら、空手も弓道もこう言ってるぜ?剣道君よ?二階の生徒会室だ、さっさと行ったらどうだ」
「わかった。長刀、行くぞ」
「あんたってほんとわかりやすい性格してるよね………はいはい、わかりました」
「おい、コマンドサンボ、マーシャルアーツ。一つ言っておく」
「何だ」
「その二人に何か卑怯な真似をしてみろ。俺が、何があろうと何処にいようと何時になろうとお前等を殺す」
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