■トップに戻る■ 前のページ『部活闘争編 本編 page.1』へ 次のページ『部活闘争編 軍事サイド』へ
部活闘争編 本編 page.2
- 324 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 19:53:38 ID:VmBX0p50O
- がちゃりと、旧生徒会室の扉が開かれた。
ボクシングとテコンドーの二人は、部屋の入り口から離れた、左右の角に背を預けている。
「よ、久しぶり。トーナメント以来だな?」
ポケットに両手を突っ込み、にやにやと笑いながらボクシングが言う。
その矛先は当然ながら剣道と長刀の二人。
ボクシングの言葉に応じる事無く、剣道は室内を目だけ動かして見回す。
広さは10数メートル四方といった所だろうか。中央には円卓のテーブル、そこら中にパイプ椅子が転がっている。
この間合いなら、木刀を使うにせよ長刀を使うにせよ、不利にはならないだろう。
「おーい、シカトすんなよ。ちょっとは驚かないのかなぁ?コレとかさぁ」
そう言ってボクシングが足元に転がった人体に視線を移す。
それは、ボロボロになったキックボクシングの姿だった。
「……お前らがやったのか、そいつも、あの三人も」
「正解!スーパーひとし君をプレゼント!」
「なぜ今やる必要があった?俺達を倒した後でも良かっただろう」
「あなたの言っている事はむしろ逆で、彼等を潰すのは今、今でも別に良かったの」
「そーゆー事。ほんとはお前らとあの馬鹿共がやり合った後で残った方を潰すのが最良だったんだけど、コイツが気付いたせいでさ」
恐らくは気を失っているだろうキックボクシングの頭を踏みつけ、忌々しそうな顔をするボクシング。
「…あんまり驚かないんだな」
「お前らの裏切りは、ある程度予想していたからな」
「予想はしていた、ねぇ。正確には、これは裏切りじゃないんだよ」
「はぁ?裏切りじゃなきゃ何だって言うのよ」
「だってさぁ、俺達は初めっからこの馬鹿共を嵌めるつもりだったんだし」
- 325 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 19:56:18 ID:VmBX0p50O
- 「そもそも、俺達が本当に組んでたのはコマンドサンボ達の方、こいつらは捨て駒君ってわけ」
「……いつから計画してた?本当はあのトーナメントの前からなんじゃないのか?」
「鋭いね!それも正解!コマンドサンボ達とは、二カ月位前から計画してた」
「トーナメントの遺恨は、私達に敵対する部………捨て駒を調達する恰好の餌だったって事?」
「まぁそれだけじゃないけどな。実際、俺もテコンドーも、あの大会じゃお前ら二人に痛い目見せられたわけだし」
「俺達を潰して雪辱を晴らし、その戦果で名を売って勢力拡大、という筋書きか」
「そうですそうですびっくりするほど大正解!…ちなみに、この争乱はお前らの自業自得でもあるんだけどな」
「自業自得!?ふざけないでよ!」
「あなたの言った事はむしろ逆で、私達は至って真面目、真面目に言ってあなた達のせいでもある」
「あの大会の前から計画は整ってたんだけどなぁ、捨て駒を入手するきっかけが見つからなかったんだよ。標的も決めあぐねてたし」
「俺達が優勝・準優勝をした事で、きっかけも標的も見つかった……」
「飲み込み早いねぇ。有力な部を八つも叩き潰した名声、それにより部員が増えて勢力拡大、直接的なメリットとして敵が減るってのもありだな」
「ところで、あんたらの素晴らしいお話一つツッコミ入れていーい?」
「ツッコミ?」
「お前らが潰せるのは四つだけ。俺達が逆にお前らを全員叩き潰すからだ」
「無理だね」
「無理じゃない」
「…………上等だ、やれるもんならやってみろよ?」
ボクシングが挑発をするが早いか、二人が飛び込んだ。
- 326 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 20:01:12 ID:VmBX0p50O
- 向かってくる剣道に対し、ボクシングはハンドポケットのまま微動だにしない。
一方の長刀に対するテコンドーも、回避する素振りは見せないままだ。
何故だ?先の相撲じゃあるまいし、武器での一撃を受ければその部位は良くてヒビ、悪ければ骨折。
まさかSF映画よろしくバリアを張っているわけでもあるまい。
(………考えても仕方が無い!兎に角、打つっ!!)
剣道が頭を、長刀が胴を狙い、自身の得物を全力で、最速で振るったその時。
金属音。
肉体と木製の武器が衝突して鳴る筈が無い音だ。
二人の攻撃は、それぞれ拳と足で阻まれていた。
ボクシングの両手には俗に言うカイザーナックル、テコンドーの靴には鉛が仕込まれていたのだ。
「なっ!?」
驚愕の余り、剣道の動き一瞬停止してしまう。
その隙を狙いボクシングが右のストレート。
「くっ…!」
木刀を斜めに構えて顔を庇う。
が、拳の軌道はフォークボールの様に落ち――――肋へ。
とっさに半歩後退するも時すでに遅し。
みしり、と嫌な音。次いで激痛。
「が……かはっ…ぁ!!」
そこへボクシングのラッシュが剣道を襲う。
- 327 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 20:03:55 ID:VmBX0p50O
- まるで腕だけが独立した別の生物であるかのように、左右上下に斜めを加えた複雑な軌道で二つの拳が飛んでくる。
「(糞っ!!速すぎる!)」
それら全てをギリギリの所で回避ないしは木刀で防ぎながら、剣道がじりじりと後退していく。
ボクシングのパンチは、以前の大会で放ったそれよりも遥かに速かった。
殆どが手打ち、つまり体重を乗せた大振りのパンチでは無いからだ。
そうすると通常なら必然的に威力は落ちる事となるが、それを差し引いても、カイザーナックルを嵌めた状態ならば威力は十二分に足る。
つまり今のボクシングの攻撃は、威力・スピード・連射性の全てが高レベルで備わった物という事になる。
ジャブの連打からストレート、左右のフック。
怒涛のラッシュにより剣道の注意が完全に上に逸れた所で、不意に視界からボクシングが消えた。
下。
気付いて剣道が視点を落とした時には、アッパーが顎を目指して這い上るように繰り出されていた。
倒れ込むようにして無理やり体を反らせて回避…………どころか、そのまま剣道は仰向けに倒れてしまう。
「馬鹿がっ!!」
無論この絶好の機会を逃す筈も無く、その頭部へ向けて、ボクシングが右の拳を放つ。
右の打ち下ろし、俗に言うチョッピングライト。
ただでさえ強力なボクサーの拳。それにグローブを嵌めずに打てば、その威力たるや生半可な物では無い。
ましてやその拳に凶器を装備し、尚且つ全体重を乗せた場合――――
その破壊力は、人間を最悪即死に至らしめる程、まさしく殺人的な物になる。
- 328 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 20:07:07 ID:VmBX0p50O
- 拳が真っ直ぐに顔面目掛けて突き進む。
鼻を潰し、歯をへし折り、顎を砕き、眼底を砕き、自らを大観衆の前で敗北させた敵を打ち砕く為に。
しかし鼻先で拳は止まり、そのまま猛スピードで後退してしまった。
後退したのは拳だけでは無い、それを放ったボクシングの体も後退し、凄まじい勢いで壁に叩きつけられた。
「げほっ!!く……!!!」
咳き込むボクシングの腹部には、濃く靴底の跡が残っている。
拳が直撃するかと思われた瞬間に、渾身の力で剣道が腹に蹴りを入れたのだ。
痛む肋を押さえつつ、剣道がよろよろと起き上がる。
木刀を片手に、ボクシングに向かって走り出した。
その動きは武道の動きとはまるで無縁、バトンを片手に全力疾走するランナーのような動作。
その奇妙な行動にボクシングは一瞬困惑し…思い出したように慌てて身を起こす。
両者の距離が凡そ2m弱の所で、剣道が木刀を振り上げた。
その動作もまた奇妙な物だった。
振り上げるというよりは、ハンマーか何かで殴り掛かるような、振りかぶるというのが正しいような。
ここでボクシングはまたも困惑してしまう。
突きならばこの距離はギリギリ射程内、しかし…斬撃にはまだ遠いだろう。
それにあのモーションは何だ?思い切り振り被って、まるっきり隙だらけな素人の動きだ。
ボクシングの困惑を余所に剣道が腕を振り、木刀を
投げた。
- 329 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 20:12:46 ID:VmBX0p50O
- 「はぁっ!?」
その突飛な行動に一瞬呆気に取られるも、身をよじって顔面すれすれにボクシングは木刀を避ける。
その避け方はオーバーな動作で無く、あくまでも最小限の動き。それは格闘技に於いて正しい、お手本となるような動き。
その結果、全力で投げつけられた木刀はボクシングの背後にある窓をブチ破る事となった。
その凄まじい音に、反射的に剣道以外の全員が窓へ視線を移す。
長刀も、テコンドーも、そしてボクシングも。
ボクシングが視線を正面に戻した時、既に目前まで剣道は走り込んでいた。
とっさに殴りつけようとするも、両の二の腕を掴まれて腕を封じられてしまう。
改めて眼前の剣道を見てみれば、その表情には明らかな怒気、そして特攻隊を思わせる決死の表情。
(……まさか…)
「おおおおおおおぁぁぁぁぁっ!!!」
剣道が力の限り吠える。
(まさかまさかまさか)
剣道がボクシングの二の腕を掴んだまま、恐ろしい力で突進する。
その力にろくな抵抗も出来ずボクシングが押されていく。その背後には……………
(まさかこいつ――――!?)
窓枠に残った僅かなガラスを砕き、そのまま二人の姿が、窓枠から消える。
ドスンともドシャリともつかない重量感のある落下音が二つ、響き渡った。
- 330 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 20:16:42 ID:VmBX0p50O
- 一方、一階では。
かつての教室内で、コマンドサンボ達と空手達が対峙していた。
といっても、未だに戦闘が始まっていないわけでは無い。
その逆、もう既に決着がつく寸前だった。
黒板を背にして弓道が膝を着き、それを庇うように空手が構えている。
その左瞼からは夥しい出血が見られ、右目は青黒く腫れて塞がっていた。
二人と向かい合うようにして、コマンドサンボとマーシャルアーツがにやにやと薄ら笑いを浮かべて立っている。
その背後には、更に二人の男子生徒が、やはり薄ら笑いを浮かべ、観察するような眼差しを弓道と空手に向けていた。
片や背の高い黒のドレッドヘアー、片や全体的にゴツゴツとした体つきの茶のストレート。
「まぁまぁ頑張った方だがな、さすがに四人相手ってのはどうしようも無かっただろう?」
「……柔道に…カポエラまで…組んでやがったのか……」
余裕たっぷりに話すコマンドサンボとは対照的に、息も絶え絶えに答える空手。
「俺達の部は数が少ないからな、お前らと真っ正面からやりあったら結構きつい物がある」
「ま、頭さえ倒せれば後は総崩れになるし。のこのこ来てくれて感謝感謝だよ」
カポエラと柔道が上機嫌に言う。
「くくっ!とんだ間抜け揃いだな。お前らも、相撲達も、ボクシングもテコンドーも」
「間抜け……?ボクシングと…テコンドーは……それこそお前らと組んでたんじゃ…?」
- 331 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 20:22:32 ID:VmBX0p50O
- 「それは、ついさっきまでの話だ。……もうそろそろ、二階もケリが着く頃か?」
ごきごきと首を鳴らしながらコマンドサンボが、隣のマーシャルアーツに問う。
「大体良い頃合いだな。こいつらを片付けて、二階の残った方を潰したら、ミッションコンプリートだ」
その言葉を皮切りに、四人がじりじりと距離を詰めていく。
「…お前ら……最低一人は……道連れにしてやる…」
「けほっ!私もただで負けるわけには…いきません!」
二人が身構えたその時。
カポエラと柔道が、ほぼ同時にぶっ飛んできた。
車にはね飛ばされたかの様に、文字通りぶっ飛んできた。
そのまま二人は教室内に放置された机やら椅子に激突して、ごろごろと床を転がった後に停止。
それっきり、起きる様子は無かった。
異変に気付いたコマンドサンボとマーシャルアーツが振り返ると―――――――そこには、奇妙な男が立っていた。
金髪、ジェイソンマスクを被り、両手には血の付いた金属バット。
半袖のシャツから覗く両腕には、いわゆるトライバル型のタトゥーが彫られている。
服装こそ男子生徒の夏服だが、その風体は異常極まりない。
「何者だ」
コマンドサンボが問う。表情こそ平静を取り繕っているが、その内心は混乱が渦巻いていた。
「通りすがりのジェイソンなんだけど、ちょっとバッティングセンター探しててよ。ところが道に迷っちまってさ」
- 332 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 20:26:50 ID:VmBX0p50O
- 「何を言って」
動揺する二人を無視するように、ジェイソンマスクの男は淡々と話し続ける。
「仕方ねえからコマンドサンボ君とマーシャルアーツ君の頭でも打って我慢しようかなー、なんて」
物騒な事を気軽なノリで言いながら、ジェイソンマスクの男はバットでとんとんと肩を叩く。
「あの、アウトローさんですよね?」
「あれ?バレた?」
「そんな入れ墨入れてる生徒、私の記憶ではアウトローさんだけです」
「ったく、せっかくマスク付けて来たのになぁ……」
弓道にツッコミを入れられてマスクを放るアウトロー。
「3対2だけど今更卑怯なんて言わねえよな?さっさと済まそうや」
「貴様、不意打ちのまぐれ当たりで調子に乗るなよ」
「チンピラが…。お前一人増えた所でどうこうなると思ってるのか!!」
アウトローの言葉にコマンドサンボとマーシャルアーツが激昂する。
「ルールに縛られたリングの上なら、間違い無くあんたらが上だろうな。でもよ、これは実戦だ。
あんたらもかなり実戦向きなんだろうが……………」
一旦言葉を切り、アウトローが続ける。
「ここにはルールも法も秩序も無ぇ。その範囲外、つまり外側。そういう所での争いこそが俺の領分、俺の専門分野。
だから、俺はアウトローって名前なんだ」
「さぁ、始めようや。この先の人生、俺のツラ見ただけで震えあがる程、徹底的にやってやるよ……」
- 333 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 20:30:08 ID:VmBX0p50O
- 体が、動かない。
(どれぐらいの高さだ…6m…もう少しあるかな…)
地面に仰向けに倒れたまま、剣道はガラスの無くなった窓枠をぼんやりと見つめていた。
すぐ側にはボクシングがうつ伏せに倒れ、頼りの木刀はギリギリ手の届かない所に落ちている。
(あいつら…無事だと良いんだけどな……助けに行ってやりたいのはやまやまだけど……俺はこのザマだし)
転落により全身を強く打ち、痛めた肋骨は何本か折れてしまったようだ。
全身に激痛が走る所を考えると、他の箇所もどうやら亀裂骨折ぐらいはやってしまったかも知れない。
(無茶しすぎた…かな……)
とはいえ、最良の手段では無かったものの、ボクシングを撃破するにはこの手段を取らざるを得なかった、と剣道は考える。
そもそも、肋をやられ、至近距離に入られた時点で勝ち目は無かったのだ。
至近距離に入られてラッシュを掛けられれば、最早こちらには攻撃に転じる術は無い。
蹴り飛ばして距離を作ったと言え、攻撃するにも防御するにも肋の痛みで集中を削がれる。
そうなれば、遅かれ早かれいずれ致命的な一撃を喰らう事になっただろう。
つまり、どん詰まりだった。
「こ…の…野郎…!やって…くれやがって……!!」
ゆっくりとボクシングが起き上がる。
両足はたたらを踏み、今にも再び倒れんばかり、目だけが異常にギラついている。
- 334 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 20:33:39 ID:VmBX0p50O
- 「卑怯だと……」
よろよろと、よたよたと、危なげな足取りで剣道へ歩みつつボクシングが呟く。
「卑怯だと、思うか?」
倒れた剣道を見下すように側に立ち、幽鬼のような形相で問う。
だが剣道は応じる事なく、ただその姿を見据えている。
「卑怯だろうが何だろうが、勝ちゃあ良いんだ。勝つのが第一で、品格なんざ二の次でいい。
俺は…今までいっぺんたりとも負けた事なんかねぇ。テメェ以外には、な」
時折ふらつきながら、そして額からポタポタと血を流しながら、ボクシングが続ける。
「テメェらは優勝した。それは認めよう。
しかし、だ。それは武器を持っていたから、武器を使ったからこその勝利だ。
テメェらから言えば、じゃあお前らも武器を使えば良いって理屈になるのかもしれねえが……。
大多数の格闘技ってのは、素手でやり合う事を前提とした物だろ?武器を持てば逆に強さが、長所が損なわれる物が殆どだ。
例えば柔道、レスリング何かが良い例だな…【掴む】事を主に据えている格闘技は、武器を持てばリスクが発生する。
その点、テメェらは違う。自分も相手も武器使用を前提とした……悪く言えば、武器がなければどうしようもねぇ技術体系だ」
どうしようもねえ、の部分を特に強調しつつ、ボクシングが続ける。
「俺やテコンドーは、更に違う。打撃を主とする俺達は、四肢の先端に武器を装備する事で、長所を、強みを殆ど損なう事なく、強さを上乗せできる。
その結果がこれだ。素手ならテメェより俺が強い。武器を使っても俺の方が強い……この状況が、何よりそれを証明してると思わねえか?」
「…これで……満足…か?」
剣道の言葉に、ボクシングはゆっくりと首を振る。
「全然足りねえよ。テメェを五体不満足にしても……きっと俺は満足しねぇ」
- 335 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 20:35:24 ID:VmBX0p50O
- 「…俺を…殺す気か?」
「さっきまでは半殺しで済まそうと思ってたけどな。テメェの面見たら…殺してやりたくなっちまった。
どんな手段であろうと、負けた事―――その汚点は必ず拭う。テメェを殺して、負けその物を帳消しにしてやる」
「そんな…事の為に……殺人を犯すのか………」
「なーに、部員総出で処理すればバレやしねえさ。幸い俺らにゃ、スポンサーも付いてるからな」
ボクシングが右腕を思い切り振り被る。メキメキと、拳を握り締める音。
その目には、溢れんばかりの憎悪と殺意を湛えている。
「最後の最期だ。武士道精神見せて…………潔く、散れ」
冷酷に言い放ち、ボクシングが拳を振り下ろした。
- 336 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 20:37:10 ID:VmBX0p50O
- 「…?」
ぽつり、ぽつりと、水滴が顔に当たる。突然の降雨に、ふとボクシングの拳が止まる。
日が少しづつ落ち始めて幾分暗くはなっているが、雨雲が空に掛かって暗くなったわけでは無い。
心なしか、徐々に雨足は強まってきた。
ふと奇妙な事に気付く。なぜ、この雨は斜めに降っているのか。
いや、斜めというよりは横殴りと言っても良い。
それに……なぜ背後からエンジン音が聞こえてくるのか。
なぜ、エンジン音の大きさと雨足が比例して強まるのか?
足元に転がる剣道の顔を見やると―――唖然とした表情を浮かべている。
その視線の方向は、ボクシングの背後。
何だ?こいつは何を見てそんな表情を?俺の後ろには何が?
それにこのエンジン音は何だ?
……何で、何でこの雨は俺の周りにしか降っていないんだ?
大量のハテナマークがボクシングの頭の中を、思考を埋め尽くす。
疑問や不安や少しばかりの好奇心に耐えられず振り返ってみれば、そこにあったのは…
放
水
車
?
- 337 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 20:42:23 ID:VmBX0p50O
- 学校のグラウンドを、放水車がそこら中に水を撒き散らしながら走ってくる。
その余りにシュールすぎる光景に、ボクシングも剣道も声が出ない。
ただ、絶句するばかり。
放水を止め、二人から5、6m離れた所で停車。
ホースを抱えた一人の生徒が、車体天井部分に現れる。
『田代砲www発射wwww』
その声と共に、猛烈な水圧を伴った消火剤入りの水がボクシングにぶち込まれた。
「ぶおわぁぁっ!?」
為す術も無く吹っ飛ばされ、ボクシングの体が外壁に叩きつけられる。
「ぐぅっ!!!……ぁ…が…」
「遅くなりましたっ☆剣道さーん、生きてますかっ?」
窓を開けた助手席から快活な声で呼び掛ける女生徒。
「危うく殺人事件が起きるとこだったな」
同じく窓を開け放った運転席から、男子生徒が言う。
「誰かと思えば……世界情勢……そっちは…ラウンジと……vipか……」
息も絶え絶えに、巻き添えを喰って泡まみれの剣道が呟く。
『大規模火災を消火しにきますたwwwww』
「あれは言葉のあやですよっ!」
「まあまあ、結果オーライだから良いじゃないか」
「結果オーライ…だと?…ふ…ふざけんじゃねえテメェら!!」
やはり泡まみれになりながら、震える足で立ち上がって、ボクシングが怒鳴り散らす。
- 338 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 20:46:35 ID:VmBX0p50O
- 「これはルール違反だ。確かにお前等にそう言ったよなぁ?…あ?剣道よ」
そう言って、さもおかしそうにボクシングが笑う。
「助っ人が来たら総力で叩き潰す、だっけ?さっき、弓道から電話で聞いた」
応じたのは、剣道では無くラウンジ。
「あなた達が、本当はコマンドサンボ達と組んでた事も聞きましたよっ☆」
『お前らの総力、頼りの戦力はもう無いんだけどなwwww』
無い?何を言ってるんだこの三人は。
六つの部の連合だぞ。何があったら無くなると?
「な、何をふざけた事を」
「テコンドー部とボクシング部、どっちも全滅しましたっ☆」
何を、何を、何を言っているんだこいつらは。馬鹿な、そんな事あるわけが。
「コマンドサンボ部と、他の四つの部に裏切られて、あなた達の部は全滅ですっ」
裏切った?あいつらが?そんな事が、あるわけが、有って良いわけがない。
「更に悪い知らせを伝えましょうかっ?あなた達の部が必死に抵抗した事で、裏切った四つの部にもかなり被害が出て――――」
内乱による潰し合い。それが意味する物は。いやだ、その先は、聞きたくない。
『屋内の奴らを剣道・長刀・弓道・空手部が強襲wwwwお前ら六つの部は全滅wwwwキングカワイソスww』
「で、屋外に居た奴らは全員、俺達が放水でぶっ飛ばして来たと」
- 339 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 20:48:55 ID:VmBX0p50O
- 自業自得、因果応報、人を呪わば穴二つ。
裏切りの報い。裏切る者はいずれ裏切られる。
「だ、誰が信じるか!信じられるかそんな事!!」
『だったらwwお前らの部員に電話汁www』
そうだ、電話すればわかるじゃないか。ええと、携帯は。ポケットの中だ。
番号をアドレス帳から選んで、糞っ、泡で手が滑りやがる。落ち着け、慌てるな。嘘に決まってる、嘘なんだ。
嘘だとわかったら部員全員でこいつらを袋叩きで半殺し、いや、全殺しにしてやろう。
通話ボタンを押して、耳に当てて…。
おかしいな、出ないぞ?部長からの電話をシカトしやがって、後で一発殴ってやる。
別の奴だ、別の部員なら出るだろう。
…出ない、どうなってる?
畜生、別の部員だ、出ない、じゃあ別の部員だ、また出ない、こいつも出ない、あいつも出ない。
………ん?【弓道から電話で聞いた】だと?
「弓道から?あいつらは今頃」
「アウトローさんが援軍として行きました☆あっちはもう終わったそうですよ☆」
【終わった】。
【弓道から電話が来た】
それはつまり、コマンドサンボ達が敗れたって事じゃねぇか。
もうどう足掻いても、詰み、王手、チェックメイト、袋小路、行き止まり、どん詰まり。
- 340 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 20:53:12 ID:VmBX0p50O
- いや、まだテコンドーは敗れていない。電話をするんだ。あいつが無事なら、最悪こいつらに一矢報いる位は出来る筈。
呼び出し音が鳴る。一回、二回、三回、四回、五回、六回………出ない。
手が震える。携帯を地に落としてしまう。手が震えて拾えない。
有り得ない、こんな結末、有って良いわけが無い。
認めない、認められない、認めてたまるか。
悪戦苦闘の末に携帯を拾い上げ、顔を上げたその時。
目の前に剣道が居た。
両腕で木刀を振り上げ、今まさに振り下ろさんとする姿。
木刀が迫ってくる。反撃はもう間に合わない。回避する時間も無い。喰らって立ち上がる体力も残っていない。
止めを刺しておけば良かったのだ。あいつらの会話などせずに、電話などせずに。
その間に、剣道を休ませてしまった。
一撃を繰り出すに足る体力を、回復させてしまった。
これもまた自業自得。己の行動が呼んだ敗北。
いや、剣道に止めを刺していたにせよ、あの放水の直撃を受けた時点から負けは確定していたのか。
いやいや、裏切られたのが事実なら、コマンドサンボ達と組んだ時点で行き着く先には敗北しか無かったのか。
どちらにせよ…敗北?
負ける?嫌だ!それだけは嫌だ!負けるのは絶対に嫌だふざけるな認められるかあってたまるか冗談じゃねえ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
嫌
渾身の力を振り絞った面が炸裂し、ボクシングが崩れ落ちる。
抗争が終わった瞬間だった。
- 341 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 20:55:45 ID:VmBX0p50O
- ここから先は後日談です。。。
- 342 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 21:03:38 ID:VmBX0p50O
- 〜〜vip宅にて〜〜
世界情勢「皆さんお疲れ様でしたっ☆」
ラウンジ「人生で一番忙しい一時間だったぞ…」
『アウトローとサバゲーと軍事に連絡取ってwww大至急戦闘準備してもらってwww』
ラウンジ「占実さんに敵の居場所、全部占ってもらったりな」
アウトロー「せっかく吉宗BIG引いてたのに呼びやがって……まぁ、俺は久々に暴れて結構楽しかったけどな」
サバゲー「私達も頑張ったんですよ!軍事先輩と生徒会側の部の援護をして、パララララララッ〜っと」
軍事「あんな派手な屋内戦は初めてだったな。不謹慎だが俺も楽しかったよ」
ラウンジ「しかし、どっかの誰かが放水車借りて来たのは度肝抜かれたよな」
『公務員から借りて来たwwwwまたやりたいなwww田代砲テラタノシスwww』
ラウンジ「名案だったとは思うけどな。格闘技やってる奴らを一気に鎮圧するには、あれぐらい必要だろうし」
『決め手としてはwwあいつらが裏切りまくって潰し合った事だけどなwww』
世界情勢「……それこそ自業自得と言う事なんでしょうね」
サバゲー「剣道さん達はどうなったんですか?」
世界情勢「敵も味方も部長クラスは殆ど入院ですっ。どこの部も副部長は過労死寸前で、胃潰瘍になった人も居るみたいですね☆」
アウトロー「生々しくて嫌な話だな……つーか☆付ける内容じゃねーよ」
ラウンジ「近い内、見舞いにでも行くか、防具借りた礼もあるし」
アウトロー「とりあえずみんなお疲れさん。土日にまた飲み会でもしようや」
世界情勢「今度は私の奢りで良いですよっ☆経費少しちょろまかしますからっ」
『ちょwwwおまww今回ww少しキャラ違うってwwwwつぅえww』
- 343 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 21:07:23 ID:VmBX0p50O
- 〜〜帰り道〜〜
アウトロー「あー…疲れた」
世界情勢「アウトローさん大丈夫ですか?痣だらけですよっ?」
アウトロー「あ?これ?どうって事ねーよ。日常茶飯事だしな」
世界情勢「強いんですね……部長クラス四人相手に勝っちゃうし。普通、部長クラスと戦って勝つ素人なんかあり得ませんよっ?」
アウトロー「不意打ちで二人倒してるし、弓道と空手も居たから実質三対二だったけどな。それでも…ぶっちゃけヤバかったかも」
世界情勢「ぶっちゃけですか」
アウトロー「ぶっちゃけですよ」
世界情勢「ふふ、なんかアウトローさんが敬語使うと違和感ありますね☆」
アウトロー「やっぱり?」
世界情勢「…あの、さっき言ってたBIGって何ですか?ノトーリアスですかっ?」
アウトロー「そりゃB.I.G.だろ。BIGってのは、なんつーか、スロットの大当たりの事だよ」
世界情勢「ごめんなさいっ、せっかく当たったのに来てもらって」
アウトロー「いいよ、気にすんなって。スロットの当たりとダチの頼みを天秤に掛ける馬鹿はいねーよ」
世界情勢「友達思いなんですねっ。ていうか良い人ですっ」
アウトロー「実は俺、校内で一番優しい男ってガチで有名だぞ?知らなかった?」
世界情勢「……ぶっちゃけガチじゃないですよね?」
アウトロー「すんません、ぶっちゃけ嘘です」
世界情勢「やっぱり☆あ、何か食べて帰りましょうか?美味しいうどん屋さん知ってますよっ」
アウトロー「そこ、酒飲める?」
世界情勢「街中で飲むのは駄目ですっ!私、仮にも生徒会員ですよっ?」
アウトロー「ビ、ビール一杯だけなら…」
世界情勢「駄目ですってばっ。どうせ土日に打ち上げやるんですから、我慢我慢」
アウトロー「はーい…」
- 344 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 21:10:26 ID:VmBX0p50O
- 〜再びvip宅〜
ラウンジ「おい」
『……』
ラウンジ「おーい」
『………zZZ』
ラウンジ「起きろっつーの」
『…まくら…まくらが無いと…安眠デキナス…w……w』
ラウンジ「疲れたからってソファーで寝るな。つーか、俺はそろそろ帰りたいんだが」
『むにゃ…まくら……これで良いやwww……』
ポテッ
ラウンジ「膝枕かよ!良くねーよ!帰らせろ!」
『スー…スー……zZZ』
ラウンジ「再 び 寝 や が っ た 」
ラウンジ「しかしこいつ気持ち良さそうに寝てんなー」
『zZZ』
ラウンジ「起こすのも可哀想だし…もうちょっとこのままにしといてやるかな」
『zZZ』
ガチャ
ν速「……っ!?」
ラウンジ「………っ!!」
ν速「…………」
ラウンジ「………」
- 345 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 21:15:11 ID:VmBX0p50O
- ν速「………」
ラウンジ「……お、お邪魔してます」
ν速「あ、ああ……その、何だ。今回は、本当にありがとう」
ラウンジ「どうもいたしまして」
ν速「……ま、まぁ、お礼は後々生徒会から公式にするから、今日は、ゆっくりしていていってくれ。それじゃ、私は部屋に戻る」
ラウンジ「あ、はい」
ガチャ、パタン。
ラウンジ「気まずっ!!」
『今…誰かと話してたww?』
ラウンジ「会長、つーかお前のお兄さんと。死ぬほど気まずかったんだが」
『帰って来てたのかwww……テラ…ウザス…ネムス……』
ラウンジ「おい!寝るな!帰らせろって!」
『(´ω`)zZZ』
ラウンジ「vip…寝顔だけ見りゃ可愛いのに…」
〜ν速自室〜
ν速「あいつも小さい頃は素直で可愛かったのになぁ。
いつの間にやら、顔を合わせればウザスwwwとか言ってくるようになって。
………膝枕…昔よくしてやったなぁ……あれれ?目から…汗が止まらないよ…」
- 346 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 21:23:05 ID:VmBX0p50O
- 〜〜病室にて〜〜
コンコン
剣道「どうぞ」
カラカラカラ
長刀「うっわー。あんた痛々しい事になってるわね。何これ、ミイラ男?」
剣道「ミイラ言うな。お前だって松葉杖にギブスじゃないか」
長刀「あんたよりマシよ。自分で歩けるし」
剣道「俺だって自分で歩け……痛うっ!」
長刀「はいはい無理しないの。……あんたは無理な事と無茶な事しかする事無いわけ?」
剣道「それは否定できないな」
長刀「大体何?あの特攻みたいなの。ハリウッド映画じゃないんだから」
剣道「いや、あれは突き落とすつもりだったんだけどな。勢い余って自分も落ちたというか…」
長刀「死んでたらどうする気?まぁ……あれのおかげで、余所見したテコンドーに一発入れる事が出来たんだけど」
剣道「死んだら死んだ時だ。生きてるし勝ったし、結果良ければ全て良しだろ」
長刀「あんたってポジティブなんだかネガティブなんだか……ラウンジ君達にもお礼しときなさいよ」
剣道「わかってるって」
長刀「それじゃ、ミイラ男の見物も飽きたし、病室戻るから」
剣道「おう」
長刀「あんまり…心配させないでよね(ボソ」
剣道「何か言った?」
長刀「幻聴じゃないの?MRIで脳の検査でも受けてきたら?」
- 347 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 21:23:57 ID:VmBX0p50O
- ???「何であれだけ有利だったのに負けるんだよ?しかも全滅?吊って来いよマジで」
コマンドサンボ「申し訳ない、時期を見誤ったようだ」
???「せっかく俺がスポンサーとして就いてやったのに……これじゃダメダメじゃん」
マーシャルアーツ「四つの部が弱り切った今なら叩ける。今度は本格的な支援をお願いしたい」
???「もう良いよ」
コマンドサンボ「もう良い、というと」
???「なんつうかさぁ、飽きたし」
コマンドサンボ「あ、飽きたって」
???「…おい」
マーシャルアーツ「何だ」
???「二人とも、頭にゴミ付いてるぞ。取ってやるよ」
マーシャルアーツ「いい、自分で取る」
???「いいから動くなって。………取れないな。苛々してきた」
コマンドサンボ「だから自分で取ると言ってるだろうが」
???「あーもうめんどくせ。
あ ぼ ー ん 」
コマンドサンボ「えっ?」
マーシャルアーツ「あ」
- 348 :抜いたら負けかなと思っている :2005/08/13(日) 21:28:03 ID:VmBX0p50O
- 最悪「あは!また消したの、superfree」
superfree「だってうざかったからさ。うざい奴はゴミと一緒に消しても構わないだろ?【うざい奴=ゴミ=消していい】だよ」
最悪「あはははは!とんでもない理屈だね、相変わらず」
superfree「俺を退屈させる様な奴は全部消えていいんだよ」
最悪「あははっ!全く空恐ろしいね。あははっ!」
superfree「とりあえず今回の騒動には飽きたし、これでポイッと丸投げだな」
壁「で、次の退屈凌ぎの当てはあるのか?」
superfree「壁も来てたのか。当てなら有るさ、幾らでも有る。多すぎてどれから消そうか迷うくらいだ」
最悪「あはははは!恐ろしい、スーフリはほんとのほんとに恐ろしいね!」
superfree「暇さえあれば誰か憎んでるお前に言われたくは無いけどな」
最悪「あは!そりゃ酷い言い草だよね、ところで、次の暇つぶしは私に任せてくれないかな?」
superfree「誰か消したいって依頼なら、削除依頼(旧)を通して来いよ」
最悪「あはははっ!バレてるし。まぁ、まだ先の話だからさ、いずれ話すよ!」
superfree「精々期待しないでおくよ」
■トップに戻る■ 前のページ『部活闘争編 本編 page.1』へ 次のページ『部活闘争編 軍事サイド』へ