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本編 遊園地編(後編)
- 324 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 16:27:01 ID:86k/fi2/O
- メガビランド敷地内の隅。
パレードの場所を探す為、パンフとにらめっこをするvip。
その背後、superfreeの右手がゆっくりとvipの後頭部へ迫っていく。
がしりと右手の五指が後頭部を捕らえ………。
「あぼー「vip!」
superfreeの言葉に被さるように、何者かの声が響いた。
突然の声にvipとsuperfreeが、同時に声の方へ向く。
そこに立っていたのは、負傷した三戦と軍事、その二人に付き添うサバゲーと車。
「vip!その男から離れろ!」
二人から10m余り離れた場所から、拳銃を構えた軍事が叫ぶ。
無論込められているのは実弾では無いが、改造されている為、その破壊力は通常のエアガンや電動ガンとは比較にならない物だ。
『ちょwwwどしたおまいらwwってかなんで怪我してんだよwwwww』
「いいから離れろ!今すぐに!」
苦笑いに近い表情のvipに対し、凄まじい剣幕で軍事が言う。
「おいおい、どーしたって言うんだ?」
同じく苦笑いを浮かべるsuperfree。
突然、その懐の携帯から着うたが流れ出した。
「はいはい」
応答したsuperfreeに返ってきたのは、呻くようなインビジブルの声。
《わ…悪い……負けちまった……早めに…vipを始末して…ずらかれ…》
無言で電話を切り、superfreeが溜め息を漏らす。
「はぁ〜…そういう事は早く言えよ……まったく」
- 325 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 16:28:26 ID:86k/fi2/O
- 『今の状況を三行でwwww』
「俺が
君を
消す」
言うが早いか、superfreeの右手が蛇の様にvipに襲い掛かり――――
「伏せろっ!!」
小気味良い発射音と同時に、軍事の手の中の拳銃が踊る。
「………っ!?」
『ちょっwww』
vipがとっさに伏せ、superfreeは飛び退くように軍事の銃撃を回避。
しかし軍事は攻撃の手を緩めない。コートからもう一丁の拳銃を取り出し、二丁で連射を続ける。
「先輩っ!こっちです!早くっ!」
サバゲーの声に促される形で、vipが慌てて四人の方へ避難する。
一方のsuperfreeと言えば、追うでもなく逃げるでもなく、ただ立っているだけだ。
その足元の地面へ次々と軍事の放った弾が着弾してはいるが、superfree自身へは先程から一発も当たっていない。
(この男…)
その光景に、軍事は僅かばかりの戦慄を覚える。
弾が当たっていない、というのは軍事本人にとって驚く事では無い。
それもそのはず、この銃撃はvipを避難させる為の時間稼ぎと牽制を目的とした、言わば威嚇射撃だったからだ。
問題は、最初の数発でそれを当てる気が無い事を見抜かれた、という事。
それはつまり、こちらの力量と目的を即座に把握されたという事。
- 326 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 16:30:41 ID:86k/fi2/O
- かちり、と乾いた音がして銃撃が止む。弾切れだ。
それを瞬時に把握し、三戦が刀を抜き、軍事が弾倉交換を始める。
しかし対峙するsuperfreeは、やはり先程と同様にただ立っているだけだ。
「…なぜ、来ないんですか?」
サバゲーの言葉に、superfreeがくすり、と笑いを漏らす。
「そっちこそ、なんで逃げないんだ?」
「どういう意味―――」
サバゲーの言葉を遮り、笑いながらsuperfreeが言う。
「どうもこうもないさ。軍事君に三戦さん、二人共、園内で派手にやらかして来てるんだろう?」
superfreeが件の二人をちらりと見やる。軍事はとうに弾倉の交換を終え、今にも発射せんと銃を向けた状態だ。
「それにその物騒なモノ、さっきの発射音ならさすがに人も集まって来るんじゃないか?さて、この場から逃げるべきは俺かそっちか、どっちだと思う?」
「…逃がしてくれる、と言うわけでもないんだろう?」
軍事の言葉に、superfreeがゆっくりと首を振る。
「いや?逃げたいなら逃げればいいさ」
「なん…だと?」
「狩りだよ、狩り。娯楽としての狩りは、仕留めるという結果よりも、追い掛けるという過程にこそ娯楽性が存在するんだよ」
「三戦」
軍事が銃を構えたまま、三戦に話し掛ける。
「わかってる……この男…かなりできる……」
二人のやり取りを見ていたsuperfreeがやや退屈そうな表情で言う。
「で、どうする?どうしても、って言うならこの場で殺り合ってもいいんだけど……」
一旦言葉を切り、わざとらしくポンと手を打つ。
「………あ、そうだ。10秒数えるから、その間に逃げていいぞ」
- 327 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 16:32:09 ID:86k/fi2/O
- 「先輩、どうします?」
サバゲーの問い掛けに、軍事は周囲を見回し戦力分析を始める。
一般客はまだ来ていないようだが、なんにせよ園内でこれ以上の戦闘は不味い。
「数えるぞー、10」
こちらは自分と三戦を含め負傷者が二人、非戦闘員が二人。
「9」
サバゲーは無傷に近いとは言え、今日は限りなく非武装に近い軽装のみ。
「8」
「7」「…撤退だっ!園内から脱出するぞ!!」
「きゃっ!」『ちょwww』
カウントが7秒に達すると同時に、軍事がサバゲーとvipをひっつかむ様にして走り出す。
「5」
「車、走れ!」
「な、生身で走るのは自信無いって!」
三戦と車も三人の後を追い、駆け出していく。
「4」
「3」
「2」
「1」
「0」
「さて、始めようか」
- 328 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 16:34:55 ID:86k/fi2/O
- 「あははは、いいなぁ。そんな優しいラウンジ君と仲良しで、人気者で少しくらいのバカやっても多目に見てもらって。vip君って羨ましいな。羨ましくて妬ましくて憎らしくて憎くて憎くて憎くて憎くてたまらないよ全く」
吐き捨てる様に最悪が言う。
ラウンジの背を冷や汗が伝い、鳥肌が全身に伝播する。
最悪から放たれる物は、以前ボクシングが見せた荒々しい狂気とは違う。
それは、じわじわと浸食してくる、コールタールさながらの粘つく悪意。
「全部…消えちゃえばいいのに」
ぽつり、と最悪が呟くと同時に、ラウンジの携帯に着信が入った。
「はい、もしもし」
《ちょwwwなんかヤバスww逃げんぞww》
「笑ってる場合じゃねえだろ!場所は!?場所はどこだよ!?」
《今出口に向かってるwwwラウンコも急げwww》
そこでプツリと通話が途絶えた。
未だに状況を把握しかねるラウンジの横で、今度はラウンジと最悪の携帯に、同時に着信が入る。
「もしもし軍事か!?いったいどういう」
《話は後だ、今すぐに園内から逃げろ!》
「もしもーし、どうしたのスーフリ?」
《悪い悪い、逃げられちまった。奴らは園内から出る気だろう。追うぞ》
「逃げろって言われても」「追うって言われても」
二人の声がハモる。
「最悪さんはどうすれば…」「あのさ。こっちにラウンジ君居るんだけど」
《いいから最悪も連れて早く出ろ!》《ラウンジは放っておいて早く来い!》
「…わかった!」「……はいはい」
- 329 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 16:37:58 ID:86k/fi2/O
- 二人同時に通話が途切れ、やはり同時に携帯を仕舞う。
「(あは、どうしよっかな。ていうかスーフリの馬鹿は何で取り逃がすなんてヘマを……)」
逡巡する最悪の手に強い圧力が掛かり、その体が急に引っ張られる。
「えっ!?ラ、ラウンジ君っ?」
「最悪さんも早く逃げるぞ!ほら、急いで」
「ちょっ…私は…」
「いいから早く!」
何かを誤解しているラウンジに、強引に引っ張られる形で最悪も出口で連れられていく。
残ったのは、地面に落ちて潰れたアイスクリームだけだった。
一方、メガビランドの出口。
いち早く到着した軍事達一行は、残りのメンバーを待っていた。
「軍事、ラウンジ達とアウトロー達はどうした?」
人目を避ける為に刀を背に隠した三戦が、同じく銃を懐に収納した軍事に問う。
「どちらにももう連絡はしてあるが……早く来ないとマズいぞ…」
マズい、というのはsuperfreeとこの園内で戦闘を行う事、それにsuperfree自体の事だ。
自分にせよ三戦にせよ、徒手空拳で戦闘するタイプでは無い。人通りの多い所では刀も銃も目立ち過ぎる。
片やsuperfreeはと言えば、先のvipを襲った時からして、素手で戦闘が行なえるタイプだろう。
公衆の面前で戦闘になった場合、恐らく駆けつけて来るであろう警備員。
その警備員は、銃や刃物で武装した複数の人間と、素手の男一人のどちらに味方するだろうか?
最悪の場合、問答無用で警備員達がこちらの敵に回る事も有り得る。
不安要素はまだ有る、superfreeの戦闘能力が全くの未知数である事だ。
超能力じみた能力を持つ隠しクラスの連中が動いている以上、恐らくは奴もその同類。
だとするならば、単独で尚且つ素手でvipを襲ったという事実から考えるに、インビジブルの透明化などとは違う、能力自体に何かしらの殺傷能力が有ると考えるべきだろう。
- 330 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 16:40:51 ID:86k/fi2/O
- 「先輩、アウトローさんと世界情勢さんが来ました!」
思考を中断し、サバゲーの指した方向を見ると、アウトローと世界情勢がこちらに走って来る所だった。
「…おいっ…何が何だか…全っ然わかんねーんだけど…」
ぜえぜえと息を切らしながら、半ば愚痴るように言うアウトロー。
「私にもよくわからん。しかし、vipが狙われているのは確かだ」
「世界情勢、あの男は敵だった」
「ほぇっ…?敵って……」
世界情勢はアウトローより更に疲れているようで、軍事の話を把握してるんだか把握して無いんだか微妙な様子だった。
「敵だ敵!……とにかく!ラウンジ達が到着次第、すぐに出るぞ!」
「は、はいっ☆」
「さっ、三戦!」
「なんだ」
「奴だ……」
車が指を指す方向、出口の真正面へ三戦が視線を移す。
そこには、十数m先から白いスーツの男が、人混みの中を悠々とこちらに向かって歩いて来る姿があった。
走るどころか、急いでいる様子さえ伺えない。
緊張で強張った軍事達の表情とは対照的に、どこか楽しげな笑みさえ浮かべているように見える。
三戦と軍事がそれぞれの得物へ手を伸ばす。
そこへ、真横からラウンジと最悪が駆け込んで来た。
『おせーよラウンコwwwww』
「ばっか!俺がどんだけ走ったと思って…」
笑いながら話す二人に最悪が割り込む。
「あはは、仕方ないよ。ラウンジ君は私のペースで走ってくれたんだし」
『ブーン⊂二二二( ^ω^)二二⊃すればいいじゃんwwww』
「できねーよ」「あははは、無理だし」
- 331 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 16:42:14 ID:86k/fi2/O
- 「これで全員だな、出るぞ!」
軍事の号令と同時に、全員が出口から駐車場へ駆け出して行く。
「さ、三戦!」
「今度は何だ」
「あいつが走って来てる!」
車の言葉に、三戦が走りながら後ろをちらりと振り返る。
見れば、先ほどとは比べ物にならない俊足でsuperfreeが疾走してくる所だった。
「もう少しで俺達の車だ!!走れ走れ走れぇっ!」
全力疾走を続けながら軍事が叫ぶ。
現在位置は駐車場。先頭を走るvipの視界に、VIPカーとジープ、S13の三台が飛び込んで来る。
『あったwwww』
走りながら、三人が各自のキーを慌てて取り出す。
先頭のvipを除き、三台の車とメンバーの距離は凡そ5m。
猛然と追ってくるsuperfreeは、そこから更に10m前後の距離。
(あははは、まずい、まずいなぁ。このままじゃ逃げ切っちゃうよ……そうだ!)
- 332 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 16:44:32 ID:86k/fi2/O
- チャリン。
高い金属音が響く。
「あっ、私の鍵――――」
ラウンジが振り返ると、最悪の足元で小さな金属が鈍い光を放っていた。
「いいから、ほら走って!」
立ち止まろうとする最悪を急かすラウンジ。
『ラウンコテラオソスwww早くしろww追いつかれんぞwwww』
S13の前でvipがぱたぱたと手を振る。
『ほらwwwみんな早く汁ww』
ラウンジと最悪が追いつくと同時に、S13に車・三戦が、ジープに軍事とサバゲー、VIPカーにアウトローと世界情勢が次々乗り込んで行く。
そこでちらりと最悪が振り返り――――追跡してくるsuperfreeと目が合った。
それに気付き、superfreeの走りが僅かに遅くなる。
(おいおい、お前も逃げてどうすんだよ。俺の足がないだろうが)
superfreeの困惑した表情を見て、最悪が苦笑する。
(あはは、そっちが悪いんでしょ?……ほら、足元足元)
ちらりと最悪が地面に視線を移す。
その先には、先ほど最悪がわざと落としたベンツのキー。
(…なるほどね)
それに気付き、superfreeの苦笑が、先の楽しそうな笑みに変わり、走る速度も元に戻る。
「三人とも、さっさと乗れ!」
三戦にせっつかれて、S13の後部座席に最悪、vip、ラウンジが乗り込む。
「シートベルトを締めろ!全開で行くぞ!」
『ちょwwwシートベルトどこだよww』
「あぁもう!見つからないならそれでも………」
- 333 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 16:47:20 ID:86k/fi2/O
- 後部座席へ振り返った車の言葉が止まった。
「どうした車?」
違和感を感じた三戦が、次いでvipとラウンジが車の視線を追うと――――。
ラウンジの座る側の窓に、ぴたりと右手を押し付けたsuperfree。
「あ ぼ ー ん」
消えた。
窓ガラスが消えた。
割れるでもなく外れるでもなく、窓ガラスだけがそっくり、消失していた。
その常識外の光景を目の当たりにし、最悪以外の全員が一瞬放心状態になる。
時間が凍りついた空間の中で、superfreeだけが動く。
その左手がドアに吸い付くように当てられる。
「あぼーん」
次に消滅、否、削除されたのはドア。
「…………車っ!!発進させろ!!」
いち早く我を取り戻した三戦が車に叫ぶ。
「わ、わかった!」
superfreeの腕がするりとvipへ伸び、その首に指が絡みつく。
『ちょwwwクルシスww』
vipとラウンジが二人掛かりで引き剥がそうとするも、全く離れる様子は無い。
がっしりとvipの首を掴むsuperfree。
その目は、園内で遊んでいた時の物とはまるで違う眼だった。
まるで人を物か、それこそ路傍の石と観ているかの様な、恐ろしく冷たい眼。
- 334 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 16:50:18 ID:86k/fi2/O
- superfreeの唇がゆるりと蠢き、あの言葉を発する。
「あぼー「行くぞ!!」
と同時に車がアクセルを踏み込み、車体を素早く回転させて急発進。
「…ぐぅっ!!」
回転した拍子に、横殴りに車体をぶち当てられたsuperfreeが転倒する。
S13が発進すると同時に、我も続けとばかりにジープとVIPカーが走り去った。
そして、残されたsuperfreeがゆっくりと起き上がる。
裾や背中に付いた埃を払い落とし、最悪が落としていった鍵を拾い上げ、最悪のベンツに向かって歩き出す。
「そう簡単には狩れない、かな?」
一人ごち、懐から携帯を取り出した。
「ああ、俺だ。お前の家、この近くだったよな?ちょっと面白い物を見つけたんだけど………」
一方、S13車内。
『車wwスピード出しすぎwww俺の酔い度合い蛾MAXにwww 』
「さ、寒っ!風が、風が入って来る!」
「あんなのに追いつかれたら修正液より綺麗に消されちまう!我慢しろ!」
ブーたれるラウンジとvipを車が一喝していた。
「車、もう此処まで来れば速度を落としても大丈夫だろう。それに、軍事とアウトローの車との性能差も考えろ」
三戦の言葉に反応し、車がバックミラーをちらりと見る。
片やオンボロジープに片やアメ車のVIPカー。悲しいかな走りの性能差は歴然で、二車は豆粒の様になっていた。
- 335 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 16:54:08 ID:86k/fi2/O
- 現在位置は、メガビランドから少し離れた海沿いの県道。
車の通りはかなり少なく、割合快適に走行可能な状態だった。
ジープ車内。
「先輩……」
「なんだ」
「あの能力、見ましたか?」
「…あぁ」
「あれは、どういう事なんでしょうか?」
サバゲーが視線を移しつつ言う。その目標は、S13の消失したドア。
「……透明人間が存在する以上、手品やトリックのようなタネがある物とは思えないな。しかし………」
そこで軍事は言葉を切り、沈黙が車内を埋める。
軍事の言いたい事はサバゲーも理解していた。物を消せる能力、それ自体は確かに脅威だ。
不都合な物の隠滅、あるいは物理的障害を排除、それを使った侵入。様々な応用が利く事だろう。
とはいえ、それだけならばインビジブルと互角、下手をすると透明人間であるインビジブルの方が余程厄介かもしれない。
問題は、あの能力が生物に効果を発揮するのかどうか、だ。
あの調子で生物すらも消滅させる事が出来るとすれば、対峙した場合の危険度はインビジブルとは比較にならない。
殺傷能力どうこう以前に、掴まれてしまえば即終了。耐久性も防御もあったものでは無い。
「……まぁ、取りあえず逃れる事は出来たんだ。それで良しとしよう。それより、ラウンジ達に電話してくれないか?」
「え?」
「このまま、ドア無しの車でドライブを楽しむわけにはいかないだろう。何処かで停まる必要がある」
- 336 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 16:57:28 ID:86k/fi2/O
- ドアを一枚失ったS13の車内。
磯の香りと共に吹き込んで来る風に、歯を鳴らしながら寒さに耐えるラウンジ。
「さ…さむ…凍死する…ん、着信?サバゲーからか……もしもし」
《先輩、この後はどうするんだって軍事先輩が言ってます》
「車、サバゲーからだ。この後どうする?ってさ」
「そうだな、パーキングエリアか何処かで一旦止まろうか」
「パーキングエリアかどっかで一旦止まる、だと」
《わかりました》
通話を終えてから数分後、先ほどS13が速度を緩めた事で追いついた二車は、ゆっくりとS13の後方を走っている。
「アウトローさんっ、あと300mでパーキングエリアみたいですよっ☆」
地図を見ながら話し掛ける世界情勢。しかし、アウトローの表情は浮かないままだ。
「どうしたんですっ?」
「いや、なんつーかさ。悪かったなと思って」
「……?何がですか?」
「せっかく遊びに来たってのに、こんな事になっちまったからさ」
「全然気にしてませんよっ。結構遊べましたしっ☆」
「……そうか?」
「ふふっ、あの程度でいちいち凹んでたら、ウチの学校で生徒会なんかやってけませんよっ」
アウトローとは対照的に、世界情勢が微笑みながら言う。
「…はっ!それもそうだよな!」
つられて笑みを零すアウトロー。
しかし、その笑みは数秒後に剥がれ落ちる事となった。
- 337 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 17:00:19 ID:86k/fi2/O
- 「……アウトローさんっ?」
「あの野郎!!追って来てやがるっ!!」
VIPカーのサイドミラーに映し出されていたのは、後方から猛スピードで距離を詰めてくる黒のベンツ。
その運転席に座ってハンドルを握っているのは、見間違えようが無い白のスーツ。
「…クソッ!!何故追いつかれた!?」
同じく後方の追っ手に気付いた軍事が、苦い表情を浮かべる。
「先輩!どうしますか!?」
「……サバゲー、そこの地図を取ってくれ」
「は、はい!」
軍事に促され、サバゲーがダッシュボードの地図を取る。
「確か、この近くには廃校になった学校がある筈だ。…逃げていても埒が開かない」
「ええっと。はい、ありました!」
「……【機動防御】などに代表されるように、近代戦術には【攻撃してくる敵を撃滅する】事で安全を確保する物がある。つまり…」
「やるんですね」
「あぁ!迎撃するぞ!」
S13車内、再びラウンジの携帯に着信が入る。
「はい、サバゲーか?どうした………はぁ!?マジか!?」
「どうしたラウンジ?」
「どうもこうもねーよ!車、後ろ見てみろ!」
「後ろ〜?後ろがなんだって………アッー!」
『一般車かと思いましたがwwwどうみてもスーフリですwwwwありがとうございましたwww』
混乱に包まれた車内で、最悪がこっそりと携帯を閉じた。
(あはは、メールって便利だよね。現在地送っちゃえばいいんだから)
「車、サバゲーからだ!次の次の次の角を左に曲がれ!」
「了解、…かなりスピード出すぞ!しっかり掴まってろ!」
車が言うなり、緩やかに流れていた風景が途端に色の激流に変わった。
- 338 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 17:04:05 ID:86k/fi2/O
- 片や、ベンツ車内では。
「まったく……最悪の奴は何考えてるんだ。狩りどころかまんまと逃げられる所だったじゃないか」
運転席で愚痴るsuperfreeの背後、後部座席で大柄な影が蠢いた。
「…で、あれが今回の標的か。あれならお前一人でも余裕だろうに。格闘技クラスの奴らならまだしも……」
シートにどっしりと腰を沈めたまま、影が野太い声で言う。
「いやいや、そーでも無い感じなんだなこれが。何せ、インビジブル達がやられてるくらいだし」
superfreeの言葉に、影がその巨体をぴくりと身じろぎさせて反応する。
「……あいつらが!?」
「あぁ。しかも、武器有りのタイマンでな」
「ほぅ……なるほど…確かにデカい獲物だ」
「だろ?それはいいんだけどな…」
「なんだ」
「思いっ切り離されてるんだよな。これじゃ追いつけない」
superfreeが前方を見ながら言う。
「離されても構わんだろう。家を突き止めて一人一人消せばいい」
影の言葉に、superfreeが眉間に皺を寄せる。
「……それじゃ面白く無いんだよ。別に俺はあいつらに恨みが有ってやってるわけじゃないんだしな」
「面白さか。お前はいつもそうだな」
「お前ならわかるだろう。……退屈なんだよ。こんな力を持っちまったら。
度を超えた力、それにより生まれる度を過ぎた自由なんて、実際味わったらすぐに飽きる」
ラウンジ達を追跡しつつも、superfreeの目はどこか遠くを見ているような目だった。
「自由、か。それより奴ら、妙な方向に曲がってるぞ」
「……あの方向は…確か………」
- 339 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 17:07:09 ID:86k/fi2/O
- 数分後、三台が目的地に到着した。
「で、何ここ?」
S13から降りたラウンジの眼前に広がるのは、だだっ広い荒れ果てた校庭。そしてやはり荒れ果てて朽ちかけた校舎。
その校庭のド真ん中に、三台が並んで停車している。
「私立あめぞう学園。ウチの学校に殆どの生徒を持っていかれて、数年前に廃校になったがな」
ラウンジの隣に立つ軍事が言う。
『でwwwどーすんだよww』
「ラウンジ、vip、世界情勢、車、最悪は校舎の中に隠れてろ。スーフリは俺達が……やる」
喋りながら、アウトローがトランクから金属バットを取り出す。
『ちょwwwそんなん持ち歩いてんのかよwwww』
「ほら、俺って野球大好きだからさ。マイバットって奴?」
『ねーよwwwwwwいくら何でもねーよwww』
「三戦、本当に大丈夫か?」
「案ずるな車。良い機会だ、ここで叩けば奴らも暫くは動けんだろう」
「先輩達、話してる時間はありません!五人共早く校舎に入って下さい!」
『おkwwww行くぞおまいらwww』vipを先頭に、五人が一斉に校舎へ。
………と、思いきや最悪だけが軍事達と校庭に残った。
「どうしたんですか?」
「あはは、ほら、私がスーフリ連れて来たせいでこんな事になっちゃったからさ。私も援護しよっかなと思って」
- 340 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 17:09:55 ID:86k/fi2/O
- 「気持ちは嬉しいんだが、丸腰でどうする気だ?」
軍事の問いに、最悪がちらりと軍事のコートに視線を移す。
「あはは、だからさ、軍事君の銃、ちっちゃいのでいいから貸して欲しいな」
「わかった………しかし、素人が戦える相手じゃあないぞ」
軍事がコートから小型のエアガンと予備弾倉を取り出し、最悪に手渡す。
「あはは、大丈夫大丈夫。邪魔にならない程度に頑張るから、ね?」
「…来たぞ」
三戦がすらりと刀を抜き、校門を見据えて言った。
ベンツがゆっくりと校門を抜け、軍事達の方へ近づいて来る。
「ちっ、たらたら走って来やがって。余裕見せてるつもりかよ、あの野郎…」
苛立たしげにアウトローがバットを弄びながら言う。
陣形は、近距離戦闘の出来るアウトローと三戦が前へ。
そのすぐ後方に、やや左右に広がった形で、アサルトライフルとサブマシンガンで武装した軍事とサバゲー。
そしてその更に後方に最悪が待機する形だ。
のろのろと走行するベンツ車内。
「おーおー、臨戦体勢って感じだねぇ」アクセルから足を離したまま、superfreeが楽しそうに笑う。
「…どうするんだ」
「無理やり突破、でも良いんだけどな。最悪の車に傷付けちまうと後で怒られそうだしなぁ……」
軍事達から7mほど離れた所で、superfreeが停車させる。
「やるのか」
「もち」
superfreeが、次いで巨漢が降りる。
刀、金属バット、それに加えて三つの銃口を向けられているというのに、二人の表情には危機感や焦りといった物は全く見られなかった。
- 341 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 17:15:05 ID:86k/fi2/O
- 無言でsuperfreeと巨漢が歩を進めて来る。
先頭に立つアウトロー・三戦の二人との距離は凡そ6m。
「先輩」
「まだだ。もう少し引きつけてからだ」引き金に掛かる指に力を入れかけたサバゲーを、軍事が制す。
「つーか二人かよ。なんだあのデカいのは」
アウトローの視線を三戦が追う。その先には、superfreeと並んでこちらへ歩いて来る巨漢。
superfreeも身長は高い方だが、巨漢はそれを遥かに超えていた。
恐らくは2mを超えているであろうその体躯は、手も足も恐ろしい程太かった。
「ゴツい」という表現はこの巨漢の為に有るのではないか、と思ってしまう程に。
6m、5m、superfree達とアウトロー達の距離は確実に縮まっていく。
その距離は4mを切った瞬間―――――
「撃てぇっ!!!」
軍事の号令と共に、強化プラスチック弾の雨がsuperfreeと巨漢に襲い掛かった。
「ちっ、小賢しい!」
superfreeと巨漢が両腕を交差させて頭部を防御する。
しかし、その両腕・胴・足などの至る所へ命中した弾が、服の上からでも容赦なく鋭い痛みを与えてくる。
突然弾の雨が止み、二人がガードを下げると、三戦とアウトローが目の前に迫っていた。
「任せろスーフリ」
巨漢が盾になるかのように立ちはだかる。
「行くぞアウトロー!」
「おうっ!!」
アウトローが金属バットを振りかぶり、三戦が鞘に納まった刀へ手を掛け、左右同時に凪ぎ払う様に振るった。
- 342 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 17:22:56 ID:86k/fi2/O
- きっちりとタイミングを計り、体重を乗せ、思い切り打ち込んだ二人の一撃。
アウトローの金属バットが巨漢の顔面へ横殴りに叩き込まれ、三戦の刀が腰から斜めに肩まで切り裂………
く事は出来なかった。
刃は、腰で止まっていた。服は切り裂いたが、刃が進んだのはそこまでだった。
皮膚さえ斬れていない。薄皮一枚さえ通っていない。
到底有り得る事態では無かった。なまくらでさえ叩きつけるように斬れば、人を殺傷する事は出来る。
ましてや三戦の刀は特別製だ。薄皮一枚さえ傷つける事ができぬ、など有っていいわけが無い。
言葉こそ発しなかったものの、アウトローも驚愕に目を見開いていた。
自分は確かに全力でバットをぶち込んだ。
なのに、目の前の巨漢はぐらりともしていない。それ以前に、痣も出来ていなければ出血もしていない。
それにこの感触。まるで鉄板や何かを殴ったような、いや、恐ろしく頑強で分厚い【壁】を殴った様な感触。
「…ぐっ!?」
巨漢が片手で三戦の首を掴み、容易く持ち上げる。
「てめえっ!!」
アウトローが金属バットをもう一度振り上げた。
しかし、横から白い蛇が一瞬でバットに絡みつき、攻撃を封じられてしまう。
白い蛇。それは白いスーツの袖から伸びた、superfreeの右手。
「あぼーん」
あの言葉と共にバットが消滅し、アウトローは武器を失う。
次の瞬間にはもう一匹の白蛇、左手がアウトローに襲い掛かる。
「サバゲー、スーフリだ!!スーフリを狙えっ!」
「ふん…させるか」
三戦を吊り上げたまま、巨漢が軍事とサバゲーの火線が交差する地点、つまりスーフリの前へ立ちふさがり、銃撃を全て受け止める。
そして。
「あぼーーーーーーんっ!!」
袈裟切りの様に、superfreeの左手がアウトローの右肩から腰の左側まで一閃した。
- 343 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 17:27:55 ID:86k/fi2/O
- 「………あ…?」
superfreeの左手が、引っかくようにアウトローの体を掠めた直後。
その体に、綺麗な斜めの赤い線が五本走った。
ややあって血が零れ出し、服が朱に染まる。
当のアウトローはと言えば、全く事態を把握出来なかった。
素手で自分の服も皮も肉も血管も切り裂かれたなど、把握どころか有り得る事態ではなかった。
あらゆる凶器を持った相手と喧嘩をしてきたアウトローでさえ、全く味わった事が無い感覚。
ナイフとも日本刀ともメスやその他の鋭利な刃物とも全く違う、それらと一線を画す切れ味。
いや、切れ味と言う表現でさえ的外れだ。
アウトローには知る由も無いが、斬られたのではなく、削除されたのだから。
「ほう、入れ墨をしているのか。やっぱりあんた、なかなか良い趣味してるな」
切り裂かれた服から露出したタトゥーを見て、superfreeが呟く。
「…て…てめぇ……」
「しかし、俺としてはデザインにいまいち不満があるな。俺流にアレンジしてあげようか………あぼーーーんっ!」
うねるように、superfreeの両腕が数度瞬いた。
そして、無数の太く紅い線がアウトローの体に刻み込まれる。
とめどなく溢れる血を滴らせながら、アウトローが膝を付き、どさりと倒れ込んだ。
「あ…アウト…ロー……」
首を締め上げられ、朦朧とする意識の中、三戦が何度も巨漢を斬りつける。
しかし、先ほどと同じ様に傷一つ付けられない。
「ぬぅ―――おおっ!!」
巨漢が、吊り上げていた三戦を砲丸のように投げ飛ばした。
全力投球された野球ボールさながらの勢いで三戦の細い体が地面へ叩きつけられ、数回低くバウンドして、地に沈んだ。
「……かはっ…ぁっ…」
その衝撃で肺に残った酸素が全て絞り出され、僅かな呻き声を上げた後―――三戦も動かなくなった。
- 344 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 17:31:52 ID:86k/fi2/O
- 三戦が力尽きた直後、ワンボックスカーが校庭に猛スピードで走り込んで来た。
それがsuperfreeと巨漢のすぐ後ろに停まり、乱暴に運転席のドアが開け放たれる。
奇妙な光景だった。校庭の土に足跡が出現し、その足跡が早足でsuperfreeの隣へ伸びて行く。
しかし、足跡の主は何処にも居ない。その真上には、ただ絵の具の様なネバつく塗料が虚空に浮いているだけだ。
「軍事ィィィィィィィィィィィィッ!!俺はまだ終わってねぇぞぉぉぉっ!!!」
宙に浮かぶ塗料の辺りから、腹の底から絞り出す様な絶叫が響いた。
「くそ…インビジブルまで……」
軍事がアサルトライフルを構えたまま、苦々しい表情で言う。
「殺す……殺す殺す殺す……」
野獣の様な吐息を吐きながら、インビジブルがゆっくりと軍事とサバゲーへ近づいていく。
と、そこで歩みが止まった。
インビジブルの首根っこを、superfreeの右手が掴んでいたからだ。
「離せスーフリ!てめぇ…どういうつもりだ?」
「んー、あいつらは俺らの獲物なんだよなぁ」
「ふざけんな!!あいつは俺の獲物だぞ!!」
「そりゃ先に唾付けたのはお前だろうけど、お前、負けたじゃん」
superfreeが言った直後、塗料がぶるぶると震えだした。
「……うるせぇ!!とにかくあいつは俺の獲物だ、邪魔するならテメェでも容赦しねえぞ!!」
インビジブルの言葉に、superfreeがいかにも困ったという苦笑いを浮かべる。
「はぁ……。つまりあれか。譲る気は無いと」
「当たり前だ!!!」
- 345 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 17:37:26 ID:86k/fi2/O
- 「どうしても?」
「しつこいんだよ、離せ。なんならテメェからでも構わねえんだぞ?」
「そんなにボロボロで俺とやり合うのか?勝ったとしても、その後に軍事も控えてるんだぞ?」
「知るか。いいからその手を離せ。じゃねえとテメェも……」
「【俺 も ?】」
superfreeの表情がにこやかな笑みに変わり、同時にインビジブルの首がメキメキと音を立てて軋む。
「なぁ、【俺 も 】なんだって?」
「がっ……ぐ…」
「インビジブル、答えてくれよ。そのボロボロの体で【俺 も 】どうするんだ?」
「は…離…せ……」
「答えてくれたら離すよ。【俺 も】どうするんだ?」
「………ぐ…ぐぁ…」
「あ ぼ ー「わ…わかっ…た…お前に…譲る…」
フッとインビジブルの首に掛かっていた力が無くなり、インビジブルが膝を付いて咳き込んだ。
「かっ…げほっ……ごほっ」
「悪かったな、立てるか?」
「…あ…あぁ」
「それじゃ、今日は俺らに任せてインビジブルは休んでくれよ、な?」
にこりと優しく微笑み、軍事とサバゲーの方へ向き直る。
「お前じゃ俺は束縛出来ないんだよ………さて、軍事君とサバゲーさん。無視して悪かったね。始めるか」
- 346 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 17:44:07 ID:86k/fi2/O
- 「サバゲー、ラウンジ達を連れて逃げろ」
superfreeと壁に照準を合わせたまま、軍事が言う。
「逃げろって、先輩はどうするんですか」
「俺は、ここで奴らを食い止める」
言いながら、軍事が汗で滑るグリップに力を込める。
四対一なら、あるいは悪くても四対二ならここで叩けると思ったが、どう見てももう無理だ。
片やあらゆる物を消し去る男、片やあらゆる攻撃が効かない男。
どんな物も貫き通す矛と、どんな物も通さない盾。究極的な攻撃力と防御力。
二つをぶつければどうなるか、など考える必要性も試す必要性も無い。
二つ有るなら二つ共使えばいい。
矛盾する事無き矛と盾。
どちらか片方でさえ、相手にとっては厄介極まりないのだ。組み合わせれば最早文字通りの最強ではないか。
こんな怪物二人を相手にして、叩くも何もない。
仮にこちらが万全の状態であったとしても、恐らく勝てる見込みと言えば皆無に等しいだろう。
となれば……サバゲーだけでも逃がすしかない。
- 347 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 17:49:32 ID:86k/fi2/O
- 「嫌です!」
「嫌だとかの問題じゃない!いいから早く行け!!」
「絶っ対に嫌です!」
「我が儘を言うな、早く行け!」
「嫌な物は嫌です!だって私、先輩の事――――」
サバゲーの言葉が途切れた。
その数瞬後、サバゲーが力無く崩れ落ちる。
「あはは!ごめんね。私、空気読めないんだよね」
サバゲーの背後に立つ最悪が笑う。嘲ける様に笑う。その片手にはスタンガンが、もう片方の手には、缶の様な物が握られていた。
「…貴様ぁっ!!」
軍事がアサルトライフルの銃身を向ける。
この時、軍事がアサルトライフルを使用していたのが致命的だった。
拳銃ならまだしも、アサルトライフルの様な大型の銃器は、至近距離での取り回しが良くない。
単純にこの状況で言えば、向ける速度が遅かった。
最悪へ照準が合う寸前に、霧状の何かが軍事の顔面を襲う。
未曽有の激痛が軍事の目・鼻・口を苛み、軍事が取り落としたアサルトライフルが、地に落ちてガシャリと音を立てる。
(…糞っ…これは…催涙スプレーか!!)
視界が完全に閉ざされた中で、軍事の耳にざり、ざり、ざり、と土を踏みしめて何かが近づいてくる音が届く。
そして、首に金属の冷たい感触が二つ。
「あはは、ちなみにこれ、60万Vの奴ね。…………おやすみ、軍事君」
軍事の全身を痺れと痛みが走り、そこで軍事の意識は途切れた。
- 348 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 17:52:13 ID:86k/fi2/O
- 「おいおい…マジで空気読めよ。何のために俺とインビジブルが揉めたんだよ」
頭を掻きながらsuperfreeが苦笑する。
「あははは、ごちゃごちゃ話してる方が悪いんだよ」
「スーフリ。お前、最悪には甘いんだな」
「黙れ壁。やっちまった物は仕方ないだろ」
「仕方ない、か」
壁と言われた巨漢が肩をすくめて見せる。
「あは、またなんかごちゃごちゃ話してるし」
「いや、ちょっと重要な話をな」
「あは!重要な話ってどんな話?」
「俺がvipを消すだろ?」
「うんうん」
「その後にな」
「うん」
「最悪とデートするだろ?」
「………は?」
「その時にどこかオススメスポットがないか、壁に聞いてたんだよ」
「あはは、やだよスーフリとデートなんて」
「まーたまたご冗談を」
「あはは、冗談じゃないよ。それこそ二重の意味で冗談じゃないよ」
「…壁、あのツンデレはどうしたら攻略できる?」
「無理だな。ある意味、俺よりガードが堅い」
「あははは!ほら、馬鹿な事言ってないで早く行こうよ」
- 349 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 17:55:05 ID:86k/fi2/O
- ボロボロに朽ち果てたあめぞう学園校舎。
「フロート式」と呼ばれる革新的な教育システムを導入、私立であるにも関わらず学費が無料、という前代未聞のルールにより、かつては国内有数のマンモス高校であった。
…しかし、このマンモス校は僅か十年足らずで閉鎖に追い込まれる事となる。
あめぞう学園が開校されてから、数年後に開校した私立2ちゃんねる高校に殆どの生徒を取られた為だ。
あめぞう学園と類似した教育システムと学費0というスタイルに加え、巧みなイメージ戦略に代表される卓越した経営手腕。
あめぞう学園からは次々に生徒達が流出し、両高校では熾烈な生徒の取り合いが行われた。
結果、様々な対抗策を取ったものの、奮戦空しく経営競争に敗れたあめぞう学園は閉鎖。
その後経営陣は2ちゃんねる高校に対抗すべく新たに1ch.TV校を開校したが、かつての栄光の座は取り戻せていない。
「……と、いうのがこの学園とウチの高校における、大体のあらましですねっ☆」
『ちょwww大人の世界ww』
校舎内に逃れたラウンジ、vip、車、世界情勢の四人は、三階の空き教室に隠れていた。
「…なぁ、ラウンジ。三戦達、大丈夫かな」
放置されたままの椅子に腰掛け、同じく椅子に座っているラウンジに、車が問う。
「…どうだろうな」
「もう十分も立ってるのに、何の連絡も無いんだぞ?」
「…………」
ラウンジの返答を待たずに、急に車が立ち上がった。
『どしたwww?』
「三戦達が心配だから、俺、ちょっと見てくるよ」
そう言って車が、すたすたと扉の方へ歩き出て行こうとする。
「駄目ですっ」
それを制したのは世界情勢。
「なんでだよ」
「あなたは何の為に、あの四人が私達を隠れさせたかわかってないんですかっ?」
- 350 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 17:58:37 ID:86k/fi2/O
- 「わかってるよ……わかってるけど、何の音沙汰も無いんだぞ!?」
「もし彼らが敗れているとして、ここで私達が出て行ってどうなるんですかっ?」
「それだってわかってるさ!俺らじゃあんな連中に太刀打ち出来やしないって事ぐらい!」
「わかってるなら、もう少し此処に隠れているべきですっ」
「……お前は心配じゃねーのかよ!!俺は耐えられねーよ!あいつらだけに戦わせて、俺らはこんな所でこそこそと!」
今まで椅子に座っていた世界情勢が、無言でつかつかと扉の前に歩み寄っていく。
「何だよ。言っとくけど止めても無駄………ぶっ!?」
ぱしん、と乾いた音が教室に響いた。世界情勢が車の頬を張ったのだ。
「…私だって……私だってアウトローさんの事が心配ですっ!」
世界情勢の肩は震え、目は赤く充血していた。
「でも、ここで出て行って見つかりでもしたら、彼らの行動は全部無駄になるんですよっ!?」
堪えきれず、世界情勢の瞳からポロポロと涙が溢れ出す。
「……わかったよ…」
頬を押さえながら、車が先ほどまで自らが座っていた椅子に戻ろうとした、その直後。
車の背後、錆び付いた戸が軋みながらゆっくりと開いていく。
果たして、そこに立っていたのは見慣れぬ巨漢。そしてその背後には、superfreeと最悪の姿が有った。
「だ、誰だよお前」
「お前に名乗る必要は無い……邪魔だっ!!」
巨漢の剛腕が車を凪ぎ払う。
「…ぐはっ!!?」
「きゃっ!」
車の体がいとも簡単に吹っ飛ばされ、世界情勢に激突した。
そのまま二人の体は重なったまま壁に衝突し、折り重なって倒れ、動かなくなった。
- 351 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 18:01:59 ID:86k/fi2/O
- 「さ、最悪さん。どういう事だよ」
動揺するラウンジに対し、最悪が呆れ顔をしてみせる。
「あは、ラウンジ君って天然なのかなぁ……って思ってたけど、真性のヴァカ?」
「こいつが俺に依頼したんだよ。【vipを消してくれ】ってな」
隣に立つsuperfreeが、眼だけで最悪を指す。
「…軍事達はどうした」
「あはは!みんなまとめて校庭に転がってるよ」
「ま、多分死んじゃいないだろう。別に俺はデュッセルドルフの吸血鬼でも無けりゃハノーヴァーの食人鬼でもないし、な」
「あははは、ロストフの赤い悪魔とミルウォーキーの怪物を忘れてるよ。それとヘンリーも」
「360人殺しか?ありゃ嘘つきだろ」
「あは!確かに」
最悪とsuperfreeがくすくすと笑う。楽しそうに、幸せそうに、まるでこの凶行が日常の些細な出来事であるかのように。
「……何でだ!!何でお前らこんな事してんだよ!!ふざけんなよ!みんなで仲良くでいいじゃねーか!!争って何になるんだよ!!」
「んー。動機を聞いてるのかな?だったら私に関しては説明の必要は無いよね、ラウンジ君?」
「俺の動機…ねぇ。そうだな……【自由からの解放を求めて】かな。解放じゃなきゃ逃走か、逃避か、あるいは自由との闘争って感じだな」
「自由からの…解放?」
- 352 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 18:04:32 ID:86k/fi2/O
- 困惑するラウンジに、superfreeが遠くを見るような目で答える。
「そう、自由からの解放。ご存知の通り、俺らはこんなブッ飛んだ反則級の超能力を持ってる。自分で言うのも何だが、恐らく俺の【あぼーん】はその中でも最強クラスだ。
……で、こんな能力を持ってるとな、大抵の欲望は自分一人で満たせるんだよ。
誰の協力も要らず、誰に従う事も無く。しがらみも上下関係も無い。完全な自由だ。
しかし、その内自由である事に飽きてくるのさ。自由の飽食だよ。飽食を通り越して胃もたれが来てる。
だから俺は自分に【依頼】って枷を付ける事にしたんだよ。依頼を受ける事で、自らの自由を他人に制限してもらうんだ。
……俺達の住んでるこの国じゃ、蛇口を捻ればすぐに水が出るだろ?それも泥水なんかじゃなく、塩素こそ入ってるものの、まともに飲める水だ。
しかし、だ。俺達はそれを【幸せだ】と思った事は有るか?【幸せだ】と思いつつ毎日水を使っているか?
世界にはろくに水道が整備されず、雑菌だらけの泥水を舐めて暮らしている人間が居るというのに。
まぁ、少しは感謝の気持ちを持って暮らしてる人間も居るだろうけどな、そんな奇特な人種はどう考えても少数派だろ?
俺にとっての【自由】が、正にその水道水さ。掃いて垂れ流して捨てる程、俺には何のありがたみも無い」
- 353 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 18:07:19 ID:86k/fi2/O
- 尚も語り続けるsuperfreeの目は、最早ラウンジを完全に見ていない。
いや、壁も車も世界情勢も、それどころか標的であるvipも、依頼主である最悪さえも見てはいない。
「そうして己を制限する事で、改めて自由のありがたみを実感出来るんだよ。
そうだな。さっきの水の話だけど、今度やってみると良い。ボクサーの減量の様に、何日間も徹底的に水分の摂取を減らす。その後にガブガブと飲む水道水は……
例え塩素臭く生ぬるくても、意識が飛ぶんじゃないかと思うくらいの美味さだよ。あ、脱水症状に気を付けてな」
「……ふざけんじゃねえっ!!!」
転がっていた椅子を持ち上げ、ラウンジがsuperfreeに殴り掛かった。
「スーフリ」
「いや、いい」
盾になろうとする壁を、superfreeが手で押しのける。
「この野郎ぉぉぉっ!!!」
ラウンジが振りかぶった椅子の脚が振り下ろされる前に、superfreeが、たん、と踏み込んで右手で掴む。
「あぼーん」
椅子が消失し、振り下ろされたラウンジの両腕は、あっさり空を切る格好となる。
そこから、superfreeの左拳による裏拳がラウンジの顔面を直撃。
鼻血を出しながらよろめいたラウンジを、今度は右の拳でsuperfreeが殴り倒した。
「どうしてそんなに怒るんだ?俺のしている事とラウンジ、お前のしている事に大して差異なんか無いじゃないか」
- 354 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 18:12:39 ID:86k/fi2/O
- 「どこが…だよ……」
「お前とvipのした事は大体聞いてるよ。人助け、だろ?俺だってそうだ。悩みの種を取り除いて、依頼人を苦悩から解放してやる。行為と目的は違えど結果は同じだろう?」
「お前と…一緒にするんじゃ……ねぇっ!」
起き上がってラウンジが殴り掛かるも、結果は先と同じように、あっさりと避けられ、あっさりと殴り倒される。
「なぁラウンジ。お前は俺に似てる。似たもの同士だ。だからな、俺はお前を消したくは無いんだよ」
優しく諭すような物言いで、superfreeがラウンジを殴る。
その勢いで椅子をひっくり返しながら倒れたラウンジが、起き上がって再びsuperfreeに近づいていく。
「わかってくれよ。お前は依頼の対象外なんだ、だからこそ俺は随分と手加減をしてやってる。それは殴られてるお前が一番良くわかってるだろう?」
ふらふらとよろめくラウンジの腹へ蹴りが入り、再びラウンジが床に転がる。
そしてまた起き上がり、まだ殴り倒され、蹴り転がされる。
その繰り返しが、一回、二回、三回、四回、五回、六回、七回、八回、九回、十回、十一回………。
二十と少しの辺りで、遂にラウンジが崩れ落ちた。
教室の床に横たわるその姿は、顔面が腫れ上がり、血にまみれ、服の隙間から覗く四肢には大小無数の痣が見えた。
- 355 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 18:23:24 ID:86k/fi2/O
- 「さて、これでようやく標的の番か。今回は意外に楽しめたな」
vipの方へ向き直り、革靴をかつんかつんと鳴らしながら、superfreeが歩み寄っていく。
一方のvipは床にぺたんと座り込んだまま、呆然と力尽きたラウンジを見ていた。
「それじゃ、これにてさようなら、だ」
superfreeがvipの首に手を掛けた刹那。
「志村ー、後ろ後ろ!」
「志村じゃないって…」
最悪の声に振り返ったsuperfree。その視界に映ったのは。
ラウンジの拳。
「お前、まだ立てっ…」
喋り終わる前に、凄まじい威力の拳がsuperfreeの顔面に叩き込まれた。
「ぶはっ…!!がっ…」
机に激突してよろけかかったsuperfreeが顔を上げると、その瞬間には二発目が打ち下ろされていた。
巨大な鉄槌で叩き伏せられたかの様に、superfreeが頭から床に突っ込み、遅れて首から下が床にぶち当たる。
「貴様っ!」
壁が後ろからラウンジの肩を掴み、殴り掛かる。
しかし壁が振り終わるより速く、ラウンジの両手がその胸ぐらを掴み……。
「(この男……どこからこんな力が?)」
ラウンジが自身の遠心力に任せるように、恐ろしい力で壁を窓に叩き付けた。
「ぐおぉっ!?」
その衝撃で、窓ガラスが砕け散り、埃がぱらぱらと天井から降り注ぎ、ずしん、と転倒した巨体が床に沈んだ。
- 356 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 18:25:52 ID:86k/fi2/O
- 「vipに…触んな……」
ふらふらとよろけながら、うつ伏せに倒れ込んだsuperfreeを仰向けに転がすラウンジ。
「自由だと…?ありがたみだと…?」
superfreeの上に跨り。
「………知るかそんな事っ!!」
顔面に強烈な一発が振り下ろされ、superfreeの頭が跳ねる。
「自由に制限が欲しいなら!!」
二発目。
「自分一人で!!」
三発目。
「一生!!」
四発目。既にsuperfreeの表情と眼は虚ろになり、意識の有無さえ定かでは無い。
「牢屋にでも入ってろ!この自己厨がっ!!!」
五発目。
「あはははっ!すごい、すごいねラウンジ君。実は強いんだね、単なる火事場の馬鹿力なのかも知れないけど」
最悪を無視し、ラウンジがもう一発superfreeを殴る。
「すごいなぁ。スーフリをそこまでボコボコに出来る人、初めて見たよ。強い男ってカッコイイね。でも……」
「スーフリはそんなに甘くないよ?」
再びラウンジが拳を振り上げると同時に、虚ろな表情のスーフリの唇が微かに動いた。
そして、ラウンジの体がびくん、と跳ね、拳が止まる。
「お前なら…俺を自由から解放してくれるかと思ったが……惜しかったな」
superfreeの人差し指が、ラウンジの腹に突き刺さっていた。
みるみるうちに白いスーツの袖が血に汚れ、ラウンジの体から血と共に流れ出しているかのように力が抜けていく。
- 357 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 18:36:11 ID:86k/fi2/O
- superfreeに覆い被さるようにして、ラウンジがうつ伏せに倒れた。
「全く、今日はよくスーツが汚れる日だ」
ラウンジをどかして立ち上がり、駐車場の時と同じ様に埃を払いながらsuperfreeが言う。
「あはは、鼻血出てるよ。あと口からも。はいハンカチ」
「悪いな」
自らの血と、ラウンジの血で汚れた手と顔を拭う。
「さぁこれで………って、おいおいおい」
superfreeが足首に掛かる圧力に、視線を落とす。
「び…vip……」
倒れたままのラウンジが、しっかりとsuperfreeの足首を掴んでいた。
「放せっての。壁、こいつどかしてくれ」
「ふぅ……わかったわかった」
巨躯をむくりと起こし、壁がボロ人形の様になったラウンジを引き剥がす。
「ぐ…あ……」
しかし、ずるずると這いずりながら、ラウンジが尚もsuperfreeを止めるべく近づいていく。
「壁、あっちに投げろ」
無言で頷き、壁がその怪力でラウンジを持ち上げ、vipの足元へ投げ捨てる。
『ちょwwwラウンコwwお前顔面テラボコボコスwww』
「は…はは…マジか。…なぁ……vip」
- 358 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 18:37:14 ID:86k/fi2/O
- 『なんだよww』
「なんとかして…俺があいつら止めるから……逃げろ…」
『ラウンコテラ頭ワルスwwwwお前置いて逃げれるわけねーだろwww』
「俺は……大丈夫だから……ほら…早く行けって」
『バカだwww絶対無理だしwwww………やだよそんなの』
「無理…じゃ…ないって……」
立ち上がろうとするラウンジを、vipが抱きしめる。
『ラウンコ……もう…いいってば……』
「それじゃ、覚悟はいいか?ま、覚悟してもしなくても消すんだが」
『スーフリww』
「なんだ」
『俺を消したらwwラウンジ達に手出さないってwww約束してくれるかww?』
「…いいだろう。邪魔さえして来なければ標的以外は手出しはしないよ」
『わかったwwwんじゃさっさとやれwww』
- 359 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 18:40:57 ID:86k/fi2/O
- superfreeが、再びvipに歩み寄っていく。
「や…やめ…ろ…」
呻きながらラウンジが体を起こそうとするも、ダメージの蓄積しきった体は言う事を聞かない。
vipの目前に立つsuperfreeが、二人を冷たい眼で見下ろす。
「お別れの挨拶ぐらい、したらどうだ?」
vipが腕の中のラウンジを見下ろして、にっこりと笑みを浮かべた。
まるで、いつもの日常で見せるそれと同じような、明るく柔和な笑みだった。
『……………………バイバイwwwラウンジww』
呟いて、ラウンジを抱き寄せて。
唇を重ねた。
- 360 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 18:43:37 ID:86k/fi2/O
- ラウンジに、頬を染めてvipがはにかむ。
「ちょ…嬉しいけど……こんな状況で…かよ……」
『仕方ないじゃんwwwもう会えないんだしww』
「済んだ、か?」
『んwww』
superfreeが、ラウンジの血でうっすらと赤く汚れた手を再び、vipの白く細い首に掛ける。
……
………
……………
………………………
長い静寂が続き、腫れ上がって殆ど塞がれた視界の可視部分を使い、ラウンジがsuperfreeをちらりと見やる。
superfreeの表情は、固まっていた。
喜怒哀楽のどれでも無く、かといって無表情でも無い。
強いて言うならば、何かに驚いているような感じの表情。
幼い子供が、何か未知の物に遭遇したらこういう顔になるのだろうかと思わせる、きょとんとした表情。
- 361 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 18:50:10 ID:86k/fi2/O
- 「スーフリ。なにしてんのー?早く消しちゃってよー」
背後の最悪の言葉にも、superfreeは全く反応しない。
ただ、固まっている。何をするわけでも無く、何を言うわけでも無く、ただ固まり続けている。
superfreeの背後に立つ壁と最悪には、vipの表情も、superfreeの表情も見えない。
一方、superfreeを足元から見上げるラウンジの顔に、ぽたりと雫が落ちた。
vipの首に掛けられたsuperfreeの手から汗が落ちていた。
見れば汗をかいているのは手だけでは無く、その顔にも、うっすらと汗が伝っているのが見える。
ラウンジの位置からも、superfreeが対峙しているvipの表情が全く見えない。
ふと我に返ったように、superfreeの表情が柔軟性を取り戻す。
しばしの間、睨み合う、というより検分する様な眼差しでvipを見つめ―――――――その手を、首から離した。
- 362 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 18:51:44 ID:86k/fi2/O
- そして、ふいと振り返り教室を出て行こうとする。
「…何してんの、スーフリ」
「やめだ。帰るぞ」
「あははははっ!帰る?何言ってんのか全っ然理解出来ないんだけど?」
「俺も納得いかんな。どういう理由か説明しろ」
「そいつは生かしておいた方が面白い。確実に断言出来る。そういうわけで中止、だ」
「ふーん…じゃあいいよ。スーフリがやらないなら、私がやるよ」
そう言ってスタンガンを取り出そうとした最悪の手を、superfreeが掴む。
「……なに?放して欲しいんだけど」
「聞こえなかったのか?生かしておいた方が面白い、と言ってるんだ。誰がやればいいって問題じゃない」
「あは、何勝手な事言ってるわけ?ふざけないでよ。私の都合も考えてくれない?」
「いいから帰るぞ」
superfreeが、捕らえた腕を引っ張り無理やり最悪を連れ出そうとする。
「あはは、やだ……よっ!」
最悪が、superfreeの喉元に、いつの間にか拾っていたガラス片を突きつけた。
「あははは、やる気なくして帰るのは水に流してあげる。だからさー、私の邪魔、しないで欲しいんだよね」
ガラス片を向けたまま、最悪が微笑む。
「そんな物で人が殺せると思うか?」
一方のsuperfreeが、特に表情を崩す事無く言う。
「あは、じゃあ、やってみよっか」
- 363 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 18:55:06 ID:86k/fi2/O
- 「…やってみるか?」
言うなり、superfreeが一瞬でガラス片を握った側の腕を取った。
そして、それを自身の首筋へゆっくりと近付けていく。
「あは、どういうつもり?」
superfreeは答えない。ただ黙ったまま、その刃先を首にぴたりと押しつける。
「…死にたいの?」
やはり答えず、最悪の白く小さな手首を握り、刃先を首に強く押しつけた。
ぷつりと刃先が皮膚を貫き、血の玉が現れ、弾けて首を伝っていく。
それを意に介する事無く、superfreeは少しずつ、本当に少しずつコンマ数ミリ単位で、刃先を身に沈めていく。
その刃先が恐らくは動脈すれすれまで達した所で、superfreeが手を離した。
「……殺れ」
「あは、いいの?」
「殺せるんだろう?殺れ。さぁ、どうした、早く殺れ。今すぐに早急に瞬きする間も無く瞬き一つせず殺って俺を自由から解放してみせろ」
淡々とした口調で、superfreeが言う。
「強く押し込んで抉るだけだ。殺れ」
最悪の手が僅かに動き、刃先がほんの少しだけ沈み…………
「あは、やっぱり辞めた。返り血で服汚したくないし」
小さく血の糸を引いて、ガラス片が抜かれる。
「…あーあ、見てよこれ。あんまり強く握るから、痣になっちゃったよ」
最悪が袖を捲ると、細いその手首に、痛々しい赤い手形が付いていた。
superfreeはそれほど強く握ったわけでは無い、にも関わらず手形の赤がやけに映える程の、病的に白く透き通った肌だった。
その余りの白さにsuperfreeが視線と意識を逸らした直後。
ひゅん、と風切り音が鳴り、superfreeの首筋に熱と痛みが走った。
- 364 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 18:59:08 ID:86k/fi2/O
- 「あは、お返し」
superfreeが首に手をやると、かなり浅くではあるが、横一線に首が切られていた。
「満足か?」
「あははは、正直言うといまいち。でも、今日はこれでおあいこって事にしてあげる」
「それはそれは誠に有り難い事で」
「なんて嫌なカップルだ……殺伐さにも限度が有るぞ」
傍に立つ壁が、ぼそりと小声で呟いた。
「壁、何か言ったか?」
「何も。きっと空耳アワーだろう」
「行くか」
「あは、またね。ラウンジ君」
三人が出て行った後。
「と……とりあえず…助かった……のか?」
『……』
「vip?どうした?」
『……///』
「顔、赤いぞ……あ、そういえばさっきの」
ぺしんとデコピンがラウンジに炸裂し、その言葉を遮る。
『ほ、ほらwwww休んだからもう立てるだろww?早く世界情勢達起こしてwww軍事んとこ行こーぜwwww///』
「ごめ、もう少し休ませてくんね…?まだ…頭がガンガンする……」
『じゃwwもう少しだけなwww』
ラウンジの頭に、柔らかい感触が伝わる。
『膝枕wwww///』
「ひ…ざ…まくら…きたこれ……」
急に安心したように、ラウンジがくたりと気を失った。
『ちょwwwお前www腹に穴空いてるじゃんww膝枕とか言ってる場合じゃナスwwやっべwwwww』
- 365 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 19:06:09 ID:86k/fi2/O
- 〜〜翌日・生徒会室〜〜
ν速「で、被害の方は?」
世界情勢「七名の内、大半が打撲・捻挫・浅い切傷と刺傷と裂傷、要するに大体全治一週間程度の軽傷ですね。ただ……」
政治「ラウンジとアウトロー、か」
世界情勢「…はい。ラウンジ君は、主に全身に無数の打撲、それに亀裂骨折です。アウトローさんは浅い切傷ですが…その範囲が…」
ν速+「太すぎるんだったな。しかし、切傷が太い、というのもおかしな話だ」
世界情勢「はい。医者の先生も首を傾げていました。あんな傷は見たことが無い、と。一応便査的に切傷に分類してはいるものの、どう判断していいかわからない、と」
軍事「……それはそうだろうな。あれは切られたわけじゃない。削除…指で消されたんだ」
ν速「そう言えば軍事、実際に戦闘したお前の報告を読んで運営側に問い合わせたんだが…」
運営情報「駄目です。。。清々しいくらいに知らぬ存ぜぬを通されましたです。。。曰わく【隠しクラスなど存在しない】そうです。。。」
軍事「またそれか……。なぜそこまでして隠しクラスを庇う?それに、なぜあれだけやらかしてる連中を庇い切れる?」
速報Headline「…大体の検討は付いてる。これを見てくれ」
政治「……何だこれは。【治安維持を目的としたID制施行】だと?」
ν速「プログラマー達が作ったシステムを利用した物だそうだ。しかし、妙だとは思わないか?」
- 366 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 19:08:17 ID:86k/fi2/O
- 世界情勢「妙な事、ですか?」
ν速「最新鋭のシステムとそれに掛かる開発費用、それとID認識・識別装置を設置する為の工事費まで賄い切れると思うか?」
世界情勢「それは……広告や校長の副業等が収入源となっているのでは?」
ν速「それもあるだろう。だが、入学費から授業料まで何もかもが無料で、その上に生徒に与えられるあらゆる設備が最新の物、こんな学校が世界中のどこにある?」
政治「巨大なスポンサーが複数、バックに付いていると言う事ですか」
ν速「恐らくは、な。最新の設備や機材や莫大なあらゆる費用の出所、それに奇妙な能力を持つ生徒の存在。私が考えるに、この学校、そして生徒は―――――――」
- 367 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 19:11:42 ID:86k/fi2/O
- 〜〜隠しクラス・教室〜〜
superfree「実験台と人手を現地調達出来る実験場、といった所だろうな」
雑誌編集者「………そんな…バカな事が…」
壁「だからこそ、多少のもめ事は簡単に校内で処理されるんだろう」
superfree「そもそも、毎日の様にどこかで抗争が続き、尚且つ学費0の高校だぞ?普通なら荒れ果てたチンピラ育成所にしかならないだろう」
壁「しかし、この学校の生徒は進学率・就職率100%。進学組は全国でも高偏差値、就職組は学生の時点でプロ顔負けの設備と機材を与えられ、卒業する頃には各業界のスペシャリスト並みのスキルを身につける」
superfree「つまりこの学校は、人材、それも各分野のスペシャリスト育成所、悪く言うなら養殖場的な意味合いも持っていると言う事だ」
壁「良く考えて見ろ。どの部活もまだ市場にさえ出回っていない様な用具を使い、生徒が望めば即座に一流の講師と講義が放課後に用意される。こんな学校がどこにある?」
superfree「スポンサーはまだ認可も下りていない最新の製品や金を流し、それを使って学校は、見返りに磨き上げた人材を流す」
雑誌編集者「しかし……プログラマー達が作ったあのシステムは治安維持用だぞ。それに……モデルとした計画は……………まさか!!」
superfree「一学生が作った物なら、世論の批判が自分達に向く事は無いだろう。いや、もしかしたらスポンサーのそのまたスポンサーの意向かも知れないがな」
雑誌編集者「この学校に…そんな……そんな存在意義が…馬鹿げてる…」
superfree「どう思うかは勝手だ。妄想と切り捨ててもらっても構わない。しかし……俺達の様に、馬鹿げた能力を人体実験により与えられた生徒も居る。それは事実だ」
- 368 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 19:14:14 ID:86k/fi2/O
- 〜〜二週間後・隠しクラス〜〜
削除依頼(旧)「スーフリ。新しい依頼が来てる」
superfree「どんな?」
削除依頼(旧)「依頼主本人からメールが来てる。……これは…とてつもない大仕事だぞ」
superfree「…見せて貰おうか。…………!?おいおい、こんなの本気で頼んでるのか?」
削除依頼(旧)「信じ難いし度しがたいが、どうやら本気らしい。どうする?」
superfree「ハ……ハハハハハハハッ!!良いな!やってやろう!最高に熱くてヤバいじゃないか!!」
削除依頼(旧)「わかった。依頼主に伝えておこう」
最悪「あはは。スーフリ、何馬鹿笑いしてるの?」
superfree「よう。新しい依頼が来てな、見てみろよ」
最悪「へぇ……面白そうだね。すごーく面白そう」
superfree「お前もやるか?」
最悪「あはは、やだね」
superfree「なんでだ?」
最悪「あのさ、この間のアレ以来、私登校拒否ってるんだよね。学校には来てるけどさ、vipと同じクラスだから教室入れないんだよね」
superfree「あー…。あれは正直悪かった。その点はいずれ別の形で埋め合わせるなりするから、な?」
最悪「どう埋め合わせるの?ていうか、私がこの依頼に参加するのが嫌な最大の理由…………言わなくてもわかるでしょ?」
superfree「わかるにはわかるけどな。でも、この依頼の為に俺が動けば最悪も何かの形で巻き込まれるぞ?」
最悪「あはは、そうなんだよね。部外者ってわけにはいかないよね。だからさ」
superfree「だから?」
最悪「私は別サイドでやらせてもらうよ。その依頼の主旨は私も大いに賛成したいけど……スーフリとやるのは嫌。絶対嫌」
superfree「嫌とか言うなよ」
最悪「あはは、嫌だね。ていうかスーフリがその依頼に乗るのも嫌だし、乗るスーフリが嫌。憎い。憎いなほんと。私の依頼は途中で投げた癖に、その依頼は面白がって受けるなんて。憎いよ。す〜っごくスーフリが憎い」
- 369 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 19:16:04 ID:86k/fi2/O
- 最悪「あは、ねぇねぇスーフリ。ほんとにその依頼受けちゃうの?考え直さない?」
superfree「それこそ嫌だな。こんな面白い話を逃す手は無い」
最悪「ふーん……そう…それじゃあ……私はスーフリの敵に回るよ。それでもいいんだね?」
superfree「あぁ、構わない」
最悪「あはははははははっ!そっか。うん、わかったよ。それじゃ、またね」
最悪「あ、そうそうスーフリ」
superfree「ん?どーした?」
最悪「ばーーーかっ!」
- 370 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 19:18:40 ID:86k/fi2/O
- 最悪「あはは、久しぶり」
《何の用ニダ》
最悪「あのさ、君達ってウチの学校とすごーくすごーく仲悪かったよね?」
《そうニダ。あの鬼畜日帝のチョッパリ共は許し難いニダ》
最悪「でさ、ウチの高校をぶっ潰したくない?」
《ぶっ潰したいニダ。しかし…過去に何度も辛酸を舐めさせられている以上、迂闊には仕掛けられないニダ》
最悪「あはは、そこで相談なんだけどさ。もし、近々ウチの学校で大規模な内乱が起きたらどうする?」
《それが本当なら、潰しに掛かる絶好の機会ニダ》
最悪「あはははっ!本当なんだよねそれが!だからさ、兵隊連れて来てくれないかな?」
《どれぐらい用意すればいいニダ?》
最悪「そうだねー。少なくとも三ケタは必要だね。敵勢力にとんでもない超能力者も居る事だし」
《わかったニダ。大量の工作員を連れていくニダ》
最悪「うんうん、話が早いね。それと…もう一つ」
《何ニダ?》
最悪「中国の【氷客同盟】にも同じ話をするつもりなんだけど、いいかな?」
《中韓で対日共同戦線、という事ニダか。構わないニダ……ところで、なぜ日本人のお前がそんな話を持って来たニダ?》
最悪「あはははっ!あの学校の全てが気に入らないんだよね。だから、何もかもブッ壊してブッ潰しちゃってもらいたいんだよ」
《気に入らない、ニダか。わかったニダ。同志よ、感謝するニダ》
最悪「あはは、うん。こちらこそありがとね、VANK君」
- 371 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 19:21:45 ID:86k/fi2/O
- 〜〜格闘技クラス〜〜
ガラガラガラッ
プロレス「あ?誰だありゃ、ホストか?」
相撲「隣の奴、随分デカいな」
superfree「あー、テステス」
壁「スーフリ、マイクが無いのにテストは無意味だ」
superfree「マジで!?うわ、恥ずかしー……。俺ただのバカじゃん」
カポエラ「誰だお前ら」
反射道「何がテステスだコラ!」
superfree「えーと、皆さんにお話しがあります。頼みと言うのか勧誘と言うのか命令と言うのか。要するに………今からこのクラスは俺達の傘下に入った。俺達の計画に従えないなら全員消す、以上」
八卦掌「……ふっ、ふざけるな貴様!!」
プロレス「おう、ナメた事言ってんなよ兄ちゃん」
superfree「やっぱり直に見せなきゃわからんかな」
相撲「何ぶつぶつ言ってん……」
superfree「あぼーーー――んっ!!」
太極拳「な…なんだあれ……」
プロレス「机が……真っ二つに…」
superfree「これでハッタリじゃないってのが良くわかったかな?ちなみに、しっかり掴めば人体丸ごと消滅も可能だ。
今日からお前達には俺の言う通りにしてもらう。俺が死ねと言ったら死ね。生きろと言ったら首を切り落とされても生きろ。わ か っ た な ?」
- 372 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 19:24:15 ID:86k/fi2/O
- 最悪「あはは、教頭先生!探してたんですよ」
FOX★教頭「どうした?」
最悪「聞きたい事が有ったんですよね。隠しクラスの事、とか」
FOX★教頭「隠しクラスなど存在しない」
最悪「あはは!そうですよね、存在しませんよね。触った物を消せるsuperfreeとか、どんな攻撃にも無傷の壁とか、透明人間のインビジブルとか―――」
FOX★教頭「…………!!」
最悪「教頭先生が過去に実験と称して、ν速生徒会長とvipに何をしたのか、とか。ぜーんぶ根も葉もない噂ですよねぇ?」
FOX★教頭「何が目的だ」
最悪「あははは!近々学校が少しばかり荒れるんで、教頭先生のお力で教職員を抑えてほしいなぁ、って」
FOX★教頭「無理だな。私にはそれ程の権限は無い」
最悪「あは、出来ますよ教頭先生なら。もちろん悪い話ばかりじゃないですよ?はい、先生にプレゼント♪」
FOX★教頭「………これは…!!」
最悪「この間、あめぞう学園の廃校舎に遊びに行ったんですよ。そこで見つけたんですけど」
FOX★教頭「ひろゆき校長と…あめぞう学園経営陣の……」
最悪「あはは!ねぇ、教頭先生………校長になりたいと思いませんか?」
ジャズ「(最悪と教頭……学校が荒れる…?何が起ころうとしてるんだ……?)」
- 373 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 19:27:33 ID:86k/fi2/O
- アウトロー「よ、お久」
三戦「久しぶりだな。どうだ、怪我の具合は」
アウトロー「医者はまだ入院してろってうるせぇんだけどよ。酒も煙草もスロットも出来ねーなんて耐えられっかって話だよ」
三戦「有り得ないと思って聞くが……無理やり退院してきた、のか?」
アウトロー「お、わかってんじゃん」
三戦「………」
アウトロー「露骨に呆れた顔すんなよ。それより、そっちはどうだ?」
三戦「私の傷は大した物では無かったな。お前に比べればだが」
アウトロー「はは、良かったんじゃねえの?傷が残んねーにこした事はねえよ」
三戦「……そんな話をしに来たわけでは無いだろう?」
アウトロー「ああ。あのデカブツとスーフリの野郎の事だ」
三戦「悔しいが、敗れたな」
アウトロー「負けたな。確かに負けた。これで二度とあいつらと喧嘩しねぇならそれでも良いかもしんねー。でもよ………」
三戦「そんな保証は何処にも無い、な」
アウトロー「そうだ」
三戦「で、どうする?」
アウトロー「要するに、あのバケモン二人の内、攻撃担当がスーフリで防御担当がデカブツなわけだよな」
三戦「防御担当をどうにかしない限り、どうにもならんな」
アウトロー「しかも、両方単独でもクソみてえに強えと来てる。しかし、だな」
三戦「何か、勝算でも?」
アウトロー「勝算って程じゃねーけどな。少なくともデカブツには、そんな感じの仮説みてえなの、見つけたぜ」
三戦「聞こうか」
アウトロー「あんま間に受けんなよ。あくまで仮説だからな。あの野郎は多分………………」
- 374 :抜いたら負けかなと思っている :2005/10/08(日) 19:31:08 ID:86k/fi2/O
- 『おいすーwww今帰りかwwww』
ラウンジ「あぁ。さっき病院行ってきたとこ」
『なwww今日さwwwウチで晩飯食っていかねwww?』
ラウンジ「いーな!行く行く」
『忘れてたwwちょっと買い物あるんだけどww付き合ってよww』
ラウンジ「何買うんだ?」
『めんみwwwww』
ラウンジ「なぜにめんみ?」
『ウチの晩飯素麺だからwwww冷や麦もあるぞww』
ラウンジ「……暑中見舞いか何かの残りだろ」
『当たりwwww賞品に色付きの麺をやろうwww』
ラウンジ「また微妙な賞品を…つーかどこで買うよ?」
『スーパームギ玉くんだwwwwww』
ラウンジ「結構遠くね?」
『いいじゃんwww喋りながら行こうぜwww』
ラウンジ「つーか手繋ぎながら行こうぜ」
『ちょwwwやめれwwペタハズカシスwww顔あちぃww///』
ラウンジ「いーじゃんいーじゃん。この間なんてキ…」
『ブーンラリアットいっとくかww?』
ラウンジ「すんません」
『ラウンコww』
ラウンジ「ん?」
『この間wwありがとなwww』
ラウンジ「いいって。そっちこそ怪我とかしてないよな?」
『んww大丈夫www』
ラウンジ「お前の手ってさ」
『なんだww』
ラウンジ「柔らかいよなー。ちっちゃいし、ツルツルだし」
『そうかなwww』
ラウンジ「もうちょい、力入れて握っていい?」
『…うんっwww』
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