| 第3 人権問題としての欠陥住宅被害 「安全な住宅に居住する権利」を基本的人権と捉える必要性 住宅は、地震や台風等の外力から人間の生命・身体を守る器であり,安全性能を欠いた 住宅は,地震のとき,たちまち人間の生命・身体を奪う「凶器」と化す。それゆえ,建築 基準法令は,住宅が地震や台風等の外力に耐え得る安全性能を具備することを厳しく要求 している。ところが,現実には,深刻かつ重大な欠陥住宅被害が多発している。 すなわち,阪神・淡路大震災における死者6433人の8割近くが建物等の倒壊による圧死 であったが,倒壊建物の大部分は当時の耐震基準さえ満たさない住宅であった。 また,国土交通省によれば,我が国には,現在,いわゆる新耐震基準を満たさない既存 不適格住宅が1150万戸も存在するとされ,新築建物においても欠陥住宅被害が多発してい る。これら安全基準を充足しない多くの建物に居住する国民は,阪神・淡路大震災クラス の地震が起きたとき,同様の生命・身体の安全が侵害される危険にさらされているのであ る。 地震大国である我が国においては,住宅の安全性は全国民の問題であり(被害の普遍性),しかも地震による建物倒壊被害が高度の蓋然性をもって予測される以上(危険の切迫性),地震による建物倒壊その他欠陥住宅による生命・身体が侵害される危険は一日も早く除去されなければならない(被害回避の緊急性)。 それゆえ.欠陥住宅に対する規制が必要不可欠となるが,欠陥住宅による生命・身体に 対する侵害が発生してからでは,もはや手遅れである。欠陥住宅による生命・身体に対す る侵害が発生する前に,欠陥住宅に対する規制が行われなければならない。 しかしながら,欠陥住宅による生命・身体に対する現実の被害が発生しない段階で,公 権力や企業の行為を規制したり,あるいは裁判上差し止めるということは,必ずしも容易 なことではない。 そこで,「安全な住宅に居住する権利」を生命・身体の安全とは別個独立の基本的人権 であると認めて,欠陥住宅に対する生命・身体に対する侵害が発生する以前の段階で, 欠陥住宅の発生を阻止することが是非とも必要となる。 このことは,環境に対する侵害を権利侵害と構成することによって,生命・健康被害が 発生する前の段階での公害防止を可能にするために,環境権が主張されたのと同様である (浦部法穂「全訂憲法学教室」237頁)。 ※第48回人権擁護大会シンポジウム第3分科会基調報告「日本の住宅の安全性は確保されたか」 −阪神・淡路大震災10年後の検証ーP.27より転載 |