岐阜地裁判決  2007 6 22 その2


第3 争点に対する判断
 
1 争点(1)について
  
(1) 耐久性の欠陥(木材の防腐防蟻等の耐久性の欠陥)について
   
    ア 証拠(甲5の1〜3,8の1〜3,9,16の1・2,17の1〜3,
    18,21,22の1〜2 2,27〜3 0,3 2,4 2,乙口1,18,
    19〜21,鑑定の結果,証人石川育子,同神谷忠弘,原告笠松雅之)に
    よれば,
    (ア)原告らが本件建物に入居後8か月経った平成11年4月,1階和室の
     床に設置された・・・・吹出口から大量の羽アリが現われたこと,同室
     の床を撤去したところ,西側外壁下の側根太に激しい食害が見られ,周
     辺の土間コンクリートと基礎及び土台に蟻土や蟻道がついており,基礎
     の天端と土台との間に多数のシロアリが認められたこと,上記蟻土や蟻
     道は,基礎と土間コンクリートをつなぐために施工時に用いられた差し
     筋跡から,基礎を伝って土台に向かっており,建物下の土中とこの床下
     空間が蟻道によってつながれていたと推測されたこと,
      さらに,同年春には,1階洗面所と便所の・・・・吹出口からも大量
     の羽アリが現われたこと,浴室のユニットバスを取り外したところ,浴室東側の外壁下の
     布基礎立ち上がり部分に沿って,布基礎と土間コンクリートとの間にはさんである
     スタイロフォーム(断熱材)上に5本の蟻道が立ち上がっていたことが確認されたこと,
     原告らが名和昆虫研究所に生きている羽アリの鑑定を依頼し,ヤマトシロアリであるとの
     報告を受けたこと,
  
    (イ)平成12年春には,ユーティリティと台所との境の基礎立ち上がり分
    の隅から,シロアリが現われたこと,

    (ウ)同年7月2日の調査時に,1階和室西側外壁下の基礎周辺を外側から
    掘削したところ,布基礎底盤の下の土中に廃材が埋まっており,その廃材に
    多数のシロアリが群がり,激しい食害も認められたこと,
    シロアリによる食害のあった側根太にはマツの古材が使用されていたことが確認
    されたこと,
  
    また,ユーティリティと台所の床を一部撤去したところ,台所の東側外壁差し筋跡付近に,
    羽アリが飛び立ったときに落としたと思われる翅が多数散乱し,蟻土も認められたこと,
    ユーティリティと台所との境の土台の一部に,褐色に変色した腐れ箇所が見られたこと,

    (エ)ヤマトシロアリは,1年に1度,新しい巣をつくるために,蟻道を破って
    多数の羽アリが飛び出し群飛し,しばらくして地上に降りると,翅は体から落ちて,
    雌雄のペアが地中等に潜っていくという習性があり,
    これによれば,本件建物に発生したシロアリは,本件建物の施工時に持ち込まれたもので,
    本件建物の基礎下の盛土として使用された土の中にシロアリの卵か幼虫が
    混入していたことによるものと推測されること
   (なお,1階和室については,側根太に使われたマツの古材にシロアリの卵か幼虫が
   付いていた可能性もある。),

   (オ) 本件建物は,・・・・ソーラーシステムを装備しているため,床下空間の空気は外気ではなく,
   居住空間の空気と交換される。したがって,防蟻措置としては,
   床下空気中に防蟻薬剤が放散しないような工法をとる必要があり,
   ベタ基礎又は鉄筋によって布基礎と―体となるように一様に打設したコンクリートで
   地面を覆うという薬剤を使わない物理的工法による防蟻措置が望ましいこと,
   しかるに,本件においては,基礎と土間コンクリートをつなぐための差し筋跡に隙間があり,
   そこからシロアリが進入したこと,
    
    なお,・・・・ソーラーシステムは床下に暖かい空気を貯めるため,
   床下も含めた住空間全体を断熱材で囲む必要があり,土間コンクリート
   の下にも断熱材を敷き詰める必要があるのに,本件建物においては,土
   間コンクリート下の断熱材は,外局部の外壁から900mm内側の範囲に限
   られていたため,結果として,土間コンクリートの下の土壌までも温めてしまい,
   シロアリが生存しやすい環境を作り上げてしまったものであること,
    
    また,本件建物の盛土の中には,シロアリにとって格好の餌となる旧建物の残材が
   埋められており,結果として,シロアリが生存しやすい環境を作り上げてしまったこと,
  以上の事実が認められる。
 
 イ 以上の事実によれば,少なくとも,基礎の打ち継ぎ部分に隙間が存した
   ことが,本件建物がシロアリ被害を受ける結果を生じさせたものというべ
   く,上記隙間が存したことは瑕疵と評価せざるを得ない。

  

(2)構造の欠陥について
  
  証拠(甲5の1〜3,8の1〜3,9,18,21,3 2,乙口1,12,
  14,鑑定の結果,証人石川育子)に弁論の全趣旨を総合すると,
 
  ア 地盤の支持力について
   ボーリング調査及びスウェーデン式サウンディング試験の結果によると,
  本件敷地の地表部は砂質土の盛土層(浅いところで0、7 5m, 深いところで1.7m)
  から成り立っており,本件建物の基礎は,南側の布基礎部分も北側の布基礎部分も
  いずれも盛土部分に位置しているが,この盛上層の支持力は南側布基礎下部で1.74t/u,
  北側布基礎下部で1.95t/uと,非常に軟弱な地盤であるところ,
  本件建物の本件敷地地盤にかかる建物荷重は,3.1 0 t/uと算定されるから,
  本件建物の布基礎は,本件敷地地盤の支持力に対して安全な構造とはいえず,
  欠陥があること(なお,澤田鑑定も,本件建物周囲の地盤面から下方は,改良部分を
  除き約2.0mまでは,換算N値2,0〜4.0程度の軟弱地盤で,支持力が不足しているとしている。),

  イ 布基礎底盤厚の不足について
  本件建物の布基礎底盤厚につき契約書では1 5 0mmとなっているのに,
  コア抜き検査結果では1 1 5 mmしかなく,厚さが不足しているところ,
  これでは,令79条の鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さを6cm以上と
  しなければならないとの規定に反し,鉄筋のかぶり厚不足により,水分浸透による
  鉄さびからさび膨張を起こして,コンクリートに亀裂を生じさせ,
  基礎の耐久性を低下させるという弊害を起こす可能性があること(なお,
  澤田鑑定も,基礎底盤部に令79条に反する厚さ不足があることを認めて
  いる。),

  ウ 捨てコンクリートの未施工について
  コア抜き検査の結果,契約図書(矩計図)には布基礎底盤部下に捨てコンクリート5 0mmの
  記載があるのに,コア抜き検査の結果,布基礎底盤部下には,
  捨てコンクリートが施工されていなかったこと,

  エ 内部構造グリッド位置の布基礎未施工及び内部構造グリッド上に耐力壁がないことについて
  本件建物は,グリッド(基本となる寸法を格子状に展開した単位)を基本構造単位とし,
  4mx4mが2つ,3mx4mが4つの構造グリッドによって建物全体が構成されているところ,
  内部構造グリッド位置に底盤付きの布基礎が施工されておらず,
  構造面力上の安全性が確保されていないとし,この結果,内部構造グリッド上の壁が
  耐力壁とならず,耐力壁が不足していること
  (なお,澤田鑑定も,建物外周部の耐力壁下には土台及び布基礎が設置されているが,
  構造グリッド4m以下×4m以下に区画されるべき建物内部の耐力壁下に基礎がなく,
  耐力壁が不足しているとしている。),
 
  オ 必要軸組長さ不足について
   本件建物の現況の内部間仕切壁は,所定の釘打間隔(内部面力壁の構造
  性能を確保するための仕様規定)で施工されておらず,耐力壁となってい
  ないこと,
  カ 床組の欠陥について
    1階床組については,床面の剛性を確保するためには,火打ち土台が床
  組の隅角部に必要であるが,これが設置されておらず,床面の剛性が確保
  されていないこと,
   2階床組については,梁の内側に側根太を取り付けるのに,1 5 0o間
  隔での釘打ちが必要なところ,350〜400mm間隔で釘打ちされており,
  これに取り付ける構造用合板も150mm間隔での釘打ちが必要なところ,
  230〜250mm間隔で釘打ちされており,床面の剛性が確保されていな
  いこと,
  
  以上の事実が認められ,これらはいずれも欠陥といわざるを得ない。


  
(3)機能上の欠陥について
  証拠(甲5の2,8の1〜3,乙口1,12,13,30,証人石川育子)に弁論の全趣旨を総合すると,
 
 ア 屋根面の雨仕舞の施工不良について
   本件建物の屋根を,棟換気金物の一部を取り外して調査したところ,南
   側集熱パネル側に水切り及び水返しがまったくないこと,
   北側の太陽電池モジュール側にも水切りがないこと,
   南側集熱パネル上部の換気金物部分のコーキングは二面接着が守られていない上,
   コーキング部分の断面積も小さく,防水効果が低いなどの施工不良が存したこと,
   また,南側の集熱パネルと太陽電池モジュールとの取り合い部に水切りが欠落している
   施工不良が存したこと,
   太陽電池モジュール部分の瓦棒化粧カバーは,下地金物を留めたビス部
   分からの雨水の浸入を防ぐためのものであるが,現況では大きくくずれて
   いる部分があり,施工不良であること,
   軒先に設ける空気取入口が,軒樋の上部にあるため,屋根からの雨水及
   び風を伴う雨水がこの取入口から浸入するおそれがあり,施工不良といえ
   ること,
 イ 外気通気層の施工不良について
   本件建物の2階外壁は,ガルバリュウム鋼板張りであるが,契約図書の
   仕上表では,18mm厚の胴縁によって通気層を設置する仕様となっている
   ところ,現況では,外壁下地材として,厚さ5mmの横胴縁が設置されてい
   るのみであり,有効な通気層が確保されていないこと,

 ウ 外部サッシの取付施工不良について
   本件建物の外部サッシは15〜16本のアジヤスタブルスクリューとい
   う留め具を用いて固定する仕様となっているところ,所定の箇所数の留め
   付けが行われていないこと,
  
   また,大型サッシの取付には,サッシ下部をアルミアングルで補強する
   とされているところ,これが施工されていないこと,
   サッシ上部の水切りは必ず取り付けるとされているところ,これが取り
   付けられていないこと,また,サッシ周りを防水テープでしっかりシール
   するとされているところ,現況では防水テープはないこと,

  以上の事実が認められ,これらもいずれも欠陥ということができる。
 

 (4)外部周りの問題点について
   証拠(甲8の1〜3)に弁論の全趣旨を総合すると,
  ア 本件敷地は,旧建物の敷地地盤を約9 0cm盛土したため,既存の石積塀
   の上部に達するまで盛土されており,既存の塀が現況では擁壁となってお
   り,危険であること,
  イ 本件敷地南側に設置された擁壁は,高さが約1mあるが,水抜き穴等の
   施工がないこと,
  
  以上の事実が認められ,これらも欠陥というべきである。


2 争点(2)について
 
  (1)以上認定したところによれば,被告A工務店は,本件建物の建築請負業
   者として,被告K建設は,その下請業者として,上記1の欠陥を生ぜしめ
   たものであり,原告らに対し,不法行為責任を負うべきことは明らかである。
   
  また,前記争いのない事実によれば,被告Bは,被告A工務店の代表
  取締役であり,亡○良は,被告K建設の代表取締役であったから,会社法
  429条1項に基づき,損害賠償責任を負うものというべきである。
 
  (2)しかしながら,被告Iについては,証拠(乙ハ1, 3,被告I)によれば,
  被告Iは本件当時,被告K建設の取締役であり,営業を担当していたもので,
  本件には何ら関与していなかったことが認められるから,被告Iにおいて,
  本件工事について指示や管理監督を行い得る立湯にあったとはいえず,
  本件瑕疵の発生との関係において,取締役としての職務を行うにつき故意又は過失が
  あったとすることはできない。
   
   したがって,被告Iに,会社法429条1項に基づく損害賠償責任を認
  めることはできない。
 
   (3)次に,被告O田については,証拠(乙ハ1,被告I)によれば,被告O
  田は被告K建設の従業員であり,本件建物についての建築確認申請書に設計者及び
  工事管理者として被告O田の名が記載されたのは便宜上名義が使われたにすぎず,
  被告O田が工事監理を引き受けた事実はないばかりか,自ら
  の名前が使われたことも知らなかったこと,実際にも本件工事には何ら関与
  していないこと,以上の事実が認められ,これらによれば,被告O田が設計
  者及び工事監理者としての責任を負うものとはいえない。
  したがって,被告O田に不法行為責任を認めることはできない。

  4)さらに,被告・・・・ソーラー協会については,証拠(乙口7〜11,)
  によれば,被告・・・・ソーラー協会は,当初・・・・ソーラーシステム
  (屋根面で温められた空気を,建物中央に設置されたダクトを通して床下に
  貯め,各室の床に設置された・・・・吹出口から室内に吹き出し,暖房する
  システム)だけを提供していたところ,ソーラーシステムと住宅の躯体が一体化した
  フォルクスハウスを開発,供給するようになったものの,素材としての基本的な躯体だけの
  供給に止め,基礎や仕上げなどは自由に施工できる製品として供給していたこと,
  そのため,加盟工務店がフォルクスハウスを
  施工するに際して,施工について講習やマニュアルの配布等の指導を行い,
  設計図面の提出を受け,躯体の強度等のチェックは行っているが,個別の住宅の設計・施工は
  加盟工務店の自主的な責任に委ねており,個別の住宅の施工まで監督・チェックしてはおらず,
  その義務もないことが認められる。
  
  これによれば,被告・・・・ソーラー協会としては,加盟工務店に提供し
  た指導内容に誤りがあった場合,その責任を負うというべきであるが,加盟
  工務店がマニュアルや法令を遵守せずに施工した場合には,それを知り得た
  にもかかわらず放置した場合であれば格別,そうでない場合までその施工に
  ついて責任を負うものということはできないと解すべきであるところ,本件
  において,本件建物の欠陥は,法令等や本件マニュアル等に違反した施工に
  起因するものであることは既に見たとおりであり,そうだとすれば,被告・・・・ソーラー協会は,
  上記欠陥について,損害賠償責任を負うものとはいえない。
   
   したがって,被告・・・・ソーラー協会に不法行為責任を認めることはで
  きない。


3 争点(3)について
 
 (1)補修費用相当損害額について
  ア 証拠(甲8の1〜3,証人石川育子)によれば,上記1の瑕疵の補修に
   ついては,
   (ア)耐久性の欠陥(木材の防腐・防蟻等の耐久性の欠陥)については,木
    部の防蟻措置として,1階の外装を撤去し,外壁部の地盤面から高さ1
    m以内の部分について,外側から薬剤による防腐・防蟻処理を行い,地
    面に講じる防蟻措置として,現状の基礎を撤去し,基礎と一体となる方
    法で隙間ができないようにコンクリートを打設し直して地面を覆い,断
    熱材も施工するほか,現状の盛土を撤去して,シロアリ防除済みの土に
    替えることが必要であること,
   
  (イ)構造上の欠陥については,現況の基礎を撤去し,適正な基礎に施工し
    直し,所定の耐力壁仕様の施工を行い,床組も再施工することが必要で
    あること,
   
  (ウ)機能上の欠陥については,すべての屋根仕上げ材を撤去して,適正に
    再敢付する必要かおること,
   
  (エ)これらの補修のためには,より安価な方法として,現在使用されてい
    る部材をできる限り再使用することを前提として,基礎・土台部分を上
    屋から切り離して,上屋部分をジャッキアップし,上記補修工事を施工
    することが相当であり,そのための補修費用は4200万円と見込まれ
    ること,
   以上の事実が認められる。
  
 イ なお,鑑定においては,補修総費用は1 4 1 4万9695円であるとの
   結果が出されているが,この鑑定結果は,防蟻等の対策につき,コンクリートの再打設等は
   想定していないこと等,前提を異にしている点が多く,
   かつ,上記補修工事の全てを網羅するものでもないため,ここでは採用し
   ない。
 
 (2)代替建物レンタル費用等について
   原告らが本件建物の補修期間中,同程度の建物に転居する必要があり,こ
  れを賃借する必要があるところ,弁論の全趣旨によれば,補修期間は7か月,
  家賃は1か月当たり20万円,敷金等は60万円の合計200万円をもって
  相当と認める。
 
 (3)引越費用について
   原告らが本件建物の補修工事に当たり,本件建物から代替建物,代替建物
  から本件建物への2回の引越を要するところ,弁論の全趣旨によれば,その
  費用は少なくとも30万円が必要と認められる。
 
 (4)調査鑑定費用について
   原告らは,本件建物の欠陥の有無等について,専門家による調査・鑑定を
  要し,その費用としては,200万円をもって相当と認める。
 
 (5)慰謝料について
   前記認定のとおり,本件建物の欠陥が構造上の安全性に関わるものにわた
  ることなど,本件に現われた一切の事情を考慮すると,原告らの受けた精神
  的損害は小さくなく,財産的損害が回復されたとしても,なお,それによっ
  てすべてが回復されるものとは認められず,その慰謝料の額は,1 0 0万円
  をもって相当と認める。
 
 (6) 弁護士費用について
   本件事案の内容,認容顔等にかんがみると,弁護士費用は400万円をも
  って相当と認める。

4 結論
 よって,原告らの請求は,被告A工務店,被告B,被告K建設及び被
 告○友に対し,連帯して,5130万円及びこれに対する不法行為の後である
 平成10年11月2日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損
 害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄
 却することとし,主文のとおり判決する。
          岐阜地方裁判所民事第1部
        
                       裁 判 官   筏  津 順  子










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