| ふぉあ すまいるに載せる原稿を依頼されましたので、岐阜大会で発表したことをまとめてみました。次号のふぉあ すまいるに掲載予定です。 表 題 欠陥住宅と闘う日々、そして被害者である私たちの思い 1・自己紹介と家の欠陥について 地元岐阜県に住む笠松と言います。私は1998年に自宅を建て替え、 48坪で4000万円以上を支払って、高気密・高断熱の健康住宅を 注文で新築しました。 本などで検討を重ね、エコシステムを推進するフランチャイズシステムのメーカーが、技術を地元の加盟工務店に指導するシステムで、そのメーカーが部材を供給する企画住宅を選びました。 ところが、築1ヶ月で雨漏り、築8ヶ月でシロアリ被害に遭いました。 原因追究と補修の交渉を重ねましたが、工務店にもフランチャイズのメーカーにも安心できる回答をもらえません。 そこで、自費で調査したところ、『地盤改良の不備』・『基礎の不備』・『構造用合板の釘打ちピッチが耐力壁としての基準を満たしていない』・ 『水切りの不備』等、風力にも地震にも耐えることが出来ない欠陥住宅であることがわかりました。そこで、欠陥住宅専門の弁護士さんに依頼し、岐阜地裁に提訴しました。2000年11月のことです。 2・どのような闘いをしてきたか 私たちの裁判は7年に及び、2007年6月に5130万円の損害賠償が、 請負業者の工務店と下請けの工務店及び両者の代表者に認められました。 岐阜地裁としてはおそらく満額に近い判決は初めてで、画期的な判決だったと思います。 裁判の勝因としては、最初の段階でお金をかけて徹底的な調査をしたこと、弁護士さんがどのような法律や基準に違反すれば欠陥なのかという明確な理念を持ち、言った言わないなどの瑣末な事柄に惑わされず、直球勝負的な闘いをしてくれたことだと思います。 私たちも、自分達の家に関して徹底的に資料を集めました。 自分達の知り合いの工務店に頼み、マニュアルや、指導内容を入手しました。トラブル発生時からは克明な記録を残し、それらを常に整理し、 準備書面を弁護士さんだけに任せるのではなく、私たちの意見を取り入れ てもらうよう常にメールのやり取りを行いました。 またHPを作成し、何故このような欠陥が起きたのか自分達なりに整理し、欠陥に遭わないための情報発信も行いました。 『裁判は密室で行うということと裁判官が文系のため良い判決が出ないということが多い』、と多くの方から聞きましたので、証人尋問の際は、各所に傍聴支援の働きかけを行い、多くの傍聴の方に来て頂きました。 証人尋問以外の普段の口頭弁論でも継続的に傍聴をして下さった方もおられ、傍聴に来てくださる方の存在には、とても勇気付けられました。 3・何故欠陥住宅は人権問題なのか この7年間に感じたことは欠陥住宅の裁判の被害者は理不尽な日々を 強いられるということです。自分達の家が欠陥だということは 筆舌に尽くしがたい苦しみです。私たちも雨漏り・シロアリの時は、何故自分達がこんな目に?という思いや不安にさいなまれました。 自分の家が地盤・基礎・躯体に到るまでも手抜きしてあり、風力や地震に耐えることが出来ないとわかってからは、夜も眠れぬ苦しみでした。 2003年からは家を出て借家住まいで裁判を続けるのですが、 裁判には、費用的には膨大な経費がかかります。すでに着手金・鑑定書作成費用・毎回の裁判費用など裁判関係で900万円以上お金を使い、 加えて仮住まい費用・ローン返済と1500万を超えるお金を出すことを余儀なくされました。 地裁では請負工務店と下請け工務店に対し5130万円支払えと言う 勝訴の判決が出ました。しかし、地裁提訴から判決までに7年という 月日が費やされ、下請け工務店は判決直前に破産し、請負工務店は 判決直後に破産しました。完全な計画倒産です。 私たちと弁護士との契約は1審だけの契約となっていました。 フランチャイズの親会社に責任を問うために起こした控訴審では、 さらに100万単位の着手金が必要と言われ、支払うことが出来ませんで したので、現在は自分達で本人訴訟を行い、準備書面を作成しています。 今思うことは、このように理不尽な被害に遭い懸命に闘っていても、 日本の法律が業者を救い、被害者である個人を救っていないという 民主国家とは言えない現実です。裁判で欠陥住宅の被害者が勝訴する のは非常に困難なのですが、仮に勝訴しても、業者には倒産という手段が与えられていますので、債権は回収できないか、非常に低い額で和解として抑えられることが多いのです。 これでは長期間必死で闘って来た欠陥住宅の被害者は救われないどころか、欠陥住宅の被害自体もなくなりません。個人情報保護法で財産を 調べるのも困難ですし、不法行為による判決と一般債権が同列に扱われ、いとも簡単に倒産が出来る現実は非常におかしいと思います。 欠陥住宅に取り組んでくださる弁護士の方の中には、勝訴を最終目標と 考えておられる方がおられるようですが、実は勝訴は最終目標ではないと今の自分は感じています。 多くの被害者の方とのネットワークを今もっていますが、今まで実直に仕事をしてきた一般市民が、欠陥住宅をつかまされ、そのあと様々な交渉や 経験の中で不信と挫折を繰り返し味あわされ、無気力になり生きる力を 失っています。それが欠陥住宅の被害なのです。 まさに人権問題だと思います。社会全体の共通理解としてそのことが 理解され、仕組み自体を代えるような取り組みがされなければいけないと思います。 4・被害者を救う取り組み 欠陥住宅の被害者は、家族不和・一家離散・浮浪者化など社会的に 悲惨な道をたどることが多いと指摘されています。私たちも経済的な 困難に加え精神的・肉体的に困難を感じることが多く、欠陥住宅の被害の深刻さを実感しています。 本人訴訟は非常に難しく、控訴理由書を書くのも大変でした。 しかし以前ご縁のあった弁護士さんが深く同情してくださり、ほとんど 無報酬で何度も添削してくださいます。被害者の方たちやHPを読んで下さる方たちはいつも励ましのメールや手紙、電話をくださいます。このような『人との出会い』が今の私たちの心の支えになっています。 高裁での裁判は、公開で2度行われましたが、2度とも、100人近い傍聴人が来て下さいました。欠陥住宅や消費者問題に関心のある方が、地元だけでなく、大阪や広島や三重・東京からも駆けつけて下さいました。 私はこれからの欠陥住宅に対する取り組みとして、まず裁判に勝訴することは大切ですが、それだけではなく、法律を変えて行く取り組みをすることが必要だと思います。被害や裁判の実態を国土交通省に訴え、しっかりとしたペナルティを課し、被害を賠償させる仕組みを作らなければ、 被害はなくなりません。勿論裁判に勝つための情報の蓄積も大切ですし、密室化した裁判を防ぐには傍聴支援等の取り組みも必要だと思います。そのためには、弁護士さん同志の交流と共に被害者や一般人との意見交流が必要であり、このような大会が毎年行なわれていることを嬉しく思います。 この欠陥住宅ネットで『欠陥住宅問題は人権問題です。何も落ち度のない一般人が深刻な被害に遭うのが欠陥住宅であり、だからこそ人権問題なのです。』という言葉をお聞きした時、弁護士さんがこの状況を正確に把握して下さっている事に感謝しました。 7年間の欠陥住宅の闘いを通して、私はこの状況を世の中に広く伝えること、被害者と弁護士、一般人が手を携えてどこに問題があるのか、どのように世の中を変えて行くのか試行錯誤をしながら取り組んでいく必要性を深く感じています。 どうか今後も人権問題なのだということをいつも確かめながら、欠陥住宅問題に取り組んでください。そしてこの社会を変えていこうという私たち被害者や一般人と共に闘って下さい。 |