平成一二年(レ)第 九 号 控 訴 人 甲A 被 控 訴 人 乙B 平成一二年 二月 二五 日 右控訴人 甲A 横浜地方裁判所 第九民事部合議係 御中 準 備 書 面 (二) (控 訴 理 由 書) 以下、次の項目建てにより、控訴の理由を申し述べる。 第一、争点について 第二、原審の人証による認定の誤認について 一、原判決 事実及び理由 第三の1の誤認 二、原判決 事実及び理由 第三の2の誤認 第三、請求の理由 第四、被控訴人主張に対する反論 一、借主負担の専門業者によるハウスクリーニング特約について 二、クロス張替えについて 第五、本件における被控訴人と仲介業者(H登山鉄道不動産部)の不遜な態度 第六、同様事件の判例について 第七、甲第一号証、甲第二号証について 第八、おわりに 第一、争点について 一、原審は、「解約明渡時に、借主が専門業者によるハウスクリーニングをするとの約 束があったかどうか」のみを争点としたが、これは、控訴人の十分な主張の無いま ま、(原審第一回口頭弁論で、控訴人は裁判官に質問された事実の存否に答える以 外、主張する機会は、実質上与えられなかった)判断がなされたもので、控訴人本 来の本件請求の理由を踏まえたものではなく、誤りである。 二、控訴人本来の本件請求の理由は、原審第一回期日の直後、原告(被控訴人)準備 書面(一)の二で申し述べたように、本件賃貸借契約書(乙一、以下契約書という) 第二条により、敷金返還を求めるものであり、控訴人の特約上の負担義務の存否や、 その外の事由を争点とすることなく、明渡し日である平成一一年四月三〇日に速や かに返還されるべきものである。 三、しかし、被控訴人が、特約により専門業者によるハウスクリーニングを行なう負担 義務が控訴人にあると抗弁したため、右抗弁に対し、控訴人の前項請求理由と併せ、 別の論拠の反論として、証拠(甲一、二、三、四、七)と右準備書面(一)の一に より右特約の無効であることも主張したのであるが、原審は、既に争点は右一項記 載のとおりに決まったものであるとして、右準備書面(一)の中、ほぼ全ての陳述 を認めず、右準備書面(一)や書証による右特約無効の主張についても、原審の争 点に対する判断において、全く触れられておらず、右争点に対する判断の際、全く 考慮に採用されてなく、その理由も述べられていない。 四、よって、原判決は、控訴人本来の請求の理由、主張、事実を十分に玩味した上の争 点の位置づけ、審議によるものでないので、原審判決は速やかに却下されるべきで ある。 第二、原審の人証による認定の誤認ついて 一、原判決 事実及び理由 第三の1の誤認 原判決の論述には、「本件賃貸借契約当時、証人O川が契約書記載条項を全部原 告に読み聞かせ、ハウスクリーニングの件について原告が同人に質問したこと、 証人O川が、希には部屋がきれいなためハウスクリーニングをしない借主もあった からきれいに使えといったことが認められる。」とあるが、「証人O川が契約書記載 条項を全部原告に読み聞かせ、ハウスクリーニングの件について原告が同人に質問 した」とは、原審証人尋問で控訴人、及び本件賃貸借契約時に同席した証人H野が 供述したとおり、右契約当時、証人O川が契約書を始めから最後まで音読したのち、 控訴人に対し質問の有無を尋ねたので、控訴人がいくつか質問の中、ハウスクリー ニング特約の趣旨についても尋ねたところ、証人O川は、「通常程度、部屋の汚損 に注意して生活する分には心配ない、ハイツ九三では、右特約の履行を求めない場 合もある」との旨、控訴人に説明したのみで、その頻度については触れていない。 また、控訴人と証人H野の右供述内容については、証人O川も認めている。 借主にハウスクリーニング特約の履行を求めないことが「希」であるとの説明は、 原審証人尋問の時に、裁判官が右頻度について尋問したことに対する、証人O川が 回答した供述であり、本件賃貸借契約当時の証人O川の説明では述べられていない。 よって、「本件賃貸借契約当時、・・・・希には部屋がきれいなためハウスクリー ニングをしない借主もあったからきれいに使えといったことが認められる」との認 定は事実誤認である。 本件賃貸借契約当時、証人O川から、その頻度が希か否かに触れずに、「通常程 度に汚損に気をつけていれば、借主に右特約の履行を求めないこともある」との説 明を受けたからこそ、控訴人、及び同席した証人H野も、「ハウスクリーニング特 約は通常程度汚損に注意して生活していれば、履行を強要されるものではない」と の認識を得たのである。 それでなくとも、原判決当該項記載の事実は、本件賃貸借契約当時、証人O川が 「部屋がきれいなためハウスクリーニングをしない借主もあった」旨の説明として のみ受け取れ、「本件賃貸借契約解約時、室内汚損の程度によらず無条件にハウス クリーニング特約を履行する」旨の説明であるとはいえない。 原審が原判決当該項記載の事実を、証人O川が右特約の趣旨、及び右特約の履行 が本件賃貸借契約解約時に必須であることを、控訴人に十分説明していたことを示 す事実として認定しているとすれば、それも事実誤認がある。 二、原判決 事実及び理由 第三の2の誤認 原判決の論述には、「原告が専門ハウスクリーニング業者を呼び、被告立会いの もとに部屋を点検見積もりを依頼し、・・・この業者に依頼したこと(・・・業者 が・・・二万五〇〇〇円だといったところ、被告がそれでやってくれといったが、 自分は何も異議をいわなかったと述べている。)が認められる。」とあるが、控訴人 が自分で専門ハウスクリーニング業者を呼んだ理由は、原審証人尋問で控訴人が述 べたとおり、既に明渡しの当日以前から、明渡し時の債務、及び敷金の返還につい て、(色々費用がかかるので、敷金二七万五〇〇〇円の大方は戻らない旨、被控訴 人が控訴人に対しいったため)控訴人と被控訴人の間で紛議が生じており、(そう した紛議が生じていたことについて、被控訴人の異論はない)その時の当事者間で のやりとりで、被控訴人が、明瞭な根拠も示さずに、「とにかく結構費用がかかる、 大して残らないと思うが、もしもいくらか残りがでれば返すから、あとはこちらで 全部やるから」などと言ったため、控訴人は、被控訴人が不当に敷金をせしめるつ もりではないかという不安にかられ、それほど高額な費用が本当にかかるのか、 実際に専門業者に見積もってもらい、その上で更に、被控訴人と交渉を具体的に進 めるための、いわば費用の具体的検証のためである。 また、被控訴人が専門業者にクリーニングを依頼した時に、控訴人が特に何も異 議をいわなかったのも、その当時、既に控訴人の債務の有無に関して、被控訴人と 紛議となっており、仮に被控訴人が業者にクリーニングを依頼したとしても、その 費用の負担が誰に帰するかは確定しておらず、被控訴人が右業者に依頼した瞬間に、 あえて改めて異議を唱えるまでもなく、控訴人がクリーニング費用の負担を認めて いなかったのは、明らかな状況であった。 その上で、被控訴人がクリーニングを依頼したのだから、控訴人は、被控訴人が 「いずれにせよ、明渡し後にやるつもりのことは、とりあえずやっておこう」とい う考えなのだと思い、当然、その費用負担については今後も交渉を継続するもので あると認識していたからであり、原審証人尋問の際、控訴人はこれらのことを述べ、 これら控訴人供述の事実に対し、被控訴人も異論はなかった。 にもかかわらず、原判決はこれらの控訴人供述の事実を排しており、その外の控 訴人供述のみが部分的につながり構成され、事実として認定されており、明らかな 誤認である。 第三、請求の理由 契約書第2条(敷金)(乙一)の取り決めによる。 敷金契約書(乙一)第2条(敷金)の条文によれば、借主が本件契約上の債務を有 する場合には、貸主は敷金の全部又は一部を、その弁済に充当する事ができる。 しかし、同条文は「この金員は利息を付さず、本件建物明渡しの日より即日以内に 賃借人に返還する。」とも明記されている。これは、貸主が借主の有した契約上の債 務を敷金で充当できる一方で、明渡し完了の日には、即日以内に貸主は借主に敷金を 返還しなければならない事を意味している。 つまり、貸主が敷金で借主の有する債務を充当できるのは、明渡しの日までに当事 者間の合意がなされ、その上で履行できるものについてのみ許されるもので、それ以 外は、明渡し日に借主から求められれば、即日以内に当然に返還されるべきである。 更に、本件賃貸借契約において、当事者間の債務の有無をめぐり紛議となった場合 に、紛議解決まで期間、貸主が敷金を拘束できる、との取り決めは、契約書の如何な る条文、事項としても全く記されていない。 すなわち、本件は上記の契約書第2条(敷金)を拠所とし、敷金返還を求めるもの であり、控訴人の特約上の負担義務の存否、その外の事由を争点とすることなく、明 渡しが完了した平成一一年四月三〇日に、速やかに返還されるべきものである。 本件賃貸借契約の当事者間で債務の有無をめぐる紛議が生じ、被控訴人が控訴人に、 何らかの費用負担を要求したいのなら、それは被控訴人が別途手段を講じるべき事で、 被控訴人が本件において、特約による義務負担の存否を争点とし、明渡し完了日以降 現在に至るまで、残敷金一一〇、〇〇〇円全額の返還を拒み続けている事は、契約書 条文第2条(敷金)によっても正当に成り立つものではなく、無根拠で不当な行為で あると主張する。 第四、被控訴人主張に対する反論 一、借主負担の専門業者によるハウスクリーニング特約について 1.建設省住宅局民間住宅課監修の「賃貸住宅の原状回復をめぐるトラブル事例とガ イドライン」(甲七の4 特約について)によれば、借主に法律上、社会通念上の義 務とは別個の新たな義務を課す特約については以下の要件を満たしていなければそ の効力は不十分であるとしている。 @ 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在する事 A 借主が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負う事について 認識している事 B 借主が特約による義務負担の意思表示をしている事 以上であるが、@については「家賃を明らかに相場より安価にする替わりにこう した義務を借主に課す場合など、限定的なもの」とされており、本件賃貸借契約は それに該当しない。 Bについても本訴に至るまで争いとなっているので、控訴人に義務負担の意志表 示が無いのは明白である。 更にAについては、控訴人が業者によるハウスクリーニングを借主が負担する旨 の特約が通常の原状回復義務を超えた義務を負うものである事を認識したのは、本 件賃貸借契約の解約の際に被控訴人から「補修等に多大な費用がかかる為、敷金は 大方戻らぬであろう」と言われた事に不安を感じ、それ以降、控訴人が独自に関連 団体等や書籍から調べて知り得た事実であり、それ以前に、被訴人や仲介業者から は、そうした旨の説明を一切受けていない(借主が業者によるハウスクリーニング の債務を負うことが、通常の原状回復義務を超える義務であること、右債務を汚損 の程度の如何を問わず、退去時に必ず取り行なう旨の説明は一切なく、むしろ証人 O川は、ハイツ九三では場合によって、業者による清掃をしない場合もあった、と 言っていた。)ので、当然、契約締結時に控訴人はそうした認識を全く持ち得なか った。 この様に、本件賃貸借契約における業者によるハウスクリーニングを借主の負担 とする特約は、右三項目のいずれの要件も満たしていない。 2.なお、実際の当該貸部屋の汚損は、専門業者の作業完了証明書(甲四)のとおり、 通常程度の極めて軽微なものであり、建設省住宅局民間住宅課監修の「賃貸住宅の 原状回復をめぐるトラブル事例とガイドライン」の図表(甲七)の[賃借人が通常 の住まい方、使い方をしていても発生すると考えられるもの]の分類項目から漏れ るものはない。 3.よって、本件賃貸借契約における業者によるハウスクリーニングを借主の負担と する特約は、右1、2記載の理由から、無効であると主張する。 二、クロス張替えについて 被告(被控訴人)答弁書に、被告(被控訴人)の言い分として、「建物賃貸借契約 書第5条(用法厳守、善管注意義務)によりクロスが著しく汚損され借主の損害弁償 部分であるが私の方で全額負担で修理する」とあるが、クロスの汚損は経年劣化(日 焼けによる変色、糊のふきのこし等)と控訴人の通常程度の煙草のヤニなどの複合し た原因で、その汚損の要因、程度は、建設省住宅局民間住宅課監修の「賃貸住宅の原 状回復をめぐるトラブル事例とガイドライン」の図表(甲七)によると、[賃借人が 通常の住まい方、使い方をしていても発生すると考えられるもの]の項目分類に全て 該当しており、そもそも借主である控訴人が補修の義務を負うものではない。 また、上記要因による実際の当該クロスの汚損も「著しく汚損され」と言えるほど ではない。 よって、当該クロスの張替え費用は、そもそも当然に被控訴人が負担すべきもので あり、控訴人によりクロスが著しく汚損され、控訴人の善管注意義務違反であり、そ れを被控訴人があえて補修費用を全額負担するとの被控訴人主張はこれを否認する。 第五、本件における被控訴人と仲介業者(H登山鉄道不動産部)の不遜な態度 一、控訴人は本件賃貸借契約解約に際して、本訴至るまでの経過において、クロス張替 え、ハウスクリーニングなどの控訴人負担義務の存否について、明確な論拠(甲一、 二、三)を以って、被控訴人と仲介業者に対し意見を主張し、敷金返還を求め、時 にはいくつかの譲歩案も出しつつ、被控訴人に対し信義誠実に協議する様、再三に渡 り求めたが、被控訴人は、控訴人を「俺とあんたでは基本的に立場が違うんだ、対等 にどうのこうのと決めるんじゃなくて、俺がこうする、ああする、と言ったら、あん たはそのとおりやるだけなんだ」などと、貸主借主の関係が、あたかも雇主雇人の主 従関係であるかの様なことを言い、控訴人の主張に対して何ら明確な論拠による反論 を示さぬばかりか、控訴人ハイツ九三居住中に家賃支払いやその他の問題が一切なか ったにもかかわらず、「もともと貸したくなかった相手だから」などと、具体的な理 由も無く控訴人を誹謗し、当事者として被控訴人自らで誠実に紛議に対応することす らせず、仲介業者を通して、ただひたすらに敷金全額二七万五〇〇〇円の返還を拒み (控訴人の再三の抗議により、敷金全額の内一六万五〇〇〇円のみ平成一一年五月三 一日に返還)、クロス張替えとハウスクリーニングの費用の全額負担を控訴人に対し 要求し続けた。 二、仲介業者も被控訴人主張と意を同しており、理屈云々よりも、とにかく改修にかかる 費用の全額を控訴人に負担させることを目的と して控訴人に対応した。 具体的には、本訴以前の交渉の際、控訴人が、自分の当該室入居時に、既に汚損があ ったことを仲介業者に指摘すると、仲介業者は「以前は誰も入居していなかったから、 全く新しい状態で、少しの汚れもなかった」などと、嘘をつくなどし、(甲九)控訴人 を騙そうとしたりした(後に仲介業者は、控訴人以前の当該室入居者がいたことを認 めた、甲一〇)。 三、なお、本訴に至って突如、被控訴人が自ら、クロス張替え費用を負担すると主張した が、これは被控訴人が、クロスの張替え費用の負担を控訴人に要求することは不当な 暴利であることを承知の上で控訴人に要求していたことを裏付ける事実である。 被控訴人と仲介業者は、訴訟に至って、公の場においてまで、そうした暴利を露骨 に要求することはまずいと思い、それまで控訴人の再三の具体的な反論も無視し、頑 として要求してきたクロス張替え費用の要求を突如取りやめたのである。 四、被控訴人は控訴人に対して本件賃貸借契約の解約の際のいくつかの場面で不用意な発 言(甲六)をし、それらの言動は控訴人が被控訴人に対して不安や不信を抱くに十分 なものであった。また、一時控訴人は紛議解決の為の譲歩案の一つとして、被控訴人 に、それらの言動に対する謝罪を求めたこともあった(甲六)が、被控訴人はさほど の検討もせず、受け入れなかった。(甲一一) 五、再三の交渉の末、控訴人は自分の主張に対して、被控訴人の明確な論拠に基づく反論 も無く、ただ闇雲に被控訴人に敷金を拘束され、補修費用の全額負担を要求されても到 底納得できず、困り果てた。控訴人は仲介業者から、被控訴人と仲介業者は「今後も態 度を変えるつもりはないので、それでも控訴人が被控訴人の要求に応じたくないなら、 裁判でも何でもしたらどうか」(甲一〇)と言われ、やむなく控訴人は本訴に至ったが、 本件が訴訟に至ってからも、被控訴人は、控訴人に対し本訴に関する用件がある時や、 裁判所の手続きなど、当事者として自分で行なわず、仲介業者であるH登山鉄道不動 産部 小田原西口営業所長 A柳Y男が、正式に委任された代理人でないにもかかわらず、 一切取り行なっており、その際の右A柳の控訴人に対する態度も、原審の口頭弁論期日 に、毎回被控訴人に付き添ってきては、代理人でもないのに控訴人提出の書証受領印の 押印を理由も無く拒んで手続きを妨害し(被控訴人もA柳の右行為を黙認していた)、 被控訴人と共に原審裁判所内の廊下で、控訴人の背後から「面倒なことをして長引かせ やがって、この馬鹿」などと、控訴人に対し小声で罵声を浴びせるなど、極めて不遜か つ不当なものである。 六、この様に、本件紛議の当初から現在まで一貫して、仲介業者は控訴人と被控訴人の 間に、公平公正な仲介者として立たず、不当で一方 的な利益を被控訴人に供するこ とを目的として振舞っている。(甲一二) その理由は、「仲介業者は、賃貸物件の所有者である被控訴人とつながり、右賃貸 物件を仲介することで、利益を得ているのだ」と仲介業者が認識しているからである と推されるが、しかし、正に右利益とは、賃貸借契約成立時に、借主が直接、仲介業 者に支払う仲介手数料(控訴人は家賃一箇月分と消費税五万六六五〇円を仲介業者に 支払っている。甲一三)が主であることを熟慮すれば、仲介業者に対する実質的な利 益の供与者は、他ならぬ借主である控訴人であることは疑いない事実である。 それにもかかわらず、A柳ら仲介業者は、不動産取引の専門業者でありながら、こ うした基本的な自らの生業の利潤の構図を忘れ、顧客である控訴人の真摯な訴えに対 し、不遜な態度で控訴人を侮辱しながら、被控訴人と結託して、控訴人に不当な不利 益を被るよう要求し続けてきたのである。 七、こうした、A柳ら仲介業者が不動産取引の専門業者でありながら、こうした基本的 な自らの生業の利潤の構図を忘れ、顧客である控訴人の真摯な訴えに対し、被控訴人と 結託し、不遜な態度で控訴人を侮辱しながら、控訴人を騙してでも、本来貸主の義務で ある(民法六〇六条、甲八)通常程度の汚損に対するリフォームにかかる費用の全てを 借主に負担させるなどという不当な債務を、「金を返して欲しければ、言うことを聞け」 と言わんばかりに、敷金全額の返還を正当な理由もなく拒み、半ば脅迫的に、控訴人に 要求し続け、被控訴人と仲介業者は不当に利益のみを享受しようとする被控訴人と仲介 業者の態度は、民法総則の信義則、並びに契約書第12条(その他)「本契約に定めの 無い事項は、借家・民法等法令に準拠し、信義誠実に協議して処理する」(乙一)との 条文趣旨に反すると主張する。 第六、同様事件の判例について 本書面の第一の三項で申し述べたように、原審が、本件における「借主負担で専門 業者によるハウスクリーニングを行なう特約」をめぐる争点に対する判断として、人 証による認定に事実誤認があるとはいえ、右特約を約束の趣旨に何ら問題の無い、通 常の約束事として扱い、本件賃貸借契約当時や明渡し時の当事者間の簡略な口頭での やり取りの中から、「解約明渡時に、借主が専門業者によるハウスクリーニングをす るとの約束があったかどうか」のみを、大まかに判断したのは誤りであり、やはり右 特約についての判断に際しては、原審においても控訴人は主張したが、建設省住宅局 民間住宅課監修の「賃貸住宅の原状回復をめぐるトラブル事例とガイドライン」(甲 七)の示唆を考慮した上で、右特約趣旨そのものの有効性の是非を問うことが不可欠 であり、それが時勢の流れであると思われる。 本件と同様事件の判例を見ても、そうした趣きが伺える。(東京簡判 平成七年(ハ) 第三〇五三八号)(甲八の事例4) 第七、甲第一号証、甲第二号証について 一、原審で提出した甲第一号証は、財団法人 不動産適正取引推進機構 調査研究部調査 課長 村上秀樹氏の論説を右財団法人の刊行物「RETIO No.37」より転載し たものであるが、控訴人がワープロ複写した書証であり、原本の確認が容易でないの で、右刊行物の当該個所をコピー複写で作成した同旨の書証を、甲第八号証として新 たに提出する。 二、同じく、原審で提出した甲第二号証も、建設省住宅局民間住宅課監修の「賃貸住宅の 原状回復をめぐるトラブル事例とガイドライン」を控訴人がワープロ複写した書証であ り、原本の確認が容易でないので、右ガイドラインをコピー複写し、甲第二号証と同 旨の書証として、甲第七号証を原審の第一回期日に提出した。 三、以上、甲第一号証、甲第二号証が、右甲各号証と同旨である甲第八号証、甲第七号証に、 右の理由により、代替することを釈明する。 第八、おわりに 以上、原判決の問題点、及び本件に係る直接、間接の事実を基に控訴の理由を申し述べた。 御庁に本書面で申し述べる趣旨を玩味して頂き、本件を適正に判断して頂けることを切望する次第である。 証 拠 方 法 一 甲第三号証(平成一一年六月七日朝日新聞記事) 二 甲第四号証(ハウスクリーニング作業完了証明書) 三 甲第六号証(「詫び状の骨子」書面) 四 甲第七号証(建設省住宅局民間住宅課監修「賃貸住宅の原状回復をめぐるトラブル事例とガイドライン」) 五 甲第八号証(RETIO No.37「原状回復義務と敷金返還請求に関する判例について」) 六 甲第九号証(録音テープ反訳書) 七 甲第一〇号証(録音テープ反訳書) 八 甲第一一号証(録音テープ反訳書) 九 甲第一二号証(録音テープ反訳書) 一〇 甲第一三号証(仲介手数料領収書) 添 付 書 類 一 甲第八、九、一〇、一一、一二、一三号証写 各 一 通 二 証拠説明書 一 通 以 上