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子どもが「幸せ」な状態とはどんな状態なのでしょうか?

山下 敬子

 このごろの子どもたちを見ていると,与えられ,押さえつけられすぎて,そのことに慣れてしまい,自分が何を食べたくて,何がしたくて,どこに行きたいのかといったあたりまえのことすら考えたり,主張したりできなくなっています.つまり「自律」ができていないのです.フリースクールに来ても授業に出ないでずっとマンガばかり読んで終ったり,やる気なく過ごしたりする子どもがいるとスタッフはついそのことを何となく不快に思ってしまいます.何もやる気がないように見えるその子の状態が長いと親ごさん共々あせりが起きてきます.
 けれども,今までの経験からむりやり子どもに何かさせてもそれは本当の自己教育にはならないことがほとんどで,それは自分が何かに挑戦して,失敗したことの中から教えられていくものだと思うのです.失敗によって自ら学ぶことがなければ彼らの真の意味の成長は望めないのです.
 子どものとった行為や言動に怒りや不快を感じたときに,すぐにストレートにそれを言葉や態度で表現することは,たとえそれがスタッフにとって正しいことや真理であっても,そこには「大人と子ども」という力関係(大人の期待に答えねばというプレッシャー)を子どもに与えてはいないだろうか,同じ土俵に立っているのだろうかということを気づかうことがなければ,子どもが失敗する権利や迷う権利を保証できないように思うのです.その子固有の時間を楽しみ,問題が出てくるまで待ってやる時間を保証する,そういう空気はいつも作っておきたいと思っています.人間が人間であるだけでなくその子がその子でいられなければフリースクールではありません.
 その子がフリースクールに来て幸せでいられる.親が安心して送り出せる.幸せな状態とはどんな状態なのでしょう.

  ・自分の中から生まれてきた問題を壊されないこと
  ・恐れが取り除かれていること
  ・プレッシャーを受けないこと
  ・ランク付けされないこと

 そして,どうやって生きていくのか言われないこと.大人は子どもが自分の問題を自分で解決する方法を探しやすいように環境をととのえ援助するだけで良いのだとグラスルーツのパットは言っていました.
 子どもたちからいろいろな悩み事をききます.どれも親からいいメッセージを受けていないからです.子どもはどんな子も「おまえはここにいていいんだよ」というメッセージを最低限もらっていなければいけないのに「なんでおまえはそこにいるんだ」というメッセージを受けてしまうと,子どもはもう子どもでいられなくなります.「親とのストレスがなかったらもっと自分らしくいられるのに…」とティーンエージャーはいいます.私も含めて,ティーンエージャーの子をもつ親は,今あらためて,自分の価値観が絶対正しいと言いきれるのか,子どもといっしょに新しい価値観を作り上げる気がなぜないのか自分に問い正してみなければならないと思うのです.こんなことをステップのセミナーでいっしょに話しています.

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