1996年の総目次へ / わく星通信のページへ戻る
不登校を肯定的にとらえる
山下 敬子
つい先日,学校の先生方と親の懇談会に行った.今の教育の問題をとおして,教育環境を良くするためにはどのようにするのがよいかが語られていた.中学の先生からは「あまりの忙しさに,今はそうじの時間がとれない.生徒会活動をしようにも話し合いをゆっくりさせてあげる時間もないので,子ども同士の自治力が育たないのもむりはない.今の子どもが決してやる気のない自分勝手な子ばかりだから不登校やいじめが起こってるのではなく,学校のシステムのあり方に問題がある.」ということだった.本当にそうだと思う.先生方の大変さはよくわかった.これほど不登校が多いのは教育環境が悪いからで,30人学級にし,現行の指導要領が改められたら,いじめも不登校もなくなる,というのだった.不登校を克服するためにはどうしたらよいか,不登校を出さない教育を,というのが現場で先生方が実感しておられるのは無理もない.
では,視点を学校の外で不登校の子を預かっている私の感想を言うと,「学校」という所で勉強することだけが子どもにとって唯一の道なんだろうか.現にわく星に来ている子は「学校」という所でやってないけど,たくさんのことを毎日学び,しっかり生きている.
「不登校は悪いこまったことだから早く克服して,みんな学校に来て勉強しないといけない.」というのはちょっと一方的すぎる.先生の中には本当に子どもが好きというよりも「子どもに教える」ことが好きな人がいて,子どもは「学校」で教えないと勉強しない,と思いこんでいる.むりやり教えられてる子はかわいそうだ.不登校を否定的にとらえるのではなく,子どもが「学校」以外で学ぶことを権利として認め,不登校を肯定的にみる視野がほしい.そうでないと,不登校をしている子どもは,今アカンことをしている悪い子なのだという自己否定感で苦しみ,のびのび今を生きられない.
わく星の子どもたちの中にも,まだ自分の不登校を否定的にしかとらえることができない子もいる.そんな子はわく星に来ているのは単なるひまつぶし,親や先生たちへのアリバイで,何をやっても身が入らず,心のモヤモヤで毎日がイヤイヤなのだ.わく星という場も好きな時に来て帰れる喫茶店みたいなものやと思ってる人もいた.そもそも,ここのメンバーを仲間だとは思っていないので何にもいっしょにやる気にならへん.
わく星という場をみんなで維持していこう,ここで仲間と共有する時間を主体的につくっていこう,という意欲や責任感をどうしたら持ってもらえるか.それは一人一人のメンバーが不登校を肯定的にとらえられるようになった時からだ.子どもが不登校を肯定的にとらえられるようになるのは,今の自分がOKだと思えるようになった時からだ.自己尊重感が低い間はフリースクールに来ていても来ていないようなものだ.
じゃ,今日から不登校を肯定的にとらえようといっても無理で,自分から学校以外の学びの場を求めてすっぱり学校を止めて来た人なんてそういない.今のわく星のメンバーのほとんどが苦しい不登校経験の後,学校以外で学んでいることに自信がもてるような体験をいろいろ積んで不登校を肯定できるようになった.そこからがフリースクールのスタートなのだ.
はたして今のわく星がフリースクールなのかといわれても,二・三年前よりは去年の方がフリースクールらしいし,去年よりも今年の方がフリースクールらしいかなあという感じで,どうもフリースクールになりつつあるという流動的なものだ.それはやっぱり,世間が不登校を,「あかん」ことではなく誰でもなってしまうもの,という認識をしだしたことで不登校の子もずいぶん楽になったからだ.でもまだまだ子どもにとって不登校は高い山を越えることだ.ここに来る子どもたちは,今までの「学校」体験で失敗を恐れるあまり「やる気」をくじかれてしまっている子が多いのですが,どうしたら「失敗恐怖症」から脱却できるかが自主的な子どもになってもらうための大きな鍵でもあります.
二・三年前は,私はお母さんのカウンセリングみたいなことばっかりやってたことがあって,敬子さんは抱えこむのがあかんのやと批判されたこともありました.それは私自身の問題でもあり,時代もまだまだそうだったんだと思います.今は,いろいろな反省の後に,親の会で自主的に「竹の子会」というのを月1回やっていくということになっています.不登校児をもつ親の自助グループみたいなことをやっています.相談はもっぱらそちらに回しています.
女性の「相互作用能力」というものがマイナスに出ると「愛しすぎる女」とか共依存とかいわれる,世話をやきすぎて相手を自立できないようにさせてコントロールするというような方向に出るのですが,プラスに出ると,女性同士で支えあおう,同じ悩みに苦しむもの同士協力しあうという方向でみんなが集まり,個人の悩みが社会のシステムの問題だということに気付いてシステムを変えていこうという動きにもなっていく.女性の相互作用能力がうまく作用したらすごいことになりそうです.わく星学校親の会もどうもそういう方向で行きそうでとても楽しみです.
京都府・京都市は府立洛北高校・山城高校定時制と市立堀川高校定時制を来年から募集停止にするという方針を,職員や親に相談なしで決めたそうです.洛北高校定時制では3分の1が元不登校児だそうです.募集停止の理由に,入学の志望動機がはっきりしない生徒(つまり,定時制に行くしかなかった生徒をさしていうのでしょう.)が増えている,ということがあるそうです.先生によると,来た時はそうでも,卒業する時はみんな定時制に来て本当によかったといって出ていくそうです.わく星の卒業生も定時制高校に元気に通学しています.弱者の立場におかれた人を「効率」という理由でさらに追いつめるやり方やと思いませんか.この停止の決定を撤回してもらうよう署名を集めています.署名用紙はわく星にあります.
アメリカ合衆国ミシガン州のクロンララスクールのナットさんがついに京都に来られることになり,家も決まりました.10月12・13日に大そうじをします.通信がまにあったらいいけど,会員の方で手伝ってくれませんか.古い家なので修理などもこれから協力してあげて下さい.
ナットさんは,フリースクールの先生,仏教者,ジャズピアノの名手,名司会者,本当にタレントフルな方です.つれあいさんの若林さんは東京シューレのスタッフだった人で,クロンララスクールの日本のホームスクーラーとの受付け連絡係の仕事をされます.ナットさんはベセル先生のTIUセンターの仕事をなさることになりました.
毎週水曜日はナットさんが一日わく星でボランティアに来てくださいます.これから水曜日のわく星はメッチャ楽しくなりそう.ホームスクーリングの人,家でたいくつしている人,学校休んでわく星に来たいと思っている人,水曜日に一回来ませんか.ナットさんの赤ちゃんエイサくん,すごくかわいいよ.エイサくんをだっこしたい人,お二人がしばらくすごく忙しそうなので,ベビーシッターしたらどうでしょう.
1996年の総目次へ
わく星通信のページへ戻る