■ 福島第一原発 事故の経過状況及び放射線量モニター値
2011年3月11日に発生した地震津波の直撃を受け、東京電力福島原子力発電所の地下に設置されている非常用ディーゼル発電機が浸水し、原子炉を冷却するためのすべての電源が失われて原子炉を冷却できなくなった。 また、この状況に対する新たな冷却対応の処理が全く間に合わず、原子炉の核燃料をメルトダウンさせることや、原子炉や使用済み核燃料を覆っている原子炉建屋が水素爆発とみられる爆発により吹き飛んでしまう事態に至らせ、漏れ出た大量の放射性物質が周辺に飛散・降下した。
政府事故調査検証委員会が2011年12月下旬に中間報告を纏め、その中で東京電力の事故当時の対応の不備を指摘しているが、非常にお粗末というべき東電の対応のまずさに筆者は驚かされた。
例えば、1号については、1号のみ非常用復水器という電源を必要としない冷却装置が装備されている。 これは、地震直後に自動的に起動したが、電源が切れた場合に配管の弁が自動的に閉まる仕組みになっており、今回の全電源喪失時に弁が閉まって機能が停止した。 しかし、この仕組みを作業員などが理解しておらず、弁が閉じていることに気づくまでに時間を要し、一時的に復旧した電源で操作室のランプ表示でこれに気づいたが、所長が気づいてベントの指示を出したのが11日午後11時50分頃。 ところが現場ではベントの作業を既に進めていたが機器が不足してできずに、水素爆発に至る。 その後、津波の被害を逃れた1台のディーゼル駆動の消化ポンプで注水する作業を進めていたがうまくいかず、消防に注水を依頼する。 しかし、消防ホースを接続する送水口の位置の知識がなかったなどお粗末といえる。
例えば、3号については、非常用バッテリーで稼動する高圧注水系の冷却システムがあり、機能していた。これを14時間程稼動させていたが、連続稼働時間が長時間に及び、運転員が機器損傷による放射性物質漏れが起こることを恐れて停止させ、ディゼル駆動の消化ポンプで注水を試みるが失敗した。 そのため、高圧系冷却装置を再稼動させようとするがバッテリー切れとなり失敗したもので、検証委員会は、バッテリー稼動中に次の対応準備が為されていない問題点を指摘している。
以上のような種々のトラブルが重なり、最悪の放射性物質の拡散を生じさせてしまうことになった。
そして、現在、原子炉のコントロールが正常にできなくなっていること及びこの放射性物質の高い放射線量のために、周辺住民が避難せざるを得ない状況が継続しています。 更に、放射性物質により、周辺環境が汚染され、森林、家屋・建物、道路、ため池、田畑、農作物、河川・海洋などに生息する魚貝類ほか生物、家畜、その他の生物への汚染は、人間の生活や生態系にとって最悪の状況と言えるであろう。
ここでは、朝日新聞の東日本3ヵ月特集(2011年6月11日)の記事より経過を振り返ることとし、以下に時刻の関係を引用し、概要を列挙した。
■ 福島第一原発 事故の経過状況
1号
3月11日 2:46pm 地震で原子炉が緊急停止に
11日 3:37pm 全交流電源喪失 冷却システム(非常用復水路)停止に
11日 5:00pm頃 燃料露出始まる
11日 6:00pm頃 燃料損傷始まる 水素発生
11日 8:00pm頃 燃料の大部分が圧力容器の底に溶け落ちる
12日 10:17am ベント開始
12日 2:53pm 原子炉への淡水注入止まる
12日 3:36pm 建屋が爆発
12日 7:00pm 原子炉への海水注入始まる
2号
3月11日 2:47pm 地震で原子炉が緊急停止に
11日 3:41pm 全交流電源喪失
13日 11:00am ベント開始
13日 1:25pm 冷却システム(原子炉隔離時冷却系)が停止
14日 4:34pm 原子炉への海水注入始まる開始
14日 6:00pm頃 原子炉減圧 燃料露出始まる
14日 8:00pm頃 炉心損傷始まる
14日 11:00pm頃 燃料の大部分が圧力容器の底に溶け落ちる
15日 0:02am頃 ベント開始
15日 6:10am 水素爆発(圧力抑制室につながる部分)
21日 6:22pm 白煙発生
(注)4月2日 9:30am頃 2 号機の取水口付近のピットから1,000mSv/h を超える水が海に流出していることが発見される。
(この文章は筆者が追記した内容)
3号
3月11日 2:47pm 地震で原子炉が緊急停止に
11日 3:42pm 全交流電源喪失
12日 11:36am 冷却システム(原子炉隔離時冷却系)が停止
13日 2:42am 冷却システム(高圧注水系)が停止
13日 8:00am頃 燃料露出始まる
13日 8:41am ベント開始
13日 9:08am 原子炉減圧
13日 10:00am頃 原子炉損傷始まる 水素発生
14日 5:20am ベント開始 以降複数回実施
14日 11:00am頃 水素爆発
14日 10:00pm頃 燃料の大部分が圧力容器の底に溶け落ちる
4号
3月11日 3:38pm 全交流電源喪失
15日 6:00am頃 水素爆発とみられる爆発音 建屋の壁損傷
■ 事故当時の核燃料ペレット数
福島第一原発の事故当時、1号〜3号は稼動中であり、4号のみ停止中であったと種々のメディアや政府にて報道されている。
原子炉内の核燃料の本数は、東電の福島第一原発の数字が示されているものを参考にする。
4号建屋のコンクリートが吹き飛んだが、以下のように大量の使用済み核燃料を入れて冷却するプールの冷却水についても冷却水が供給されず、燃料を入れた集合体が沸騰する水面から露出する状態が続いていたと筆者は想像する(図-2、図-3参照)。
( (注意) しかし、東京電力の(*1報告書)では、4号のプールの水位は、3月16日に自衛隊ヘリから見た様子では、満水位から2〜3m下がりと目され、以後、ウエル側からプールに給水が一定してあったと仮定し、この仮定に基づき、4月10日から15日の間に1点観測された水位と流入量の観測値と22、23日頃以降の観測値より推定した、使用済み核燃料のラック頂部より水位が上にあるとする推察グラフが示されている。 そして、『2011年年4月28日には水中カメラにて、
プール内の燃料及び燃料ラックが概ね健全であったことも確認されているとされ、これらのことから、地震発生以降現在に至るまで、プールには水位の維持に影響を与えるような破損は生じておらず、注水により水位は維持され、燃料の露出は無かったと考えられる。』という表現が示されている。)
この大量の核燃料から発せられる放射線を防ぐコンクリートが破壊されて、強く危険な放射線のために冷却作業に手間取り、まるで2階から目薬りを点滴するような自衛隊のヘリコプターの応急対応に国民は唖然とさせられた。
尚、福島第一の場合、原子炉の核燃料は、酸化ウランを固めた小片のペレットと呼ばれる材料をジルコニウム合金の被覆管と呼ばれる棒状の容器に数多く入れ、この棒状の核燃料の被覆管を50〜80本まとめて1本の容器に入れた集合体とし、その集合体の容器の本数が表示されているということである。
筆者は、集合体の容器がジルコニウ合金であるのかステンレス等の合金であるのかは情報を得ていない。
新燃料というのは、MOX(mixed oxide fuel) 燃料と言って、ウランとプルトニウムとの混合酸化物の核燃料を指しているようだ。 また、プルトニウムは原爆の材料として知られている核物質である。
福島第一原発の敷地内には、この他にも使用済み核燃料集合体が存在している。 共用プールと呼ばれる施設内及び乾式貯蔵キャスク保管建屋内で冷却されている。(表-1-2)
津波襲来時には、共用プール冷却に関わる電源盤が浸水し、非常用ディーゼル発電機は機能せず、全交流電源を喪失したため給水機能が停止した。 その後、3月24日18時に冷却ポンプを起動することができ、プール水温は最高73℃で留まったとされている。 また、乾式貯蔵キャスタ建屋にも海水が流入したが、ボルトで固定されていて移動がなく、自然空冷が可能な状態が維持されたとしている。
表-1-1 原子炉建屋内の核燃料集合体の本数 (本)
| | 1号 | 2号 | 3号 | 4号 | (注)4号 2012/7/19 時点 |
| 原子炉内核燃料集合体 | 400 | 548 | 548 | - | - |
冷却プール内 使用済み核燃料集合体 | 新燃料 | 100 | 28 | 52 | 204 | 202 |
| 燃料 | 292 | 587 | 514 | 1,331 | 1,331 |
| 各原子炉施設の核燃料集合体の合計本数 | 792 | 1,163 | 1,114 | 1,535 | 1,533 |
| (参考)原発事故直前の原子炉稼動状況 | 稼動中 | 稼動中 | 稼動中 | 停止中 | 停止中 |
(出典元:使用済み冷却プール内の本数:朝日新聞 2011年6月11日(土) 東日本3ヶ月特集の記事に記載されていた数字、 原子炉内の本数:東京電力の原発の概要記載の数字にもとづく) |
表-1-2 原子炉建屋外の使用済み核燃料集合体の本数 (本)
| | 共用プール内 | 乾式貯蔵キャスタ保管建屋内 |
| 使用済み核燃料集合体 | 6,375 | 408 |
(出典元:「福島第一原子力発電所東北地方太平洋沖地震に伴う原子炉施設への影響について 平成23年9月 東京電力株式会社」 (*1報告書)を記載した 原子力安全保安院のwebより) |
《(注意) 2013年3月追記 :4号の未使用の新燃料2本を共用プールに試験移動を実施。 2012年7月18日から移動開始、19日完了。 よって、この日以降は、4号の新燃料:204→202、共用プールの核燃料:(使用済み+新燃料)合計;6,375→6,377)となる。》 |
■ 核分裂生成物
原発の核燃料としてウラン235の場合に、中性子との反応で、クリプトン(Kr)、ストロンチウム(Sr)、セシウム(Cs)、キセノン(Xe)、モリブデン(Mo)、ヨウ素(I)、それらの同位体など、種々の核種が生成され、ウラン238からプルトニウム(Pu)が生成される。
原子核が余分のエネルギーを持ち不安定であると、崩壊を起こす。 原子核の崩壊はアルファ崩壊、ベータ崩壊などに区分され、アルファ崩壊でアルファ線(ヘリウム原子核)などが放出され、ベータ崩壊で、ベータ線(電子)やガンマ線(電磁波)などが放出される。
放射性崩壊の種類
| 放射性崩壊の種類 | 原子番号 (Z) | 質量数 (A) | 放出される放射線 |
| アルファ(α)崩壊 | Z-2 | A-4 | α線 (α粒子は陽子2個、中性子2個放出されるので原子番号が2小さくなり、質量数が4小さくなる。) |
| ベータ(β)崩壊 | ベータマイナス崩壊 | Z+1 | A | β−線、γ線 (β−崩壊では電子の放出で、質量は変化しない。但し、中性子が陽子に変化するので原子番号が1増える。) |
| ベータプラス崩壊 | Z-1 | A | β+線、γ線 (β+崩壊ではプラスの電気を帯びた陽電子の放出で、質量は変化しない。但し、陽子が中性子に変化するので原子番号が1減る。) |
| 電子捕獲 | Z-1 | A | X線、オージェ電子 (電子が取り込まれるのみで、質量は変化しない。但し、陽子と捕獲した電子が中性子とニュートリノに変化するので原子番号が1減る。) |
| 核異性体移転 | Z | A | γ線、内部転換電子 (余分なエネルギーをγ線で放出、あるいは、内部転換電子に与えられ放出、あるいは電子が遷移して特性エックス線、オブジェ電子が放出される。) |
| 自発核分裂 | 多様 | 多様 | 中性子線、β線、γ線など (大きな原子核で不安定な状態は、アルファ線を出して安定な状態へ移行する。しかし、数%は、一気に分裂して質量数が半減するような分裂を起こすことがある。) |
原子炉の事故で施設の損傷によるとか、あるいは、ベントにより放出される核分裂生成物質のうち、比較的沸点が低く、粒子の質量が小さいものが気化して遠くまで飛散する。 また、半減期が数時間以内、数日の物質や観測漏れが生じ易い。 また、質量が大きい生成物質は遠くまで飛散することは少ないと推察される。 放射性核種のストロンチウム(Sr)はガンマ線を放出せず、ベータ線測定器なら反応することや別の方法で特定することになる。
一般的には、放射性核種のヨウ素(I)、セシウム(Cs)などは、大気中に浮遊している状態及び建物、地面などに降下してガンマ線測定器で測定されることになると思います。
しかし、原子炉に近い場所で、数時間の半減期を有する核分裂生成物質が観測されたとすれば、それは、核反応が生じていたことの証拠となると言えます。
原発素人の筆者ですが、本来は、原発地点で核種のスペクトルを分析してあれば、それらが明らかになるものであり、原発に係わる関係機関はデータを公表すべきであると考えます。
参考に、核分裂生成物の元素の一部及び原発の原子炉核燃料棒やその容器の材質のおおよその融点や沸点を示す。
核燃料のペレットが溶融するほど高温になっていたと想定される原子炉の状況から見て、溶融した高温の核燃料が落下し、被覆管の底部が溶け、更に格納容器底底部の耐熱コンクリート上で冷却が進まない状態で長時間経過すると、コンクリートの劣化も著しいと想像される。
表-2 核分裂生成物の元素などの融点や沸点など
| 元 素 | 融点 (°C) | 沸点 (°C) | 半減期 | 特徴など |
| 36Kr クリプトン | -157.36 | -152.3 | 81Kr:2.29×105年、85Kr:10.78年のβ崩壊核種 | 放射性同位体は27種類が知られている。 |
| 38Sr ストロンチウム | 770 | 1,384 | 28年 | 放射性同位体は14種類が知られている。 |
| 42Mo モリブデン | 2,617 | 4,612 | 100Mo:7.3×1018年で2重β崩壊して100Ruになる放射性核種 | 質量数83〜115の放射性核種が知られている。 |
| 53I ヨウ素 | 113.5 | 184.3 | 131I:8.04日でβ-1崩壊。(注)129I:15.6×106年 | 質量数108〜143の放射性同位体が存在。 |
| 54Xe キセノン | -111.9 | -108.1 | 127Xe:36.4日、136Xe:”>”2.4×1021年 | 質量数109〜147の間に40種以上の放射性核種が存在。 |
| 55Cs セシウム | 28.4 | 678 | 137Cs:30年、β線を伴って崩壊する。大部分137mBaとなる。半減期 2.55分でγ線を出して安定な137Baとなる | 放射性同位体は18種、137Csは自然界に核爆発実験の結果わずかながら存在する。 |
| 94Pu プルトニウム | 641 | 3,232 | 244Pu:8.0×107年(α崩壊)、239Pu:2.411×104年(α崩壊)、中性子照射で2回のβ崩壊を経て238U→239U→239Np→239Puを得る | 質量数228〜247の20種の同位体核種が知られている。 |
| 92U ウラン | 1,132.2 | 3,820 | 238U:4.468×109年(α崩壊) 235U:2.038×108年(α崩壊) | 質量数217〜242の放射性核種が知られている。金属は空気中で表面が酸化する。酸に溶けて水素を発生する。 |
| 93Np ネプツニウム | 640 | 3,900 | 2.14×106年でα崩壊 | 質量数225〜244の放射性核種が知られている。 |
| 90Th トリウム | 1,750 | 4,790 | 232Th:1.40×1010年 | 質量数209〜238の人工放射性核種が知られている。 |
| 96Cm キュリウム | 1,613.2 | 4,790 | 247Cm:1.56×107年、半減期162.8日でα崩壊 | 現在知られている同位体核種は21種。 |
| 元素記号の左上段数値:質量、左下段数値:原子番号 |
| (出典元:化学辞典第2版の数値、及び(注)ヨウ素129の半減期の数値のみ図解原子力用語辞典第3版による) |
| ((注)筆者は、原発でヨウ素129がどのように生成され、どの程度生成されるのか、及び、放射能の強さなどについての知識がない。) |
(参考 上記と比較のためのデータ)
| 元素など | 融点 (°C) | 沸点 (°C) | 備 考 |
| 26Fe 鉄 | 1,535 | 2,750 | |
| 40Zr ジルコニウム | 1,852 | 4,377 | 核燃料の被覆管に使われる材料はジルコニウム合金(ジルカロイ)。 |
| 核燃料ペレット | (注2) 約2,800 | | (注2)朝日新聞2011年6月11日 東日本震災3ヵ月特集の記事より |
■ 放射線量モニター値
原発事故により、核燃料の溶解及び貯蔵容器やコンクリート建屋の破壊が生じ、核燃料の崩壊に伴う放射線が建屋の外部に放出されるに至ったと推察される。
東京電力福島原子力発電所構内には放射線の観測モニタリング点があり、放射線の時系列の数値と原子炉の事故状況との時系列の関係を見ると、どの原子炉の崩壊の影響が大きいかなどが推定できよう。そこで、時系列の図を作成した。
図-3のガンマ線の値は、東京電力福島原子力発電所のモニタリング測定結果のガンマ線データから2箇所を抽出して筆者がグラフにしたもの。 尚、観測点の標高を説明した説明文章は記載されていない。 (出典元:東京電力 福島第一原子力発電所構内での計測データ アーカイブ 3月分 モニタリング追加修正データより)
下のガンマ線図は、ガンマ線の数値の大きさを示すためのものではなく、図のピークが表れている時点が、1号、3号の爆発後ではなく、2号、4号の爆発の直後に発生していることを説明するための資料です。
放射線量の数値は、正門やMP-4地点から管理事務棟に近づくと、数倍から数十倍に増加し、更に、原子炉建屋や原子炉あるいは4号使用済み燃料プールに近づけば近づくほど数値は大きくなり、数十倍から数百倍以上になると推察できるのです。
このガンマ線が大きくなった原因は、2号と4号のいずれから、どのような割合で影響しているのかは不明である。
 | MP-4:既定のポイント、正門:仮設ポイント |
| 図-1 東京電力福島原子力発電所構内のモニタリング位置図 | |
| (出典元:東京電力 福島第一原子力発電所構内での計測データ アーカイブ 3月分 モニタリング追加修正データより抽出して筆者が作成) |
■ (参考) 福島第一原発事故(2011年3月)時点の東北電力女川原発地点及び日本原子力発電株式会社東海第2発電所(原発)地点の放射線量の変化について
2011年3月11日に東北沖太平洋の海底で発生した地震による津波の襲来が原因で、福島第一原発では全電源が失われ、この事態に対する東電、政府、自衛隊などの事故対応の知識の欠如と訓練不足、不適切な処置の連続が顕になり、この結果、原発から大量の放射性物質が放出される非常事態に至ったのです。
原発事故当時の風向きデータは、福島原発周辺の多くの気象観測所の機器が地震の影響で停止状態となり、観測データが得られていないが、福島気象台の観測データは得られていた。 これによると、事故当時の風向きは、表-3に示したように概ね北東から北西寄りであったことが分かる。
東北電力女川原発は、福島第一原発から直線距離で北北東約120kmに位置しているが、女川原発自体は津波によるシビアな影響は無いと報告されており、女川原発で観測された放射線量の上昇は、福島第一原発から放出された放射性物質による影響と見なされ、福島第一原発1号建屋が爆発してから、風に吹かれて放射性物質が12日の夜に女川原発付近まで到達して、急激に放射線量観測値が上昇したと推察される(図-(参考2)参照)。
日本原子力発電株式会社東海第2発電所(原発)は、福島第一原発から直線距離で南南西約110kmに位置しているが、東海第2原発のモニタリングポストで観測された放射線量は、風向きの影響で3月15日頃まで現れず、風向が南方向に変わる3月15日以降に急上昇が見られる(図-(参考3)参照)。
尚、参考図のグラフは、それらの観測地点での変化の状況を説明するための概要イメージである。(正確な過去の数値データを筆者は入手できていない。)
原発が非常事態に陥った場合の住民避難については、スピーディの放射性物質拡散予測システムが無くとも、周辺の風向や放射線モニタリング地点の核種物質の線量数値などが逐次防災担当部署で共有されていれば、適切に住民の避難誘導を図ることに寄与できていたであろうと思います。 しかし、実際はできていなかった。
| 図-(参考1) 東北電力女川原発、東北電力福島第一原発及び日本原子力発電株式会社東海第2発電所の位置図 |
| 図-(参考2) 東北電力女川原発モニタリングポスト地点の放射線量の変化説明図(説明用イメージ) |
| (出典元:東北電力女川発電所の観測値の上昇に伴う原子力災害対策特別措置法第10条に基づく通報以降の緊急情報 「福島第一原子力発電所事故を踏まえた当社原子力発電所におけるシビアアクシデントへの対応状況の報告 第19報の添付資料」のグラフをもとに、筆者が福島第一原発事故による放射線量の変化状況を説明するため、イメージ図を作成したもの。 数値や時刻は概略の読み値に基づく。) |
| 図-(参考3) 日本原子力発電株式会社東海第2発電所(原発)モニタリングポスト地点の放射線量の変化説明図(説明用イメージ) |
| (出典元:日本原子力発電株式会社東海第2地点での福島原発事故による放射線量の変化が観測された時点を説明するため、筆者がそのイメージを作成したもの。) |
参考として、2011年3月の県別の放射線量(空間線量)観測結果をもとに、観測地:さいたま市、宇都宮市、山形市、水戸市の空間線量の変化を図-(参考4)に示す。 なお、福島市、仙台市においては出典もとの表にデータの記載は無い。
| 図-(参考4) さいたま市、宇都宮市、山形市、水戸市の放射線空間線量の変化(2011年3月14-16日) |
| (出典元:文部科学省webの放射線モニタリング情報 都道府県別環境放射能水準調査結果の数値をもとに筆者作成) |
■ 原発の安全性に関して--原発構造基準・安全基準の見直しに関して
東京電力福島第一原子力発電所の事故を省みて、かってより説明されていた原子力発電所の安全性に疑問が生じたことは確実です。 むしろ、その安全性は単なる錯覚であり、その安全神話は崩壊したのです。
放射性物質を原子炉施設の外部へ放出させて異常な影響を周辺環境に与えないようにするため、多重防御の策をとり、その安全性を強調していた。 しかし、現実は、冷却のための全部の電源を喪失し、システム制御不全、冷却機能不全に陥った場合の緊急対応体制は、電力会社、原発を管理する監督機関及びその他国土安全のための自衛隊でさえ、全く対応出来ていないお粗末さを露呈させ、これらが複合した結果の大災害となった。
これは、大津波に起因した災害ではあるが、準備不足の人災であったと言っても過言ではないと思います。
原発の構造体の地震に対する耐震性、部材の強度面の指針については別途検討されればよいが、原子炉格納容器や建屋は構造の安定性から地下の掘り込み構造にする場合であっても、筆者は、素人目から見ても、絶対に浸水させてはならない非常用のディゼル発電機や燃料などは、地下や1階に設置すべきではないと考えます。 これは、丘陵地の地盤上にあっても避けなければならない、絶対条件であると考えます。
また、大量の使用済み核燃料を原子炉建屋に置き、1重のコンクリート壁で覆うだけでは、使用済み核燃料のプールの水が沸騰状態で、冷却水が供給されずに水位が下がり、燃料容器が水面から露出状態になり、核燃料の鞘管容器の損傷も懸念される。 そして、何らかの爆発によってコンクリートの覆いが破壊された場合、原子核の崩壊に伴う非常に激しいガンマ線の放出を遮ることができなくなり、連立する他の原発においても高い放射線によって作業員の行動ができなくなるのです。 このため、使用済み核燃料の冷却施設は別途独立して建造し、多重の覆い構造が必要であり、且つ、浸水して機能停止に陥ることがない電源設備(冷却水供給用と観測機器、コントロール機器用)の配置が必要とされることが明確になった。
また、放射性物質を外部に放出させないためには、ベントを行う必要があっても、ベントされた気体から放射性物質を閉じ込める構造を設計すべきであるのです。外部に放射性物質を出さないとは、出さない構造形態が必須です。
原発の運転を論じるとき、以上の安全設計の施設形態、構造が改築整備できていない原発、及び原子炉が非常時に陥った際に、必要な時間内に対応措置をとっても危機的な状況を回避できないことが判明した原発については、欠陥品と刻印され、運転することは許されないのです。
原発の運転を論じるときは、その前提として、原発の安全基準が改定され、充分な安全や補償関係が明確にされ、新たな基準に沿った現在の原発施設の改築や施設・装備の追加などが行われる事が必要であり、国が原発運転時の情報を管理でき、異常時に対しての即応体制が再構築され、施設の管理状況や計測データが公表され、更に、その原発と安全システムを原発立地の周辺住民のみならず、日本国民が納得できたとして、それらを満足する原発を対象として稼動が認められたものについて、原発に係わる防災対策を重点的に充実すべき地域の範囲を定める手順となるのです。
よって、防災対策を重点的に充実すべき地域の範囲としての住民避難範囲を30kmに設定することについては、福島原発以外の原発において、気象条件の設定の違いで飯館村の範囲より広範囲に高濃度の汚染地域が発生することが懸念され、その区域30kmの設定範囲の妥当性が疑われる。
福島原発事故時の気象条件より厳しい条件を課して確認すべきあると考える。
福島第一原発から放射性物質が放出された事故で明らかになったとおり、現在の原発施設及び安全指針は、放射性物質を放出させないという多重防御の趣旨からは設備・装備、安全指針は全くの不完全な欠陥物であり、また、統括・管理する組織が産業界寄りの原発推進政策に左右される体質であったこと、また、本来は強力な権限があることになっている原子力安全委員会は絶対的権限の無さを言い訳にできる単なるアドバイザー的無責任な対応であったこと、及び関連研究者・関連技官や技術者、発電所所有会社などがすぐさま事故の事実や逐次数値情報などをすべて明らかにせず、口先だけの説明に終始したことなど、国民の人命や健康を最優先の安全に捉えないと思える方策に終始した悪夢の連鎖が招いた原発事故と被害であったと断言できます。
国民は、これらの欠陥的原発の施設装備が改造され、シビアアクシデント発生時に必要な期間耐えられるように構造の改造整備や部品などを補充できる連携体制が確立され、同時に、安全管理面の組織及びその体質が改められなければ、将来、原発の稼動を許すことは出来ず、原発は必然的に廃炉されなければならないと主張します。 そして、原発依存から脱却し、将来の早い時期にすべての原発の停止・廃炉を行う旨の廃炉方針を打ち出すべきです。
もし仮に停止された原発の再稼動を論じるときには、先に記述した欠陥的な諸状況が改善され、そして万が一、原発の暫定使用が原発立地の地元の了承だけでなく、広く国民間で承認された場合のみ実現される手続きに改める必要があります。
尚、付け加えて、国費の投入先の喫緊の課題は、この時期に防衛省が高額な戦闘機を購入することではなく、国土防衛上は、高額な戦闘機が存在しても、この原発問題を疎かにして無視すれば、外からの攻撃によらずとも、内側から国が滅びることにつながるので、国は、国外問題の懸念もさることながら、災害被害からの復興と原発からの更なる放射性物質の放出を防御するという国内問題の解決に優先的に予算を投入すべきことを訴える。
■ 原発事故時の風速・風向(福島気象台の10分ごとの風速及び正時の風向)
■ 風速
気象データは、福島気象台のデータに基づく。 原発事故直後の風速は平均10m/s以下であり、最大瞬間風速は18m/s以下である。
原発から放出された放射性物質が、このような気象条件で周辺に拡散・降下したものであるが、国は東京電力福島第1原発事故を受け、原発にかかわる防災対策の範囲の考え方を見直し、
従来指針で「EPZ」と呼ばれる半径8〜10km圏の重点範囲を、「緊急防護措置区域(UPZ)」として30km圏に拡大する。また、事故後直ちに避難する「予防防護措置区域(PAZ)」を5km圏とするものであるが、筆者は、単純に福島原発事故の結果の状況だけで範囲が定められることに対して疑問を持っている。
なぜかといえば、福島原発事故当時、仮に気象状況が悪く、風速が倍程度であったなら被害の範囲はもっと拡大していた可能性があるからである。
暴風の場合には、一般的には雨を伴う気象現象であろうと思われ、この場合には降雨によって飛散した放射性物質が雨と共に降下し、原発から遠くまで飛散する前に雨と共に降下するため、逆に早い時期に下水、河川に流れ込み流下することが推察される。 しかし、降雨量が比較的少なく、暴風で広範囲に放射性物質が飛散する気象条件の場合には、単純に30kmの範囲にとらわれず、さらに広範囲の防災対応範囲を定める必要があるのではないかと懸念される。 この参考例として、福島気象台の数値より大きい美浜、敦賀、小浜の風速状況を後に記した。
原発の安全基準を見直し、現在の原発の種々の構造的欠陥を改めると仮定して、これらの安全性を満足した原発に改善されたとして、更に、それらの対象の原発が、将来は廃炉させることとして短期的に存在させる条件を国民が承認したと仮定する。 この場合において、住民の安全を最優先に原発の緊急防護措置区域などの防災対策の範囲の見直しについて再検討が必要であろうと筆者は主張する。
■ 風向
気象データは、福島気象台のデータに基づく。 風向は、図-3のガンマ線の値が大きくなる前後の3月15日、16日について示す(表-3)。 尚、3月12日〜14日の風向も参考に載せた(表-4)。
表-3 福島気象台 3月15日〜16日の1時間ごとの(平均)風向
| 15日:時 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
| 風向(平均) | 北西 | 南西 | 南南西 | 西北西 | 西北西 | 北 | 北北西 | 北北東 | 北東 | 北東 | 北北東 | 北北東 |
| 風向(最大瞬間) | 北西 | 南南西 | 南南西 | 西 | 西 | 北西 | 北西 | 北北東 | 北東 | 東北東 | 北 | 北 |
| 15日:時 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
| 風向(平均) | 北北東 | 東 | 北北東 | 北北東 | 北東 | 北東 | 北東 | 北北東 | 北東 | 東北東 | 北北東 | 北北西 |
| 風向(最大瞬間) | 北北東 | 東北東 | 北北東 | 北北東 | 北北東 | 東北東 | 北北東 | 北東 | 東北東 | 東北東 | 北 | 北東 |
| 16日:時 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
| 風向(平均) | 北北東 | ー | ー | ー | 北東 | 北北東 | 北東 | 北東 | 北西 | 南 | 北北東 | 西 |
| 風向(最大瞬間) | 北北東 | 西 | 東 | 東北東 | 北北東 | 北東 | 東北東 | 東北東 | 西北西 | 南東 | 北 | 西 |
| 16日:時 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
| 風向(平均) | 北西 | 西北西 | 西北西 | 西北西 | 西 | 西南西 | 西 | 北西 | 西 | 西南西 | 西北西 | 西 |
| 風向(最大瞬間) | 北西 | 北西 | 北西 | 西 | 西 | 西南西 | 西南西 | 北西 | 西北西 | 西 | 西北西 | 西 |
表-4(参考) 福島気象台 3月12日〜14日の1時間ごとの(平均)風向
| 12日:時 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
| 風向(平均) | | 西 | 西 | 北東 | 北北東 | 西北西 | 西北西 | 北西 | 東北東 | 西南西 | 北西 | 北西 |
| 風向(最大瞬間) | | 北西 | 西 | 北東 | 北西 | 西北西 | 西 | 北北西 | 北 | 北西 | 北北西 | 北西 |
| 12日:時 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
| 風向(平均) | 北西 | 北西 | 北西 | 西北西 | 北西 | 北西 | 北東 | 東北東 | 西北西 | 南南西 | 南西 | 南東 |
| 風向(最大瞬間) | 北北西 | 北西 | 北北西 | 北 | 北西 | 北西 | 北東 | 南東 | 北西 | 南南東 | 西 | 東南東 |
| 13日:時 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
| 風向(平均) | ー | 西北西 | 西 | 西北西 | 西 | 東 | 西南西 | 南南西 | 西南西 | 西南西 | 南南西 | 東北東 |
| 風向(最大瞬間) | 南 | 北西 | 西 | 北西 | 西 | 東南東 | 西 | 西 | 西南西 | 西 | 南西 | 北北東 |
| 13日:時 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
| 風向(平均) | 東北東 | 西南西 | 北西 | 西北西 | 北西 | 北北西 | 北北西 | 東 | 南西 | 西北西 | 南西 | 西 |
| 風向(最大瞬間) | 東北東 | 西北西 | 北西 | 西北西 | 北西 | 北北西 | 北西 | 東 | 西南西 | 西北西 | 南西 | 西南西 |
| 14日:時 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
| 風向(平均) | 南西 | 西南西 | 西 | 西 | 西 | 南 | 西北西 | 西 | 北北東 | 西南西 | 北東 | 西南西 |
| 風向(最大瞬間) | 南西 | 西南西 | 西 | 西南西 | 西南西 | 南南東 | 西北西 | 西 | 南南東 | 西南西 | 東北東 | 東 |
| 14日:時 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
| 風向(平均) | 西 | 西 | 西 | 西北西 | 北西 | 北東 | 北北西 | 北西 | 西北西 | 西 | ー | 南 |
| 風向(最大瞬間) | 西 | 西北西 | 西北西 | 北西 | 北西 | 東北東 | 北北西 | 北西 | 北西 | 北西 | 南西 | 南西 |
■ 若狭湾に位置する関西電力の原発周辺の気象(風速)の事例
美浜、敦賀、小浜の観測所の風速(10分ごと)時系列図を示した。 それらは、福島原発事故時における福島気象台の風速(図-4)の1.5倍から2倍程度の風速状況である。
このような気象状況時に、福島第一原発と同様の原発事故が福井県に位置する原発で発生した場合には、果たして飯館村の30km圏の例外程度の範囲で納まるかどうか筆者は疑問を抱く。
日本国民の人権を守るため、日本の真の独立を勝ち取り、アメリカの奴隷からの開放を目指すため、日米安保条約解約。
日本は、日本国民が無視され続けている不平等の日米安保条約を解約しなければならない。 日本国民が戦わねば、日本の夜明けは訪れない。
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