紙工作業学習の取り組み(2001年度実践報告)
 
                           浅 井 茂 治
                           横 山 繁 人
 キ−ワ−ド
 
  紙工作業  作業学習  和紙  手漉き和紙  紙漉き
 
  楮(こうぞ)雁皮(がんぴ) 漉き具  壁掛け(一輪挿し用) 
 
ブックカバ−  和紙はがき  学校用封筒   レタ−セット
 
  和紙カレンダ−  名 刺   大きな紙(菊判 636×939 )
 
  作業工程表  「紙漉き作業学習」研修会
 
 
T.はじめに −作業学習とは−
 
 本校M養護学校は、知的障害をもつ子どもたちの専門的な教育を行う学校である。その専門的知的障害養護学校の社会に出ていく前の最終学部としての高等部において、いったいどういう学習が必要なのか。そう考えた場合、作業学習のウェイトが重くなるのは当然である。一方では日常的な生活全般の知識やコミュニケ−ションの力を養うために必要であり、社会生活の知識に関わる合科としての課題別学習、成長期の体を作り卒業後の体力の基礎を育てる体育、造る・創造の喜びを知る美術、音楽を楽しみ卒業後の余暇の一助となる音楽、それぞれに大切であるが、・・・。卒業後生徒たちはただ漠然と生活していくのではなく、そこには社会参加、働くということを抜きにしては考えられないし、日常生活をおくっていく上での技能(たとえばカンジュ−スのプルを開ける)も含めて作業・労働が大きなウェイトを占めるのは明らかである。
 それは、働く上での意欲、持続力、集中力、構えといったものであり、物に自発的に、且つ持続的に関わっていく力の育成であり、大きくはそれらが作業学習のねらいである。そして作業学習の中で、生徒たちの主体的に物を変化させようとする取り組みは、その延長上により正確に、よりいいものを作ろうとする力さらに工夫する力として育ってくるのであり、卒業後社会生活を営んでいく上での、働こうとする意欲、自分は何かができる、作れる、働ける、という自信を生み出していく学習となるのである。
 昨今作業学習が物を作り出す作業から、物を加工する上辺だけの作業にウエイトが置かれたり、作業実習の準備や片づけの手間を惜しむために軽視される傾向があるのは非常に残念である。
そして、浅井1)は作業学習に望まれる要点として、次の9点を提示している。
 @ 生徒の実態に即した段階的指導が行える
 A 障害の実態が多様であるそれぞれの生徒が取り組める作業活動を含んでいる
 B 共同して或いは分担して進められる作業活動を含んでいる
 C 作業活動に参加する喜び、完成の満足感が味わえるものである
 D 原料・材料が入手しやすく、永続性がある
 E 作業量が調節しやすく、作業形態が変更しやすい
 F 完成したものが、利用・消費の流れの中で理解されやすい、理解しやすい
 G 利用価値の高いもの(使う喜び・使ってもらう喜び)である
 H 卒業後の進路において、有効な力が培える
上記9点を満たす作業学習として、紙漉きによる紙工作業学習を実践し、ちょうど今年度が本校で取り組み初めての10年目である。
 
U.紙工作業学習とは
 
 10年目を迎えた本校の紙工作業であるが、今でこそ専用の作業室があり、年間50kgの白皮楮を使い切る作業量になっているとは云え、当初はホ−ムル−ム教室で、衣装用のプラスチックケ−スに水をはり、1枚ずつの耳付き名刺や耳付きはがきを漉いていたのである。紙工作業は立ち上げに際しても、本格的な、大がかりな、或いは高価な、そんな機械や道具を必要とせずに簡単に始められるのである。
 本格的な和紙の原材料である楮や雁皮を使い、大判(A5〜B4版)の和紙を漉くようになると同時に、作業学習としての作業工程や内容の検討を行い2)、重度から軽度までの知的障害児にいろいろな作業内容が用意できる学習として確立してきた。知的障害をもつ子どもたちが社会参加していく上で、作業学習の中でねらっているいろいろな力が重要であると同時に、逆の発想から考えるとき、知的障害をもった子どもたちの力・可能性を最大限引き出し、伸ばしていく作業
とはいったいどんなものなのかが考えられる必要がある。そういった意味で紙工作業学習が現在取り組んでいる作業のねらいは第1章で述べた作業の要点を踏まえ、「材料作り」「紙漉き」「製品作り」の3つの作業の柱を中心に下記のようなものになっている。
 
 @ 単純な工程で、自分の役割がわかる(仕事の手順と見通し)
 A 作業の結果が短時間で明確に表れる(完成の喜び)
 B 繰り返す部分がある(忍耐力、継続力)
 C 生活につながった内容(実生活との関連)
 D 友だちと組になったり補助しあってする内容がある(対人関係)
 E 職業的内容を含む(働く意欲)
 F 道具を使用する(道具の使用、目と手の協応)
材料作り
 G 同じ席・位置・内容・方法をベ−スに(精神の安定、自発性、作業の認)
 H 体を大きく使った動作で作業(粗大運動による作業から)
 I 具体的な作業(材料作り、紙漉き作業セクションを見ながら)
紙漉き
 J 指示を聞いて作業できる(指示理解、作業工程の理解、人とのかかわり)
 K より正確な作業(集中力、正確さ、検品力、いい物を作ろうとする意欲)
製品作り
 L 確実正確に製品を作り上げる(完成の喜び、正確な手指の動き)
 M より正確に、能率を考えて作業する(枚数、セット数、作業の工夫、見通し、均質さの基準)
 
 『紙漉き』は社会の中では、後継者のない衰退産業である。しかし、その伝統的な職人芸によって成されてきた紙漉きという作業は、定規や秤で計る正確さを要求するものではなく、日々の繰り返しの中で体が覚え、より均質でよいものを造りだしていこうとする上になり立つ作業なのである。使う道具が使いこなせるようになる、より正確な動きを体得するといった働く上での基本的課題を必要とする作業なのである。
 こうした紙漉きの作業学習を履修する中で、それぞれの生徒が課題に応じて作業に取り組める力を培い、より集中し持続して、体が覚えた正確さによって物が作りだせることを学習し、事実作りだせること実感でき自信となることが、この紙工作業学習の成果となると考えられる。
 また、材料作りの工程は紙漉きの材料を作りだす上でも大切な工程であると同時に、これまで養護学校の既存の作業では用意しきれなかった重度の生徒の自発的生産活動として、有効であることを見いだしている。
 また、研究部の研修の中で、本校の各作業を選択させる生徒の実態と作業の適正をみる手がかりとして、9年前に作成した紙工作業工程表3)をたたき台にして高等部の全作業が作業工程表作りを行った。(本実践報告集高等部の取り組み参照)
 それとは別に紙工作業では、10年目の節目として、紙工作業の中で、生徒をどのように伸ばし得るかの再検討の資料として、9年前の作業工程表の見直し、追加、改訂を行った。
 
V.今年度の取り組み
 
 今年度の取り組みを含めると、本校の紙工作業学習実践はまる10年を経過した。その間、試行錯誤を重ね、高等部作業学習として確立してきた。
 本校高等部は、現在履修内容でAコ−スとBコ−スに分かれており、今年度紙工作業学習を履修するAコ−スの生徒は、高等部1年生全員(15名)、2・3年生は選択で2年生4名、3年生5名であった。他の選択作業学習としては、木工と縫製と窯業が用意されている。Bコ−スの作業履修はクリ−ニング。
 本校の場合、他の府立養護学校と比べ、作業学習の時間の割合が多い方に属していると思われる。高等部Aコ−スは時間割で、週に65分授業のコマが15コマと土曜日があり、そのうち2・3年生の作業学習は週に5コマ(内3コマを紙工を選択した生徒が履修)、1年生は4コマとなっている。
 
実践報告として
  1 今年度生徒の状況及び実践
  2 楮の木の伐採及びパルプ化
  3「紙漉き作業」研修会の開催とレジュメ資料
4 作業工程表の改訂
をまとめることにした。
 
1.今年度生徒の状況及び実践
 
 今年度紙工作業学習は、2〜3年生の選択授業として(9)名、週3単
位時間。1年生(Aコ−ス)は全員(15)名が週1単位時間。
                注:本校1単位時間は65分である
 1年生   社会生活年齢  作業能力発達年齢
   A児
   B児                  ※ここで使用した社会生
   C児                  年齢、作業能力発達年齢は
   D児                  S−M社会生活能力検査に
   E児                  よる発達年齢である
   F児
   G児
   H児
   J児
   K児
   L児
   M児
   N児
   O児
 2〜3年生 社会生活年齢  作業能力発達年齢 主な作業
  P児               材料作り・大きい紙作り
  Q児               A5版染色和紙の紙漉き
  R児               A5版染色和紙の紙漉き
  S児               材料作り・大きい紙作り
  T児               名刺用紙紙漉き・網目模様重ね漉き
  U児               A4版・封筒サイズ紙漉き カット
  V児               カ−ドサイズ用紙の紙漉き
  W児               材料作り・大きい紙作り
  X児  未実施(2学期のみ在籍) 各種サイズ紙漉き 加工全般
  
  ※ 牛乳パック/ダンボ−ルの混合再生はがきの紙漉き、各種製品作り・・・ 随時
 
 注:ホ−ムペ−ジ上では、検査の数値は公開していません。
 
 1年生は、毎週4単位時間ある作業学習にこの「紙工」と「木工」「縫製」「窯業」を各1時間ずつ履修する。2・3年生では4つの作業種目の中から1つを固定して履修する。そのため、1年生では、それぞれの作業内容について楽しみながら経験させ、基本的な作業への構えを作り、且つ生徒の作業適性を見ていく。今年度も1年生(Aコ−ス)の生徒は、昨年度と同じようにα組とβ組に分けて授業を行った。
 年をおうごとに、障害による多動といった問題ではなく、授業に際して「じっとすわっていることができない」「与えられた課題に取り組もうとする構えが未熟である」といった生徒が増えている。
 そうした状況も配慮し、今年度もα組8名とβ組7名を分けて授業を行った。1学期は、材料作りの「楮たたき」作業を持続して行えるようになることと、紙漉きの導入を行った。2学期に入り、紙漉きのための準備、片付けを確実に覚え、紙漉きの作業工程を覚える中で、指示通りの作業がよりできるようにということをねらいとして取り組んだ。また、2学期途中から漉いた染色和紙にプリントごっこで印刷を施し、竹ひごやひもで製本する2002年カレンダ−の製作を行った。
 こうした紙工作業の導入を行いながら、今年度の生徒の障害の多様性に対応しつつ学習を行った。
精神的に不安定で以前のことを思い出していらいらしてしまうC児は、それでも紙工の材料作りではこの部屋に来たらこの席で楮叩きの材料作りをするという見通しを持てるためか、体調が悪くなる中でどうにか作業に取り組むことができている。
目的を持って何かをしなければいけないことが大嫌いなL児ではあるが、材料作りの中で、楮叩きが終わると大好きなミキサ−かけができるという励みで、木槌を放り出すことも減り、がんばることができた。
非常に苦手意識の強いA児は、新しい事への拒否が強いが、見通しの持てた材料作りはどんどん数をこなし、よりたくさんしようという意欲を見せるようになった。また、紙漉きや製品作りでは不器用さや工程の見通しが難しい事があったが、初めは賞賛して自信を持たせ、2回目からいろいろな指示や指導を入れ、初めての不安を取り除いてからの指導を行った。
できない自分を演じてしまうD児に対しては、見通しの持てる材料作りの作業を続ける中で、担当者とのちょっとしたやりとりを通して、気持ちを高めどんどんやる気を引き出すことができた。
生活面全般を通して、自発性の低いI児ではあるが、やはり見通しが持て、自分だけの力で最初から最後までできる材料作りの作業では、声かけだけで持続して楮がたたけるようになった。今後は声かけを減らして持続できることがねらいである。
M児N児O児の3名は年度当初、授業中でも他のことが気になり、すぐおしゃべりが出て作業に集中することができなかったが、材料作りの中ではやはり見通しを持って作業でき、いくつしたかの結果が出ることで達成意欲が持てるようになった。また紙漉きでもできあがっていく喜びを知り、各工程の中での集中力も見られるようになった。
作業能力の高いH児に対しては、本児の力に合ったような難易度の作業をどんどん用意し、それを通してすばらしい製品ができることを理解させ、意欲的に取り組ませる事ができた。
 一方2〜3年生の授業では、決まった作業を与えそれぞれの課題に応じて、その作業に取り組んでいる。
今年紙工作業のリ−ダ−に任命したT児は、元々積極性のない生徒であったが、リ−ダ−を任せたことで自覚が生まれ、いろいろな積極性や責任感も成長した。毎朝登校して、前日漉いた紙を乾燥台に並べ、屋外に干す仕事も自分がする仕事であると忘れることなくやり通す事ができた。主力商品で漉きムラのないことを要求される名刺用紙の紙漉きでは、技術がどんどん上達し、作業能力の面から難しいと思われた高度な技術を必要とする網目模様の重ね漉きも上手にこなせるように成長した。作業手順を確実に聞き、理解する力、確実に作業する力、いい物を作り出そうとする気持ちの大切さなどを教えることができた。
2年当初はいろいろ指示されるとぷうっとふくれていたR児であるが、3年生になり、ますます紙漉きの作業が好きになり、いろいろな指示が聞けるようになり、正確な動きでいい紙が漉けるようになってきている。後期の校内実習紙工では意図的にいろいろな作業を次から次へと任せて、十分それに対応できる力がついてきた。製品化ではトムソン刃による封筒の型抜き、糊付け、レタ−セット作りなど多岐にわたる作業をこなせるように成長した。
電動車椅子を使い、意欲は高いもののマヒもあり、上肢の可動範囲も狭く、力も弱い S児に対しては、どうにかして教師の手を頼らず自分一人で作業し、一連の作業を通して物を作り上げる喜びをこの紙工作業を通して味合わせたいと考え、当初から取り組んでいることは昨年度の実践報告集に書いた通りである。高3になった今年度意欲もますます高まり、いいものを作ろうとする意欲から指示されたより確実な動きをしようと努力し、漉いているカ−ド用紙の質が向上した。
重度のW児は人なつっこい生徒であるが、その分、材料作りの作業では手元を見ずに周りの先生や友達に注意がいってしまい、どうしても集中持続して作業をする課題を楮たたきの作業だけでねらうのは難しいように思われた。そこで、材料作りへの意欲を持たせるために、作った材料を使って楽しく活動する大きな紙作りを授業の最後に取り入れた。また、手元への集中力を引き出すために、授業の時間中、20から30玉の楮だんごを次々にミキサ−にかけていく作業を取り入れた。ガラス製の入れる部分を丁寧に扱って、水を入れたり、またできあがった物をこぼさないようにザルにあける。またガラス部分を機械部分にきっちりはめこむなどの集中して手元を見ながら、少し緊張感を持ちながら作業をするという意味でいい作業となった。手元を見ないためなかなかできなかったミキサ−の機械部分へのはめ込みが確実になり、またそれまで10まで数えられていたものの、数を数えるということがお題目ではなく、実際の時間の流れであったり1対1対応であることが習得できた。手元を見ての作業への集中は難しいものの、他へ関心がいきつつも手元の動作が行えるような作業能力の成長と、この紙工作業へ来れば自分は仕事を任せてもらえるという自負心が生まれた。
行事の予定などを聞くと、自分の中で興奮が高まり、調子が悪くなってしまうP児は、材料作りの作業中でも自分の世界に入ってしまい興奮することが多い。様子を見ながら声かけをして自分の世界に入っている状態から引き戻すよう心がけた。本児も見通しが持てるこの紙工の授業を楽しみにしており、逆にいろいろな楽しみを持たせるために網目模様の紙の作業をさせてみたり、刈り取った楮の黒皮取りをさせてみたが、却って他の仕事をするといらいらするようである。また暑がりの本児専用の扇風機を用意し、興奮し始めて暑くなってくると要求して扇風機をかけ、冷却と気分転換をはかっている。
道具の使用も非常に難しい非常に重度のS児は、当初木槌を持ち続けることも難しかったが、本児の好きな音楽をかけてもらって気持ちの覚醒をはかりながら、自分で木槌を持つ時間もすこしずつ長くなり、手を添えてもらうことで、楮を叩く動作も自発的に出るようになってきている。しかし、非常に重度の生徒になると、作業の意味が本児にとってどうなのかということが論議される必要があるだろう。
 
2.楮の木の伐採とパルプ化
 
 本校が府立の守口養護学校として新校舎で開校して6年になったが、開校2年目に植樹した4本の楮の木が大きく育ち、この2学期に初めて大きな枝を刈り取った。日本の伝統的な和紙の材料と言われる「楮(こうぞ)」は、大きく育った枝を刈り取って、その内皮をパルプとして使い、その木の株は残し、細い枝が来年は太くなってまたそれを刈り取るという事を繰り返していくのである。紙を作るために木を伐採して山が丸裸になって自然破壊につながっていると言われているのは、洋紙の問題なのである。日本の和紙生産は木の再生の中で延々と行われているのである。
 さて、刈り取った枝を適当な長さで切り、1回大鍋で湯がき皮を剥ぎ取る作業を行い、次にはぎ取った皮から外皮である黒皮と内皮に残る渋の部分をこすり取る作業を行って、白皮楮ができあがった。そして、それを弱アルカリを入れて再度煮熟して、柔らかくなった物を、材料作りの作業で楮叩き、ミキサ−かけをして、パルプにすることができた。こうしてできあがった楮パルプは、日頃使っている輸入物のベトナム楮と違ってしっとり感のある真っ白なパルプである。
 今年度も卒業生ひとり一人が自分たちの卒業証書として漉いた紙にこの真っ白な楮パルプを混ぜ込むことができた。卒業証書は雁皮で漉いているので、太陽に透かしてみて少し雁皮より白くて長いせんいが見つかれば、それが本校で採れた楮パルプである。
 
3「紙漉き作業」研修会の開催とレジュメ資料
 
 昨年度から本校で開催している「紙漉き作業」研修会は、昨年度2回今年度2回実施し計4回を数えた。障害者を援助して紙漉きに取り組んでみようとする福祉作業所・施設・養護学校等に案内を送り、担当されている方々に指導助言を行ったり、実技講習を実施したり、道具(漉き具、漉き網、吸水装置)制作の実技研修などをとおして、意見交換なども行いながら研修会を実施してきた。本校でこれまで模索しながら開発した知的障害者のための紙漉き作業の作業手順、細かいノウハウや道具などについて、広く情報をオ−プンにすることで、工夫したり、研修する時間や予算の少ない施設職員の方によりすばらしい製品を作る技術が供与できればうれしいかぎりである。
   第1回 「牛乳パックによる紙漉きの方法と実技」 2001.9.2.
第2回 「楮を使った紙漉きの方法と実技」 2002.2.3.
   第3回 「はがき用漉き具と水分吸引装置の製作実技研修」2001.6.16.
第4回 「ネリを使った紙漉き(使用の意味)と意見交換」2002.2.2.
 
第1回研修会レジュメ資料
『紙漉き作業学習』研修会
                        2001.9.2.  
                        大阪府立M養護学校 
1.牛乳パック からのパルプの取り出し
   ・ ぜいたくにいいところだけを使う。
   ・ 端を増やす
   ・ 炊けばラミネ−トはめくりやすくなる
           <炊く<ソ−ダ灰を入れて炊く 
 炊  く 
   ・ グチャグチャも作業のうち
   ・ 洗濯機で攪拌すれば、ラミネ−トは自然に剥がれて絡まる
   ・ パルプ化・・・できれば業務用ミキサ−の導入
              洗濯機・船外機のモ−タ−で手作りも可 
   ※ 保管  たくさん作れる時に作り、脱水機にかけ、
                  千切って乾燥させ保管する
2.紙漉き
 ・ 漉き具つかむと漉くの2つの動作は難しい 
         把手を付ける、締め具(つのかん)をつける 
 ・ ゆすりの大切さ
 ・ 漉き具に漉く目安の目印 
 ・ 水分をとる 掃除機での吸引
 ・ぞうきんを濡らさない 紙質を硬くする
 ・均等に、確実に水分をとる   乾燥を早める
 ・ 乾燥板の剥がれやすさ   シナベニヤ<化粧合板<アクリル板 
 ・ ジャッキプレス台、油圧ジャッキで水分を絞り出す 
 ・ エッチングロ−ラ−にかける(表面を平らにする)  
 
 ☆ 紙質
          硬くて   こし  のある紙  
           ↓       ↓ 
 
ゆする(パルプ繊維をしっかり絡ませる)
           ↓         
 
水分をとる(パルプ繊維の間から
    水素イオン結合をうながす)    
 
           
           
           
           
           
水分を絞り出し、  
                        ↓
   いパルプ繊維(こうぞやあさひも) を混ぜる
 
      ※漉き上げた紙を持って扱える  (製品の広がり) 
☆ 大きな紙(A4以上)を漉くには 化学ねり(のりとは異なる)が必要 
 
   化学ねり〔ビスマ−ク、アクリパ−ズ〕
      網から水が流れ落ちるスピ−ドが落ち、その間にゆすれる
      漉き舟(シンク)の中で、均等にパルプが広がり、且つ沈まない
 
3.製品化
  はがき
    ・郵便番号のワク印を押す治具 
        ・ペ−パ−カッタ−(押し切り)を使ってカット
  封筒、便箋、メッセ−ジカ−ド、カレンダ−
        ・染色・押し花・ジュレッダ−の紙・ダンボ−ルを入れる
                →カラフルな紙を作りだす
   ☆ 工業用染料〔シリアス染料〕
       10g200円  1gでバケツ1杯のパルプが染められる
 
 
※紙製品にいかに付加価値をつけるか  
        他にない独自な均質な紙、個性のある紙を目指す
均質な紙(規格品)(薄利多売)
  はがき、レタ−セット、メッセ−ジカ−ド、カレンダ−
      ・ 染色・押し花・シュレッダ−の紙・ダンボ−ルを入れる 
            →カラフルな紙を作り 
artisticな紙(芸術品、民芸品)(価格設定、企画販売) 
  カレンダ−、タペストリ−、壁掛け、置物、ランプシェイド
     ・ 長いパルプ繊維(こうぞやあさひもせんい)を混ぜる、 或いは100%で漉く 
   → 表情のある紙、個性のある紙 
→ 漉き上げた紙を持って扱える (製品の広がり)
 
疑問点・お問い合わせは   大阪府立M養護学校 高等部 浅井まで
                   п@06−6$$$−2810
                   FAX     −2830
 
第2回研修会レジュメ資料
   「紙漉き作業学習」研修会 レジュメ
                             2001.2.3.
   こうぞ 
  楮による和紙制作
     =材料作りから製品化まで=
 
材料(楮・雁皮・三椏)を入手する
   日本の山にはどこにでも自生している。
   ただし、蒸して皮を剥ぎ、さらに黒皮をとる工程が増える。
原材料 楮を購入する
タイ楮(白皮) 1〆50s 23000+5%+送料(99年)
最近質が落ちて、ヤニのついた物が多く、あまりよくない
ベトナム楮(白皮)1〆50s 32500+5%+送料(2000年)
タイ楮に比べ高いが、新規に市場参入したので、物は良い
黒皮・ちりがほとんどなく、炊いた後の処理が楽
フィリピン雁皮(白皮)1〆50s20000+5%+送料(96年)
 こうぞ
1.楮を水で洗う
  (汚れをとり、水を吸わせて柔らかくする)
2.楮を炊く
  (約3時間ソ−ダ灰を入れて煮込むことで、繊維を柔らかくほぐす)
 18gなべに400gのこうぞとソ−ダ灰50g(洗剤スプ−ン1杯) を入れ、沸騰して踊る状態で2時間炊く。
          楮 1s500円/ソ−ダ灰 500g120円
     ソ−ダ灰は弱アルカリ、強アルカリとしては苛性ソ−ダがあり炊きあがりも早いが、素手では扱えず廃液の問題が生じる
     アルカリを溶媒として炊くことにより、植物繊維間の成分を溶かし、パルプ繊維を1本ずつにばらけるようにする。 
3−1.楮のアクを洗い流す
    水に付け込む(使うまで太陽の光で漂白する)
       太陽にさらせばさらすほど紫外線の働きで白くなる。
−2.ちりをとる
白皮に残っている黒皮やちりを取り除く
とことんきれいに取り除こうとすると、非常に手間のかかる細かい作業である
作ろうとする紙により、この工程は省く。
4−1.楮をたたき、繊維をほぐす
 −2.ミキサ−にかける(より適切なパルプの状態にする)
しっかり叩けば、ミキサ−にかける必要はない。またミキサ−にかけすぎて繊維本来の長さを切ってしまって短くするのは良くない。
本校のミキサ−は刃を逆にして切らずに攪拌するだけに使っている
漉き具を作る・・・
    上下に分かれた漉き具が多いが、漉いたり揺すったりする動作に専念するためには、2つの物を固定して持つ動作をなくす方がよい。取っ手を付けて握るだけにしてある。
    す
5.紙を漉く
    ・はがきを漉く
    ・名刺用紙を漉く
    ・封筒用紙を漉く
    ・大判和紙(A4版)(B4版)を漉く
    ・柾板を漉く
 @ パルプ溶液を作る―――→A紙を漉く―――→Bアクリル板に取る
 
 ――→C水分を取る―――→Dあて布をして重ねる―――→Aにもどる
 
  楮等の長い繊維の和紙は牛乳パックとは次の点で異なる
・ 漉く動作の時に揺する事で、長い繊維を絡ませ、こしがあり丈夫な紙を作り出す事ができる。
   ・ 陽に透かしたとき繊維のきれいな流れがあり、1枚1枚に表情がある。また手触りも繊維の波打つ暖かい感触を得ることができる。
   ・ 漉きあげた直後に、その濡れた紙を手に持ち貼り付けたりの加工を行う   ことができる。
 A5版以上の大きさの紙を漉くためには、化学ネリが必要になる。パルプを均等にシンクの中に浮遊させ、漉き具の中で揺すって絡ませるた めに網から水が落ちるスピ−ドを遅らせる。
 
6.プレスにかける
  (一晩プレスして、水分を搾る)
漉きあげた紙(はがき)を2〜3dの強い力でプレスしてパルプの中の水分を絞り出す工程を行うこと。一般の方が趣味で作る紙ではそこまで紙質を高める必要がないので一般の入門書には書かれていないが、この工程を加えれば紙質が一気に良くなる。本来「和紙のこし」と「字を書くときの紙の硬さ」はパルプ繊維がより強固に絡み合っていることによって決まる。漉きあげた時にはまだパルプとパルプの間に水が存在していて、そこで雑巾や掃除機で水分をとるが、 それくらいでは水分は抜けない。そこで次に日に干したりアイロン等で乾かして水分は乾くが、こうしてしまうとパルプとパルプの間がしまらないまま、 間の水分だけがなくなり柔らかいままの紙ができあがってしまう。本校にあるような大きなジャッキプレス台(別紙プリントのような簡易な物でもおそらく可)をつくる必要はなく、当面はがきだけであれば、漉いたはがきを重ねてジャッキで水分を絞り出す装置を作る事が必要。こうしてパルプとパルプの間の水分を絞り出すことによってパルプは互いに引き寄せられ強固に絡み合うことになる。
7.紙を干す
  (自然光で剥がれ落ちるまで干す)
  夏の強い日差しの下で干すとパルプが乾いていくときの膨張率の差が極端に生じ、乾いたときに歪みが生じるので、風通しの良い木陰で干すのが良い場合がある。
日差しのない梅雨時は、アクリル板でなく木に貼って干しているとバクテリアが発生し、剥がれにくくなる。これをどうしたら解消できるか、みなさんのアイデアをいただきたい。
 
8.ロ−ラ−にかける
 (ざらざらな裏面を滑らかにする)
  アクリル板や木に貼った面は平坦であるが、反対面はどうしてもざらざら凹凸が残る。印刷したり、字を書くためにその凹凸を減らすために必要である
9.製品作り
9−1.はがき作り    計量    3〜4gを合格にする
           ゴム印押し 郵便番号・切手の欄・生徒作品
           5枚ずつ数える
           帯まき
           袋づめ
 
郵便番号・切手の欄を一括したゴム印を注文して作る。そのゴム印をはがきの決まった位置に印字するための治具(ジグ・・・現物参照)が必要。
 
9−2.封筒作り    端のカット
           折る
           のり付け
           印刷
    封筒の形に切り抜くための道具として、トムソン刃の木型を作ると便利。
 
10.製 品
はがき、封筒、便箋、名刺用和紙、染色和紙のカレンダ−、網目和紙のブックカバ−、網目和紙の壁掛け、卒業証書、大きい紙(菊判636×939)のタペストリ−
その他
    パルプの染色
       シリアル染料(工業用染料10g200円)をお湯に溶き、パルプを入れて染色し、水で洗えばOK。
    大きい紙(菊判636×939)作り
       溜め漉きで行う。大きい漉き具を作る。その漉き具を沈められるだけのプ−ルを作る。
       漉き具の中にパルプを放り込み、手で混ぜる。プ−ルの水を抜き、大きな板に貼り付け、干す。乾いたら出来上がり。
 
4 作業工程表の改訂
 1993年の「知的障害養護学校における作業種目の研究」において作業工程表を作成して以来改訂を加えていなかったので、今回改訂を行った。
 1993年当時はHR教室と作業教室が兼用で、紙工作業の内容も試行錯誤の時期であり、今ほど充実していなかった。しかし、工程表を作成することで作業内容の確認、検討、変更に役立ち、より充実した作業工程を組むことが可能になり、また、紙工に携わっていない人達にも理解しやすい利点があった。
 前述(1ーU)のように、紙工作業以外の作業種目(木工、窯業、縫製、クリーニング、)と共同で共通の作業工程表を作成したが、生徒の作業種目の適正の検討が主目的であり、また締め切り日の問題もあり、項目や工程が部分的なものになってしまった感がある。そこで、共通の作業工程表を基にして、項目の追加、変更を加え、紙工作業の全作業内容の作業工程表を作成した。
 尚、作業の流れを理解しやすくするために、準備段階や、危険を伴うために教師だけで行っている工程も付け加えている。
 また、「各作業・工程で獲得を目指すちから」の項目の「◎」「○」はそれぞれの工程で必要な力、能力ではなく、指導者が意図的に生徒に要求したい(ねらいたい)項目に記号を付けている。
 
 
 
 
 
引用文献
1).浅井茂治「作業学習の考え方」近畿精神薄弱養護学校研究会作業部会
   報告資料 1987
 
2).浅井茂治 「紙工作業学習の取り組み(98年度実践報告)」
       大阪府立M養護学校 実践報告集(第3号) 1998
 
3).横山・浅井他  知的障害養護学校における作業種目の研究
             −主として紙工芸の有効性の検討−
                大阪府教育研究グル−プ報告書  1993
 
 
                       大阪府立M養護学校
                         実践報告集第6号
                           2002.3.
 
 
 
 
 

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