安くて実用的(?)な万年筆 Noodler's Konrad Flex Pen
万年筆愛好家の皆さんに向けて、Noodler's Konrad Flex Penという面白い万年筆を紹介します。
[2016-07-17 日] 追記:このページは「安くて実用的な万年筆 Noodler's Konrad Flex Pen」というタイトルでスタートしましたが、この万年筆の実用性に少し問題があることがその後わかりましたので、「実用的」のあとに「(?)」を付けることにしました。
実用品としての万年筆に求めることとは?
万年筆の一番の魅力は、なんといってもその書き味です。 その魅力に取りつかれ、至高の書き味を探し求めて、何万円もする万年筆を何本も何十本も買ってしまう方々もいるようです。 そこまでいくと、趣味の域を通り越して道楽になってしまっているのかもしれません。
しかし、筆記具としての実用を考えた場合、万年筆には書き味以外にも求めたいことが以下のようにいくつかあります。 複数の要求をバランスよく満たした万年筆こそ、実用に最適な万年筆と言えるでしょう。
要求1. 使えるインクの自由度が高いこと
様々なインクの中から自分好みのインクを選んで使えるのも、万年筆の魅力の一つです。 インクカートリッジしか使えない万年筆では、インクの選択肢が狭まってしまいます。 色合い、耐水性、粘度、などいろいろバリエーションがあるボトルインクの中から選べるように、コンバーターを使える万年筆、あるいは吸入式の万年筆がよいでしょう。
私のお気に入りのインクは、Noodler's Ink というメーカーの bulletproof というタイプのインクです。 耐水性があり、かつ顔料インクではないのでペン先がつまる心配もなく、実用的です。 残念ながら日本ではほとんど売られていないので、米国から取り寄せる必要があります(後述)。
要求2. インク容量が大きいこと
万年筆はインクの消費が激しいので、一度に吸入できるインクの容量はできるだけ大きい方が使い勝手がよいです。 インクカートリッジには1.0ml程度入っていますが、コンバーターの場合はインクカートリッジより容量が小さい傾向があり、通常0.5ml程度しか入りません。 パイロットにはCON-70という大容量コンバーター(1.1ml)もありますが、CON-70を使える万年筆はパイロット製品の中でさえ限られています。 同じくパイロットには「カスタムヘリテイジ92」という回転吸入式万年筆があり、インク容量はCON-70よりさらに大きい(1.2ml)です。
要求3. インクの残量がわかりやすいこと
ボトルインクを使う場合、インクの補充がインクカートリッジほど簡単ではないという欠点があります。 出先でインク切れを起こした場合、インクカートリッジであれば予備のものと交換するだけですみますが、ボトルからのインク吸入を出先で行うのは難しいでしょう。 ただしボトルインクを使う場合は、最後まで使いきらなくてもインク補充はできるという別のメリットがあります。 ときどきインク残量を確認し、残り少なくなっていたら早めにインクを補充しておく習慣を実践していれば、出先でのインク切れは防止できます。 ただしそのためには、インク残量が見やすい必要があります。 本体を分解しなければインク残量を確認できない構造だと、インクが残り少ないことに気づくのが遅れて、インク補充のタイミングを逃してしまうかもしれません。 インク残量の確認のしやすさでは、スケルトンタイプの万年筆が優れています。 スケルトンタイプでなくても、インク窓があれば残量は確認できますが、LAMYサファリに付いているような小さな窓だとおおまかな目安ぐらいにしかならないような気がします。
要求4. メンテナンスしやすいこと
インクを違うものに交換する場合は、これまで使っていたインクと新しいインクとが混ざらないように、万年筆の内部をいったんきれいに洗浄する必要があります。 ペン先を外して水に一晩ほどつけ置きしてから、もう1日ほどかけて乾燥させるのが普通のやり方です。 ですがこのやり方だけでは、首軸内部にこびりついた古いインクを完全に取り除くことはできていません。 スポイドを使って首軸内部に何度か水を通すことで、残る汚れを減らせます。 コンバーターなどの吸入機構がある場合は、それを使ってもよいです。 古いインクをさらに徹底的に取り除きたいなら、分解掃除が必要になります。 ただし、いったん分解してしまうと保証の対象外になってしまいますので、よほど自信のあるマニアでもない限りそこまでは普通しないでしょう。
要求5. ペン先の字幅が妥当であること
万年筆のペン先にはさまざまな字幅が用意されていますが、当然、実用的な字幅をその中から選ぶことになります。 一般的に、太めの字幅の方が、インクが潤沢に出るのでペン先が滑りやすく、書き味がよいとされています。 ただしあまり太い字幅では、小さなスペースに文字を書き込めないので、実用的には好ましくないでしょう。 残念ながら、海外製の万年筆は、アルファベットの筆記を前提としているため、概してペン先の字幅が太すぎる傾向があります。 海外製万年筆は、「細字(F)」と表記されているもので国産万年筆のだいたい中字ぐらいの太さです。 漢字を多用する日本語の筆記を前提とするなら、実用的なのは国産万年筆の細字や中細字の字幅だと思います。
要求6. 本体が重すぎないこと
素早くペンを動かすには、本体が軽めの方が有利です。 この点は、人によって意見が分かれるかもしれません。 一般に、万年筆にはある程度の重量があったほうが、手で筆圧を加えなくても万年筆の自重のみで書けるので、疲れにくく好ましいとされているからです。 ただし、重ければ慣性も大きいので、万年筆を横方向に動かすときにそれなりの力を使うことになります。 ですので、素早くメモを取りたいような局面では、万年筆の重さは逆に邪魔になります。 また、人の話を聞きながらメモをとるような場合、万年筆を手に持ったまま待機している時間もあり、重ければその間にも手が疲れてきます。 私の場合、重量が20gを超えると、重くて使いづらいと感じます。
要求7. キャップはネジ式であること
万年筆のキャップには主にネジ式と嵌合式との2つのタイプがありますが、総合的にはネジ式の方が優れています。 万年筆は、ペン先が乾燥するとすぐに書けなくなるため、書き終わったらすぐにキャップをかぶせておく必要があります。 嵌合式と呼ばれるタイプのキャップだと、キャップの付け外しの都度パチンパチンと音がするので、会議中であれば周りの人に迷惑をかけます。 パイロットには「キャップレス万年筆」というノック式万年筆がありますが、これもノックの都度ガシャッという大きめの音が出ますので、嵌合式と同様です。 また、嵌合式の場合、キャップを外すときに負圧が発生してペン先からインクが飛び散る事故も起こりやすくなります。 ネジ式のキャップは、密閉度が高くてペン先が乾燥しづらく、開け閉めの音が小さく、さらに、開閉時の気圧の変化がマイルドですのでインキが飛び散ることもありません。 ネジを回転させるのに時間が少しかかりますが、それも練習すれば短縮できます(キャップ側ではなく軸本体側を回転させるのがコツです)。 一般に、安価な万年筆は勘合式であることが多いです。
要求8. そしてもちろん、安価であること
奮発して高価な万年筆を買っても、それがあなたに合わない万年筆だったら、大変な損です。 万年筆は使う人との相性が非常に重要であり、高ければ高いほどよいとも限りません。 高価な万年筆を買ってそれが一発であなたにぴったり合えば、一生もののよい買い物になるでしょう。 ですが、相性は、使ってみなければわからないものです。 なので、万年筆を買うときには必ず試筆をすることが推奨されています。 ですが、店頭にある試筆用の万年筆は、多くの人によってさんざん「慣らし書き」されて非常に書きやすくなった状態のもののはずです。 あなたが買う新品が同じような書き味になるかどうかは、わからないのです。 どうせ相性のリスクが伴うなら、安価であるに越したことはありません。
ところで、万年筆のニブの材質としては、スチール(鉄)よりも金のほうが撓りがあるので書き味はよいとされています。 なので金ニブの万年筆は、スチールニブの万年筆よりも、大幅に値段が高くなります。 ただし、撓りがあることが必ずしも実用的とは限りません。 乱雑に走り書きするような用途では、撓りやすさは逆にデメリットになることもあります。 スチールニブでも万年筆は万年筆であり、その書き味は油性ボールペンなどとはやはり別次元のものです。
Noodler's Konrad Flex Pen とは?
Noodler's Konrad Flex Pen は、前半に書いた「実用品としての万年筆に求めること」をすべて満たした万年筆です。 これだけのスペックを備えた万年筆は、他にはないでしょう。
特徴1. 回転吸入式である
コンバーターを使うタイプではなく、本体が回転吸入機構を備えています。 当然、あらゆるボトルインクを使えます。
特徴2. インク容量は1.1mlある
インク容量は、通常の入れ方だと1.1ml程度です。 パイロットのCON-70と同等です。 さらに、内部の空気泡を極力取り除くように頑張ってインクを詰め込むと、1.3~1.4ml程度まで入るようです。 コンバーターを使うタイプではなく、本体が回転吸入機構なので、容量を稼げているようです。
特徴3. スケルトンまたは大きめのインク窓付きである
スケルトンタイプのモデルは、本体が透明なので、インク残量がまるまる見えます。 アクリルやエボナイトなど高級感のある素材を使った(スケルトンタイプでない)モデルもありますが、そちらには大きめのインク窓がついており、インク残量の確認はしやすいです。
特徴4. 分解できる
なんと、完全に分解して、簡単に組み立て直せる構造になっています。 普通の万年筆では、自分で勝手に分解することは推奨されませんが、この万年筆は逆に自分で分解できることをアピールポイントにしています。 分解できれば、内部のすみずみまできれいに洗浄することができます。 特にスケルトンタイプの万年筆の場合、変なところにインクが入り込んで見映えが悪くなるんじゃないかと心配になるものですが、完全に分解できるようになっていると安心です。
ニブは、引っ張れば簡単に外せます。 ニブをまた嵌め込むのも簡単です。 それでいて、ニブの隙間からインクが漏れてくることもありません(少なくとも私の場合は)。 つまり、ニブだけ別のものに交換して使うこともできます。 Noodler's Ink は、交換用に、フレックスでないタイプのニブを2ドルで売っています。 この万年筆のニブのサイズは #6 という国際的に標準的なサイズなので、他のメーカーのニブも使えるそうです。 フレックスニブが気に入らない場合には他のニブに簡単に交換できるオプションがあるという点も、この万年筆の魅力です。
特徴5. ペン先の字幅は国産万年筆の中細字程度である
海外万年筆ではありますが、ペン先の字幅は以外に細く、国産万年筆の中細字程度です。 7mm罫のノートに漢字も書き込めます。
なお、このペンのニブはスチール製のフレックスニブです。 力を加えるとそれに応じてペン先が大きく開き、それによって字幅の変化を楽しむことができるのが特徴です。 ですが実は、かなり大きな筆圧をかけないとペン先は開きません。 通常の弱い筆圧で書いている限り、若干軟らかめで濃淡がつきやすいと感じる程度で、フレックスニブであることをさほど意識することはないでしょう。 一番気になる書き味も、インクフローはよく、スチールニブにしては滑らかだと思います。
特徴6. 本体重量は15gである
スケルトンタイプのモデルは、本体の材質は生分解性プラスチックで、15gと軽量です。 インクを満タンに入れてもせいぜい16~17gです。 スケルトンといっても透明度はあまり高くなく、見た目の高級感には期待しないほうがよいでしょう。 アクリルやエボナイトなど高級感のある素材を使った他のモデルでは、本体重量が17~18gぐらいになるようです。
特徴7. キャップはネジ式である
キャップはネジ式です。 しかも四条ネジが使われており、2回転でキャップは外れます。 乾燥防止のインナーキャップもちゃんと付いています。
[2016-07-17 日] 追記:仕様としては「インナーキャップ付きのネジ式キャップ」であることに間違いはないのですが、実際に使ってみると、キャップをしっかりしめた状態でも中のインクが蒸発していくことがわかりました。 インクの種類にもよると思いますが、1週間使わなかっただけでペン先が乾いて書けなくなっていることがあります。 これでは、嵌合式キャップの他の万年筆よりひどいかもしれません。 また、スケルトン型万年筆の宿命ではありますが、インナーキャップとキャップの間にインクが入り込み、見た目が汚くなります。 インナーキャップは、他のパーツと違って、とり外せない仕様になっていて、水洗いして汚れを落とすこともできません。 実用性に疑問符が付きました。
特徴8. 定価は20~40ドルである
スケルトンタイプのモデルの定価は20ドルです。 スケルトンでない20ドルのモデルもあります。 アクリルやエボナイトなど高級感のある素材を使ったモデルは、40ドルします。
Noodler's Konrad Flex Pen はどこで買えるのか?
Noodler's Konrad Flex Pen は、残念ながらそのへんの文房具店には売っていません。 Noodler's Ink のサイトに唯一の日本のディーラーとして載っている書斎館というショップも、扱っているのは Noodler's Ink のインクだけのようです。 日本のアマゾンでは少しだけ取り扱っているようですが、なぜか定価と比べるととてつもなく高い値段が付いています。 これでは、この万年筆の「安い」という魅力が台無しです。
私は、米国の GouletPens.com というサイトから取り寄せました。 本体が20~40ドルなのに送料が15ドルほどかかるのでちょっともったいないですが、それでも日本のアマゾンで買うよりは安上がりです。 同じく日本の店で入手しにくい Noodler's の bulletproof インクと合わせ買いするとよいでしょう。 eBayにもいろいろなショップが出品していますので、探せば日本への送料がもっと安いところがあるかもしれません。
- Noodler's Konrad Flex (Amazon.co.jp)
- Noodler's Ink Bulletproof (Amazon.co.jp)
- Noodler's Konrad Flex (GouletPens.com)
- Noodler's Ink Bulletproof (GouletPens.com)
- Noodler's Konrad Flex (eBay.com)
- Noodler's Ink Bulletproof (eBay.com)
[2016-07-17 日] 追記:上述のとおり、Noodler's Konrad Flex Penは、キャップの密閉性に問題があります。 要求1~要求8をおおむね満たす代替品を探すとしたら、以下のような商品になるのではないでしょうか。 国産万年筆ですので、細字も選べますし、品質面で安心で、かつ、メーカーサポートも受けやすいです。 (ただし私が使ったことがあるわけではありません)
- パイロット 万年筆 カスタムヘリテイジ92 (金ニブだけあってお値段がちょっと…)
- パイロット 万年筆 プレラ 色彩逢い (キャップが嵌合式ですが…)
付録: Noodler's Konrad Flex Pen の紹介動画
以下は、GouletPens.com による Noodler's Konrad Flex Pen の紹介動画です。分解のしかたやニブ交換のしかたも解説しています。このページでは紹介しませんでしたが Noodler's Ahab Flex Pen という姉妹品もあり、それとの違いもわかります。
付録: 万年筆に関連したオーディオブック
作成[2016-02-11 木] 最終更新[2018-11-14 水] watashinookonomi