
難民援助にもっと関心を

世界で発生する内戦、民族紛争の被害者の9割は市民に、中でも女性や子供に集中している。
国連の難民高等弁務官事務所(UNHCR)によれば、難民は140カ国以上の2,600万人にも上る。しかも東西冷戦終結後、件数や規模は増加の一途で、ルワンダでは、百万人以上の難民が発生するなど、いっこうに収まる気配をみせていない。
その被害の悲惨さや大きさを考え、また、容易に世界中に影響を与えることを考えれば、日本としても民、官ともに相応の後見が必要と思われる。
▼ 低い日本の存在感
昨年9月から5ヶ月間、私は人事院派遣の研究員として、救援活動や災害について、イギリスにて研究する機会を与えられ、市民団体、NGO(非政府組織)、大学、国連機関を訪問し、意見交換も行った。そして、日本での難民問題に対する関心や、援助活動の低さを実感させられた。
避難所や道路の建設、水や食料の供給、医療、その後の復興など、さまざまな活動が、国連機関やNGO、各国政府により行われている。
一方、日本はUNHCRに対しては、アメリカに次ぐ第2位の拠出国である。しかし、救援活動が、一部の医療援助を除き、市民、政府とも参加が少ないこともあり、現場での存在感は非常に低い。UNHCRの担当者は、「日本の市民に難民問題について、もっと関心を持ってもらいたい。そして、NGOによる活発な活動を期待したい。」と語っていた。
▼ プロが求められる
ただし、気をつけなければならないのは、援助の方法である。これまでの教訓から、気まぐれで未熟な援助は、燃料になる森林の浪費や、優秀な現地の人材の奪い合い、といった混乱をもたらすとされる。救援活動で活動しているあるNGOは、「十分な経験、知識を持たないNGOは来ないでもらいたい。」と、厳しいコメントをしていた。
私も医療NGO活動のお手伝いをしている。以前ネパールに駐在していた縁で、広島の市民団体、アンナプルナ脳神経センター医療協力会の人たちが、ネパールに医療施設の建設を計画しているのを知ったのがきっかけだ。だが、その活動を通じてみても、日本のNGOは、能力、規模、影響力、そのいずれにおいても、残念ながら欧米諸国の足元にも及ばない。
イギリスの代表的なNGOでは、数百人の有給スタッフと、3万人弱のボランティアを抱える一大組織である。そして、ルワンダ難民に対して、3週間で80万人に水の供給を行う体制を整えた。必要な資機材を短期間で運搬し、技術者を派遣できる能力と、ノウハウを持つが故の実績である。大学のスタッフに転進するような、優秀な人材も多数働いている。
このようなプロとしての援助活動が求められているものの、日本の現状を考えれば、そのレベルに達するまでの道のりは険しいものであろう。特にNGO活動の障害については、法制度や社会文化をはじめとして数多くある。
こうした状況を変えるには、一人でも多くの方々がNGO活動や難民、内戦といった問題に、理解と関心を持ち、支援することが必要である。また、こうした問題について知ることができる機会も、つくっていくべきである。NGOとしても、善意だけでは何の解決にもならないことを認識した上で、勉強し経験を積み、不必要な影響を及ぼさないようにしなければならない、と考える。
▼ 復興のモデル広島
最後に、私が広島から来た事を告げた時の、ある大学の研究者の言葉を紹介したい。「内戦や紛争に苦しみ、荒廃した国々の中にも、曲がりなりにも復興に向け、歩み始めた所が出てきました。広島の復興は、そのモデルになるのではないでしょうか」
被爆後、広島は世界各国からさまざまな援助を受けた。そして復興し、町をつくり直した貴重な経験は、戦災に苦しむ人々の励ましになると思われる。
こうした経験を生かした支援は、国際平和文化都市、広島の未来に向けた貢献方法の一つだろう。
アンナプルナ脳神経センター医療協力会
国際調整委員会副委員長

