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新環境ガイドライン作成に向けての議論

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 前回に引き続き、環境省・大村さんへのインタビューです。「新環境ガイドライン作成に向けての議論」について伺いました。

 (発行人)円借款は、その原資の約3分の1が国民の税金、残りは財政投融資などで、政府開発援助(ODA)と呼ばれます。一方、旧輸出入銀行(輸銀)の融資は、原資がほとんど財政投融資で、ODAではない経済協力です。税金が入っているか、そしてODAかどうか、の違いは、環境や社会面での影響を考える際に、どう考えればいいのでしょうか。

  ▼ 資金を貸す側の責任と、国民への説明責任がある

 (大村さん)旧海外経済協力基金が行っていた円借款も、旧輸銀の融資も、政府系金融機関が、途上国のプロジェクトに融資する、という意味では、同じです。

 (詳しく言うと、旧輸銀系の業務を国際金融等業務、旧海外経済協力の業務を海外経済協力業務と呼んで、別々に実施しています。国際金融等業務の扱っている融資等で、途上国向けのものは、「その他の公的資金による経済協力」(OOF)と呼ばれるものに分類されます。)

 違いは、円借款=ODAは、途上国発展の支援のために、旧輸銀のアンタイドローン=OOFは、日本企業の輸出振興のために、行ってきたものです。これは、両機関が統合されても変わっていません。

 目的は異なっていますが、公的資金が入っている融資において、「環境・社会への配慮」について、貸し手としても役割を担うという点では、別問題ではありません。

 すなわち、

 事業者等に対して融資を決定するに際し、プロジェクトの環境や地域社会への影響が十分予測され、地域住民等との協議が行われて、必要な対策が計画され、それが事業者等により確実に実行されるかを、貸し手として審査する。不十分と判断した場合は、融資をしないこととする、という考え方。また、これに関し、公的資金が入っている故に、日本国民に対する説明責任がある、という考え方。

 は同じということです。

 これを具体的手続に落とし込んだものが、環境ガイドラインになります。

 国際協力銀行(JBIC)では、以前の2つの機関がバラバラに持っていた環境ガイドラインを統合する作業のために、JBIC、関係省、NGO、有識者等からなる、研究会を発足させ、これまで1年間程度オープンに議論を進めてきました。研究会はオープンですので、固定的なメンバーの他にも、ご意見等をいただきました。

 (発行人)現在の作業の状況を教えてください。

  ▼ 国際的な流れ、と情報公開を重視

 (大村さん)単に統合するだけではなく、国際的な動き(世界銀行(世銀)等における環境配慮アプローチ・基準の強化、ケルンサミットでも求められ、OECDで課題となっている、輸出信用機関における世界共通の環境配慮手続の策定など)や、ODA・OOFの融資等を行ったプロジェクトにより、地域住民等や環境への問題が生じている、との指摘を受けている、ことなどを考えて、JBICでは手続、基準等を見直していこうとしています。

 とりわけ、NGO等からの情報提供も、プロジェクトの環境面の審査やフォローアップに役立てるために、情報公開に関する規定をどのようにおくか、ということが焦点にもなっています。

 現在、研究会では提言をとりまとめるプロセスに入っています。JBIC、有識者、NGO等からなるドラフティンググループが作業を行い、研究会として議論を行ってきました。8月末現在、ドラフティングはほぼ終了し、発表の機会の準備中です

 私も、研究会とドラフティンググループに深く関わってきましたが、「十ぱひとからげ」ではなく、銀行(貸し手)の位置づけも踏まえた、わりと丁寧な議論ができてきたと思っています。

 (発行人)議論の中心は、どういうところにあったのでしょうか。

  ▼ プロジェクトの建設中に生じる問題解決が課題

 (大村さん)環境レビューや事業に求められる配慮の基準は、世銀等の経験等も踏まえ、形を作っていく作業は比較的やりやすかったのです。しかし、実際に、事業が開始されてから生じる問題にどのように対応するのか、という点が、かなり論議にもなっていますし、難しい点だと思っています。

 この場合は、援助機関の場合と、OOF(旧輸出入銀行系の資金援助:非ODA)の場合を分けて考える必要があるように思います。

 ODAであれば、地域開発の観点から、発生した問題に対し、借り主である相手国政府に働きかけやすいのです。また、外交ルート(外務省)をとおして供与決定されているので、最悪の場合、外交的手段(相手国政府に正式に抗議するなど)に訴えることもできるでしょう。

 一方、本邦企業の輸出振興等を目的として、途上国の民間や政府等に融資等を行う場合(非ODA予算)、さらに、これらの借り手が事業実施者ではなく、貸した途上国の金融機関から、本当の事業実施者が資金を借りて事業を行っている、という場合(ツーステップローン)に、融資機関がどこまで事業をモニタリングし、介入できるか、という問題が生じます。

 つまり、事業に関し、銀行が介入できるのは、貸し手(JBIC)と借り手の間を拘束する融資契約に基づくもの以外は困難、という事実です。

 世銀には、融資後に生じた紛争に関し、誰でもが独立審査パネル(委員会)に異議申し立てを行うことができ、パネルは調査を行った上、対策を勧告する仕組みがあります。

 研究会では、統合したガイドラインを考えていますが、検討の結果、このようなものは日本では難しい、ということになっています。つまり、世銀は先進国・途上国が加盟する組織で、双方が運営するメカニズムがあり、このような組織を設けることについて、先進国・途上国とも了解を得ておくことができます。しかし、(i)JBICは日本の機関であり、事前にあらゆる途上国に適用するようなメカニズムを予め設置しておくことが困難、(ii)JBICへの融資要請は案件形成が終わった段階であることが多いため、融資後の問題解決メカニズムを、案件の形成段階から仕込んでいくことは困難、(iii)特に民間に対する融資の場合、このようなメカニズムが借り手の了解を得られるかどうかは、相手方に大きく依存すること、などが挙げられています。

 このようなこともあって、統合ガイドラインについては、融資契約時に、対策計画の実施体制、モニタリングや紛争解決の方法、これらに関する銀行の関与を位置づけ、事業開始後は、貸し手の権利行使として(ここが重要です)、調査、モニタリング、必要に応じた融資停止等の措置の検討・実施を行えるようにする、ということがポイントであろう、となっています。(これとて、融資契約の条件は相手との交渉マターであり、ガイドラインで一律に縛るわけにはいかない、というのが問題のようですが)

  ▼ ODAのビジョンとガイドラインの関係は?

 (発行人)その点がまさにポイント、というより、日本が途上国をどう支援するのかというビジョンそのもの、が問われているのだと思います。

 移転した住民が生活の手段を失ったり、困窮するなどの問題が生じた時に、「第一義的な責任は、借り手である途上国政府にある」とよく言われます。しかし、日本の政府機関が公的資金を使って、援助している以上、

 「われわれの金を使って、途上国の住民を苦しめることは許されない。」

 というのは、「軍事援助や、人権侵害の援助はしない」と同様に、基本的な大原則だと思います。

 ODAは計画どおりの効果が出なかった時に、税金の無駄使い、という批判をよく受けます。ある住民を苦しめるプロジェクトとは、税金の無駄使いより、はるかに、たちが悪いのではないでしょうか。

 住民移転の際に問題が生じた時には、日本側にも、当然、解決する責任と、介入する権利を有する、と思うのですが、こうした根本的な考え方というか、援助そのものに関わるような理念については、どういった議論がなされたのでしょうか。

 『この質問に対して、大村さんより、「考えをまとめるのに、しばらく時間をください」とのことです。回答をお待ちしております。』

  ○ 英語一口メモ

resettlement plan
移転計画:本文中に出てきたような、移転に必要なさまざまな対策を網羅した計画をいう。

 ◆ インタビューを終えて ◆

 少し専門的すぎるかな、とも思いましたが、今後のODAを考える上では重要な問題、と思い、実際の作業の内容を詳しく取り上げました。横文字も多く、わかりにくい点もあったかもしれません。詳しい説明が必要でしたら、お問い合わせください。

nexthome

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