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増加する世界の災害

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世界の自然災害の件数は増加している。被害額も確実に増加し続けている。(*) 1999年には約10万人が自然災害により命を落とした。被害額は約1千億ドル (約12兆円)に上る。中でも、自然災害が発展途上国に与えるダメージには大 きいものがある。その状況と原因、影響を議論してみたい。

▼ 途上国の発展の足かせとなる災害

災害による死者の95%以上は途上国での被害である。1999年のベネズエラの 洪水災害では約5万人、インドオッリッサ州のサイクロンでは約1万5千人が 死亡したように、途上国では一度の災害で数万人が命を落とすことも珍しい ことではない。

また、経済的な被害も、額そのものは少ないとしても、国の経済に与えるダ メージは大きいものがある。バングラディシュの1988年の洪水被害は、国内 総生産の1割以上に上った。国内総生産の比率では、途上国の被害は先進国の 20倍にもなる。

1999年12月にベネズエラでは洪水被害が、フランスでは嵐による災害が、ほ ぼ同時期に発生した。被害額はいずれも約100億ドル(約1.2兆円)であった が、被害は対照的である。死者数はベネズエラで約5万人、対してフランス は123人であった。フランスではその後、順調に復旧したが、ベネズエラが 完全に復興するまでには、まだ長い年月が必要であろう。

このように、災害は途上国の発展の大きな妨げになっている。では、途上国 を中心に災害が増え、大きな被害を出し続けている理由は何であろうか。

情報化が進み、途上国の災害の統計を取りやすくなった、といった側面もあ る。しかし、国の発展が災害の増加の原因になっている、そして、減少には 必ずしも結びついていない、という点を指摘したい。

シベリアの原生林のように人が住んでいない場所で洪水や地震が起きても、 それは災害とは言わない。逆に、東南アジアの都市のように、今までしょっ ちゅう水に浸かっていた低湿地に人が住んだり、町ができたりすると、洪水 による被害を被り、これを災害と呼ぶようになる。

さて、ではこうした災害に襲われやすい土地に住むのは、どういった人々で あろうか。

▼ 貧困、災害、低開発の悪循環

途上国を歩けば気がつくが、河川敷や海岸沿いに寄せ集めの材料で作った、 粗末な家屋がぎっしりと並んでいる。地方から職を求めて都会に出てきた貧 困層は、働き場のそばに住居を確保するため、たとえ危険とわかっていても、 河川敷(フィリピンのスクオッタなど)や急斜面(ブラジルのファベーラ) に住まざるを得ない。バングラデッシュではチャールと呼ばれる、いつ流さ れるとも知れないわずかばかりの川の中洲で、貧農が農業をおこなう。ひと たび災害が発生すれば、こうした貧困層が真っ先に、そして、もっとも深刻 な被害を受けことになる。

復旧の道のりも決して楽なものではない。土地を持たない農業労働者は農地 が水につかれば収入を絶たれる。女性は普段から栄養状態が悪い上に、被災 後には農業労働と家事の双方の負担が大きくなり、より悪影響を受ける。長 期間、水が引かないと、伝染病が、特に、幼児や病人といった体力の劣る人 々から発生する。貧困層ほど普段から貯えを持っておらず、また、保険に入 ったり、公的なローンを得る機会も限られているため、生活の再建にも困難 を伴う。

1998年に中米に死者約9,000人という大きな被害をもたらした、ハリケーン・ ミッチも典型的な例である。最貧国の一つであるホンジョラスでは、人口が 年に3.1%の率で増加している(10年で36%人口が増える)。これが急激な都市 化と貧困をもたらし、都市部では多くの貧困層が河川や急斜面に住んでいた。 国の医療制度や救援体制はお粗末なレベルであった。こうした途上国特有の 要因が重なり、大きな被害につながったのである。

このように災害の被害は貧困層など、社会的により弱い層にしわ寄せが行く。 こうしたことから、「貧困層に、災害を受けないという選択はない。唯一与 えられているのは、どの災害を被るか、という選択である。」と言われてい る。

災害と貧困、低開発は密接に結びついて、悪循環を形成している。この悪循 環を断ち切らないと、国の発展、そして災害被害の減少はままならないので ある。

(*) 例:アジア防災センターのデータ
http://www.adrc.or.jp/databook/Report/2JP_EM_DAT_CRED.htm

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