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世界ダム委員会は成功したか(その4)
日本のダムとODAへの影響


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▼ 国内事業にも適用可能。円借款では仕事の仕方を変えないと無理 

 日本は積極的にダム建設を推進している唯一の先進国である。世界ダム委員会WCD: World Commision on Dams)の提言はグローバルスタンダードなので、当然、国内事業にも適用できるであろう。提言で中核をなすのは、徹底した情報公開と関係者の計画、事業への参画。このくらいのことができなければ、もはや、ダム建設に理解は得られないのではないだろうか。日本のダム事業でとるべき手法をWCDが教えてくれた、といえよう。

 次に日本のODAへの影響である。日本は未だに積極的にダム建設を支援している、唯一の援助国といっていい。世界銀行など他の援助機関はダムプロジェクトを減らしている。これは意図的にダムを狙い撃ちして、減らしているのではなく、大規模プロジェクト全体が減少し、貧困層への援助や社会開発のプロジェクトを増やしている傾向にあるためである。

 このため、今回のWCDの提言の影響をもっとも受けるのは日本であり、この提言をどう生かすかを真剣に考えなければならない立場にある。

 ダムなどプロジェクトの計画づくりの能力を、途上国は持ち合わせていないので、援助機関が通常は協力を行っている。日本であれば 国際協力事業団(JICA )が計画づくりの手伝いをしている。大部分の提言について、JICA調査の中でおそらくできる、もしくは途上国が行うのを手伝えるであろう。多少コストと時間がかかることになろうが。あとは、この提言のどの部分を受け入れるのか、を決めるだけである。

 問題は、ダム建設の資金を供与する円借款である。途上国が計画を作りあげた後に、建設資金が必要となった時点から、国際協力銀行(JBIC)はダム建設に関わり始める。計画や設計をJICAや他の国際機関が、WCDの趣旨を尊重して作成していれば問題はない。だが、時には途上国が主体的に計画作りをすることがある。今までの基準では十分でも、WCDの趣旨からすると不完全な計画をもって、ダム事業の資金協力への要請を受けた場合に問題となろう。計画の手直しをJBICが行うには、そうした予算が限られているため無理がある。WCDの提言を尊重する、とした場合、円借款では、JICAや他の国際機関が計画作成に関わったプロジェクト以外は手を出さない、といった選択しか、残されていないであろう。

▼ WCDはまだ成功していない

 表題の、世界ダム委員会は成功したか?という問いへの答えであるが、この野心的で前例のない試みは、今のところうまく行っているとは言いがたい。提案されたガイドラインを受け入た途上国は、今のところないようである。WCDの提言を実施するには時間とコストがかかりすぎる、というのが途上国政府の言い分である。

 たとえすべての援助機関がWCDのガイドラインを受け入れたとしても、民間資金を使ってダム建設を進めることは可能である。途上国はODA予算をあきらめて、多少条件は悪いが民間資金を借りてダム建設を進めることになる、と予想できる。

 各国政府や多数の民間会社で総計で数億円を投じた、WCDの活動が成功したと評価されるためには、途上国がどれだけ提言を受け入れるかにかかっている。

 最後に、WCDでも十分に検討されていない、残された課題を指摘しておく。

 国境をまたぐ河川の水資源開発は紛争が絶えない。インドとネパール、バングラデッシュの間のカンジス川をめぐる争い、 イラクとトルコのユーフラテス川、中国、タイ、ラオス、カンボジア、ベトナムのメコン川をめぐる争いなどである。新たな委員会をつくるぐらいの取り組みが必要なほど、複雑な問題なので、WCDといえども踏み込んだ検討や提言はできなかったのであろう。

 次回は「水の民営化の功罪(その1):ねらいは何か?」を予定しています。

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