
水の民営化の功罪(その3)
先進国の実態
▼ 値上げが続く日本の水道
5月31日付け朝日新聞に、「水道料金、事業体の3割が値上げ――不況期に突出」と題して、次のような報道があった。
「水道料金を引き上げる市町村が相次いでいる。消費税増税に伴う値上げの目立った97年4月以降の約4年間で、全国に約1900ある市町村や広域の企業団など水道事業体のうち、約3割にあたる約590が値上げを決めたことが、水道事業体でつくる日本水道協会や都道府県を通じた朝日新聞社の調査でわかった。水源となるダムの建設費や水質悪化に伴う浄水設備費などがかさむのが主な理由だ。
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80年代から90年代半ばまでは値上げ事業体数が毎年200以上、値上げ率も平均20%以上が多かった。97年4月以降は事業体数が年200以下、値上げ率16〜17%と抑制傾向とはいえ、日本経済が不況と物価下落の続くデフレ状態だったことを考えれば、むしろ値上げが際立ったといえる。
家庭用料金の目安の20トン月額は全国平均で昨年4月に3051円と、20年前の2倍近い。消費者物価指数の上昇率の30%台を大きく上回り、電気などの公共料金が下落する中で突出している。」
一家平均で月約3,000円ということで、他の公共料金に比べ安いので、これまでは、さほど苦情も出てこなかったのかもしれない。「原価が増えたから、その分の水道料金を上げます」では、確かに今のご時勢、世間も納得しないであろう。
第7号では民間セクター導入は途上国での水道整備の切り札とみられていることを説明したが、日本でもどうやら民間セクター導入の議論が活発になってきているようなので、その参考に先進国の事情について説明してみたい。各国によって事情はバラバ
ラである。
▼ 劇的な改革の英、穏やかな改革の仏
イギリスの民営化は1979年にサッチャーが首相となってから、公営セクターと地方行政改革の一環として、80年代以降に進められた。政府や自治体(官)の役割を制限し、民間に任せるものは任せる、という小さな政府を目指す明確なの政策の下、政治主導で行われた改革であった。このサッチャー首相の姿勢はなにやら、今の小泉内閣に通じるものがある。1989年にイングランドとウェールズで民間に売却され、10の民間会社により上下水道の供給が行われている。EUの環境基準に適合するよう施設投資を行い、水道料金はこれまでに30%値上げされた。現在の労働党政権でもこの政策に大きな変更は見られない。
フランスは、水道の民間による経営は150年の歴史を持ち、政治的な背景はなく淡々と改革が進められてきた。今では75%の水道と40%の下水道が民間企業により供給されている。この分野での先進国となり、公的サービスの民営化や民間セクター導入のモデルを学ぶなら、まずフランスのケースを調べろ、と言われるほどである。4社の民間企業で水道の市場を寡占している。大手2社が40%、23%、残りの2社が7%という、占有率である。これらの企業は、他にゴミ、下水、地域暖房といった公共サービスの他、通信、ケーブルテレビ、マスメディア、携帯電話といった事業も行っている複合企業である。
ドイツは英仏にくらべて、民間セクターは導入されていない。15,000の組織により、自治体の直営、公営企業など、さまざまな形で運営されている。約3割の上水道、約1割の下水道が民間企業により経営されているが、この中には自治体が出資している企業、日本でいえば第三セクター方式も多い。フランスの2大会社もドイツ市場に参入している。旧東ドイツでは以前は15の団体により運営されていたが、東西ドイツ統一後は各自治体に分割して委譲された。統一後の資金、技術不足から民間セクター参入の動きがある。Rostock市では上下水道を民間会社が経営している。
旧東欧の代表として、ポーランドを取り上げる。共産主義体制の崩壊以降、上下水道は国から300の地方自治体(約8割は企業体の形)に権限、事業は委譲された。施設は老朽化し整備の水準は低く、新規の投資が必要とされている。自由経済へ移行する中、財政状況も厳しいものがあり、十分な予算は割かれておらず、民間セクターの参入が検討されている。現在、2つの市で外国企業が参入しており、いくつかの市でポーランドの地元企業が参入している。
○ 英語一口メモ: price cap
上限料金:イギリスでは規制官庁である水道事務局(Office for Water Services)が、上下水道を供給する民間会社の水道料金の上限値を設定している。これは独占状態にある民間会社が青天井に料金を上げるのを防ぐ措置である。
○ 関連サイト
とあるフランスの大手水道企業(英語、フランス語): フランス製だけあって、デザインがきれい。見てるだけでも楽しいです。うちのホームページとはえらい違い。これだけ多角経営している大企業なので、国
内市場を開けたらあっという間に席巻されるだろうなあ。
