4 、 仏 法 を 学 ぶ
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苦 の 原 因 − 悪 因 悪 果 −
悲惨な事件や凶悪な犯罪が多発している背景には、世の中の人々に善悪の判断がしっかりとついていないことがあげられます。こうした悪い行為が、現在及び未来に渡って自身に苦の結果を招く要因になることを知りません。
また現在もたらされている苦が、過去の悪い行為に起因してることも知りません。経典には、
「過去の因を見んと欲せば、現在の果を見よ。未来の果を見んと欲せば、現在の因を見よ。」(心地観経)
と説かれています。
「悪」というのは「不善」と同義です。「不善」とは、法や道理に背いて、現在、あるいは未来において「苦」の結果を招くという要因のことを言います。「悪因悪果」といって「悪」は「苦」の結果を招く性質を持っているのです。
したがって「善因善果」といって「善」は「楽」の結果を招く性質を持つことになります。
「悪とは相対的なもので、時代によってその基準は変化する。戦争では敵に対する殺人は数を増すほど賞賛される。したがって悪(不善)と苦との因果関係はない。」
と反論する人もいるでしょう。しかし釈尊はすでに天眼通により三千年も前から、悪(不善)の定義を厳然と説いております。
仏教においては悪について「五悪」「十悪」「五逆罪」が説かれています。
「五悪」とは、殺生・偸盗・邪淫・妄語・飲酒の五つのことで、これを戒めたものがいわゆる「五戒」(不殺生戒・不偸盗戒・不邪淫戒・不妄語戒・不飲酒戒)です。
「十悪」とは、殺生・偸盗・邪淫・妄語・綺語・悪口・両舌・貪・瞋・癡の十のことで「十不善業」とも言います。なお、殺生・偸盗・邪淫は身で行う悪なので「身の三悪」、妄語・綺語・悪口・両舌は口で行う悪なので「口の四悪」、貪・瞋・癡は意で行う悪なので「意の三悪」と言われています。
「五逆罪」とは、父を殺す・母を殺す・阿羅漢を殺す、仏の身体から血を出す(出仏身血)、教団の内部を分裂させる(破和合僧)の五つのことで、悪の中でも極悪とされています。
近年
この少年が犯した悪因による悪果を思うと、空恐ろしいものがあります。たとえ少年法で罪が軽いものとなっても、これは世法(社会の法律)のことであり、仏法の因果の理法からするならば、五逆罪という極悪の悪因を生命に刻みこんでしまったことになります。凡夫の私には、この少年の来世は見通せませんが、「未来の果を見んと欲せば、現在の因を見よ。」の仏説を鑑みたとき、来世では、もしまた人間として生まれてきたならば、今度は自分の子供に殺される業因を背負ってその報いを受けるかも知れません。
いずれにせよ、五逆罪を犯したものは無限地獄に堕ちると説かれています。
ところで悪には、この五逆罪以上の最極悪があることが経文に説かれています。
無 限 地 獄 ( 阿 鼻 獄 ) の 因
○若し人信ぜずして此の経を毀謗せば、則ち一切世間の仏種を断ぜん。其の人命終して阿鼻獄に入らん、一劫を具足して劫尽きなば更生れん、是の如く展転して無数劫に至らん(法華経譬喩品)
○五逆と謗法とを病に対すれば、五逆は霍乱(日射病)の如くして急に事を切る。謗法は白癩病の如し、始めは緩やかに後漸々に大事なり
○慳貪・偸盗等の罪に依って餓鬼道に堕することは世人知り易し。慳貪等無き諸の善人も謗法に依り亦謗法の人に親近し自然に其の義を信ずるに依って餓鬼道に堕することは、智者に非ざれば之を知らず。能く能く恐るべきか
○設い八万聖教を読み大地微塵の塔婆を立て、大小乗の戒行を尽くし、十方世界の衆生を一字の如くに為すとも、法華経謗法の罪はきゆべからず。我等過去現在未来の三世の間に仏に成らずして六道の苦を受くるは偏に法華経謗法の罪なるべし
と説かれています。
大阿鼻地獄に堕ちるのは五逆罪だけでなく誹謗正法、つまり謗法(十四誹謗→その元となるのは「不信」)にあると説かれています。
五濁悪世の末法の世に生まれてきた衆生の大苦の根本原因は、謗法にあることを知らねばなりません。
苦 ( 不 善 ) の 原 因
○ 五悪「三悪道の因」 ・殺生(生き物を殺す)
・偸盗(ものを盗む)
・邪淫(よこしまな性関係を持つ)
・妄語(嘘をつく)
・飲酒(泥酔するほどの酒を飲む)
(◆五戒・不殺生戒・不偸盗戒・不邪淫・不妄語戒・不飲酒戒)
○ 十悪「身の三悪」 ・殺生(人を殺す)
(十不善業) ・偸盗(人の財産を盗む)
・邪淫(よこしまな性関係を持つ)
「口の四悪」 ・妄語(嘘をつく)
・綺語(内心と異なるお世辞を言う)
・両舌(人によって正反対のことを言う
・悪口(人の悪口を言う)
「意の三悪」 ・貪(むさぼる気持ちが強い)
・瞋(些細な事でも怒る)
・癡(疑い深く信じる気持ちが薄い)
○ 五逆「大阿鼻地獄の因」 ・殺父(父を殺す)
「無間地獄の因」 ・殺母(母を殺す)
・殺阿羅漢(阿羅漢を殺す)
・出仏身血(仏の身体から血を出す)
・破和合僧(教団の内部を分裂させる)
○ 謗法
・正法を誹謗する
十 四 誹 謗 (謗法の姿を十四種に分けて具体的に述べたもの)
1)喬慢(正法に対して驕り、あなどること。)
2)懈怠(仏道修業を怠ること。)
3)計我(正法を自己の考えで推しはかり、我見に執着すること。)
4)浅識(正法を自己の浅い知識で判断し、より深く求めないこと。)
5)著欲(欲望に執着して正法を求めないこと。)
6)不解(正法を理解しようとしないこと。)
7)不信(正法を信じないこと)
8)顰蹙(正法に対して顔をしかめ、非難すること。)
9)疑惑(正法を疑うこと。)
10)誹謗(正法を謗ること。)
11)軽善(正法を信受する者を軽蔑すること。)
12)憎善(正法を信受する者を憎むこと。)
13)嫉善(正法を信受する者を嫉むこと。)
14)恨善(正法を信受する者を恨むこと。)
『十四誹謗も不信を以て体と為せり』(念仏無間地獄抄)