2 、 臨 死 体 験 、 前 世 療 法 

 

 

   前 世 療 法 ( 書 籍 か ら ) 

 

そのきっかけは精神科の医師が精神療法として催眠術を行い、幼少時代の出来事を思い出させて治療を施すという催眠療法からでした。

それは退行催眠中に医師の曖昧な指示によって、患者の前世の記憶を呼び覚ませてしまったことから始まりました。

今では著名な医師や心理学者、研究者たちが実施していて、アメリカやヨ−ロッパを中心に各地で目ざましい成果を上げています。ここではアメリカのエ−ル大学大学院医学部で医学博士号を取得し、マイアミ大学付属病院の精神科首席教授も勤めたことのあるブライアン・L・ワイス医師が、シナイ山医療センタ−の精神科部長になって、一年ほどになってキャサリンというある患者の治療に当たった時の記録で、その著書「前世療法@A」(PHP研究所)からの抜粋です。

 

前 世 療 法 (ある女性患者の例)

 

彼女は二十代後半の女性で、不安感、恐怖感、強迫観念、うつ病、そして悪夢に悩んでいました。

これらの症状は子どもの頃からずっと続いていて、しかも悪化しつつありました。一年以上にわたって、従来の精神療法をいろいろ試してみましたが、彼女の症状は一向によくなりませんでした。それぐらい治療をすれば、もっと良くなるはずなのにと私は思いました。

彼女は病院の実験室で働いている技術者でしたから、頭も良く、治療から良い結果を得るための理解力も十分持っていたからです。

彼女の本来的な性格から考えても、そんなに治りにくいはずはありませんでした。むしろ、彼女の経歴からすれば、もっと良くなってよいはずでした。

ただ、キャサリンは息がつまるのを極度に恐れていたために、薬を飲むのを一切拒否していました。そのため、私は抗うつ剤や精神安定剤等の薬を使うことができませんでしたが、この薬に対する強い拒否反応が、結局は良い結果をもたらすことになりました。

ついに、キャサリンは催眠術を試してみることに同意しました。

催眠術によって意識を過去に集中させて、子ども時代の出来事を思い出し、病気の原因となった心の傷や恐怖を探り出そうとしたのです。

キャサリンは深い催眠状態に入り、普通の意識では決して思い出すことのできない数々の出来事を思い出し始めました。

子どもの時に飛び込み台の上で後ろから押されて水の中に落ち、溺れて息ができなくなった事件、歯医者に行った時にガスマスクを顔の上にのせられて、びっくりして息がつまった時のこと等を思い出しました。

そして、一番悲惨な出来事として、三歳の時に酒に酔った父親から性的ないたずらをされたことも思い出しました。その時、父親は彼女が騒がないように、大きな手で彼女の口をおおい、そのためキャサリンは息ができませんでした。

これで病気の理由がはっきりしたと、私は確信しました。すぐに病気は良くなると思ったのです。ところが、彼女の症状は一向に良くなりません。私には信じられませんでした。もっと良い結果が出ると期待していたからです。

行きづまった私は、彼女の潜在意識の深い所にまだ隠された精神的な傷があるに違いないと思いました。三歳の時に父親にいたずらされたということは、もっと小さい時にも同じような体験があったのではないか、と考えたからです。そこでもう一度、退行催眠を試してみることにしました。

次の週、私は再びキャサリンに催眠術をかけ、深い催眠状態に導きました。しかしこの時、私はうっかり、具体的な指示のかわりにごく大ざっぱな誘導をしてしまったのです。

「あなたの症状の原因となった時期まで、戻って下さい」

と私は指示しました。

キャサリンがもう一度、幼児時代に戻るだろうと思ったのです。しかし、彼女はおよそ四千年も前の古代の中近東の人生に戻ってしまったのです。

そこで彼女は、今とまったく別の顔と肉体、髪の毛と名前を持っていました。その場所の風土、人々の服装、日常生活の細々としたことまで、彼女は詳しく思い出しました。その上、当時の自分の人生に起きた様々な事件も思い出したのです。

最後に、大きな津波に襲われて、抱いていた赤ん坊を波にさらわれた上、自分も溺れて死んだことを思い出しました。そして死んだあと、彼女は自分の死体の上を漂っていました。

この日の退行催眠で、キャサリンは他に二つの過去世について思い出しました。一つは十八世紀のスペインで売春婦だった時のもの、もう一つは中近東での人生から何百年かあと、ギリシャ人の女性だった時のものでした。

私は大変なショックを受け、どうしても信じられませんでした。それまでの数年間私は何百人もの患者に催眠療法を行ってきました。しかし、こんなことは一度も起こりませんでした。また、キャサリンにはすでに一年以上も集中的な精神療法を行っていましたので、彼女のことは十分よく知っているつもりでした。

彼女は精神分裂病ではありませんし、幻聴、幻覚、白日夢などの兆候もなく、多重人格者でもなければ、特に暗示に弱いタイプでもありませんでした。それに、薬物やアルコ−ルの中毒にもかかっていないことは、よくわかっていました。

そこで、彼女の見たものは幻想か、一種の夢のようなものだろうと、私は結論を出したのでした。

しかし、不思議なことが起こりました。キャサリンの症状が急激に良くなり始めたのです。

幻想や夢の一種では、こんな急速な回復は起こりません。毎週、彼女が催眠術によって過去世を思い出すたびに、以前には手に負えなかった症状が消えてゆきました。そして、二〜三カ月たつと、彼女は薬の力を借りずに完全に治ってしまいました。

私のかたくなな懐疑主義も次第に消えてゆきました。キャサリンは十二にものぼる過去世へ退行し、それによって彼女の病気は治ってしまいました。

彼女はひどい不安や根深い死の恐怖から解放され、今ではとても幸せな楽しい人生を送っています。そして自分で意識できる記憶や人格より、ずっと大きな広がりを持つものが存在していて、それは肉体的な死をも超越して存続していくことを、彼女は知っています。

キャサリンとの一連の体験を経て、私の精神療法の見方は、大きく変わり始めました。過去世に戻るこの療法によって、これまで何年も何か月もかけて多額の費用を費やしても治療の難しかった精神的症状を、すみやかに治療できることを発見したのです。この方法こそ、心の痛みや恐怖をいやす、より直接的で効果のある方法だったのです。

私はこの退行催眠療法を他の患者にも応用し、すばらしい効果をあげることができました。現在までに個別に何百人という患者に退行催眠を行っています。またその何倍もの人々に対し、グル−プで退行催眠を行っています。

過去世を思い出すことによって、患者の多くは様々な恐怖症、パニック、悪夢、理由のわからない恐れ、肥満、対人関係不適応症、肉体的な苦痛や病気等から解放されました。

体や心の症状がいやされるよりもっと大切なことは、私たちの肉体が死んでも、私たち自身は死なないということを知ることです。私たちは死にません。肉体は滅んでも生き続けているのです。