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- No. 016
CO2の「見える化」
ますます進む地球の温暖化。南極では、一年に1960億トンもの氷が消え、北極圏の白くまは、
温暖化の影響で絶滅が心配されています。でも、私たちに何ができるのか。
イギリスでは、温暖化に繋がる二酸化炭素の発生量を消費者の目に見えるようにしよう、という動きが起きています。
CO2、75グラム。商品が作られるまでに発生した量が一目でわかります。

カーボン・トラスト社(CARBON TRUST)
それを見ながら消費者は、二酸化炭素の発生がより少ない暮らしを考えるわけです。
日本でも消費者に二酸化炭素の発生量を知らせようという動きが始まっています。
製品の製造過程。
部品一つひとつの生産や運搬までひっくるめてどのくらい二酸化炭素が出るのか。
部品を作る町工場まで含めた大掛かりな二酸化炭素の調査がひそかに始まりました。
しかし、新たなコストが掛かる馴染みのない調査。戸惑いも広がっています。
地球温暖化の原因、二酸化炭素。この二酸化炭素を目に見えるようにしていこうという新しい試みをみつめます。
CO2「見える化」への挑戦
30ワットの蛍光灯。1時間点けておきますと排出される二酸化炭素の量は、12グラムです。
24時間、点けたままにしますと、排出量は、288グラム。
体積にしますと、サッカーボールおよそ28個分の二酸化炭素が出ていくのです。
温暖化がもたらす気候変動の影響を和らげる上で、二酸化炭素の削減が今急務となっているわけです。
日本は今年(2008年)から2012年までも5年間の間に、1990年に比べて6パーセントの二酸化炭素の削減を国際的に約束しています。
現在、私たちが一人当たり一日排出している二酸化炭素は6キログラム。
環境省は、目標達成するために一人当たり一日1キログラムの削減が必要だとしています。
一人当たり一日1キログラムといわれても、二酸化炭素は目に見えず、排出を意識するのが非常に難しいわけです。
そこで今、企業が二酸化炭素を見えるようにする「見える化」の動きを行うところが出てきました。 私たちが製品を使ったり消費したりする時に出てくる二酸化炭素だけでなく、その製品を作る上で必要なライフサイクルを通して、 どれだけ二酸化炭素を排出するのかを計算し、それを目に見えるかたちで表示しようというものなんです。
- 原料の採取
- 部品製造
- 運搬
- 製品製造
- 流通
- 使用
- 廃棄・リサイクル
具体的な表示を行うことによって、商品のライフサイクルを通して、二酸化炭素の排出が少ない商品を消費者が選ぶことができますし、 また、消費者に選ばれるために、企業が二酸化炭素を削減する。 この二酸化炭素の「見える化」によって、消費者、そして企業双方による二酸化炭素の削減効果が期待できるとされています。
コピー機やプリンターなどを製造する大手の事務機器メーカー(リコー)。
長年、新製品の開発やコストダウンにしのぎを削って来ましたが、去年(2007年)全く違う新しいミッションを始めることになりました。
それは、「二酸化炭素を調べよう」というミッション。
この日、部品を納入している多くの取引先企業にも呼びかけ、二酸化炭素の調査を要請しました。
部品を含めた製品の製造過程全てで、いったいいくら二酸化炭素を出しているのか。
それを調べる計算ソフトまで部品メーカーに配る熱の入れようです。
実はこのメーカー、かねてから二酸化炭素の削減に取り組んで来ました。
例えば、機械を動かす動力は、水を入れたペットボトル。
電気は全く使いません。製造ラインも電動式ベルトコンベアを止めて、人が動かす台車に代えました。
電気の使用量が激減し、二酸化炭素の排出が削減されました。
更に、商品であるコピー機を顧客がどう使うか。そこにも工夫の目を向けました。
もともとコピー機には省エネ機能が付いています。
1分間使わないと自動的に余熱モードに切り替わり、その後電源が一部落ちてスリープ状態に入ります。
しかし、顧客の多くはコピーをする時、復帰するまでの数十秒が待てません。
スリープ状態に切り替わらないよう設定を変更していました。
そこでメーカーは顧客にアンケートを実施。10秒以下なら待てると、いう回答を得ました。
メーカーは、早速スリープ状態になっても10秒で復帰できるよう製品を改良。
これで、省エネ機能が顧客に使われるようになりました。
しかし、そんな事態では済まない事態がメーカーを襲いました。
来年(2009年)からヨーロッパで始まる環境規制。EuP指令です。
画像処理装置(コピー、FAX)、テレビ、エアコン、洗濯機、 冷蔵庫、コンピューター、ボイラー、給湯器など14製品を指定。 メーカーに対し、原材料の生産や、部品の製造、組み立て、運搬、使用、廃棄に至るまで、 全てにわたって二酸化炭素の排出量を計算し、削減するよう厳しく義務付ける予定です。
そこで、部品製造に至るまで二酸化炭素を調べようということになったわけです。
それぞれの製造過程で排出される二酸化炭素量をはじき出すソフトを、2年がかりで開発しました。
分かったのは、メーカー本体が行う工程よりも、
部品メーカーが担当する工程の方が、二酸化炭素を多く出しているのではないか、ということでした。
本体の工場が造る部品は15パーセントにすぎません。
300社にも及ぶ外部の部品メーカーでも、二酸化炭素の排出量を正確にはじき出す必要が出てきました。
多くの部品メーカーで二酸化炭素の調査が始まりました。
この工場(プラスチック部品メーカー)は、およそ500種類のプラスチック製の部品を納入しています。 まず手始めに、2つの部品について、製造過程で出る二酸化炭素を調べたところ、半日も掛かってしまいました。 コストダウンや品質改良など、メーカーからの要求は他にもあります。 新たに求められる二酸化炭素の調査は、部品メーカーに重くのしかかります。
こちらの工場(金属部品メーカー)では、別の理由で二酸化炭素の調査が難航していました。
この工場がメーカーに納入している主力製品は、コピー機のトナーを掻き混ぜる部品です。
しかし、この工場で生産しているのは先端の部分だけ。
それ以外は、他から購入して組み合わせています。
しかも、自社で造っている先端部分も錆び止めのメッキ工程は別の専門業者に頼んでいます。
この部品の製造過程で、いったいどのくらい二酸化炭素が出るのか、
実は、この部品メーカーだけでは分からないのです。
二酸化炭素を突き止めるため、部品メーカーの担当者はメッキ業者にまで足を運びました。
メッキ作業自体の二酸化炭素排出量は、なんとか分かりそうです。
しかし作業には、数10種類の化学薬品を使います。
そのメーカーにまで調査をのばすべきかどうか。
終わりの無い二酸化炭素との格闘が部品メーカーを待ち受けています。
CO2削減がビジネスに
北海道に本社を持つ外食チェーン(びっくりドンキー)。
早くから二酸化炭素の削減を会社の方針としてきました。
例えば食材。
値段が安い外国産にすると、運んでくる時、二酸化炭素が沢山出るので、できるだけ国内産を使うことにしています。
そして、お客さんから使用済みの食用油を集め、会社で使うトラックの燃料(バイオ燃料)を作ります。
食用油は、二酸化炭素を吸収する植物から作られます。 この吸収分を考えれば、ガソリンに比べて大きな二酸化炭素削減効果があります。 更に、店舗の暖房にも灯油を使わない工夫(地熱の活用)をしています。 熱源になるのは、店の地下に眠っている地熱。 地面からおよそ100メートルの深さまでパイプを埋め、中で水を循環させます。 この深さでは、地中の温度は年間を通して10℃です。 水は、この10℃の熱を吸収して温まります。 これをヒートポンプと呼ばれる装置の中で温風に代え店の暖房に利用しているのです。 灯油やガソリンをできるだけ使わないことで、店舗では30パーセントの二酸化炭素を削減しています。
こうした取り組みは6年前から始めてきました。 当初はコストが高くつきました。 しかし最近になって、強烈な追い風が吹いてきました。 それは、原油価格の大幅な高騰です。 灯油やガソリンをあまり使わないこの会社のシステム。 二酸化炭素だけでなく、経費も大いに削減することが可能となったのです。
更にこのノウハウを、ビジネスチャンスにしようと動き出しています。 ビジネスの相手は、灯油の価格高騰に悩んでいた温泉旅館(洞爺湖温泉町)。 あの暖房システムを応用して、溢れ出ているお湯をうまく使う熱源システムを売り込んだのです。 灯油の代わりに、お湯の熱を再利用して源泉を加熱したり、給湯したりするシステムです。
旅館では、灯油を使うことに比べ経費が半分以下になりました。 初期投資に4000万円掛かりましたが、数年で元がとれる見込みです。 外食チェーンが始めた二酸化炭素削減の工夫。 それが石油価格の高騰を追い風に、新たなビジネスを生み出していました。
8th Feb. 2008
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