- home ->
- Editor's Eyes ->
- No. 021
地球温暖化 異常気象 海からの警告
地球温暖化。このまま温暖化が進行すると、21世紀末には平均気温が最大4.4℃上昇するという予測もあります。
今、世界各地で異常気象が起きています。
オーストラリアでは去年(2007年)大干ばつが起きて小麦が4割も減産となりました。
世界的な価格暴騰の引き金になっています。
この大干ばつの原因は実は海にあるのではないか?
日本のチームによる研究が始まっています。
予想外に温暖化している海。それが異常気象を加速させている可能性。
最新の研究成果が世界の注目を集めています。
海の温暖化は、地球にどんな異変をもたらすのか? 海からの警告です。
異常気象 海からの警告
去年(2007年)IPCC(地球変動に関する政府間パネル)は、 大気と海の平均気温の上昇、そして、世界の平均海面水位の上昇などのデータを示して、地球温暖化が疑う余地がないと報告し、 この報告がきっかけとなって世界で一気に地球温暖化に対する危機感が強まりました。
地球を覆っている大気。そして、地球の表面積の実に7割を占めている巨大に海。 この両方の気候変動で、一体どんな異変が起きるのか。 大気とそして海の変化を結びつけ、そして地球規模で気候変動を予測することがこれまで以上に重要になっていますけども、 この分野で大きな役割を果たしているのが日本の研究チームです。
去年(2007年)オーストラリアで大干ばつが発生し、小麦が高騰する大きな要因となりました。 このオーストラリアの大干ばつを予測していたのが日本の研究チームです。 インド洋の温暖化がオーストラリアの大干ばつの発生に関係している可能性があるという研究が世界の関心を集めています。
そもそも海ですけれども、大気に比べて温まりにくく、そして冷めにくい。 地球温暖化にとってショックアブソーバーになるとされてきました。 しかし、その海で観測されています海水温の上昇。 少しの変化でも大きな脅威となることが懸念されています。 日本の研究チームは、オーストラリアの大干ばつと、そして去年(2007年)の夏、 日本を襲った猛暑が関係していると考えています。
気象異変と海の温暖化
オーストラリアでは、6年前から断続的に干ばつが続いています。 水不足から植物が枯れ、また、牛や羊の餌が不足。主要産業である農業が打撃を受けています。
去年(2007年)の干ばつは一段と深刻でした。緑豊かな農場が干上がりました。 干ばつに耐えられず家畜も次々に倒れています。 かつてメルボルンオリンピック(1956年)でボート競技の会場となった湖も干上がりました。 オーストラリアを代表する大河(マレー・ダーリング川)の水量は最低水準、危機的なレベルまで落ちています。
穀物の生産は、去年(2007年)4割の減少を記録し、酪農も被害を受けました。 都市部では取水制限が実施され、水道局が水の使用を監視しています。 庭のスプリンクラーは禁止。ホースで車を洗うことも禁止。 街によってはシャワーを使うことも制限されています。
水を巡って事件も起きています。
庭に水を蒔いていた老人に向かって近所の男性が止めるように注意。
激しい口論になり。老人は殴られて亡くなったのです。
実は、オーストラリアの気象庁はこの大干ばつを予測できませんでした。
一方、日本の研究チームが半年前から予測し、的中させていたのです。
大干ばつを予測したのは、海洋研究開発機構(横浜)の研究チーム。 巨大なスーパーコンピューターを駆使して、世界の異常気象を解析してきました。 チームは解析の結果、この大干ばつに海が大きく関係しているのではないかと考えました。 オーストラリアに隣接するインド洋で異変が起きていて、それが大干ばつを引き起こしている可能性に着目したのです。 インド洋では近年、海の温度が急激に上昇しています。
チームは7年前からインド洋に独自に観測ヴイを設置。 海水の温度変化を詳細に追ってきました。そして、インド洋の西側で海水温度がぐっと上がる時、 オーストラリアで干ばつが発生する異常気象のメカニズムを発見したのです。
もともとインド洋は東側が西側より温度が高い状態で安定しています。 ところが、この温かい海の層が西側に広がるという現象が起きると、異常気象が始まります。 インド洋の西側に溜まった暖かい海水は盛んに蒸発して大きな雨雲を形成します。 蒸発によって空気が上昇し東からの風を呼び込むことになります。 その結果、さらに温かい海水が集まります。 こうして雨雲が異常に発達し大雨を降らせます。
去年(2007年11月)アフリカでは(ケニア洪水)、18カ国、150万人が被災する大洪水が起きています。 大雨を降らせた後の乾いた空気は、上空の気流に乗って東に向かい、この辺りで降りてきます。 インドネシアやオーストラリアといった地域が、この乾いた空気の影響を受けることになります。 これが干ばつの原因になるのです。
この異常気象のサイクルは通常でも起こり得ます。 しかし、インド洋の海水温度が上昇している結果、この異常気象のサイクルが強められ被害を大きくしている。 それを研究チームは危惧しています。
去年(2007年)、うんざりするほど続いた日本の猛暑。
実はここにもインド洋の異変が関係していると研究チームは考えています。
インド洋で起きている洪水と干ばつの異常気象のサイクル。
一旦、異常気象が起こると大気の波が発生します。
大気の波は遠く離れた所にまで伝わっていきます。
夏、日本列島を覆っていた高気圧がこの波の影響を受け、より強い高気圧になったと考えられます。
こうして西日本は8月、記録的な高温となり雨が降らない日々が続いた、と研究チームは推測しています。
インド洋で起きている温暖化。
海から始まる異常気象が、さらに周辺に異常気象を引き起こすという連鎖に、研究チームは危機感を抱いています。
異常気象と海の温暖化
司会
日本の研究チームがみつけたオーストラリアの異常気象のメカニズムでは、インド洋での海水温の上昇が引き金になった
可能性があるとみているわけですけども。やはり海水温の少しの上昇の影響てのはそれほど大きいのですか。
東京大学気候システム研究センター教授 木本昌秀
水は温めるのに時間がかかりますね。お湯はなかなか沸かないですね。
空気と比べて1000倍熱容量が違うわけです。
ですから、最近の地球温暖化で、海の深い所も合わせて海全体で0.037℃ 50年間で上がったと書いてありますけども。
なんだ、たったそれだけか。と思うかもしれないけれど。
1000倍てことは、空気を暖めるのに使われると37℃上がるわけですね。
実際はそうはいきませんけど。
だから温暖化がこの程度で収まってるのは海のお蔭でもあるわけです。
異常気象に関係して言いますと。
水蒸気がたくさん大気に供給されて、雲が立って循環が変わるということですけれど、全体が上がってきますと、この一つひとつが
雲がたくさんできるようになります。
そうすると、下降気流がもっと強くなって、干ばつももっと大きくなります。
ですから、降るとこでは降る。
乾くとこではもっと乾く。
という形で、異常気象が増幅される可能性あるということなんですね。
司会
その異常気象のサイクルを増幅させることをもたらすのが長期的な海水温の上昇なわけですけど、実際、インド洋での
海水温の上昇というのはみられてるわけですか。
東京大学気候システム研究センター教授 木本昌秀
インド洋ダイポールモール現象といいまして、日本の研究チームが発見した現象です。
この新しい現象がインド洋にある。これは年々の気候が変わるということですけれども。
インド洋はその他にここ数十年コンスタントに海温が上がってきてる。
そういう場所でもあるということがよく知られてて、それだけに、異常気象が増幅するのではないかと心配されてるわけです。
司会
そしてさらにインド洋での海温の上昇がオーストラリアの干ばつ。
そして、オーストラリアの干ばつと日本の猛暑の影響が関係してるのではないかとみられていて。
それが、大気の波が関係している、というのはどういうことですか。
東京大学気候システム研究センター教授 木本昌秀
日本とインドネシアやインド洋は遠いですよね。
飛行機でも半日以上かかりますけれど。
ですけど、大気中にも波がありまして。
高気圧、低気圧、高気圧、低気圧・・・・。
この波でいきますと、インド洋から日本までは、
高気圧、低気圧、高気圧ぐらいの感じなんですね。
ですから、一箇所で、海の影響で雲が増えますと、
その影響が何万キロも離れた所まで伝わってしまうわけです。
特に熱帯の海の影響は大きいということです。
海からの警告
温暖化は、海面の上昇をもたらしています。 南太平洋の島国、ツバルでは、この10年で約6センチ海面が上昇し、国土が水没の危機に陥っています。 大潮の時には、地面から至る所に海水が噴出し、国中が水浸しとなります。
イタリア、ベネチアでは、街の中心部が1年で40回も海水に浸かるようになりました。 ルネッサンス時代の由緒ある建物が被害を受けています。
中国では、30年の間に、上海で11.5センチ、天津で19.6センチ海面が上昇しました。
海面の上昇は、温暖化によって海が暖まり海水自体の体積が膨張することで起こるとも考えられています。 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、21世紀末までに世界の海は最大59センチ上昇すると予測しています。 (第4次評価報告書)
この水位の上昇は、局地的にさらに激しくなるという予測を東京大学の研究チームが行っています。 例えば、北半球では黒潮から続く大きな海流があります。 海流は、温暖化によって動きが強まります。その結果、周囲で大きな海面上昇が起きます。 この大きな海面上昇が起こる場所は、海の状態によって変わるため、太平洋の島々は危険にさらされる可能性もあると予想しています。
さらに深刻だと考えられるのは、深海で起きている温暖化です。 海洋研究開発機構は、観測船を使って、深海の海水温を調べています。 太平洋の水深4000メートルを超える深海で、海水温が0.005℃~0.01℃上昇していることがわかりました。 わずかなようにみえますが、深海の温暖化は大きな気候変動の兆候なのではないかと研究者達は心配しています。
その理由です。
世界の海は循環しています。そして、深海に沈み込み数千年かけてぐるっと地球を回る
深層循環という流れをつくっています。
世界の気候は、この海の大循環によって現在の状態に保たれているのです。
問題は、深海が温暖化すると、この循環が滞ったり、止まったりしてしまう恐れがでてくることです。
それが気候にどんな大異変をもたらすのか。研修者ですら予測がつかないといいます。
東京大学気候システム研究センター教授 木本昌秀
異常気象の激しさを予測するためにも、それから人類が出してしまった二酸化炭素を吸ってくれてるもの海のお蔭ですから。
誰も深い海に行ったことはない。測ることは非常に大事である。
ですから、海の実態の解明というのは、人類の行方を左右するような大事なことかもしれないです。
27th Feb. 2008
Go Report Index


