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- No. 034
India's Water Crisis -インドの水危機-
2008.05.26
「Jalyatra:Exploring India's Traditional Water Management Systems」
著者 Nitya Jacob 氏インタビュー
ENS
www.ens-newswire.com
元ビジネス・経済ジャーナリストのNitya Jacob氏が、彼にしては珍しい、 水にフォーカスしたエコ・トラベログを記した。 この本を執筆した彼は、インドには豊かな水があり、水利用に関する様々な伝統は世界でも有名だが、 インドの水の危機は、重大な局面をむかえていると述べた。
「Jalyatra:Exploring India's Traditional Water Management Systems」 と題された著書の中でJacobは、 「そんなに遠くない昔にインドを最も豊かな国の1つへと導いたのは、 5000年もの価値に相当する伝統的な知識であるのに、 この大事なことが忘れられてしまっている。 それが、この危機を招いた大きな原因だ」 と意見している。
Q: この本はどのような本ですか?
NJ: 水と社会と場所の結びつきを読みやすくまとめたエコロジカルな(生態学的な)トラベログ(旅行情報誌)です。 この本では、水資源を地域の環境的・社会的な関わりの中で認識し、 各地域の人々に水を供給するためにそれぞれの地域の条件に合った水管理を発達させてきたことを伝えています。 水道工事は雇用促進のために行われることもありますが、通常は、農業や住民の消費に十分な水を確保し、 雨水がなくても数年は乗り切ることができるように行われるものです。 この本では、インドにおける水と文化・宗教的なつながりについても記しています。
Q: なぜ水にフォーカスしたのですか?
NJ: 生命の始まりは水でした。そして、飲食、呼吸、入浴、農業、製造、衣料など、私達は水を全てに利用しています。 水は、生命の4要素の1つです。それなのに、私達は水を軽視している。そのことを変えたかったのです。
Q: 多くの人が当たり前だと思っているこの水というものを取り上げるきっかけは何だったのですか?
NJ: 私はこの数年、環境について書いているのですが、「Down To Earth」 というインドの主要な環境雑誌の仕事をしているときに、インドの水資源利用の多様性について垣間見る機会がありました。 私は、この本にも登場するRajender Singh氏やRamesh Pahadi氏など、 水に関する仕事に従事している人々と面識を持ち、彼らから、何世紀にもわたる歴史を持つ水構造や、 人々が昔は水をあがめ、慎重に利用していたのだということを聞きました。
こうして地域による水利用の多様性を知った私は、Penguin社にいる友人Karthika氏に話をもちかけ、 結果的に本を書くことになりました。最初からぐんぐん惹きつけられ、水から水への非常に魅力ある旅となりました。 地域ごとに様々な伝統があり、どの地域を載せるべきかの選択に本当に困りました。
Q: この本の中で3つの驚くべき発見とはなんですか?
NJ: 1つ目は、水管理構造にいろいろな種類があるように、水に関する知恵が各地で全く違うこと。
2つ目は、水構造建設についての古代の人々の知識の深さ。
そして3つ目は、水が命を与えてくれると同時に破壊もするものとして崇められていたということ。
これらが、最も驚くべき発見でした。
Q: 得られた教訓はなんだと思いますか?
NJ: 私達は水を単に消費される商品やモノとして扱うのではなく、崇めなければならないということです。 私達はあまりに長い間、水を軽んじてきてしまい、西洋的な教育によって考え方が変えられてしまいました。 「教育を受けていないお百姓さん」 の方が、今日のエンジニアたちよりもこのことをよく理解しています。
水への尊敬の念があれば、水を賢く利用し、保存し、その水源を保護したいという願望が生まれます。 そして、こういったことから宗教的な探究へと変わっていくことが多いですね。
宗教と水が相互に結びついていることを示す証拠はたくさんあります。お寺には必ず水源があります。 モスクには洗浄のための池があり、ガードワラ(シーク教寺院)には池があり、教会には洗礼盤があります。 礼拝する場所で、水源のないところなどありえません。
インドのさまざまな、エコ・農業・気候・社会ゾーンは、独自のシステムを発達させてきました。 飲み水と農業に関する人々のニーズに応えるために、システムを修復したりしながら。 私達は過去の遺産をダムや運河に葬るのではなく、引き継がなければなりません。 どこを妥協点とするか、とことん考え、会話することが必要なのです。
またその議論によって、水資源管理はローカライズされ、コミュニティ主導にならなければなりません。 大規模な中央集中型の建設と保守システムは、長期的にみると機能しません。 なぜなら、コストが高く、不公平で、地域の人々を無視し、常に天然資源を荒らすとみられているからです。 その証拠にほとんどパイプが漏れます。
水管理は、環境や技術的な問題であると同時に社会文化的な問題でもあります。 しかし、このことは現代のソリューションでは常に無視されてきました。 水資源利用を統治する社会構造やメカニズムは、できる限り現代の技術的なソリューションに基づいて構築されるべきだし、 社会ニーズに合わない技術はもう要らないのです。
その逆のことを私達はあまりにも長い間やってきてしまいました。そして、今、それを変える時が来ています。
社会は怠惰になり、政府が何でも提供してくれるという姿勢をとってきました。 水の供給が崩壊したり、運河から水が消えたりすると、人々は政府を非難します。
私は、人々の中に、イニシアチブをとって法律の枠内で自分たちを助けたいという気持ちが欠落していることに気付きました。 市民社会は、政府に期待することはできません。 政府が供給するものは役に立たず、間違った利用がなされているからです。 政府には、あらゆるレベルで人々と触れ合いたいという新たな意欲がありますが、 一般の人々は既成概念を超えてもっと高いレベルを求めなければなりません。
Q: インドにおける今日の水事情をどう説明しますか?
NJ: 私達は自ら作った危機にさらされていますが、まだ制御不能には陥っていません。 私達にはまだ豊富な水があります。しかし、人々は水源の管理を放棄し、政府に委ねてしまいました。
問題の一端は、供給にあります。政府にとって唯一の解決策は、おカネを生むという意味で魅力のある大規模プロジェクトです。 そしてもう一端には、需要の問題があります。 私達は、指一本動かさずに24x7で(年中無休で)水が供給されるよう求めています。 そして、もちろん廃水も必要です。
農業従事者は、灌漑しすぎています。食糧生産に最適な水の量がどれほどか誰も教えてくれないからです。 私が話した農家の人で、実際どれほどの水が必要なのか知識のある人は一人もいませんでした。 農業改良普及員や種・肥料販売業者は肥料や農薬の量は教えてくれても、水の量は教えてくれないのです。
遠くから水資源を得ている町では、供給パイプが漏れていたり、貧困者によって(不正に)飲まれていたりしていますが、 金持ちは芝生に水をやり、ますます深く堀抜き井戸を掘っています。 彼らは給水本管にポンプを取り付けて水を取っています。
私達は欲張りになっています。自分たちが実際にどれくらい使用しているかを考えるとき、 十分ではないという不足の念にかられます。 工業的利用は、監視が難しいタンカーや地下水に大きく依存しているため、表には出てきません。 しかし、業界では、ショーは何が起ころうとも最後まで続けなければならないと考えており、 そうすることで品質やコストに関係なく水を調達します。
一方で、急成長を遂げている水とソフトドリンク産業があります。 私は、1万キロを旅し、何百もの村を訪問し、各地で泉、手押しポンプ、川、タンク、 堀抜き井戸などから水を飲んでいましたが体調をくずすことはありませんでした。 ソフトドリンク/ボトルドウォーター(ミネラルウォーター)業界は、水道水には毒があり、 味も悪いという理由から、彼らの商品を買うよう信じ込まされてきました。とんでもない嘘です。
私達は、自宅あるいは旅行時、ろ過や沸騰といった低コストの浄水で十分健康を守ることができます。 殆どの町にろうそくを用いた浄水器もあります。
いずれにしても、ろ過された一般の水道水と同じくらいバクテリアに汚染されていると示 されたボトルドウォーターに関し多くのテストが行われました。 そこにあった危機は、需要と供給の認識に関するものでした。しかし、私達はまだ転換点には至っていません。
Q: 貴方自身の、これまでの水との結びつきについて教えてください。
NJ: 子供のころ、私はお風呂に浸かるのが大好きでしたが、 お風呂に入るたびに何百リットルという水を無駄にしていることに罪悪感を持っていました。 余裕があれば海辺に行くのが大好きでした。 また子供のころ、私は手でカップを作って耳に当て、空の声のように海の音を聴いたものです。 ビジネス紙の副編集者/記者としてジャーナリズムに入ったときには、私は水に特別の注意を払っていました。
1990年、INTACH (インド芸術・文化遺産ナショナルトラスト) は、Tehriダムに対してキャンペーンを行い、 私も現場を訪れました。驚くような破壊で、すべてに暗い影を落としていました。 川は涸れ、丘ははげ山になっており、月面のように荒涼とした風景になっていました。
実際、それが最初のきっかけでした。その後 「Down To Earth」 に入り、それ以来私、 水に関連するテーマに特別な関心を持って取り組んでいます。 1992年にRajender Singh氏を知ってからは、彼の作品にも注目しています。
また、1992年にはナマダバレーを訪れましたが、今ではこの谷は水の下です。 これについては、 Down To Earth に書いています。
それ以来、特にこの3年間、私は断続的に水について書き、水と深くかかわってきました。 現在私は、統治、水資源管理、飲料水、衛生、農業での水利用といった水関連の問題を議論する Water Communicty of Solution Exchange でリソース担当者になっています。
Q: 現在インドで最も面白い取り組みをしている地域はどこだと思いますか?
NJ: 政府に関してでしたらTamil Naduです。 Tamil Naduは、雨水の採集とタンクの再生に関する大規模な取り組みをスタートさせています。 また人々のイニシアチブに関して言えば、GujaratとRajasthanです。 どちらも水の採集の復活を成功させています。深刻な飲料水不足、地下水のフッ化物汚染や塩分問題があったからです。 これらのイニシアチブで興味深いのは、コミュニティの関与です。 復活プログラムにコミュニティの管理組織が上手くはまっていたのです。
Q: 水に関し、インドが直面する最も大きな課題は何だと思いますか?
NJ: 誤った水資源管理、天然資源や人口資源の公害、降水量の変化による水の供給力の格差、 地表貯蔵の縮小、各所での河川水の悪用でしょう。
29th May 2008
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