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・ホワイトイングリッシュテリア(White English Terrier):イングランドのテリア
このテリアの名前にある「イングリッシュ(English)」はイングランドの国名を冠しており、「白いイングランドのテリア」という意味です。
ホワイトイングリッシュテリアは名前のとおり、純白のスムースへアで黒い鼻と目が特徴、真っ直ぐな脚を有し、体重が5.4-9.1 Kgでした。
他のイングランド原産のテリア種と同じく、1860年頃に独立した血統種として認定されました。
ホワイトイングリッシュテリアは、コートの色を別にしてマンチェスターテリア(Manchester Terrier) (注釈4)と形や特徴などが同じでした。
全身に完全な白いコートが求められましたが、出生する子犬にあずき色の斑点が出現したり、耳が不自由であったりなどして繁殖が難しかったようです。
この犬種は当初、バーミンガムやマンチェスターなどで有名でしたが、次第にフォックステリアに人気を奪われていきました。
1908年のケネルクラブ(KC)のショーでの展示が最後で、やがてケネルクラブへの登録が無くなりました。
そして犬種認定から60年ほどの1920年代の初めには、本犬種の絶滅が危惧される状態になったと記録されています。
ホワイトイングリッシュテリアは、イングランドを代表する犬種名を有し、賢くて大変に美しい犬種でしたが、様々な理由からついに姿を消してしまいました。
1898年以前のスタンダード(犬種標準):
1. 頭:細く、長くて水平で、ほぼ平らな頭蓋骨、頬の筋肉はなくV字形で、目の下でよく満たされ、鼻に向かい先細りになり、そして唇が大きくない。
2. 目:小さくて黒、互いにほどよく接近し、そして形は楕円形。
3. 鼻:完全に黒。
4. 耳:端を切り (注釈5)、完全に直立して立つ。
5. 首と肩:首はかなり長く、そして肩から頭にかけて傾斜し、
傾斜する肩と共に首はのどが垂れ下がらず、そして後頭部でわずかにアーチ状であるべき。
6. 胸:狭く深い。
7. 胴体:短くそして肩の後ろで下がり、腰部で上方にカーブし、腰部でわずかにアーチ状をなし、そして尾の付け根で肩と同じ高さに再び下がる。
8. 脚:完全に真っ直ぐ、そして胴体の下にほどよく、骨格に適度で、そして均整のとれた長さ。
9. 足部:つま先と一緒にうまく配置され、きちんとアーチ形の足、そして野うさぎの足より丸くなるようもっと傾く。
10. 尾:適度な長さで、胴体とつながる所で太く、先端に向かって先細りで、背中の端のアーチ部に位置する、そして背中より高くは付かない
11. コート:密で、硬く、短く、そして光沢がある。
12. 色:純白で、色のついた斑紋は失格条項。
13. 健康状態:生き生きして、そして筋肉が硬くしっかりしている。
14. 体重:12 lb(5.4 Kg)から 20 lb(9.1 Kg)。
上記のスタンダードには、当時のブラック&タンテリア(今のマンチェスターテリア)のスタンダードと、コートの色以外は類似する記述が多くありました。
・ホワイトイングリッシュテリアと血縁関係がある犬種:
・マンチェスターテリア:ホワイトイングリッシュテリアとは、コートの色を別として大きな違いは無い。
・ブルテリア(Bull Terrier):ブルテリアはブルドッグ(Bulldog)と初期のホワイトイングリッシュテリア及びマンチェスターテリアとの交配種。ブルテリアをホワイトイングリッシュテリアの繁殖に用いた記録もある。
・ボストンテリア(Boston Terrier ):ボストンテリアはアメリカ原産で、ホワイトイングリッシュテリアとブルドッグの交配種が犬種の起源。
・ウイペット(Whippet):ウイペットを作り出すためにホワイトイングリッシュテリアが用いられた。
* ウエストハイランドホワイトテリア(West Highland White Terrier)と、ホワイトイングリッシュテリア及びボストンテリアとの間には、血縁関係は全くありません。
・クライズデールテリア(Clydesdale Terrier):スコットランドのテリア
スコットランド南部の地名であるクライズデール(Clydesdale)を冠するこのテリアは、同じくスコットランドのグラスゴーに近い地名であるペーズリーテリア(Paisley Terrier)とも呼ばれていました。
クライズデールテリアはスコットランドで一番小型のテリアで、体重で 5.5Kg(12 lb)、あるいは肩の高さで 18 cm(7インチ)を超えてはならないとされていました。
この犬種はイギリス社会で一度も人気を博したことが無く、1920年代の初めには展示会でその姿を披露することが稀になりました。
クライズデールテリアは毛色を別にして、(ロングヘアード)スカイテリアに全てが類似し、イギリスのスカイテリアクラブが
スタンダードを提供していました。
クライズデールテリアは、濃いはがね色と金色がかった黄褐色できわめて美しい滑らかなコートを持つことが特徴でした。
しかし飼育するのが難しく、子犬が良い成犬になるまでを見極めるため18ヶ月以上を必要としました。
この犬種は耳がぴんと直立していることが必須要件でしたが、遺伝的には垂れ耳が多かったとされます。
また、コートの手入れが難しく、皮膚の炎症を回避するために不断のケアが必要でした。
クライズデールテリアは貴婦人達のペットとして、主に魅力的な装飾・観賞用の犬でしたが、本来のテリアとしての特性や特徴も
兼ね備えた優美なテリアでした。
当時のスタンダード:
1. 一般的外観:密な房毛の直立の耳を有し、そして鼻から尾の付け根へ伸びる分け目から、完全に真っ直ぐに垂れて、そしてそれぞれの側へ平等に下がる最上級の絹かガラス繊維のような長いコートの、長く、低く、平らな犬。
2. 頭:顕著な程度に長く、頭蓋骨は平坦で、そして耳の間が狭く、黒に限られた目に向かって徐々に広くなり、そして鼻に対しわずかに傾斜する。あごは強く歯は水平。
3. 目:サイズは中間で、色は暗く、張り出さず、しかしテリアの目つきで、黒のまぶた。
4. 耳:完全に直立して付いて、そして長い絹のような毛で覆われ、頭の端へ房毛が深く垂れ下がるように位置し、小さく、頭のてっぺんに非常に高く置かれる。
5. 胴体:長く、胸は深く、肋骨はしまって、背中は完全に水平。
6. 尾:完全に真っ直ぐで、背中とほとんど水平に付いて、そして密に毛で覆われる。
7. 脚:胴体の下に申し分なく位置し、可能な限り短くて真っ直ぐで、そして絹のような毛で全体が覆われる。
脚のすそは丸くそして猫に似る。
8. コート:完全にアンダーコートが無く、生地に非常に光沢があり、そして絹のようで、カールやちぢれの形跡が全く見られず、可能な限り長く真っ直ぐ。
9. 色:むらなく明るいはがね色が、頭の後部から尾の付け根にかけて拡がる、そして淡黄褐色、明るいまたは薄黒い毛と混ざり合うことは全くない。
頭、脚および足は明るく、あざやかで、灰色が無く、黄金色の黄褐色、すす色あるいは薄黒い毛であるべき。
尾はまさに紺色か黒であるべき。
・クライズデールテリアと血縁関係がある犬種:
・スカイテリア:クライズデールテリアは毛色を別にして、(ロングヘアード)スカイテリアに全てが類似していた。
・ヨークシャーテリア(Yorkshire Terrier):イングランドのヨークシャーの人々が、絹のようで長いシルバーグレイと黄褐色のコートを備え、非常に小さくて立ち耳のテリアを造ろうと、様々な犬種の交配を試みました。
元になった犬種は、オールドイングリッシュブラック&タンワイヤヘアードテリア(Old English black and
tan wire-haired terrier)と、オリジナルのエアデール
テリア(Original Airedale Terrier:ウオーターサイドテリアとも呼ぶ)でした。
長いコートと立ち耳のためスカイテリア(Skye Terrier)、そして絹のようなコートのためマルチーズ(Maltese)とも交配された可能性があります。
その後、クライズデールテリアとも交配されました。
また、様々な繁殖と選択が行われた中で、ダンディディンモントテリア(Dandie Dinmont Terrier)も、交配に使われた可能性があります。
1870年代中頃のオリジナルブロークンヘアードヨクシャーテリア(Original broken-haired Yorkshire Terrier)は、 たびたびスコッチテリア(Scottish Terrier)とか、スカイテリアとも呼ばれました。
また、よく似ているため、クライズデールテリアと混同する人々が多くいました。
(注釈1) The new book of the dog(新・犬の本):1907年出版(イギリス), 著者 Robert Leighton (ロバート・レイトン),
イギリス原産の犬種を中心に、各犬種の歴史、特徴、スタンダード(犬種標準)含む標準解説書(624頁)で、各犬種の専門家が各章を執筆した。
(注釈2) Dogs and all about them (犬達と彼らの全て) :1910年出版(イギリス), 著者 Robert Leighton(ロバート・レイトン), 前作をもとに犬の歴史や法律を含め、主にイギリス原産の47犬種を詳しく解説(344頁)。
(注釈3) The Complete Book of the Dog(犬の完全な本):1922年出版(イギリス), 著者 Robert Leighton (ロバート・レイトン)の三作目の標準解説書(384頁)。
(注釈4) 今のマンチェスターテリアは、当時はブラック&タンテリア(Black and Tan Terrier)と呼ばれていました。
(注釈5) 耳の端を目印に切り取る(クロッピング:cropping):1898年4月に法律で禁止されるまで、ホワイトイングリッシュテリアとマンチェスターテリアの両方で一般的に行われていた。