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   スタンダードの研究
 

序文
 イギリスの古い文献 (注釈1) で、ウエストハイランドホワイトテリアが、1907年にイギリスケネルクラブ(The Kennel Club:KC, 以下 KC と表記する)に初めて 登録された当時の犬種標準(以下, スタンダードと表記する)が記載されています。 また、最新版のスタンダードは、KC版(2009年改定版)がKCのWebサイトで、そしてFCI版(2011年改定版)が国際畜犬連盟(FCI:ベルギー)のWebサイトで、それぞれ公開されています。
 スタンダードとは何であるかについてKCの説明を参照すると;「スタンダードは、理想的な特色、犬種の気性および外観について記述し、そして犬種が目的に適していることを保証するガイドラインです。 絶対的な健全性は不可欠です。 飼育者(ブリーダー)と審査員は、いかなる時もこの犬種の健康、福祉あるいは健全性に ついて、どんな方法でも有害となる明白な状態あるいは誇張した表現を回避するように注意するべきです。 ... 」とあります。
 ここでは、ウエストハイランドホワイトテリアがKCに登録された当時のスタンダードを中心に、現在のKCとFCIのスタンダードを参照し、前出の文献の貴重な記録を参考にしながら、本犬種の特徴と魅力を掘り下げて研究してみます。 研究の内容として、当時のスタンダードの項目順に考察を行い、専門用語や主要部位などをできるだけ(   )内に原文で表記しています。 また、日本語で表記しにくい言葉を、カタカナで記述しています。 各項目は原文に近いように訳しましたが、原文には難解な文書などもあますので、翻訳の仕方で文章表現に違いが生じるでしょう。

(注釈1) The new book of the dog(新・犬の本):1907年出版(イギリス), 著者 Robert Leighton (ロバート・レイトン), イギリス原産の犬種を中心に、各犬種の歴史、特徴、犬種標準を含む標準解説書(624頁)で、各犬種の専門家が各章を執筆し、マルコム大佐 (注釈2) が「ウエストハイランドホワイトテリア」の章を執筆しました。
(注釈2) エドワード・ドナルド・マルコム大佐(Colonel Edward Donald Malcolm:1837年-1930年):アーガイルシャーのポルタロックの名家の出身で、王立陸軍士官学校を卒業し、(当時、反乱中であった)インド、中国、およびカナダで仕事をした軍の技術者でした。彼が1906年に執筆した文献 (注釈1) で、 マルコム家のウエスティは少なくても1846年以来の飼育であり、ポルタロックテリアの起源は少なくても1600年代に時代を遡ると推測していました。1900年代初頭に、ウエスティを犬種として制定させた貢献に賞賛が与えられています。

1. 一般的外観(General Appearance)
当時のKCのスタンダード(以下, 当時と表記する):「ウエストハイランドホワイトテリア(以下, ウエスティと表記する)の一般的外観は、力強く造られた深い胸と背面のあばら骨、真っ直ぐな背中と力強い臀部(quarters) (注釈3) 、筋骨たくましい脚(legs) (注釈4) 、そして体力と活動の著しい程度に卓越した 組合せを示し、'勇ましく活発(varminty )'(注釈5) な風采(appearance, 見かけ)で、大いなる自尊心(self-esteem)に満ちて、小さく、勇ましく、頑健に見えるテリアである。」
現在のKCのスタンダード(以下, 現在と表記する):「一般的外観:力強く造られた深い胸と背面のあばら骨、平らな背中と筋骨たくましい脚(legs)の上の強い臀部、そして体力と活動の著しい程度に卓越した組合せを示す。 特色(characteristics):小さく、活動的で、勇ましく、丈夫で、'勇ましく活発(varminty)'な風采で、少なからぬ自尊心を 持つ。 気性(temperament):用心(警戒)深く、陽気で、独立独行(self-reliant, どくりつどっこう)であるが友好的である(人なつっこい)。」
FCIの現在のスタンダード(以下, FCIと表記する):「一般的外観:現在のKCのスタンダードと同文(一字一句が同じ)です。ふるまい(behaviour)と気性:現在のKCの「特色」と「気性」に同文です。」

(注釈3) 臀部(でんぶ)(quarters :クォータース):体の後部(hindquarters)の上方部分で, 骨盤(pelvic)と後脚のもも(thigh)の部位, 「臀部(quarters)= 後部(hindquarters)」ではありません。
(注釈4) 脚と足:日本語の「脚と足」はどちらも同じ意味で使います。英語には「もものつけ根から足首まで」を表す 'leg(レッグ)' と、「足首から下の部分」を表す 'foot(フット, 複数形は feet(フィート))'という二つの言葉があります。 日本語で二つの部位を短く表す言葉が見当らないので、これ以降は便宜的に 'leg(レッグ)' を「脚(leg)」と表記し、'foot(フット)' を「足(foot or feet)」と表記します。
(注釈5) 'varminty (バーミンティ)':欧米の辞書に無い単語で専門用語です。犬用語集(KC)で、通常はテリアに適用する専門用語で「勇ましく活発な」の意味です。 'varmint'として名詞形の訳は「野獣, いたずら小僧」です。「いたずら小僧」と訳しても宜しいですが、意味はテリアとして害獣(vermin:バーミン)と戦うような「勇ましく活発な」になります。

1) 他のスコットランドのテリア(ボーダーテリア, ダンディディンモントテリア, スコティッシュテリア, ケアーンテリア, スカイテリア)、及びイギリス原産の主要なテリアのスタンダード(KC)を確認した結果、「一般的外観・ 特色・ 気性」の項目で'varminty'の用語が与えられているのはウエスティだけです。
2) ウエスティは小さくて愛らしい容姿で、「かわいい」とか「ぬいぐるみ」みたいなどと形容されます。その容姿からは連想しにくいのですが、ウエスティは1900年代の初めまでは実際に「きつね・あなぐま・てん・むじな・ねずみ」などの害獣(vermin)を狩る役割を果していました。 「勇ましく活発(varminty)な風采」や「小さく, 活動的で, 勇ましく, 丈夫」などの表現は、純粋なテリアとしてウエスティが本能的に秘めている特色を記述しています。
3) 現在のKCのスタンダードとFCIのスタンダードの相関:FCIのスタンダードは、項目の区分などが異なる点もありますが、本文の記述内容は基本的にKCのスタンダードと同文です(一字一句同じです)。 ウエスティのスタンダードはKCが主体的に改定し、KCの改定を受けて国際畜犬連盟(FCI)がそれに従っているものと推測します。
4) 広辞苑(岩波書店)によれば、スタンダードの特色にある「自尊心」とは「特に、自分の尊厳を意識・主張して、他人の干渉を排除しようとする心理・態度。プライド」とあり、気性にある「独立独行」とは「他人に頼らず、自力で自分の信ずるところを行うこと」とあります。
 ウエスティの個体によって違うと考えますが、我が家のウエスティは気性にある「用心深い, 警戒深い」がよく合致します。 また、特色にある「少なからぬ自尊心を持つ」ということを、何気無い日常の行動から感じることがあります。
 ... ウエスティの飼主の皆様!, 愛犬が示す自尊心やプライド、それに独立独行の特色や気性を感じておられますか? ... '勇ましく活発(いたずら小僧的)'な風采でかわいいでしょうか?

2. 色(colour)
当時:「:白。」  ・現在FCI も同じ「白」。

1) KCの当時と現在のスタンダードの記述は、全く同じ「白」です。色に関しては、スタンダードは理想を述べていると考えます。
2) マルコム大佐 (注釈2) は文献 (注釈1) の中で、「繁殖(breeding:ブリーディング)について、色に関しては間違いなく白さが増加しました。しかし、もし犬が背中や耳にわずかな程度の薄い赤や黄色による血統を示しても、他のポイントが良ければ、 ウエストハイランドホワイトテリアの血統として拒絶されることはありません。」と説明しています。 部分的な白以外の毛色は、ウエスティの遺伝的な要因と考えられます。また、部分的に黒あるいは灰色の毛を有するウエスティが当時も存在していました。
3) かつて、イングランド原産のホワイトイングリッシュテリア(White English Terrier)は、全身に完全な純白のスムースコート(smooth coat)が求められました。 そのため、繁殖が難しくなり、やがて犬種が絶滅してしまう要因の一つになった歴史があります。

3. コート(coat):
当時:「コート (注釈6) 
:非常に重要で、そして完璧(perfection)はまれにしか見られない;ダブルコート(double-coat)でなければならない。アウターコート(outer coat)は硬い毛(hard hair)で、約2インチ(5.1 mm)の長さからなり、そして 全くカール(curl)していないこと。柔らかい毛皮(fur)に似るアンダーコート(under coat)は短く、ソフトで、そして密集(close)する。オープンコート(open coat) (注釈7) は好ましくない。」
現在:「コート:ダブルコートである。アウターコートは荒い毛(harsh hair)で、約5 cm(2インチ)の長さからなり、全くカールしていないこと。 柔らかい毛皮に似るアンダーコートは、短く、ソフトで、そして密集する。オープンコートは、最も望ましくない。明らかな肌の問題(skin problems)が無いこと。」
FCI:「コート:KCの現在のスタンダードと同文です。肌(skin):明らかな肌の問題が無いこと。」

(注釈6) コート(coat, 毛皮, 毛):肌の外被となる毛です。多くの犬種が二つのコートを有し、アウターコート(outer coat)と、アンダーコート(undercoat)からなるのが「ダブルコート(double-coat)」です。 ウエスティのコートは、ダブルコートの「ワイヤ(ブロークン)コート:(wire (broken) coat)」という分類になります。ダブルコートは、荒い(harsh)そしてしばしば硬い(wiry)アウタージャケット(outer jacket, 外被)と、 柔らかく(softer)密集した(dense)アンダーコートからなることが特徴です。
(注釈7) オープンコート(open coat):通常はシングルコートの犬に見られる薄毛のコートです。

1) 現在のスタンダードでは、当時の「非常に重要で、そして完璧はまれにしか見られない」が削除されました。しかし削除された内容のとおり、コートの項目は理想を述べていると理解できます。
2) アウターコートの「硬い毛(hard hair)」が、現在のスタンダードでは「荒い毛(harsh hair)」という表現に変わりました。 「荒い毛(harsh hair)」は、ダブルコートで「ワイヤ(ブロークン)コート」の種類に共通して使われる用語です。
3) ウエスティに懸念される皮膚疾患(食物アレルギーなど)に関し、2009年1月12日付けのスタンダードの改定で、コートの項目に「皮膚は健康そうに見えなければならない。」が追加されました。 その後も改定され、現在は「明らかな肌の問題が無いこと」と記述されています。
4) アウターコートは当時と現在のスタンダードともに、約5 cm(2インチ)と記述しています。毛の長さを数値で示しているのは、KCの現在のスタンダードではこの箇所のみです。
5) 約5 cmのコートの長さと現在のウエスティカットの実情を考察すると、例えば背中はスタンダードより短めで、脇腹は長めという傾向であると考えます。 大部分のウエスティは展覧会(ドッグショー)に出るわけでなく、またイギリスに比べて日本の夏の暑い気候がありますので、約5 cmの長さにこだわらなくても良いと考えます。
6) スタンダードでは「コート(coat)」と「毛(hair)」の用語を上手に使い分けています。 まず、コートは毛皮ですから、毛の集合体で外被です。そしてコートは、体全体や主に胴体部の外被を表す際に用います。一方で、頭、耳、尾、脚・足などには毛を用います。つまり、「頭のコート」ではなく「頭の毛」と呼びます。
7) シングルコート(single-coated)の犬種例としては、イタリアングレーハウンド(Italian Greyhounds), マルチーズ(Maltese), ポインター(Pointers)があります。
8) 長さの表記:この項目に限らず、KCの現在のスタンダードでは、「約5 cm(2インチ)」とメートルとインチを併記していますが、FCIのスタンダードではメートル表記だけです。 以降、長さに関しては「同文」としていても、FCIのスタンダードではインチ表記がありません;1インチ = 2.54 cm です。
9) (   )内に示す英語表記について:同じ単語や熟語であっても、例えば'under coat(アンダーコート)'を、'undercoat'と合成したり、'under-coat'とハイフン('-')でつないで示すことがありますが、原文に忠実に表記しているからです。

4. サイズ(size)
当時:「サイズ:体重はオス(dog)が 14 lb (6.3 Kg)から 18 lb(8.2 Kg)、そしてメス(bitch)が 12 lb (5.4 Kg)から 16 lb(7.2 Kg)、そして身長が肩(shoulder)で8インチ(20.3 cm)から 12インチ(30.5 cm)。」
現在:「サイズ:馨甲(withers, きこう, 肩甲骨間の隆起)で約 28 cm(11インチ)。」
FCI:「サイズ:現在のKCのスタンダードと同文です。」

1) オス(雄)とメス(雌)の英語表記:'dog(ドッグ)'はオスを表し、メスは'bitch(ビッチ)'と表します。
2) 'lb'はポンド(pound)の単位記号で、1 lb = 0.454 kg です。
3) 当時のスタンダードにあった体重制限(オスで最大 8.2 Kg)が、現在のスタンダードにはありません。しかしながら、かつてマルコム大佐は、「重さで犬のサイズを示すことがおそらく最も良いです。」と説明した上で、「ポルタロックのオス(Poltalloch dogs, ウエスティ制定時の正統な血統)は、めったに重量 18ポンド(8.2 Kg)の限界に達しませんでした。」と記録を残しています。 従って、ウエスティの体重が、犬種の制定当時に比べてあまりに重くなること(つまり, 体が大きくなること)は、好ましくないことであると考えます。

5. 頭(head:ヘッド)と頭蓋骨(skull:スカル)
当時:「頭蓋骨:力強い上下顎骨(jaws, じょうげがっこつ)に比例して狭くなりすぎることなく、均整のとれた長さで、わずかにドーム状で、そしてわずかな陥凹(indentation, かんおう)あるいは額段(stop, がくだん) (注釈8) があるべき目と目の間に向かい先細りになる。 まゆ毛は濃い。頭の毛は3/4インチ(1.91 cm)から1インチ(2.54 cm)の長さであり、そしてかなり硬い。」
現在: 「頭と頭蓋骨:わずかにドーム状の頭蓋骨;額(forehead, ひたい)を横切るように触れた際に、滑らかな輪郭を示す。 頭蓋骨の耳から目の高さで非常にわずかに先細りになる。 後頭部(occiput)から目の距離は、前顔部(foreface) (注釈9) の長さよりわずかに大きい。 頭は毛で厚く覆われる、そして首の軸(axis)に直角(right angle) (注釈10) かそれ以下の角度で保持される。頭は(それ以上に)広がった位置で保持されないこと。 前顔部は目から鼻口部(muzzle, びこうぶ)へ徐々に先細りになる。 重く骨ばった鼻梁(ridge, びりょう)のすぐ上で、はっきりした額段(stop)が形成され、そしてわずかに目に差しかかり、そして目と目の間にはわずかな陥凹(indentation)がある。 前顔部は目の下ですぐにしゃくれたり、あるいは傾斜しないで、うまく形成される。 上下顎骨と歯は、強くて平坦である。鼻は黒、そしてかなり大きく、鼻口部の残りと滑らかな輪郭を形成する。 鼻は、前方へ突出していない。」
FCI: 「頭蓋部位(cranial region, とうがいぶい):頭蓋骨額段:と、部位を区分して記述していますが、具体的な各記述内容はKCの現在のスタンダードと同文です。」

(注釈8) 額段(stop:ストップ, がくだん):鼻口部(muzzle:マズル, びこうぶ)から頭蓋骨への段差(step up);鼻骨(nasal-bone, びこつ)と頭蓋骨が接続するところで、目と目の間の陥凹(indentation, かんおう, へこみ)です。
(注釈9) 前顔部(foreface:フォーフェース):横から見て目から先の、鼻骨(nasal bone), 鼻孔(nostrils)と, あご(jaws, 上下顎骨, じょうげがっこつ)の部位。鼻口部(マズル)に同じ。鼻口部は口吻(こうふん)や、鼻づら(鼻面)とも呼ばれる。
(注釈10) 直角:原文の 'right angle' は「正しい角度」とも訳せますが、ここでは「直角」と訳します。 横から見て「首の軸に対し、頭部の軸の角度が直角以下であり、それ以上に角度が大きな(鼻口部が上方に向く)位置で保持されない」と解釈しました。

1) 当時のスタンダードは、「頭」と「鼻口部(後段で記述)」に分けて記述していましたが、現在のスタンダードでは両方まとめて記述しています。
2) 当時のスタンダードでは、頭の毛の長さは「1.91 cm から 2.54 cm」の記述でした。しかし、現在のスタンダードでは、「頭は毛で厚く覆われる」とだけ記述されています。 従って、トリミングでは頭の毛は、ほとんどカットする必要がないと考えます。
3) ウエスティの「鼻づら(マズル)が短い」という特徴は、「前顔部の長さが、後頭部から目の距離よりわずかに小さい」ということです。 他の種類で、例えば「前顔部の長さと、後頭部から目の距離がほぼ同じ」タイプを、バランスドヘッド(Balanced head)と呼びます。

6. 目(eye)
当時:「:広く離れて位置し、サイズは中くらい、暗いくり色(dark hazel)で、頭にわずかに沈み、鋭敏(sharp)で知性があり(intelligent)、洞察力のある(piercing)目つきを持って、濃いまゆ毛(eyebrow) (注釈11) の下から見える。 大きくて目立つ目、そして淡い色付きの目も、非常に好ましくない。」
現在:「:広く離れて位置し、サイズは中くらい、大きくなく、できるだけ薄黒い、そして犬に鋭敏さと知性、洞察力のある表情を与え、濃いまゆ毛の下にうまく位置する。淡い色付きの目は、非常に望ましくない。」
FCI:「:現在のKCのスタンダードと同文です。」

(注釈11) まゆ毛(eyebrow:アイブロー):眼窩(がんか)の上側の骨の隆起部(superciliary ridges)をカバーする目の上の肌と毛です。 毛深いウエスティの顔ですが、濃いまゆ毛があります。伸ばすと目に覆い被さる毛に、まゆ毛も含まれます。

1) 現在のスタンダードでは、2009年の改訂で「頭にわずかに沈み」という記述が無くなりました。
2) 目の色は当時のスタンダードの「暗いくり色(dark hazel)」から、現在のスタンダードで「できるだけ薄黒い(as dark as possible)」に記述が変わりました。 目の色が当時に比べて実際に変化したのではなく、記述の表現だけを変えたものと考えます。
3) 目の色は虹彩(こうさい, iris)のメラニン色素(melanin pigment)の存在に依存し、メラニンが多いほど色が薄黒くなります。 色付きの目としては、青(blue)や茶色(brown)が代表的です。珍しい例では、ウォールアイズ(wall eyes)と呼ばれて片方ずつ「青と茶色」の組合せ(オールドイングリッシュシープドッグ:Old English Sheepdog, 他)もあります。
4) スコットランドの他のテリアについて、現在のスタンダードを確認すると:ボーダーテリアは「薄黒い(dark)」, ダンディディンモントテリアは「濃く暗いくり色(rich dark hazel)」, スコティッシュテリアは「暗い茶色(dark brown)」, ケアーンテリアは「暗いくり色(dark hazel)」, スカイテリアは「茶色, なるべく暗い茶色(brown, preferably dark brown)」です。
5) 現在のスタンダードで、目はウエスティに「鋭敏さと知性、洞察力のある表情を与える」と記述しています。 ウエスティは言葉を話すことはできませんが、知性を持って目を中心に意思を表情として表そうとします。 また、吠えて訴えるなど様々な方法で、信頼できる飼主とコミュニケーションを図ろうとします。

7. 鼻口部(muzzle:マズル)
当時:「鼻口部:強力で、長さで均整がとれていて、そして鼻に向かい徐々に先細りになり、かなり広く、そして上あごを越えて前に突き出るべきでない。 あごは水平でそして強力、そして歯は角ばるか平らに交わり、適切に引き締まり、そして犬のサイズとしては大きい。 鼻と口蓋(roof of mouth, こうがい:口腔内の上壁)は、はっきりと黒い色であるべきです。」
現在:「:犬歯(canine teeth, けんし)間の幅が広いと同じように、必要とする'勇ましく活発(varminty)'な表情に一致する。 正規のシザーバイト(regular scissor bite) (注釈12) を有し、大きなサイズの犬のための大きな歯、つまり上側の歯が下側の歯に密接に噛み合う、そして上下顎骨へ角ばって位置する。」
FCI:「顔の部位(facial region):鼻(nose):黒、そしてかなり大きく、鼻口部の残りと滑らかな輪郭を形成する。前方へ突出していない。 鼻口部:前顔部は目から鼻口部へ徐々に先細りになる。 上下顎骨(jaws)/歯(teeth):上下顎骨は強くて平らである。犬歯間の幅が広いと同じように、必要とする'勇ましく活発(varminty)'な表情に一致する。 正規のシザーバイトを有し、大きなサイズの犬のための大きな歯、つまり、上側の歯が下側の歯に密接に噛み合う、そして上下顎骨へ角ばって位置する。」  (FCIは「顔の部位」という項目を設け、「鼻」,「鼻口部」,「上下顎骨/歯」、それに「目」と「耳」を区分して記述していますが、具体的な各記述内容はKCの現在のスタンダードと同文です。)

(注釈12) シザーバイト(scissor bite):辞書に無い熟語で専門用語です。'scissor(シザー)'は、はさみ(scissors:シザース)の単数形で、普通では「切る」という動詞です。 日本語で「鋏状咬合(はさみじょうこうごう)」と呼びます。6種類ある犬の歯の噛み合わせを区分する用語の一つです。意味は本文中の「つまり、・・・ 位置する」に同じです。

1) KCの現在のスタンダードを確認すると、他のスコットランドのテリア(ボーダーテリア, ダンディディンモントテリア, スコティッシュテリア, ケアーンテリア, スカイテリア)も、全て正規(regular)あるいは完全(complete)なシザーバイトと記述されています。
2) 当時のスタンダードは「鼻口部」として鼻と口をまとめた項目です。現在のスタンダードでは、「鼻口部」のうち「鼻づら」が「頭と頭蓋骨」の項目に入り、「口」だけになっています。
3) ところで、KCのスタンダードには「顔」という項目がありません。「頭と頭蓋骨」の項目で、「前顔部(foreface)」という専門用語は出てきましたが、目から先の「鼻口部」のことです。 FCIのスタンダードには「顔の部位(facial region)」の項目がありますが、人間の顔を表現するような内容とは違います。 ウエスティの容姿には「丸顔でかわいい」という特徴がありますが、スタンダードの記述からそのことを察知することはできません。

8. 耳(ear)
当時:「:小さくて、直立(erect)あるいは半直立(semi-erect)に保ち、けっして垂れ(drop)ないこと、そして上へぴんと張って保つべきです。 半直立の耳は、先端がうまく下がるべきで、耳の上の四分の三程度で折れ、そして耳の両方の形は、とがった先端で終わるべきです。 耳の毛は短く、(ビロードのように, velvety)つやがあるべきで、そしてそれらを切るべきではない。 耳は頂上に房毛(fringe:フリンジ)があるべきではない。 丸い先端、幅が広い、そして大きい耳、またあまり極端に毛で覆われた耳は非常に好ましくない。」
現在:「:小さくて、直立、そしてしっかりと保ち、とがった先端で終わる、広すぎずあるいは接近しすぎずのどちらでもなく位置する。 毛は短く滑らか(ビロードのように)で、切るべきではない。 耳は頂上に房毛があるべきではない。丸い先端、幅が広い、そして大きい耳または厚い耳、あるいはあまり極端に毛で覆われた耳は非常に好ましくない。」
FCI:「:現在のKCのスタンダードと同文です。」

1) 耳は外耳、中耳および内耳の三つの部位からなりますが、スタンダードは外耳(耳殻:じかく)を記述しています。 ウエスティは'三角形'に近い耳ですが、その記述はありません。
2) 当時のスタンダードにあった「(耳の3/4程度の高さで折れる)半直立の耳」は、現在のスタンダードでは記述が無くなっています。今はあまり見かけませんが、犬種の制定当時は「半直立の耳」を持つウエスティが存在したことになります。 遺伝的には、現在でもあり得るかも知れません。
3) 耳を立てるために過去に他犬種で実施されていたことがあるクロッピング(cropping)と呼ばれる切断やトリミングは、KCが全犬種に対し禁止しており決して行ってはいけません。 クロッピングが行われた犬は、KCが主催する活動に参加できません。
4) 耳の毛は短くて切るべきではないとする記述が、スタンダードの特徴です。反面、耳の毛があまりに長すぎたり、ふさふさしすぎは好ましくないとしています。 具体的な長さの記述はありませんが、トリミングでは耳の毛は長さを整える程度が望ましいのではないかと考えます。

9. 首(neck:ネック)
当時:「:筋骨たくましい、そして傾斜にうまく位置する。」
現在:「:頭が要求される適正な位置に置かれることを許すよう十分に長く、筋骨たくましい、そして、なで肩(sloping shoulders)にうまく溶け込むことを許すように首のつけ根に向かって徐々に太くなる。」
FCI:「:現在のKCのスタンダードと同文です。」

1) 当時に比べて現在のスタンダードは、より具体的な内容に変わりました。

10. 胸(chest:チェスト), あるいは前部(forequarters:フォークォータース)
当時:「胸 (注釈13) :犬のサイズに比例した横幅で、大変に深い。」
現在:「前部(forequarters) (注釈14) :両肩は後方へ傾斜している。肩甲骨(Shoulder blade)は幅広く、そして胸の壁に接近して位置している。肩関節(shoulder joint)は前方に置かれ、胴体の軸に平行して、肘(elbow, ひじ)はほどよく中に、前脚(foreleg)が自由に動くことを可能にしている。 前脚(forelegs)は短く、そして筋骨たくましい、真っ直ぐで、そして短くて硬い毛で厚く覆われる。」
FCI:「手足(limbs):前部:後方へ傾斜している。肩甲骨は幅広く、そして胸の壁に接近して位置している。肩関節は前方に置かれる。 :胴体の軸に平行して、肘はほどよく中に、前脚(forelegs)が自由に動くことを可能にしている。 前腕(forearm):前足(forefeet)は短く、そして筋骨たくましい、真っ直ぐで、そして短くて硬い毛で厚く覆われる。」  (FCIは「手足(limbs)」という項目を設けて、部位毎に記述していますが、具体的な記述内容はKCの現在のスタンダードと同文です。)

(注釈13) 胸(chest:チェスト):あばら骨で囲まれた胴体の前部分, 立ち姿で横から見て, 前脚(forelegs)の間から後ろ側で肋骨を含む部位。
(注釈14) 前部(forequarters:フォークォータース):頭と首を除いた犬の前方部分。

1) 現在のスタンダードは、「胸」という一部分ではなく、体全体を「前部(forequarters)」, 「胴体(body)」, 「後部(hindquarters)」に分けて記述しています。
2) 現在のスタンダードは、「前脚(foreleg)は '短くて硬い毛' で厚く覆われる」との記述です。現在の前脚(foreleg)のトリミングの傾向は、毛が少し長めであるかも知れません。

11. 胴体(body:ボディー)
当時:「胴体:コンパクト(compact) (注釈15) で、真っ直ぐな背中、肋骨(rib, ろっこつ)は深い、そしてやや平らなわき腹の外観を示しながら、肋骨の上側半分で十分にアーチ形を造る。 腰部(loin)は幅が広く、そして力強い。後部(hind-quarter) (注釈16) は力強く、筋骨たくましい、そして上面を横切って広い。
現在:「胴体:コンパクトである。背中は水平、腰部は幅が広く、そして力強い。 胸は深く、そして側面でやや平らな外観を示しながら、上側半分で肋骨がよいアーチ形を形成する。 かなりの深さの後部肋骨(back ribs)、そして胴体の自由な動きに見合うよう臀部(quarters)の最終の肋骨からの距離はできるだけ短い。」
FCI:「胴体背中(back)腰(loin)胸(chest):と、部位を分けて記述していますが、具体的な記述内容はKCの現在のスタンダードと同文です。」

(注釈15) コンパクト(compact):ぴったりと構成されている。形が整っている。手足(limbs)がひょろ長くない。 「小型の」と訳してしまうと、意味が違ってしまいます。
(注釈16) 後部(hind-quarter:ハインドクォーター):犬の腰から後ろの部位。臀部(quarters, でんぶ)は後部の一部です。

1) 現在のスタンダードは、当時とほとんど変わりませんが、少しだけ記述が追加されました。

12. 脚(leg:レッグ)と足(foot:フット) (注釈4) :
当時:「脚と足:肩甲骨は比較的に幅広く、そして後方に十分に傾斜するべきです。 肩甲骨のポイントとして、背骨(backbone)にぴったりと接合しているべきであり、そのため犬が歩いている際に、それらの動きがとても少ないことが顕著であるべきです。 肘は、運動中あるいは立ち姿の際に、胴体に接近すべきである、従って前脚(fore-leg)が肩の下にうまく置かれる理由になる。 前脚(fore-leg)は真っ直ぐで、そして短く硬い毛で濃く覆われるべきです。 後脚(hind-leg)は短く、そして筋骨たくましくあるべきです。 後脚のもも(thigh)は非常にたくましく、そしてあまり大きく離れない。 後脚のひざ(hock, 飛節)は曲がっていて、立ち姿、歩行、あるいは走っている(急ぎ足の散歩, trotting)際のいづれも、互いにまずまず近接し、そして胴体の下にうまく位置する。 そして、立っている際、後脚(hind-leg)は、後脚のひざ(hock)の下のポイントから球節(fetlock)の関節まで、真っ直ぐか直立し、そして大きく離れない。 前足(fore-foot)は後足(hind-foot)より大きく、そして丸く、均整のとれたサイズで、強くて、厚い肉趾(pad, にくし) (注釈17) で、そして短く硬い毛で覆われる。 足(foot)は真っ直ぐ前方を向かなければならない。 後足(hind-foot)はより小さく、前足(fore-foot)のように完全に丸くなく、そして厚い肉趾である。 足(foot)の肉趾の底部と全ての爪は、はっきりと黒色であるべきです。 あまりに曲がった後脚のひざ(cow hocks:牛踵関節 (注釈18) )は、一般的外観を損ねます。 真っ直ぐな後脚のひざ(hocks)は弱いです。両方の性質は不適当で、そして警戒されるべきです。」
現在:「足(feet):前足(forefeet)は後ろより大きく、丸く、サイズに釣り合い、肉趾は厚く、そして短く荒い毛で覆われる。 後足(hindfeet)はより小さく、そして肉趾は厚い。肉趾の底面と全ての爪はなるべくなら黒色です。」
FCI:「前足(forefeet)後足(hind feet)に項目を分けて記述していますが、具体的な記述内容はKCの現在のスタンダードと同文です。」

(注釈17) 肉趾(pad:パッド, にくし):足(foot)の底面の頑丈で厚くなった皮膚。一般に「肉球(にくきゅう)」と呼ばれています。
(注釈18) 牛踵関節(cow hock:カウホック, ぎゅうしょうかんせつ):牛の後脚のひざ(hock, 飛節)は互いに内向きで、その結果、足(foot)が外へ向きます。

1) 当時のスタンダードは、四肢(前後の脚と足)の全てをまとめて述べていました。 現在のスタンダードでは足首より下の足(foot)に限定した記述です。そして、脚(leg, もものつけ根から足首まで)はそれぞれ体の「前部(forequarters)」と「後部(hindquarters)」の項目で記述しています。
2) 当時のスタンダードでは、「肉趾(pad)の底部表面と全ての爪は、はっきりと黒色であるべきです。」と限定していましたが、現在のスタンダードでは「なるべくなら(できれば)黒色です。」に記述が変わりました。 ... 皆様! 愛犬の肉球(パッド)と爪はどんな色でしょうか?

* 後部(hindquarters:ハインドクォータース):(当時のKCのスタンダードに無い項目です)
現在:「後部:強く、筋骨たくましく、上面にまたがって広い。 脚(legs)は短く、筋骨たくましく、力強い。もも(thighs)は非常に筋骨たくましく、そして幅広く離れない。 ひざ(hock, 飛節)は曲がっていて、立ち姿、歩行の際のいづれも、互いにまずまず近接し、そして胴体の下にうまく位置する。真っ直ぐな、あるいは弱いひざは最も好ましくない。」
FCI:「手足(limbs)後部一般的概観:強く、筋骨たくましく、上面にまたがって広い。 脚(legs)は短く、筋骨たくましく、力強い。もも:非常に筋骨たくましく、そして幅広く離れない。ひざ間接(knee):よく曲がる。 飛節(hock joint):曲がり、立ち姿、歩行の際のいづれも、互いにまずまず近接し、そして胴体の下にうまく位置する。真っ直ぐ、あるいは弱いひざは最も好ましくない。」

1) FCIのスタンダードは「手足(limbs)」という項目を設けて、部位毎に記述していますが、具体的な記述内容はKCの現在のスタンダードと同文です。 FCIはKCのスタンダードに比べて、他の項目においても全般的に、部位毎に細かく項目を分ける記述を行っています。

13. 尾(tail:テール)
当時:「:6あるいは7インチ(15.2 から 17.8 cm)の長さで、羽毛ではなく硬い毛(hard hairs)で覆われて、できるだけ真っ直ぐ;ゲイテールに保つ(gaily) (注釈19) 、しかし背中の上にはカールしない。 長い尾は、好ましくない。」
現在:「: 13 cm から 15 cm (5から6インチ)の長さで、羽毛のようではなく荒い毛(harsh hair)で覆われる、できるだけ真っ直ぐで、はつらつと(元気よく)保ち、ゲイテールではない(not gay)、あるいは背中の上方には持ち上げない。 長い尾は好ましくない、そして決して尾を短くすべきではない(断尾すべきではない)。」
FCI:「:KCの現在のスタンダードと同文です。」

(注釈19) ゲイテール(gay tail):辞書に無い熟語で専門用語です。犬用語集(KC)で、「尾を非常に高く上げる、あるいは背中の上方にまで持ち上げること」です。 考察すると、ゲイテールとは「尾を高く上げ、上げた尾を真っ直ぐではなく、前方へ反らせ気味に保つ」という意味です。 典型的なゲイテールは、横から見て「長めの尾を非常に高く上げ、背中の上で前方へ反らせて(あるいはカールして)保つ」という形です。この場合、曲げた尾を背中の上方で保持することであり、背中に直接触れるという形ではありません。
 'gay'(ゲイ:派手な,華やかな)という言葉の理由は、背中の上方に大きく曲げて上げた尾を揺らす姿が、毛が豊富なほどに「派手で, 華やかな印象」を与えるからであると推測します。

1) 尾の上げ方について、他のスコットランドのテリアのスタンダード(KC)を参照すると;ボーダーテリアは「高く、ゲイに持ち上げるが、背中の上方にはカールしない」, ダンディディンモントテリアは「興奮していない時でゲイに保つが、体の高さの少し上」, スコティッシュテリアは「直立に保持するか、わずかに曲がる」, ケアーンテリアは「ゲイに保つが、背中の方へ折り返らない」, スカイテリアは「上げた時で背中のラインまでで、高くは保持せずあるいは曲がらない」と記述しています。 これらの犬種の例で、「ゲイ(gay)に ... 」という用語は、「尾を高く上げ、前方へ反らせ気味に保つ」という意味で使われています。
2) ゲイテールの内容を含め、スタンダードを改めて意訳すると以下のとおりです;
当時:「:6あるいは7インチ(15.2 から 17.8 cm)の長さで、羽毛ではなく硬い毛で覆われて、できるだけ真っ直ぐ;尾を高く上げ前方へ反らせ気味に保つ、しかし背中の上にはカールしない。長い尾は、好ましくない。」
現在:「: 13 cm から 15 cm (5から6インチ)の長さで、羽毛のようではなく荒い毛で覆われる、できるだけ真っ直ぐで、はつらつと(元気よく)保ち、尾を高く上げ前方へ反らせ気味に保たない、あるいは背中の上方には持ち上げない。 長い尾は好ましくない、そして決して尾を短くすべきではない(断尾すべきではない)。」
3) ウエスティは、実際には尾をほどほどに高く上げますが、意訳した現在のスタンダードでは、「尾を高く保つゲイテールではない」という内容に変わりました。従って、前記した他のテリアで記述されている、尾を上げるという表現そのものと、上げる具体的な高さを示す記述が無くなっています。
4) 他犬種を含む全般的な実情では、スタンダードの記述より、尾を高く持ち上げているとの指摘がしばしばあるようです。
5) ウエスティの尾は、「にんじんの形」と形容されています。現在のスタンダードでは「最長15 cm」と、当時に比べて尾の長さが1インチ(2.54 cm)短くなり、長い尾は好ましくないとしています。また、断尾してはならないことが記述されています。ウエスティはいかなる場合も、決して尾を切って体を傷つけてはいけません。
6) 「コート(coat)」の項目と同じく、当時の「硬い毛(hard hairs)」という表現が、現在は「荒い毛(harsh hair)」に変わっています。

14. 歩きぶり(gait:ゲイト) / 動作(movement:ムーブメント)
当時:「動作(movement):自由で、真っ直ぐで、そして全ての方向に動きやすくあるべきです。 前方へは、脚(leg)は肩によって自由に前方へ差し出されるべきです。後方への動きは自由で強く、そして綿密であるべきです。 後脚のひざ(hocks)は自由に曲げることができるべきで、そして胴体の下にぴったりと引き寄せられる、そのため足(foot)が動く際に、胴体は少しの力で前方へ動かされる、あるいは押されます。 後方へのぎこちなさ、不自然な動きは非常に好ましくありません。」
現在:「歩きぶり(gait) / 動作(movement):自由で、真っ直ぐで、そして全ての方向に動きやすい。 前方へは、脚(legs)は肩から前方へ自由に差し出されます。後方への動きは自由で強く、そして綿密です。 後ひざ間接(stifle)とひざ(hocks)はよく曲がり、そして体を動かすためひざが下で引き寄せられます。 後方へのぎこちなさ、不自然な動き、そして牛踵関節(cowhock) (注釈17) は大いに好ましくありません。」
FCI:「歩きぶり/動作:現在のKCのスタンダードと同文です。」

1) 当時と現在のスタンダードは、内容的にはほとんど変わりません。現在のスタンダードには、牛踵関節(cowhock)という表現が追加されました。

以下は、当時のスタンダードで通し番号が無い項目です;
欠点(faults:フォールト( ... 複数形は語尾が '')
当時:「欠点1. コート:絹のような滑らかな手触り、ウェーブ(wave, ちぢれ)、あるいはカールする 傾向、また同じくオープン・コート (注釈7) も、全て深刻な欠点である。黒あるいは灰色の毛は、競技会(competition)には不適任と判定する。 2. サイズ:最小体重以下、あるいは最大体重以上の見本(specimens) (注釈20) は、いづれも好ましくない。 3. 目:大きな、あるいは軽い色付きの目。 4. 耳:丸い先端、垂れ、幅が広い、そして大きい、あるいは極端に毛で覆われている。 5. 鼻口部:出過ぎか、出が少ないのいずれも、そして欠陥のある歯。」
現在:「欠点:(スタンダードで記述した)前述のポイントからの逸脱はどれも欠点と考慮されるべきであり、そして欠点が尊重されるべき重要性は、その程度および犬の健康福祉、 そして従来の仕事を実施する犬の能力に的確に比例すべきです。」
FCI:「欠点:(スタンダードで記述した)前述のポイントからの逸脱はどれも欠点と考慮されるべきであり、そして欠点が尊重されるべき重要性は、その程度とその影響度が犬の健康と福祉に比例すべきです。」

(注釈20) specimen(スペシメン):「見本, 標本」と訳します。競技会や展覧会(ドッグショー)に出場したり、繁殖(ブリーディング)に使用される個体は、他の見本になるようなウエスティであるという意味で、この言葉を使用していると考えます。

1) 当時のスタンダードに、「黒あるいは灰色の毛は、競技会には不適任と判定する」とあることから、部分的であれ黒あるいは灰色の毛を持つウエスティが、当時も存在したことは確実です。
2) 当時あった体重制限は、現在のスタンダードにはありません。しかし、犬種の制定時に比べて、あまりに体重が増える(即ち、体が大きくなる)ことは好ましいことではありません。 また、現在もテリアを含む複数の犬種において、体重制限が記述されていることを理解しておく必要があります。
3) ウエスティの当時のスタンダードにはありませんが、当時のいくつもの犬種(例えば, スコティッシュテリア)のスタンダードには、点数配分基準(scale of points)が示されていました。 点数配分基準とは、例えば頭7点, コート15点, 胴体15点, 一般的外観10点などと、合計で100点になるように配分を行ったものです。 項目ごとに点数を競う目的のため、競技会や展覧会(ドッグショー)などの採点配分に使用されたものと考えます。

失格となる欠点(Disqualityfying faults):(FCIだけの記述)
*「攻撃的(aggressive:アグレッシブ)な、あるいは過度に内気(shy:シャイ)な犬。」
*「身体的(physical)に、あるいは挙動的(behavioural)に明らかな異常性(abnormalities)を示す犬はどれも失格すべきとします。」

1) このFCIのスタンダードの項目は、展覧会(ドッグショー)に出場する犬のための注意事項であると考えます。
2) 大部分のウエスティはドッグショーなどに出ることは無いですが、社会性を身に付けるということでは、公園やドッグランなどでの他の犬との交流、しつけ教室での訓練などが役に立つと考えます。

注(note:ノート)
現在:「オスの動物は陰嚢(scrotum)の中に、明らかに正常で十分に降りた二つの睾丸(testicles)を持つべきである。」
FCI:「注意せよ(N.B):現在のKCのスタンダードと同文です。」

... 以上です; スタンダード(犬種標準)は、目的として「理想的な特色、犬種の気性および外観について記述」していることを再確認して本文を終えます。

結び
 ウエスティは、1600年代にはイギリスのスコットランドで、害獣を狩るための代表的なテリアとしての地位を占めるようになりました。 現在は、祖先の土地を遠く離れて、私達の家庭で飼主の「最良の友」として、忠実に務めを果しています。
 犬種制定当時の古いスタンダードを学び、現在のスタンダードとの変化点を考察して、古い文献の貴重な記録を参考にしながら、ウエスティの特徴と魅力について、掘り下げて研究することができたと考えます。 この研究結果が、ウエスティの健全性の向上と、新しい魅力を見つけ出すことに貢献できればありがたいと思います。

                                                                                                      ... 2011年10月


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