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少し硬いお話になりますが、我が家に「ウエストハイランドホワイトテリア(ウエスティ:Westie)」がやってきてから、飼主は欧米の様々なWebサイトで公開されている内容や古い文献などから、「テリア」と「ウエスティ」の起源と歴史について調べ、その内容をまとめてみました。
テリアとイギリス諸島
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| グレートブリテンと北アイルランド |
テリアの起源
「イギリスケネルクラブ(The Kennel Club:KC)」のWebサイトでは、「テリア種の犬は古代からイギリスで知られている。そして、中世(5世紀-15世紀半ば)にはこれらの活発で小さい犬が、作家や画家によって描かれている。
イギリス諸島が多数のテリアの起源であると一般的に信じられている。」と説明しています。
イギリスで古代(およそ西暦400年代以前)に遡るとされる「テリア(Terrier)」の起源と古い歴史は、まだはっきりと解明されていません。
そして、「その起源は濃い霧に包まれている」と表現されることもあります。
「テリア」の起源と歴史については、古くから様々な説がありましたが、インターネットの発展に伴って情報公開が進み、これから徐々に真相が解明されていくと考えます。
アースドッグ (テリアの祖先)
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| 匍匐(ほふく)前進する「ジャック」 はらばいで前進しています, 1歳7ヶ月 (2006年1月) |
テリアという呼び名の誕生
英語の「テリア(Terrier) (注釈6) 」という呼び名は、1440年頃に誕生しました。
そして「テリア(Terrier)」は「フランス語」からきており (注釈7) 、ラテン語の「Terra(テラ)」が語源です。
「アースドッグ(Earth dog)」の「Earth(アース)」は、ラテン語の「Terra(テラ:大地)」と同義語であり、「アースドッグ(Earth dog)」という言葉から、「テリア(Terrier:土を掘る犬)」という現在の呼び名が生まれたと考えられます。
しかし、呼び名の誕生時期とは異なり、「テリア(Terrier)」という総称が公的な記録に現れてくるのは、ずっと後の時代になってからです。
それは、「アースドッグ(Earth dog)」という呼び名が、1800年代まで使われ続けられたからです。
従って、1800年代以前のイギリスにおける「テリア」の古い歴史は、「アースドッグ」あるいは単に「ドッグ」と呼ばれた犬の歴史を繙(ひもと)くことになります。
文献 (注釈8) などを参考にすると、1859年に組織化されたドッグショーが開始されるようになって、後に設立されるイギリスケネルクラブ(KC) (注釈9) による各犬種の制定が実施される以前に、それまで「アースドッグ」と呼ばれてきた犬種達に対し、「テリア」という総称が適用されるようになりました。
オリジナルワーキングテリア
原種としてのアースドッグの流れを汲むテリア種を、オリジナルワーキングテリア(Original working terrier)、あるいはオールドワーキングテリア(Old working terrier)と呼びます。
オリジナルワーキングテリアは、テリア種の中で最も正統な血統であり、「テリアの中のテリア」達といえます。
イギリスの文献(注釈8) を参考にすると、現存するオリジナルワーキングテリアは以下の通りです:
・イングランドのテリア= ブルテリア(Bull-terrier), スムースフォックステリア(Smooth Fox-terrier), ワイヤヘアードフォックステリア(Wire-haired Fox-terrier), エアデールテリア(Airedale Terrier), ベドリントンテリア(Bedlington Terrier), ブラック&タンテリア(Black-and-tan Terrier:今の「マンチェスターテリア(Manchester Terrier)」)
・アイルランドのテリア= アイリッシュテリア(Irish Terrier), ケリーブルーテリア(Kerry Blue Terrier)
・ウエールズのテリア= ウェルシュテリア(Welsh Terrier), シーリハムテリア(Sealyham Terrier)
・スコットランドのテリア= ボーダーテリア(Border Terrier), ダンディディンモントテリア(Dandie Dinmont Terrier), ウエストハイランドホワイトテリア(West Highland White Terrier), スコティッシュテリア(Scottish Terrier), ケアーンテリア(Cairn Terrier),
スカイテリア(Skye Terrier)
次の2犬種は現存しない絶滅したオリジナルワーキングテリアです:
・ホワイトイングリッシュテリア(White English Terrier:イングランド, 純白のスムースへアで真っ直ぐな脚, 体重 5.4-9.1 Kg)
・クライズデールテリア(Clydesdale Terrier:長毛のスカイテリア系, スコットランドで一番小さい犬種, 体重 5.5 Kg 以下)
スコットランドのテリア
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| 「ジャック」 (1歳3ヶ月) 首に青いバンダナ (2005年9月) |
ウエストハイランドホワイトテリア
スコットランドがまだ独立した王国であった1500年代の始め (注釈10) に、「アーガイルシャー (注釈11) のアースドッグ(Earth dog of Argyllshire)」という記録が残されています。
この「アースドッグ」は、現在の「ウエストハイランドホワイトテリア」の祖先にあたると考えられます。
「ウエストハイランドホワイトテリア」は、古い「アースドッグ」の血統で「オリジナルワーキングテリア」であり、「スコットランドのテリア」の中でも歴史が古い犬種です。
スコットランドをはじめグレートブリテン島の各地で多くの「テリア種」が開発された理由として、当時の民族が農耕と牧畜(牛・羊など)を営み、家畜としての犬の品種改良の技術に優れていたためと考えられます。
(注釈1) サクソン人(The Saxons):「大辞泉(小学館)」によれば, 「ゲルマン民族の一派。古くから北部ドイツに定住していたが、5世紀ごろから、ブリテン島に侵入してアングル人とともに英国の基礎をつくった。」とあります。
アングロサクソン民族(The Anglo-Saxon race)
(注釈2) ノルマンコンクエスト(The Norman Conquest):フランスのノルマンディー公(duc de Normandie)が率いたノルマン人(ゲルマン人の一派:バイキング)の英国征服(1066年)。
(注釈3) ヘンリー三世(Henry The Third:1206-1272):イングランド国王(在位:1216-1272), マグナカルタを承認。
(注釈4) ジョン・レスリー(John Leslie:1527-1596):スコットランドのハイランド地方出身で, ローマ・カトリックの司教で歴史家, 1578年にローマでラテン語版の
「スコットランドの歴史(De Origine, Moribus, et Rebus Gestis Scotorum)」を出版。
(注釈5) The new book of the dog(新・犬の本):1907年出版(イギリス), 著者 Robert Leighton (ロバート・レイトン), 各犬種の専門家が各章を執筆し、イギリス原産の犬種を中心に各犬種の歴史、特徴、スタンダード(犬種標準)を含む標準解説書(624頁)。
1667年にニコラス・コックス(Nicholas Cox)が出版した"The Gentleman's Recreation (紳士のレクリエーション)"で、スポーツ犬(狩猟犬)として古いテリアの体躯を表現したとあります。
(注釈6) テリア:「広辞苑(岩波書店 第五版)」によれば、テリアとは「(「土を掘るもの」の意) 本来は穴居の小獣などを狩るのに用いた敏捷な小形猟犬の総称。」とあります。
(注釈7) 英語とフランス語:ノルマンコンクエスト (注釈2) 以降の英仏間の争いや往来で, イギリス社会にフランス語が流入し, フランス語からの借用語や同義語等として英語に影響しています。
(注釈8) The Complete Book of the Dog(犬の完全な本):1922年出版(イギリス), Robert Leighton (ロバート・レイトン)の著作で、三作目の標準解説書(384頁)。
(注釈9) イギリスケネルクラブ(The Kennel Club:KC):世界で最も古く、1873年4月4日に設立。
(注釈10) 1500年代始め:スコットランドはジェームズ四世(James IV:1473-1513)とジェームズ五世(James V:1512-1542)の時代。イングランドはヘンリー8世(Henry VIII:1491-1547)の時代で国王の権力が強かった。
(注釈11) アーガイルシャー(Argyllshire):アーガイル(Argyll)とも呼びます。
ウエストハイランドに位置し、元々は州であり、州都はインベラリ(Inveraray)でした。