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全人的(ホリスティック)医療でがんと闘う
がん闘病において、大事なことは医師と患者がどのようながんに対する視点や治療観をもって治療を行ない、また、治療をうけているかということではないでしょうか。わたしは「がんは全身病」という、ホリスティック(全人的)医療に基づいた治療を受けました。その概念の要点をまとめるとつぎのようになります。
全人的治療とは
@人間を「体・心・気・霊性」等の有機的総合体ととらえる。
A生命が本来自らのものとして持っている「自然治癒力」を癒しの原点におき、この自然治癒力を高め、増強することを治療の基本とする。
B病気を癒す中心は患者自身であり、医師はあくまでも援助者。ライフスタイルを改善して、患者自身が「自ら癒す」姿勢が治療の基本となる。
Cさまざまな治療法を総合的に組み合わせる。
西洋医学の利点を生かしながら、中国医学や各国の伝統医学、心理療法、自然療法、栄養療法、手技療法、運動療法などの種々の療法を総合的、体系的に組み合わせて、最も適切な治療を行なっていく。(日本ホリスティック医学協会)
患者が最初に医師から上記のような全人的な考えで治療に当たると説明をうけたなら、患者は自分の責任を自覚し、積極的に治療に参加するようになると思います。医者任せの甘えも早く捨てられるはずです。入院したときに、最初に主治医からこのような考え方・医療哲学で治療すると説明をうけた患者と、ただ手術の説明だけ受けた患者とでは、闘病姿勢やQOL(人生の質)に大きな違いが出てくるでしょう。そしてそれは治療の結果の違いとなって現れてきます。なぜなら、積極的な闘病姿勢の患者の方が治療の成績がいいからです。だから患者がどのような治療観を持っているかが重要なのです。
がんを観る視点
がんをどのように観るかによって治療も異なってくるので、「がん観」の違いからみてみましょう。
「病気(がん)は体の防衛力と病気を引き起こす力のバランスで決まる」
「がんは免疫監視能力が落ち、体に備わっている抵抗力(免疫能)が弱くなった結果発生した」
このような見方はがんを全身病とみる立場です。
健康なときは、がん細胞が生まれても、免疫監視システムが機能し、がん細胞を排除するので、がんになりません。
しかし、何らかの原因でがんを制御できなくなり、がんに対する抵抗力が弱くなり、両者の間の力関係が逆転してがんがうまれた。
治療とは、この力関係を逆転させる試みにほかなりません。
ところが、病院でのがん治療は「生命が本来自らのものとして持っている『自然治癒力』を癒しの原点におき、この自然治癒力を高め、増強することを治療の基本とする」ような治療ではありません。それは、がんとは何かという観点が違うからです。
早期発見早期治療がたよりの三大療法
ドイツ人病理学者ルドルフ・フィルヒョー(Rudolf Virchow 1821-1902)はがんを次のように見ていました。
「がんは正常な細胞が何らかの原因によってその性質と形を変え、分裂と増殖を続け、やがて宿主を死に至らしめる」。がん細胞はいったん発生すると何の抵抗も受けずに一方的に増殖を続け、宿主が死なない限り増殖をやめることはないと考えられています。したがって、治療は、がんを早期発見し、早く手術で切り取るか、または、放射線や抗がん剤で殺す方法になるわけです。このような考えで治療しているのが現代の医療です。
この方法では、早期発見し早期治療すれば必ず治ると威勢がいいが、進行がんで見つかると自信を無くし治癒率を統計でみるようになります。がんは治らないと考えるから、「治す」というより「いかに延命するか」に治療の重点が置かれるようになります。または、「必ず再発する」と確信しているから、どうしたら再発時期を遅らせられるかという治療になります。根底に「がんは治らない」という敗北感や悲観論が支配しているように思えます。医師から、「あなたのがんは治ります」といってもらえないのだから、患者が絶望的になるのも当然です。
がん休眠療法
高橋豊金沢大助教授の提唱する「がん休眠療法」が注目されています。低用量の抗がん剤を長期に使い、がんを消すのではなく、増殖を抑制して眠らせ、患者の延命を目指す新しい抗がん剤治療です。腫瘍を縮小させるのではなく、抗がん剤を上手に使い、がんの増殖を遅らせようとする「縮小なき延命」法です。「医者はがんを消すことばかりを目的にしていた。しかし、たいてい不可能です。しかも治せないし、延命効果にも疑問がある」「低用量の抗がん剤を長く使えば、がんを眠らせることができます。がんが大きくならなければ、人は死なない」(『がん休眠療法』講談社)
最初から治癒は目指さず、がんと共存し延命期間を長びかせようという発想です。この治療法にも、がんは治らないという大前提があります。休眠療法を受けながら、統合療法を併用すれば、より積極的休眠療法ができるのではないかと思います。
「がんと闘うな」?
また、近藤誠慶大医学部講師のように「がんは治らない・治せない」ので、最初から三大療法も代替療法もうけずに「がんと闘うな」と呼びかける医師もでてきました。三大療法を受けても副作用や合併症・後遺症で苦しむだけであり、それ以外の民間療法をやってもむだなことだから、がんと診断されたら最初から治療そのものをしないほうがいいというのです。(『患者よ がんと闘うな』(文藝春秋社96年)
最後まで希望を捨てずに治療法を探すのが人情です。希望をすてる時が死を決意する時です。がんは治らないという言葉を信じ、闘わない道を選ぶか、それとも最後まであきらめないで、生き延びるチャンス、可能性を見つけようとがんばるか。わたしがこの本で訴えたいのは後者の道です。
自己治癒力をどこまで信じられるか
がんと闘う上で、本来人間に備わっている自然治癒力の強さを心の底からどれだけ信じられるか、それが問題です。人体ががんを抑制する大きな能力を持っていることの驚くべき証拠として「がんの自然治癒」や「プラシーボ(偽薬)効果」と呼ばれる現象があります。わたしは入院した日からこの「がんの自然治癒」の記事を見せられ、がん克服の秘密を勉強させられました。わたしは、同じことがわたしにも起こり得るという可能性を信じました。次の本には具体的な自然退縮の症例が扱われています。『がんになりやすい性格』(中川俊二)、『がんは「気持ち」で治るのか!?』(川村則行、三一書房)
自己治癒力を信じられる者にとっては、自然治癒の症例は大きな希望を与えてくれる大切な資料ですが、がんでさえ治癒させるほどの強力な「自己治癒力」が自分のうちに秘められていることを信じることができなければ、治療法がなくなり、延命だけをめざすことになるのです。三大療法で治療ができなくなると治癒をあきらめてしまします。
心と体の相関関係〜心と体は表裏一体
人間の内から働きかけて治癒力を引き出す治療や、心身一体の全人的治療について理解するためには、心と体の関係を理解する必要があります。そこで、まず心身一体(心身一如)の考え方を見てみましょう。
人間は、目に見える体である外形と、目に見えない心である内性からなる統一体です。心と体は、人間の両側面であり、表裏一体であり、不可分の関係にあり、決して切り離すことはできません。体は心の命ずるままに動き、それによって人間はその目的を指向しつつ生を維持しています。
このことから心と体の間には、主体と対象、内と外、原因的と結果的という相対的関係があることがわかります。心という内性は、無形だが、ある形をもっており、それが外に目に見える外形となって現れたのが体です。したがって体は第二の心ともいえます。
心は体に対して主体の立場
こうした心と体の相関関係を理解することは、闘病でとても大切です。心は無形でも、体に対して主体、内的、原因的な位置にあるので、わたしたちの知情意、例えば、強く生きようとする意志カ、希望的、積極的な考え方、真実の愛情、または逆の悲観的、絶望的な思い、あきらめ、消極的生き方、憎悪、怒り、悲しみなどは、対象、外的、結果的な位置にある体にそのまま影響を与え、目に見える形をもって結果となって現れるのです。
もちろん、心と体は相互作用をしますので、体が心に影響を及ぼすこともありますが、あくまでも、心が体に対して主体の立場です。病気も、こころ(内性)が目に見える形になって現象化したものです。心身はコインの表と裏のような関係です。
《あらゆる病気は心身相関病である》
「心と体を切り離すことができるのは言葉の上だけのことだ。人間が心身であって身だけではない以上、あらゆる病気は心身相関病である。病気に対処する治療戦略は、まずこの事実に立脚していなければならない。あらゆる病気が心身相関病だということは、あらゆる病気が身体的要素と精神的要素の両面があるということ」(『ひとはなぜ治るのか』アンドルー・ワイル、日本教文社)
闘病において、患者の心の持ち方ひとつで、治療効果が左右される理由はここにあります。ですから、心と体の相関関係をまずはっきりと理解し、それを闘病の中心(土台)にすえるのです。そうすれば、闘病に積極的に取り組むことができるようになります。
心とがん、ストレスとがん、性格とがんなどの関係、心と体の相関関係(心身相関理論)が理解できるようになると、身体の一部にできた病巣だけを見つめるのではなく、そのがんを生んだ担がん母体を心身両面から見つめなければならないことがよく分かるのです。これが「がんは全身病」とみるホリスティック医療の見方です。池見酉次郎先生が心身医学を「ホリスティック医学の核」とみているように、がんの臨床の現場で、心身医学的観点からがんを診る心療内科医も医療チームに加われば、より全人的治療ができるようになるでしょう。
心の持ち方次第で健康回復が可能
『がんのセルフコントロール』『心療内科』などの本を通して心と体、がんと心、がんとストレスなどの相関関係が理論的に理解できるようになると、漠然としていて何をすればいいのかわからなかった「闘う」という意味が分かるようになりました。サイモントン先生はつぎのように述べています。「心の状態が病気を生み出す原因になるということの裏を返せば、わたしたちの心の在り方や、態度の持ち方によっては健康を維持したり、また回復することも可能だということになります。病気を発病することに自分が関わりをもっていることを認めることによって、逆に今度は健康を回復することにも自分が関わることができるのです。そうすることが、がんを制圧し、健康にもどる第一歩を踏みだすことになるのです」(『がんのセルフコントロール』)
心理的介入によってがんをコントロール
心理的ストレスが免疫系、内分泌系に影響を及ぼし、がんを発生させます。このプロセスを逆に利用して心理的介入によって、がんを征圧しようとする心身相関の理論がサイモントン療法なのです。患者が希望や安心感を得、生きる意思、病気を治す意志を強く持つことができれば、その結果として体内の免疫活動が増強され、がんの発育を抑えられるという理論です。心が体に影響を及ぼして、病気を治すということが理論的にわかってはじめて「がんと闘う」ことの意味や「どのように闘うか」が明確になったのです。目に見えない心、思い、希望、願望が身体の上にどのように見える形となって現れてくるようになるのか、がんを自分の心でコントロールすることが可能だという仕組みをわたしはずっと知りたいと思っていたのです。積極的に闘う強い意志が、どのように有形のがんに影響を及ぼして増殖を食い止めることが可能なのか、そのメカニズムの疑問が解けて、治療に「参加」するという意昧がよく理解できるようになりました。そこから、闘病が受け身や空を打つ拳闘のようなものではなくなったのです。先生から「自分でつくったがんだから自分で治しなさい」と言われた意味が分ってきました。
以上のような心身相関理論を治療に応用し、心の側からさらに積極的に働きかけて治癒力を高めようとするのがサイモントン・テクニックとよばれるイメージ療法です。テープを聞きながら、がん細胞が白血球や放射線、抗がん剤で破壊され、健康を取り戻していく状態を具体的にイメージとして描くのです。(第六章を参照)
自然治癒力を高めてがんと闘う〜統合医療で闘う
それでは、もう一度がんと治癒力の力関係のシーソー図をみてみましょう。
がん細胞は体に備わっているがん監視システムが機能せず、がん細胞に対する抵抗力が弱まり、がんの増殖を抑制する仕組みが働かなくなって生まれました。したがって、がんの治療は、いかにしたら体の防御機能(免疫能、自然治癒力)を強められるかにかかっています。
シーソーの右側の治癒力を総合的に強めるには@医師による治療以外にA体の外から働きかけて治癒力を高める代替療法とB内(こころ)から働きかけて治癒力を高める療法の、AとBの力をどれだけ強められるかにかかっています。三つをあわせて全人的に統合療法で闘います。
《治癒系を阻害する八大要因》
がんの治癒をめざすには、自然治癒力を最高に高める必要がありますが、そのためにまずしなければならないことは、治癒系を阻害する要因を除去することです。アンドルー・ワイル博士は、治癒力を妨げる要因を八つ挙げています。
@エネルギー不足〜治癒にはエネルギーが必要。エネルギーは代謝によって供給される。代謝エネルギー不足は、栄養失調、甲状腺機能低下、誤った食生活、消化障害、浅い呼吸、過労、睡眠不足などで引き起こされる。
A循環器系の異常〜治癒系は、障害や損傷のある部分にエネルギーと物質をはこぶ血液の循環に依存している。循環不全があると、十分な酸素・栄養・免疫物質の供給ができなくなる。
B浅い呼吸〜浅い呼吸は代謝を低下させて治癒系の効率を下げる。同時に脳神経系の機能にも影響を与える。
C免疫能の低下〜免疫能が弱っていると、自然治癒は起こりにくい。
D有害物質(残留農薬、空気汚染、水質汚染、有害食品、くすり・化粧品・その他の有害物質、有害エネルギー)
E老化
F心理的要因〜心の使い方が免疫系を抑制し、自律神経系のバランスを狂わせる。
G精神的・霊的な問題
(『癒す心、治る力』)
自然治癒力を活性化するには、まず治癒を妨害しているこれらの要因を解決することから取り組まねばなりません。
自然治癒力を高める条件
自然治癒力を高めるには四つの基本的条件があります。「呼吸」「食事」「運動」「こころ」の四つです。これらは相互に密接な関係にあり、お互いに切り離すことはできません。「これらの正しいバランスの回復こそが自然治癒力を高めるカギです。(『ホリスティック医学入門』大塚晃志郎)図
気血水の流れを改善して免疫力を高める
このように、人間の中にあるいろいろな流れ(循環)の停滞を改善することががん克服への道です。ここから自然治癒力を高めるために「呼吸」「食事」「運動」「こころ」の四つを柱とした治療法が出てくるのです。それぞれの流れを改善する方法に取り組みます。
それでは、六つの流れをみてみましょう
@固体の流れ〜腸管をきれいにする
これは食物が口から人って消化され、そして排泄されていく消化器系の流れです。固体の流れの停滞で一番分かりやすいのは便秘や宿便です。
・食物繊維による解毒療法:まず体内に蓄積された毒素、老廃物などを体外に出すということから始めます。
・断食療法:消化器系に休息を与え、宿便を取りのぞき、腸管をきれいに掃除し、血液を浄化する。
A液体の流れ〜血液の循環を改善する
血液の流れがとどこおることを「」といって万病の元とされています。がんは血流の少ない酸素不足のところで増殖します。きれいないい血液を造るためには、正しい食事・水が大切です。運動不足も酸素不足になります。酸素とエネルギーを運ぶ血液の流れの悪い所では治癒力は発揮されません。
遠赤外線サウナ:血液やリンパ液の循環を促進しながら、老廃物を排出するので一石二鳥です。西式健康法:温冷浴や金魚運動。温泉。運動。(遠赤サウナ療法参照)
B気体の流れ〜呼吸を改善する
病人はみな、呼吸が浅くなり、酸素摂取量が少なくなります。普通の呼吸で吐き出される空気は500ccですが、体を前に倒しながら吐くと、三~六倍の息が出て行きます。いい空気を充分に吸い、二酸化炭素を円滑に出さねばなりません。人間は自分の意志で内臓をコントロールできませんが、自分の意志で吸ったり吐いたりを工夫し、心身の健康をコントロールしようとして、丹田呼吸法、ヨガ、気功法などが発達しました。(呼吸法参照)
C神経エネルギーの流れ〜自律神経の調整
骨格、とくに脊柱や骨盤の変位を矯正し、自律神経のアンバランスを調整する。カイロプラクティック、オステオパシ―。
D気の流れ〜気の巡りを良くする
体の中を循環している気の流れが滞ると、いろいろな病気が起きてきます。経穴(ツボ)療法で、気の巡りを良くし、自律神経を調整することによって病気が治り、元気になるのです。鍼、灸、びわ温灸。(枇杷温熱療法参照)
E心情の流れ〜ストレスの蓄積と心の毒
イライラ、不安、恐怖、ストレスは免疫能を弱め、がんの誘因となりますので、ストレスのコントロールはがん予防や闘病にとって極めて重要です。これは親子や夫妻の間において与え受ける愛情の流れがわだかまりなくスムーズにいっているかどうか、家庭の事情や会社での人間関係のありかたなど、ストレスの対処の仕方に関係します。リラクセーション法、イメージ療法。
上記の六つの流れが滞るとは、別の表現をすると「毒がたまる」ということになります。それが病気を引き起こす原因や治癒力を妨げる要因となるので、解毒をして本来の循環をとりもどすことが治療の基本となるわけです。以上述べてきたことを図にまとめてみました。
さまざまな治療法を総合的に組み合わせて闘う
図から分かるように、がんとは氷山の水面より上に出ている部分に相当するがんの塊だけががんではなく、目に見えない水面下の部分=担がん母体こそがんの本体です。したがって、治療は、がんを全身病ととらえ、担がん母体を治療する全人的治療になるのです。
自然治癒力とは、免疫能であり、生体防衛機構である恒常性(ホメオスタシス)維持機能のことでもあります。恒常性は主にホメオスタシスの三角形と呼ばれる神経系、内分泌系、免疫系が相互に関連しあって維持されていますが、そのバランスが壊れると、病気になります。わたしはこれまでに、抗がん剤だけとか食事療法だけとか、一つの療法しかやっていない人をたくさん見てきました。手術後、再発予防に何をしたらいいか分からないという人にも多く会いました。自然治癒力を高めてがんと闘うという観点から考えると、一つの治療法だけでは十分ではありません。病院で受けている治療と併行して、西洋医学の利点を生かしながら, 中国医学や伝統医学,心理療法,自然療法,栄養療法,手技療法,運動療法などの種々の療法を総合的,体系的に組み合わせて自然治癒力を高めてがんと闘いましょう。 これが統合療法です。
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