本 スティーヴン・ハンターの“スワガー”サーガ

“ボブ・リー・スワガー”シリーズ
『極大射程』(Point of Impact)
『ダーティー・ホワイト・ボーイズ』(Dirty White Boys)
『ブラック・ライト』(Black Light)
『狩りのとき』(Time to Hunt)
『The 47th Samurai』

“アール・スワガー”シリーズ
『悪徳の都』(Hot Springs)
『最も危険な場所』(Pale Horse Coming)
『ハバナの男たち』(Havana)


●解 説
  『極大射程』から始まる“ボブ・リー・スワガー”シリーズは、ベトナム戦争で活躍した伝説の狙撃手ボブ・リー・スワガーを主人公としたサスペンス・アクション。銃器に関するこだわりの蘊蓄、巧みなストーリーテリングなどで評価が高い。第2作『ダーティー・ホワイト・ボーイズ』は外伝的作品で、脱獄囚ラマー・パイと、彼を追う警察官バド・ピューティの対決が描かれる。極悪凶暴なラマーのキャラクターが魅力的。外伝といっても、シリーズ上重要な伏線となる話の為、必ず『ブラック・ライト』の前に読んでおくことをお薦めする。第4作『狩りのとき』では、『極大射程』で少ししか触れられなかったボブ・リーの過去が語られる。ベトナム戦争時代、相棒ダニーとコンビを組んだ伝説の狙撃戦闘場面は熱い!続いて書かれた『悪徳の都』、『最も危険な場所』、『ハバナの男たち』はボブ・リーの父親アールの物語。実在の人物や事件を取り込んだストーリーが楽しい。本国で2007年秋刊行予定の最新作『The 47th Samurai』はまたボブ・リーが主人公になるらしい。


本 『極大射程』(Point of Impact)

著者 スティーヴン・ハンター   訳者 佐藤 和彦
出版社: 新潮社


●ストーリー
  山奥で隠遁生活している元狙撃兵ボブ・リー・スワガーの元へ、仕事の依頼をしたいという男達が訪れる。新開発の狙撃用弾丸を試射して欲しいというのだ。超精密に加工されたその弾丸に興味を惹かれたスワガーは、仕事を引き受けて射撃試験場へと赴くが…。
●感 想
  スティーヴン・ハンターの原作『極大射程』は“ボブ・リー・スワガー”シリーズ第1作。ベトナムで活躍した伝説のスナイパー、ボブ・リー・スワガーの闘いを描くサスペンス・アクション。2000年度「このミステリーがすごい!」の海外編1位作品。極上のエンタテイメント冒険小説で、この手のジャンルが好きな方には絶対お薦めの傑作。罠に嵌められた主人公の決死の反撃!という単純といえば単純なストーリーだが、導入部分から飽きさせない展開とアクション場面のカッコよさが秀逸。銃器・狙撃技術に関する詳細な書き込みが、狙撃プロフェッショナルとしての主人公の性格を反映している。中盤、迫り来る100人以上の敵特殊部隊に対し、ライフルで対抗する戦闘場面は激燃え!脇キャラクターも魅力的。もう一人の主人公といえるFBIの狙撃手ニック・メンフィスや、親友である老弁護士サム・ヴィンセントが良い味出している。冒険小説好きにはシリーズまるごとでお薦めしたい。



映画 『ザ・シューター/極大射程』(Shooter)

製作年度 2007年  製作国 アメリカ  上映時間 125分
監督 アントワーン・フークア
制作 ロレンツォ・ディボナヴェンチュラ 、リック・キドニー
制作総指揮 エリク・ハウサム 、マーク・ジョンソン
脚本 ジョナサン・レムキン
音楽 マーク・マンシーナ
出演 マーク・ウォールバーグ 、マイケル・ペーニャ 、ダニー・グローヴァー 、ケイト・マーラ 、イライアス・コティーズ


●感 想
  アントワーン・フークワ監督の映画版『ザ・シューター/極大射程』、映画単体で見れば、分かりやすい娯楽サスペンス・アクションものとして普通に楽しめる出来には仕上がっている。しかし原作と比較すると「狙撃」へのこだわりがかなり薄く、そこら辺を期待して観るとイマイチという印象。主演のマーク・ウォールバーグは原作ボブ・リーのイメージとは違うが、硬派な闘う男を熱演。なかなか頑張っている。FBI捜査官ニック・メンフィス役のマイケル・ペーニャも、人の良さそうなニック役で好演。

  原作との変更点について。まず時代背景。原作でのボブはベトナム戦争の英雄だが、映画では平和維持活動(?)で小国エリトリアに派遣されていたという設定に。相棒の観測手ダニーを失った状況も異なる。原作では敵のカウンタースナイパーにより、ボブとダニーは撃たれてしまうが、映画ではヘリによる攻撃に変更。敵スナイパーは原作では後の作品にも登場する重要キャラクターであるが…映画は続編作る気はないのかな?原作で腕の良いスナイパーでベテラン捜査員だったFBIのニック・メンフィス、映画ではスナイパー設定を削除、新米捜査官に。この変更はOKかと思うが…、素人なのにちょっと狙撃技術の上達が早すぎるか?(笑)

  原作ファン視点での不満点としては、まずボブ・リーが「愛国心」だけで単純に騙されてしまうところ。随分キャラクターが薄くなってしまったような気が…。原作では罠の段取りが絶妙で、「これは絶対に断れないだろ」という説得力あったのだが、まあ、これは時間の関係上仕方ないか。そして個人的に一番のマイナスポイントは、原作最大の見せ場で盛り上がりどころ、特殊部隊相手の戦闘場面の映像化。主人公の「狙撃」技術が最大限に発揮される箇所…のハズが、コマンドーみたいな単なる突撃銃撃アクションになってたのが残念。この場面の映像化に一番期待していたのに、というかここがカッコよく映画化されていれば、他の部分がダメでも許せたのに(笑)。クライマックス部分も少々変更があるが、雪山での狙撃は結構カッコいい。予想通りサム・ヴィンセントと法廷場面は大幅に省略(サムは犬の名前で登場)。ラストでは映画オリジナルの追加アクション場面があるが、やっぱり近距離突撃!みたいな戦闘でスナイパーらしくないのが不満。全体としては原作未読ならアクション映画として普通に楽しめる作品。しかし「狙撃」へのこだわりをもっと打ち出してくれれば、『山猫は眠らない』を超えるスナイパー映画になれたはず。惜しいなあ…。

2007/07/02




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