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著者 三崎亜記 |
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●ストーリー ある日、町の広報誌に小さく載っていた「となり町との戦争のお知らせ」。生活への影響を心配する“僕”だったが、開戦日をすぎても日常には何の変化もない。本当に戦争をやっているのか?と疑問を持つが、広報誌には「戦死者」の数が掲載されるようになる。そして、町役場から届けられた封書。中には「戦時特別偵察業務従事者の任命について」という通知が入っていた…。 |
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●感 想 三崎亜記の原作『となり町戦争』は、第17回小説すばる新人賞受賞作。世界的に戦争は今でもどこかで行われているわけであるが、私たち個人の生活にどれだけ関わりがあるかという点で見ると、現実感が薄くなってしまうのも事実。この小説では、「戦争」という本来なら国家間レベルでの大事を、「となり町との争い」レベルまで縮小。しかしそれで戦争が身近になるわけでもなく、主人公には戦争の実態が全く見えずに現実感が湧かないというのがミソ。戦争という行為が何から何まで「お役所仕事」として事務的に処理される、シュールというか、妙なユーモア感覚で描かれた作品。ここでは戦争は「公共事業」であり、町の利益の為に役所が推進する案件なのだ。いかにもお役所っぽい手続き書類(戦争推進用)がいくつも掲載され、シュールさを増している。戦争が始まったら日常が破壊されるかと思いきや、日常生活はそのまま続き、事務的な統計数字のみで「戦死者」数が増えていく不条理。後半になってようやく主人公が垣間見る戦争の現実…。戦争で人が死んでTVで報道されても、なかなかリアルさを感じられない現実世界への問いかけか。面白いか?と聞かれると微妙な内容だが、独特な味わいのある作品だ。文庫版にはオマケで「別章」が書き下ろされており、別の人物から見たもうひとつの「となり町戦争」が描かれている。 |
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製作年度 2006年 製作国 日本 上映時間 114分 |
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●感 想 渡辺謙作監督の映画版『となり町戦争』、原作同様、現実感の感じられない「戦争」状態に戸惑う主人公の姿が淡々と描かれる。原作が原作なので派手な場面はない(主人公が戦争らしい現実を「見られない」というのがミソである)のだが、意外と退屈せずに見られた。シュールなストーリーだがコメディというほど笑いはなく、人間ドラマというには設定に無理があり、もちろん戦争物とも言い辛い…、微妙なネタであるが、それなりに面白かった。江口洋介はちょっと「強そう」に見えてしまって、ただ流されてる感じの原作主人公とは少々雰囲気が違う。「潜入先」からの脱出場面をクライマックス付近に置いて、「香西さんの弟」や「敵兵」と直接出会ったりする場面を追加、若干エンタテイメント色を加えたというところか。最後の方は原作とは異なる展開で、主人公は自分の意思を強く主張。原作は特に反戦でも好戦でもない印象だったが(根底には反戦メッセージがあると思うが)、映画版はラスト近くで結構熱く「反戦」主張が入っている。しかし元々「リアリティのなさ」がウリなわけで、少々唐突な「反戦」メッセージには違和感も。原田知世はお堅い役人でありながら、垣間見せる可憐な表情がかわいい。 2007/02/27 |