Shadow city



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 このHomepageではLonely Wolfのオリジナル小説を掲載しています。
 シャドウシティ・Tは’05〜’06年にポプラ社主催の作品市場.COMに掲載していたものです。
 シャドウシティ・Uはその続編として執筆を開始し現在に至っています。
 随時アップデートしてゆく予定ですのでよろしくお願いします。

悪魔のささやき〜Who Wants to be Lonely

主な登場人物
 

本編(Vol.1〜Vol.36)

 しとしと小雨の降るはだ寒い夜の街角。
 仕事帰りの女性が一人、家へと向かって歩いていた。
 その背後から一人の男がぴったりとはりつくように歩いていることを彼女も気づいていた。
 やがて、その足取りは除々に早まっていった。
 彼女もそれに気づき足を速めるが、背後から近づく足音はみるみる彼女に迫っていた。
 『怖い !』と感じた次の瞬間、男の太い腕が首に絡みついてきた。
 とっさに叫び声をあげようとするのだが声が出せない。
 『殺される』
 遠のく意識のなかでそんな言葉が頭の中で浮かび上がり、そして掻き消えた。
 あたりに人の気配はなく、薄暗い街灯の明かりだけが遠くにぼんやりと浮かんでいた。
 暗闇の中で二人の吐息だけが白く霞んでいた。
 彼女は必死にもがき抵抗するが、男の力の前にはまったく歯が立たない。
 『このままこの男に殺されてしまうしかないの』

悪魔の化身〜Who Wants to be Lonely

主な登場人物

本編(Vol.37〜Vol.106)

 如月の街角に木枯らしが吹き荒んでいた。
 どんよりと曇った真冬の駅にたった今、一人の女性が降り立った。
 ビジネス・スーツを着こなし、その上に暖かそうなロング・コートを着込んで。
 セミ・ロングの髪を後ろに縛り、背筋を伸ばしてさっそうと歩くその姿はいかにもキャリア・ウーマンといった出で立ちだった。
 人ごみを掻き分けるようにして、彼女は足早に視線の先にそびえる高層ビルへと向っていた。
 朝の通勤ラッシュの人ごみにさえ全く動じる事もなく、ビルの入り口から受付を通り過ぎて行くと、多くの人の波と共にエレベーターへと飲み込まれた。
 十数人は乗り込んでいるであろう満員のエレベーターの中は、妙に物静かで誰一人言葉を発する者もいない。
 密室に閉じ込められたようなこの空間が、人々に無言の威圧感を与えているかのようだった。
 ただひたすら一点を凝視する者、うつむいたままでいる者、キョロキョロとあちこちを見渡す者など様々だが誰一人として言葉を発する者はいない。
 そして、エレベーターが止まるたびに何人かが扉の向こうへと吐き出されながら、密室の空間は徐々に上昇を繰り返していった。
 自分の降りる階が近づいて来ると、彼女は大きく深呼吸をした。
 そして、扉が開くと静かにそこから降り去った。

悪魔のレクイエムTears Are Falling

主な登場人物

本編(Vol.1〜Vol.43)

 車の窓から、行き過ぎる無数の光の列を見送りながら中山恭子は緊張した面持ちでいた。
 『まさか送ってもらえるなんて考えもしなかった、いいえ、本当は心のどこかでそう望んでいた私がいた、多くの女子社員が憧れている部長とたった二人っきりでこの狭い空間にいるという事実が、少しだけ優越感に浸らせてくれている』
 中山恭子は時々伏せ目がちに久岡の顔を窺いながら、ひとときのドライブを楽しんでいた。
 『こうして車を運転している表情もなかなか素敵だな、でも終始仕事の話ばかりだったのは少し残念だったけれど、まぁ、それは仕方ない事かもしれない、部長には奥様がいるんだし・・・でも皆が憧れる気持ちはよく分かる気がする』
 久岡はクールに車を走らせ、中山恭子の住むマンションへと向かっていた。
 時折、どう走ればいいのかを中山恭子に尋ねながら。
 「部長の奥様ってどんな方なんですか」
 さりげなくそう尋ねた。
 「どんなって?」
 「たとえば、誰か女優さんに似ていらっしゃるとか」
 「そうだな、特にそんな風に感じた事はなかった、それにここしばらくはまともに話もしていないからね、忙しくて帰宅は毎日深夜だし、土日にはプロジェクトの打ち合わせで出張が重なっていたから」
 「それじゃ、お休み無しじゃないですか」
 「まぁ、そういう仕事だからね」
 「奥様は寂しく感じてらっしゃるんじゃないですか」
 「そうかもしれないけれど・・・そうじゃないかもしれない」
 「えっ、どうしてですか」
 「そんなに深い意味はないけれど、何となくそう思っただけだよ」
 「・・・」
 中山恭子はただ頷くと、何となく久岡の夫婦仲について考えた。
(Vol.10)より

悪魔の伝説Tears Are Falling


主な登場人物

本編(Vol.44〜Vol.74 現在、執筆中)

 「それは典型的なPTSDの症状ですね」
 「PTSDですか」
 「心的外傷後ストレス障害、ごく普通に生活している人が通常ほとんど起こり得ないような生死が危ぶまれる危機や出来事等に遭遇したり目撃したりすると発病する事があるとされている心の傷のことです、過食、拒食、アルコール中毒症や不安神経症、鬱、パニック障害、フラッシュ・バックなどの症状があって、ひどい場合には自殺を図る事さえあるらしいですね」
 「あの事件は中山さんにとってこの上ない恐怖だったんです、普段は何事にも前向きで明るくはつらつとした責任感の強い娘なのですが・・・」
 その言葉に頷きながら幸田は答えた。
 「実はそういう人こそ発病しやすいんですよ、自分の生死に関わるような悲惨な体験だったにもかかわらず、誰にも頼らないで自らの力だけで解決しようとするために最後には心が自爆してしまう、同じような経験をした人はたくさんいるのに何故自分だけがという思いが働き、それはきっと自分が弱いせいなんだと余計に自分を責めてしまう責任感、それがかえってあだとなってしまうんです、実際、過酷な訓練を積んだ強靭な兵士でさえこの心の傷に悩まされている者も多いと聞きます」
 「そういう分野にもお詳しいんですね」
 「長年戦場を渡り歩いて心の病に悩まされる兵士を数え切れないほど見てきましたから、戦争は人の体だけじゃなく心さえもズタズタにしてしまうんです、異常な緊迫感の中で人は愛国心と憎悪の板ばさみにもがき苦しみながら、まさに身も心もぼろぼろに傷ついて廃人へと突き進んでゆく」
 「肉体を鍛えるより精神を鍛えることの方が遥かに難しい事かもしれませんね、心が病めばいくら体が強靭でも何の意味も無いでしょうから、ところで中山さんにはどのような治療をすればその心の傷を癒せるのでしょうか」
 「現在、PTSDに確実に効果があると言われている療法はEMDRという治療法だけです、それ以外にはさまざまなセラピー療法、投薬療法ではSSRI系の神経系薬やベンゾダイアゼピン系の抗不安薬等の処方があるといわれています、ですがまず彼女にとって一番大切なのはもう貴女は安全なのだというポジティブなメッセージを送ることではないでしょうか」
(Vol.66)より