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関連図書・日本関係(〜戦国)

09/02/21 更新)

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タイトル

戦国大名と天皇 室町幕府の解体と王権の逆襲

著者

今谷 明

出版社

講談社学術文庫 2001年1月発行、2月第2刷

感想等

 戦国期(1493年から1568年(信長上洛))を対象とした天皇と大名権力との関係史論。戦国期における「天皇制没落説」を否定し、国制上に占める天皇の権威は、戦国期を通じて、時期の下るにしたがって巨大化しているという著者の考えが著述されている。治罰綸旨や官位が持つ軍事的効用や大内義興、三好長慶、今川義元、六角義賢、織田信長の上洛の意味など、ゲーマとしても興味深い内容が記述されている。また、信長が征夷大将軍位を望んでいたなど、なかなか興味深い記述もある。群雄伝シリーズが好きな方などは必ず読むべき本である。
2001年3月読了

タイトル

謎とき日本合戦史 日本人はどう戦ってきたか

著者

鈴木眞哉

出版社

講談社現代文庫 2001年9月第1刷

感想等

 筆者の主張はこうである。(以下要約は私による。)
 「日本における戦闘は、古来より弓兵などを中心とした遠戦が中心であり、軍記物などに書かれている刀を振り回してのチャンバラのごとき白兵戦などはほんの例外に過ぎない。にもかかわらず白兵主義という戦術思想が生まれたのは、日露戦争後の陸軍が、故意によるものかどうかは分からないが、白兵主義は日本古来からの伝統であり、日本の特技であるとしたことからである。日本には「白兵主義時代」がかつてあったということは、軍記物の影響があり専門家の間にまで定着しているが、これは誤りである。」

 筆者の言い分がどこまで文献等の資料解析に基づくものかは、現代文庫であるという性質上分からない部分も多い。ただ、筆者が分析している事例(長篠の三段備えや川中島の戦いなど)について言えば、少なくとも日本史に興味のあるゲーマーであれば、軍記物に語られるこれらの事例を「全き事実」とはしていないであろうから、さして珍しい主張であるとは言えない。

 筆者は、古来より矢傷による死傷者が実際は多かったとしきりに述べるのだが、私などには逆に、「もしそれが本当であれば、どうしてそれに対する備え(盾を用いるなど)を十分にしてこなかったのか、何百年もの間、日本人は矢を防ぐということに考えが及ばなかったのか。」という疑問が生じてしまうが、それに対する回答はないことも、一般人を対象としていれば仕方がないことなのだろうか。2001年9月読了。

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タイトル

源平合戦の虚像を剥ぐ 治承・寿永内乱史研究

著者

川合康

出版社

講談社選書メチエ72 1996年第1刷 2000年12月第9刷

感想等

 日本中世史を専門としている著者による戦争オリエンテッドな治承・寿永内乱(源平合戦)の研究書である。基となっているのは、1990年の日本史研究会大会での同氏の報告「治承・寿永の『戦争』と鎌倉幕府」だ。
「盛者必衰の理」に基づく「平家物語史観」や、源平交替を、「武士=在地領主階級を、古代的な貴族政権と荘園制を打破・克服していく政治的・階級的主体ととらえ」、「主要な階級がそれぞれの利害と本質にもとづいて、全国的にしかも公然と行動した古代末期の内乱」と規定する考えを否定し(著者の独自の理論と言うことではなく、このような考え方は定説らしい。)、「現実的・冷静に、治承・寿永内乱期の戦争の実態を復元し、そのうえで、たんに戦乱の被害者にとまらない中世民衆の動向や、内乱の歴史的所産としての鎌倉幕府の成立を、検討」したものである。我々の世代は階級闘争的な捉え方で教えられたような気がするなぁ。堕落した貴族的な平氏に東国の武士源氏が勝利するのは当たり前、みたいな。章立ては以下のとおり。02年読了。

第1章 武士再考
第2章 「弓馬の芸」の実相
第3章 源平の「総力戦」
第4章 飢饉の中の兵粮調達
第5章 鎌倉幕府権力の形成
第6章 奥州合戦 

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タイトル

真説・川中島合戦 封印された戦国最大の白兵戦

著者

三池純正

出版社

洋泉社新書092 2003年8月21日初版

感想等

 甲陽軍鑑などが描く第4回川中島合戦の姿を、各種史料から再構築し、川中島合戦の本当の姿を浮き彫りにしようとするまじめな論文である。実は、著者はこれ以前にも歴史群像第30号において同様の 論文を発表しており、今回はその発展版となっているが、いくつかの点で内容が相違している。両論文を読んでみるとおもしろい。また、歴史群像第63号には、福田誠氏による第4次川中島合戦の論文(?)が掲載されている。福田氏のは基本的に通説に従った記述となっているが、川中島へ至るまでの上杉軍経路について、独自の見解と思われる主張がなされている点が特徴だろう。ただし、どのような史料に基づき、どのような判断をした結果そのような結論に至ったのかについてはまったく触れられておらず、残念な内容となっている。04年9月読了。

  • 妻女山を西条山=若槻山城とし、上杉方が妻女山に布陣したとされているのは、天正10年の上杉景勝の妻女山布陣の事実と謙信の西条山布陣が混同されて伝承された結果とする歴史群像誌論文に対し、本書では、妻女山への布陣はなかったとはしているものの、上杉方の布陣位置についてはまったく検証されていない。
  • 川中島合戦がそもそも善光寺の争奪に起因するものとする本書での主張に対し、字数の制限もあったのか、歴史群像誌論文ではまったく触れられていない(聖地・善光寺という表現は出てくる。)。
  • 戦国最大の激戦とされる第4次川中島合戦は、信繁が戦死したことなどから局地的な激戦はあったかもしれないが基本的には「激戦」ではなかった、とする点は同じ。

目次
第1部 資史料が語る川中島合戦
 1 軍記書が描く定説「川中島合戦」
 2 知られざる上杉系「川中島合戦」の発見
 3 史料から読み解く川中島合戦の実像
第2部 陸の信玄・海の謙信
 1 信玄を悩ます<天変地異>の時代
 2 信玄・謙信の<海の争奪戦>
 3 越後の内紛と謙信の苦悩
第3部 真説・川中島合戦の全貌
 1 聖地・善光寺の争奪戦
 2 信濃守護・信玄vs関東管領・謙信の戦い
 3 最前線の砦・海津城築城
 4 戦国期の川中島の景観を再現する
 5 越後軍<妻女山布陣>への疑問
 6 封印された川中島合戦を推理する
 7 川中島合戦と信玄・謙信の去就

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タイトル

鉄砲隊と騎馬軍団 真説・長篠合戦

著者

鈴木眞哉

出版社

洋泉社新書086 2003年5月21日初版

感想等

 これもいわゆる「常識の非常識」本だ。今回の常識は、長篠合戦における武田騎馬軍団による「騎兵突撃」とそれを迎え撃った織田の「三段撃ち」と「馬防柵」だ。つまり、 本書は、これら三つを否定している。これらの否定のうち、三段撃ちと武田騎馬軍団の否定についてはこれまでも何度も主張されてきたことであり、私も同意するのだが、馬防柵を否定するのは初めて見たと思っていた。とにかく、これら3つの否定が、どのような根拠を基にしてどのように考えた結果の結論であるのかは本書を読んでいただきたい。04年秋読了。

 さて、今回も長篠合戦に関する歴史群像誌の記事は以下のとおりである。福田誠氏が武田騎馬軍団について著した記事(武田騎馬軍団を否定していない。ポニーであっても有用であったと主張していたはずだ。)もあったかと記憶しているが、見つけることができなかった。

  • 第38号:武田勝頼奮戦譜(桐野作人)
  • 第50号:真相 長篠合戦の戦略(河合秀郎)
  • 第54号:戦国の堅城 三河長篠城(樋口隆晴)

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タイトル

戦争I 中世戦争論の現在

著者

編者:小林一岳、則竹雄一  著者については別記

出版社

青木書店 2004年11月25日第1版第1刷

感想等

 本書は「【もの】から見る日本史」シリーズの1冊であり、日本中世の戦争について、武器論、村の武力、城館、流通といった【もの】から考察したものである。学術論文系の本であり、一般読者向けの本ではないといってよい。というより、著者のほとんどは、私のような専門的な知識がない者が本書を読むことを想定していないのだろう。個々の論考についてはいろいろ異論や疑問もあり、また、何を言っているのだろうこの人は?というものもあった(私個人の能力の問題もかなりある。その意味をも含め、一般読者が読むことを想定した文章になっていないという私の評価につながる。)が、なかなか貴重な本であることは間違いはない。読むに値するものと考えている(ということもあり、紹介文が長くなってしまった。)。戦争IIが出版されたら(扱う時代にもよるが)購入するつもりだ。2005年6月読了

  1. 総論 小林一岳、則竹雄一
     日本中世戦争論の現状と課題についてまとめた上で、各論文の位置づけについて述べている。以下に掲げる各論考の位置づけ等 については、すべてここから引用している。
     
  2. 中世の武具と戦闘 近藤好和
     「中世の各時期の戦争・戦闘の形態変化と武器・武具の変化の関連性 ついて述べた論考」である。本論考は、「騎兵と歩兵の中世史」吉川弘文館の要約版と位置づけてよいものであるので、「騎兵と歩兵の中世史」を是非とも読んで欲しい。
     
  3. 一六世紀アジアにおける鉄砲と戦争 関 周一
     「一六世紀のアジア社会における武器としての鉄砲に着目し、その技術の伝来について原材料を含めての生産システムを論じたうえで、壬辰・丁酉倭乱(じんしんていゆうわらん)を契機とする朝鮮王朝への鉄砲の伝播という、興味深い問題を提起した論考である。」
     
  4. 村の武力とその再生産 中澤克昭
     「村の武力論を前提として、村の武力が日常的にどのような形で維持し、再生産されるかを検討した論考」である。
     
  5. 野伏と戦場 飯森富夫
     「南北朝内乱記の野伏に着目して、『太平記』やお伽草子『鴉鷺物語(あろものがたり)』という興味深い史料を通じて、戦場における野伏の実態を明らかにすることを目指した論考である。」
     
  6. 戦争資料から見る戦国大名の軍隊 黒田基樹
     「戦争にかかわって作成された禁制や陣中法度、陣立書といった、いわば「戦争史料」に着目し、足軽を含みこんだ大名の軍隊の実態に迫った論考である。」
     
  7. 中世前期居館の展開と戦争 橋口定志
     「中世前期の武士の居館とされるいわゆる「方形館」を題材として、その戦争・戦闘とのかかわりについて着目し、考古学の発掘調査事例からの検討・考察をおこなったものである。」
     
  8. 城館跡研究からみた戦争と戦場−磨上原(すりあげはら)合戦を事例として− 松岡進
     「戦国末の陸奥における磨上原合戦を題材として、城館と戦闘行動の有機的な連関や、自力による地域防衛を含み込んだ戦場の実態などについて検討した論考である。」
     
  9. 兵粮からみた戦争・戦場 久保健一郎
     「戦争遂行のために欠くことができない兵粮に着目し、兵粮調達と流通・消費の実像から、戦国期の食糧問題に迫った論考である。」
     
  10. 戦争と海の流通 綿貫友子
     「藤木久志が提示した「稼ぎ場」としての戦場論を前提としたうえで、戦争における船の役割や漁民・商人・海賊等の実態など興味深い問題について論じ、戦争と海の流通との関係について考察したものである。」

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タイトル

織田信長 石山本願寺合戦全史 顕如との十年戦争の真実

著者

武田鏡村

出版社

ベスト新書52 2003年1月1日初版第一刷

感想等

 元亀元年(1570)の本願寺挙兵から天正8年(1580)の石山退去までを扱ったものである。日本歴史宗教研究所所長という肩書きを持つ著者によるものであることもあり、「合戦の全貌を本願寺側から克明に活写」した内容となっている(のだそうだ)。寺内町住民の多くが手工業職人・商人・運輸流通業者・芸能民などの、領主支配や旧仏教寺院の支配を受けない、いわゆる「中世の自由民」から構成されていたこと、寺内町に住む人々は寺内特権によって保護されていたこと、門徒の破門や追放、自害や殺害を命じる「生害」といった宗主権を背景とした本願寺による強力な統制力のことなど、あまり触れられることがないと思われることが記載されているのが本書の特徴だろう。また、当然ながら歴史群像誌に比べ詳細な内容となっており、歴史群像誌等によって興味を持った方は本書を読んでみてもいいのではないだろうか。なお、地図類が全くないため、本書を読む場合、下記歴史群像誌に掲載されている図を参照することをお勧めする。関連する歴史群像誌は以下のとおり(このテーマではもっとありそうだが、見つけられなかった)。

  • 第14号:総力特集「鈴木孫一と最強傭兵雑賀衆」(鈴木旭、鈴木眞哉など)
  • 第36号:石山十年戦争(橋場明)
  • 第62号:戦国本願寺(大野信長)

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タイトル

雑兵たちの戦場 中世の傭兵と奴隷狩り

著者

藤木久志

出版社

朝日選書777 2005年6月25日 第1刷

感想等

これまで読んできた戦国時代等を扱った様々な書籍において参考図書として掲げられていた本書をやっと読むことができた。戦国史における藤木氏の研究がどのような位置を占めているのかはっきりとは分からないが、重要な位置にあることは間違いあるまい。是非とも読んでみたいと思っていた。本書は1995年に刊行されたものにその後の研究成果を加筆したものであり、1995年版を読んだ方も読んでみてもいいのではないだろうか。
 
本書には、”農業だけでは食べていけない百姓にとって、戦場は数少ない稼ぎ場だった。農兵分離とは、食えるようになった武士が農業に従事しなくなったことではなく、食えるようになった農民が戦場に出なくなったこと。”などといった、これまでの私の常識を覆す内容が多々記されているわけだが、それらについては本書を是非とも読んで確かめていただきたい。

「戦国の村を行く」及び「飢餓と戦争の戦国を行く」とともに三部作となっているようだ。これらも機会をみて読んでみたいと思っている。05年11月読了。
 
目次
プロローグ
I 濫妨狼藉の世界
 1 戦国の戦場  2 朝鮮侵略の戦場  3 江戸初期の戦場  4 奴隷狩りの系譜
II 戦場の雑兵たち
 1 口減らしの戦場  2 渡り歩く奉公人たち  3 戦場の悪党・海賊・商人
III 戦場の村−村の城
 1 城は民衆の避難所  2 安堵を買う
IV 戦場から都市へ−雑兵たちの行方
 1 浪人停止令  2 「身分法」と人掃令  3 日用停止令  4 悪党停止令
エピローグ−東南アジアの戦場へ

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タイトル

信長の戦争 『信長公記』に見る戦国軍事学

著者

藤本正行

出版社

講談社学術文庫1578 2003年1月10日第1刷 2004年12月1日第5刷

感想等

「長篠での鉄砲三千挺・三段撃ちといういかがわしい話を、史実として書かれる研究者も少なくない」中にあって、良質史料として既に評価を得ている「信長公記」を合戦の史料として活用し、当時の戦いの実相を明らかにしようとしたもの。信長公記各伝本 の書誌学的検討からはじめ、桶狭間、美濃攻め(墨俣一夜城)、姉川、長島、長篠、石山本願寺、そして本能寺について、信長公記を基とした分析が加えられている。信長公記の研究書と言っても差し支えないだろう。 詳しい評を読みたい方は、アマゾンでどうぞ。05年後半(11月以前)読了。

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タイトル

太平記<よみ>の可能性 歴史という物語

著者

兵藤裕己

出版社

講談社学術文庫1726 2005年9月10日第1刷

感想等

 太平記の解説本かしらと思い読み出したのだが、いやはや、完全なる研究書であった。それも、太平記の研究書という位置にとどまるものですらなかった。正直に言って私には少しばかりレベルが高すぎる内容であったが、なかなか興味深い内容ではあった。ただし、ゲームにはほとんど関係がない。太平記の成立過程を読み解く部分、源平交代論などはまだしも理解できるのだが、忠臣蔵、由比正雪、大日本史、国・・・等々と話が進むと、もういかんです。太平記って、そこまでのものなのか? (理解を超えるものに対する単純な反発だね、この反応は。)06年2月読了。  本書はかなり評価を得ている。私のコメントに惑わされぬよう。

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タイトル

刀と首取り

著者

鈴木眞哉

出版社

平凡社新書036 2000年3月21日初版第1刷 2001年5月1日初版第2刷

感想等

本書は上で紹介している「謎解き日本合戦史」と同じ主張を別の形で表したものだ。おなじみの刀でのチャンバラは虚構という主張。今回は、武器としての刀の有用性(日本刀では鎧を切ることができない)を論拠にしているのだが、いつもどおりだがその論拠の証拠が示されていていない。刀はすぐに刃こぼれ等するので、実戦では何振りも用意しておくと読んだことがあるので、これは本当のことだろう。また、 近藤好和氏の説でも、基本的な武器は鑓等であったらしいとされており、基本的な部分では間違いがないだろう。ただ、首取りのために刀を持っていたというのはどうだろうか。少しばかり長すぎるような気がするが。06年03月読了。


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タイトル

軍需物資から見た戦国合戦

著者

盛本昌広著

出版社

洋泉社新書194

感想等

 軍需物資=木材の利用、そしてその確保・生産が、戦国期においてどのように行われていたかをテーマとしたもの。また、利用はメインテーマでなく、そのための資源の確保・生産がメインテーマである (と思われる)ため、工夫の一環なのだろうが、「戦国期における木材資源の確保・生産について」という書名の方が、内容をより正しく伝えることができると思われる。
 また、木材にしろその他の物資にしろ、領主としてその確保に気を配るのは当然であって、これは洋の東西を問わない(西洋においても宮廷領なる領土があったし)ものと私は認識しているのだが、本書ではことさらに領主(メインは北条氏)による資材確保策が重大事のように取り扱われている。ちょっと違和感があった。
 以上のように、戦国合戦という言葉から、その向きのために読もうとするのであれば気をつけた方がよいのだが、いわゆる馬防柵のサイズ(適当に作っているのではなく、サイズをきっちりと指定して命じているんだね)など興味深い内容も含まれており、また、戦国期の社会を知ることに強くはないながらも興味を持つ私としては、それなりに有意義な読書となった。08年7月読了。

信長と十字架

タイトル

信長と十字架 「天下布武」の真実を追う

著者

立花京子著

出版社

集英社新書 2004年1月21日第一刷、2004年3月23日第三刷

感想等

本書はかなり個性的な内容となっている(と思われる)ことを、まずは指摘しておかなければならない。一般的な信長物ではない。 極々簡単に著者の主張をまとめると次のとおりとなる。
  • 信長はイエズス会に代表される南欧勢力の示唆により全国制覇に乗り出したのであり、その過程では南欧勢力からの援助を受けていた。
  • その意味で、信長の全国制覇を、世界的規模で進展していた大植民地化時代の流れの、極東での一つの成果として捉えるべきである。
  • また、七徳の武の行使による天下布武により、いわば”Pax Romana”的な「天下静謐」を目指し、その実行者として信長を選択したのは、足利将軍家と親しく(義輝、義昭の異母兄弟)、南欧勢力ともつながり(初期キリシタンとなった大儒学者清原枝賢(しげかた)が従兄)があり、鎌倉、室町幕府の歴史にも通じた、細川藤孝である。
  • しかし、関白・太政大臣の地位を望み、暦の変更を要求(ヨーロッパでのグレゴリウス暦への変更との関連を指摘)するなど、天下布武の思想からの逸脱が顕著となり、さらに、南欧勢力からの自立を模索し始め ていた。
  • そのため、「イエズス会が信長の抹殺を計画して、朝廷をして明智光秀に信長討伐命令を下すように仕向け、光秀に信長を討たせ、かつ秀吉に光秀を討つように準備させていた 」のである。

新しい資料が出てくる可能性は否定できないわけだが、現在の資料から信長の思惑や本能寺の変の真相などを論証するのは難しいとは思う。そのため、著者のように推理を働かせる余地もあろう。しかしだ、しっかりとした資料の上に推理があるのであればいいが、著者の場合推理だけが先行している感じが否めない。牽強付会ではないか。

うつけ信長を操り日本征服を狙うイエズス会。イエズス会のたくらみを知りつつ、それを利用しながら朝廷復権に向けて暗躍する細川藤孝。そして、そんな境遇から逃れようとする信長。仮想戦記にはいいかしらん。08年8月読了。

タイトル

偽書『武功夜話』の研究

著者

藤本正行・鈴木真哉著

出版社

洋泉社新書 2002年4月20日初版発行

感想等

伊勢湾台風で被災した旧家の土蔵から出てきた古文書を編纂、現代語訳したものとされる「武功夜話」と総称される文書が偽書であることを論じたもの (元の古文書は通常「前野文書」と言われている)。両氏とも様々な角度から偽書であることを論証しているが、その論拠の主なものは以下のとおりである。
・戦国期らしくない文体、用語、表現が散見する(ヒソヒソ話なんてものもあるようで、笑ってしまった)
・戦国期の常識を知らない人が書いている(価値観、暦の誤り、風俗等)
・良質史料で裏付けがとれない記述が多い(これは偽書の証拠とはいえないのでは?)
・良質史料と相違する記述が多い(こちらは偽書の証拠となろう)
本書で展開される論証が学術的なものかどうかは別として(少し力が入りすぎていると思われる部分もある)、いわゆる「武功夜話」が偽書であることはほぼ確実と言っていいだろうと思わせる内容であった。
 
また、「武功夜話」が偽書であるか否かも大きな問題ではあるが、より大きな問題は、遠藤周作氏などの作家、朝日新聞やNHKといったマスコミ、そして大学教授等の学者が、どうやらまっとうな検証をせずに「武功夜話」を本物であるとして、なおかつその積極的な喧伝者となったことであろう。特に問題はマスコミであり、またそれに協力する作家達だ と思う。
 
史実と確認されていることばかりでは夢がないのだから、作者の想像・創造として扱う分には問題はないと思う。しかし、それを史実だと言い切るのはいかがなものだろう。また、フィクションだと言及しないとそれが史実になるというのは小説などの世界ではよくある話ではある。全国行脚する水戸黄門(してたら、ごめんなさい)が最たる例だろうか。もちろん、読者が勝手に史実にしているだけだとも言えるわけだが、それでも注意は必要だ。
 
「武功夜話」の元となった「前野文書」の原本が公開されていないことがすべての元凶である。「武功夜話」に嘘が多いとしても、「前野文書」は本物なのかもしれない。新しい発見があるかもしれない。「前野文書」が公開され、しっかりとした検証を受けてほしいところだ。

 

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