関連図書・ナポレオニック・その他

(08/10/12 更新)

タイトル

公爵と皇帝、原題 The Duke and The Emperor

著者

ジョン・ストローソン、城山三郎訳

出版社

新潮社、1998/10/30発行

感想等

ウェリントンのインド時代などの様子やインドでの戦いについて、簡単ではあるがふれられており、十分に有意義なものであった。恥ずかしながら、サー・アーサー・ウェルズリーがタラヴェラ・デ・ラ・レイナでの戦いでの戦功により、ウェリントン子爵として爵位を授けられたことなど、初めて知ったことが多かった。

帯には「二人の英雄から人生のヒントを学べ!」などとかかれているが、戦場描写もあり、そういった目で見ても楽しめる内容となっている。

思えば、この本は生協のイベントスペースでの古本まつりで見つけたんだよな。非常に、ラッキー。

2000年読了

タイトル

ドゴールとナポレオン その政戦略・リーダーシップ・能力開発の研究

著者

前川 清(元防衛庁防衛研究所副所長)

出版社

PHP研究所 1989:発行

感想等

著者はフランス陸軍大学・統合参謀大学へ留学するなどした人物で、ドゴールの研究が専門のようだ。どうもナポレオンのことは詳しくはない(本を売る上で、ナポレオンについて紙面を割くことを避けたのかもしれない。)ようで、通り一遍のことのみの記述である。唯一、「ナポレオンの知恵言葉」という章のみが、若干なりとも読む価値があろうか。ナポレオンの名句を一つ紹介する。「戦術の要訣は、「どの場所に、いかなる兵力を、いつ、投入するか」を判断するにある。」
2000年読了

タイトル

女騎兵の手記

著者

N・A・ドゥーロワ 田辺佐保子訳

出版社

新書館 1990:発行

感想等

幼少時からの馬好きなどが高じて、女性の身でありながら対仏戦争に参加したコサック騎兵、アレクサンドル・アレクサンドロフによる自叙伝。んな馬鹿な、などとは言わないでほしい。ロシアでは絵本が出ているほどポピュラーなお話らしい。

軍人である父と暮らすことで軍隊とともにいることが当たり前となった彼女は、家族の下から離れ、騎兵部隊に入隊。幾多の困難を乗り越え、また、アレキサンドル皇帝陛下の庇護もあり、無事除隊するまでを描く。ボロジノにも参戦したんだって、すごいね。

入隊は1806年9月、1816年3月二等大尉として除隊。けど、戦場では全然活躍していない。

2000年読了

タイトル

セント・ヘレナ日記抄

著者

ラス・カーズ 小宮正弘訳

出版社

潮出版社 1999:発行

感想等

セント・ヘレナ島に随行したラス・カーズが書き表した日記の抄訳である。セント・ヘレナでのナポレオンの日常や、思い出話など数々のエピソードに満ちた内容となっている。ただ、私の記憶では、ラス・カーズの日記については、その内容の信憑性に問題があったと記憶している。ナポレオンの死後2年で出版されたこともあり、潤色されたものであるとの記述をどこかでみた気がするのだ。

いずれにしても、この本の場合、ナポレオン好きの方以外には何ら面白みもないものであろう。

2001年3月読了。

タイトル

ナポレオンの生涯 ヨーロッパをわが手に

著者

ティエリー・レンツ著 遠藤ゆかり訳 福井憲彦監修

出版社

創元社 知の再発見双書81

感想等

 ナポレオンの一生を概説した本である。本書の特徴は、その本文にあるのではない。本文自体はそれほど価値があるものではなく、ごく一般的と思われる内容が記述されているのみである。私自身、全文を読んだかどうか記憶にないほどだ。本書の特徴は、その豊富なカラー図版にある。有名な図版からそうではないものまで、数多くの図版が使用されている。これを見るためだけにでも、本書を購入すべきだろう。2000年読了。

タイトル

ナポレオン年代記

著者

J.P.ベルト著 瓜生洋一、新倉修、長谷川光一、松嶌明男、横山謙一訳

出版社

日本評論社 2001年4月第1刷

感想等

 これもナポレオンの一生を概説した本ではある。対象とするのは1799から1815。本書の特徴は、日付順に記載されていることにある。例えば、1800年のページには、

  • 6月15日:メラスはミンチオMincio川以西のイタリア領をボナパルトに引き渡す協約に署名した。

  • 6月20日:パリで、短期間ながら、フランス軍が敗北しボナパルトが死んだとの噂が流れた。政治家たちは、誰もが既にボナパルトの後継者を準備していた。フーシェは、以前からボナパルトに対する謀議を重ねていたベルナドットBernaotteを候補者としていたし、一方ラファイエットは今回も、国民の命運を担うのは自分自身だと思っていた。

といった具合に記述されている。記述されている内容は、軍事、政治、経済などと広く、なぜか医学界の動きなども記述されている。著者はフランス革命を専門とするパリ第一大学の教授なのだそうだ。なお、巻末に人名小辞典もついていて、何かと便利な本である。是非購入されたい。

 なお、「フランス革命年代記」という本も同社から出版されているので、こちらも合わせて読めばなおいいのではないだろうか。

タイトル

帝都ウィーンと列国会議

著者

幅 健志

出版社

講談社学術文庫 2000年2月第1刷

感想等

 帯には、「密偵たちが目撃した権謀と狂騒の都」などと書かれているが、内容はいたってまともなものである。ウィーン会議における主要なテーマ(ポーランド、ザクセン問題等)を中心に、各種エピソードを交え、非常に内容の濃いものとなっている。私のような基礎知識のないものには、この内容の濃さが、逆に徒となっているとも言える。当時の貴族制度や地理的な知識がない(ミュンヘン政府がバイエルン王国を指すことすら、地図を見てやっと分かったのだ。)私にとっては、なかなか読み応えがあるものだった。ハプスブルク家や神聖ローマ帝国に関する基礎知識も必要だろう。とはいえ、ナポレオンの登場(と言うよりフランス革命か?)がヨーロッパ世界に与えた影響について知るためには、是非とも読んでおきたい内容であると考える。

 逸話を一つ本書より紹介する。
 近年、地方都市における地域振興策の一つとして、コンベンションの誘致というのが取りざたされている。ウィーンは地方都市ではないが、当初はウィーンもかなりの好景気となったらしい。ただし、フランスから取り返したロンバルディア地方においたイタリア駐留軍が非常な金食い虫だったらしく、1815年の軍事費は2億4千万グルデンで1805年のそれを若干下回るに過ぎなかったようだ。このためもあり、1814年秋口に200グルデン「ウィーン兌換券」=100グルデン銀貨という相場が、15年3月には、330グルデン兌換券=100グルデン銀貨と1/3以下になり、かなりのインフレになったらしい。
 異常すぎる貨幣価値変動に対して、オーストリア官警は、自国の紙幣乱発を棚に上げて、他国の謀略ではないかとの疑いを持ち、ペテルブルクの銀行家を通じたロシア皇帝の陰謀ではないかとまで疑ったようだ。ことの真相は分からないが、経済戦略が敵国の攪乱に威力を発揮するという認識をこの時代の人々が持っていたことはびっくりである。

タイトル

ナポレオンの戦争

著者

志垣嘉夫編、志垣嘉夫、長谷川イザベル、古賀秀男、立石博高、高田和夫、阪口修平、加瀬俊一著

出版社

講談社 世界の戦争7 昭和59年第1刷

感想等

 ナポレオニックに興味がある人向けに書かれた本ではないため、広く浅くといった感じで書かれている。ただし、これを読んで、ごく当たり前のことに改めて気づき、ある意味で愕然としたので、それを紹介する。アウステルリッツの戦いに関する章からの抜粋である。

 ナポレオン軍は数においておとっているとはいえ、少壮気鋭の者ばかりで士気盛んであった。このときナポレオン36歳、ミュラ38歳、スルト、ランヌは36歳、ダブー35歳、最年長のベルナドットでさえ41歳であった。

 驚くほかない。

タイトル

NAPOLEON JOURNAL

著者

An INTRODUCTION to the AGE of NAPOLEON 

出版社

NUMBER 17

感想等

 amazon.com の送料無料につられて購入した洋書の一つ。アメリカではこんな雑誌が出ているんだね。商売になっているのかなぁ? 第17号の特集記事は、上記著者欄に記載しているが、その内容はナポレオン年代記である。

 定期購読をしてみようかなと考えてしまったが、読めるとは思えないし、今回の特集が年代記ということもあって、内容の評価をすることができないので、もう一冊くらい買ってみてから考えてみようと思っている。なお、この雑誌は、季刊のようだ。

 さて、最後に気付いたことを。

  • ナポレオニックの絵を描いている画家が結構いると言うことに驚いた。
    John Pomeroy  Keith Rocco  Ray Rubinなど。$100〜$200くらいかな。これも1枚くらいは欲しいな。
  • アメリカのコスプレヤーは気合いが入っている。軍服とか売ってるんだろうね。
  • Contributors に Ed Wimble が名を連ねている。
  • ゲームについては、La Bataille de Lutzenの広告が載っているのみである。

タイトル

ナポレオン・ミステリー

著者

倉田保雄

出版社

文春新書 平成13年8月第一刷

感想等

「パリに眠る遺体は偽物?」というコピーに引かれ、内容を確かめずに購入したのだが、内容に偽りありである。遺体すり替えに関することなど、20ページほどしかないのだ。外は、ナポレオンに関する雑事を記載しているだけで、特に読む必要のない本である。「ナポレオンの謎は解けた」(ルネ・モーリ/コンデ・モントロン共著)などの本の要約が載っているため、本編を読まずにその内容を知ることができるという点が本書の唯一の利点であろうか。なお、上段で紹介している「公爵と皇帝」の原本の表紙写真が載っているのだが、これがすごくダサイデザインなのが分かり、個人的には面白かったのだが、こんなことは私以外には関係のないことでしょうね。ゲーマーが読むまでもない本だ。2001年9月読了。

タイトル

囚人部隊誕生 原題:BONAPARTE'S SON

著者

Richard Howard リチャード・ハワード 佐和 誠訳

出版社

ハヤカワ文庫 2001年4月発行

感想等

本書は、ナポレオニックに興味をもつ作家が発表した小説である。著者は、ホラー作家として活躍しているらしく、ハヤカワ文庫にもなっているとのこと。つまり、小説家としての技量はそれなりにあると考えて良さそうだ。小説としても、私にとっては面白く、奇想天外・荒唐無稽な架空戦記物を読むよりはずっといいかなと感じた。また、当時の軍隊の実情も分かり(小説であるという点で割り引く必要はあるが。)、その意味でもいいんじゃないかな、あれ?と思うこともあったことは事実だけど。

兵員不足に悩むフランスは、犯罪者をも兵士として徴用することとなり、元貴族のローザール(中心人物)外の囚人たちを竜騎兵に鍛え上げた。彼らは、ボナパルト将軍麾下、イタリア方面での戦闘に参加することとなり・・・。という具合に話は進むことになる。日本では既に第2作が訳出され、出版されているはずだが、イギリスでは第4作まで出版されているらしい。とりあえず、第2作を買い求めてみようとは思った。01年10月読了。

(02/03/26追加)
第2作を昨年読み終えたことを報告しておく。激戦!エジプト遠征だ。第3作が日本で出版されたとして読むかどうかは何とも言えない。

タイトル

メッテルニヒの回想録

著者

クレメンス・L・W・メッテルニヒ著、安斎和雄監訳、安藤俊次・貴田晃・菅原猛共訳

出版社

恒文社

感想等

あのメッテルニヒの自伝の翻訳であり、メッテルニヒが生前著したものを死後20年目に息子のメッテルニヒが整理し、出版したもの。第8巻からなる大部のものだったようだが、そのうち第1巻の大部分を訳出している。なお、訳出していない部分は、報告書や書簡、メモをまとめたものとのことである。(このうち書簡については、編者による改竄が結構あるとのこと。)

この作品に流れている基本的な基調は、保守主義、正統主義だ。まさにメッテルニヒと言えよう。また、オーストリアの正当化、オーストリアへの賛辞と、らしいと言えばらしい内容となっている。全部が全部正しいことが書いているわけではないはずだが、ナポレオンと直接交渉を持ったメッテルニヒならではのエピソードなど、興味深い内容もある。本書に収められているナポレオン評(1820年にメッテルニヒが著したもの)では、メッテルニヒは存外ナポレオンを評価しており、驚いた(もちろん、手放しに賞賛するようなことはないが。)。

メッテルニヒが書いているということもあり、戦史として読むべき内容ではないが、この時代の重要な一面を知ることにはなり、ナポレオニックゲーマーは読んだ方がいいだろう。価格も3900円とそれほど高いものではない。02年3月読了。

後日対応

タイトル

アレクサンドル一世時代史の研究

著者 山本俊郎
出版社 早稲田大学出版部 1987年3月31日 第1刷
感想等

 出版当時早稲田大学の教授をしていた著者の論文集である。内容は大きく4つに分かれており、第1部内政、第2部外政、第3部皇位継承問題、第4部アレクサンドル一世の周辺となっている。
  内政については、秘密委員会(秘密警察的なものではない)や元老院など、国内の統治機構に関する考察となっており、それ自体は面白いものではなかったが、優柔不断、偽善者とされることが多いアレクサンドル一世について、著者は、アレクサンドル一世が皇太子時代から愛好した格言「10回仮縫いして1着の服を作れ」を例にして、その芯の強さ、独自の信念というこれまで(の私の認識)とは違った面を見せてくれた。外政面ではポーランド問題及び南スラブ族問題が取り上げられている。アレクサンドル一世がポーランド王国再興を強く押し進めた理由が考察されており、面白く読ませてもらった。このほか、皇位継承問題ではコンスタンティン大公の皇位継承権放棄問題が考察され、第4部ではトゥルゲーネフやコフルといった同時代人の伝記となっている。
 私が期待した内容ではなく、ほとんどの内容については興味のないものであったが、ポーランド問題など興味深いものもあり、読んで良かったとは思っている。03年4月読了。  

後日対応

タイトル ナポレオン
著者 鶴見祐輔
出版社 潮出版社 昭和44年11月初版 平成5年8月10日 18刷
感想等

 「本書は、昭和6年発行の大日本講談社版を底本として、現代表記に 改めたもの」で、「本文、見出しとも、難解は語句などは改めたが、なるべく、底本の流麗な文体を生かすように努めた」ものだ。アマゾンで調べてみたところ、2000年に改版されているようだ。いまだ本書は現役ということになるのだが、なぜこれが売れるのか、少しばかり疑問だ。

 本書で描かれるナポレオンは徹頭徹尾、英雄である。「カーライルの英雄崇拝論的気持ちに支配されたくなった」、「これでもかと読者に賞賛を押し売りする伝記ぐらい、読者に不快な感を与えるものない」と記す著者ではあるが、いかんせん結果が伴っていないと言わざるを得ない。エジプトで部下を見捨てたこともまったく記載されていないし、ロシアからの脱出については「 彼はついに意を決して、全軍の指揮をミュラーに託し、ダルーとコーラーンクールをともなって、みずから秘書のレーヌバールの名をもちい、橇に投じて白雪のなかをまっしぐらにパリへ!」と書かれているのみだ。しかし、これも仕方ないであろう。何せこれが出版されたのは昭和6年なのだから。「いまの日本は、人口過剰と資本主義経済の行き詰まりと、世界に瀰漫する民族間の不平等なる機会分配とのために、深刻なる不景気と意気消沈との中にあがいている」、「われわれの英雄的努力によって、われわれは輝ける日本をつくりあげなければならないのだ」、「王政維新も、フランス革命も、米国独立戦争も、かかる時代であったのだ。『前進!』われわれの生きる道はただ前にある。われわれは勇ましく進んで、『英雄の国日本』をくりあげなければならない」という言葉こそ、この時代を表しているのではなかろうか。

 「地名、人名は、一部をのぞいてなるべく底本の呼称にしたがった」と編集部からの注記があるのだが、本書では固有名詞の表記が統一されていない。最近では、現地での発音どおりの表記が一般的であるように思われる。つまり、フレデリック大王ではなく、フリードリッヒ大王と表記するのが一般的だろう。もちろん、フレデリック大王と標記することに何ら問題はない。しかし、本書では、フレデリック大王と表記され、しばらくすると「フリードリッヒ」となり、最後にはまた「フレデリック」になるのだ。また、オーストリアのカール大公については、カール大公→カルル大公→チャールズ大公となっている(さすがにシャルルというのは無かった。)。つまり、表記が一貫していないのみならず、その変移すら規則性がないのだ。表記は統一してほしいところだ。何とも不思議な本だ。

 ナポレオンの伝記であればもっとよいものがあるし、これをナポレオンの伝記として読む必要はなかろう。03年6月読了。

後日対応

タイトル ナポレオン・ボナパルト
著者 山上正太郎
出版社 社会思想社 1994年4月30日 初版第1刷発行
感想等

 真っ当なナポレオンの伝記だ。ナポレオンびいきに過ぎることもなく、単に批判するのみというものでもない。ナポレオンという時代を見るには十分な記述内容と言えると思う。また、単に歴史上の出来事を羅列するだけでなく、それが持つ意義なども書かれていて、とてもいいのではないだろうか(普通のことか)。最近はこういう真っ正面からの伝記を読んでいないので、本書の特徴が何であるのか分からないが、ブリュメールのクーデターに関する記述が10頁もあるのは珍しいのでは?いずれにしても、ひととおりナポレオンの生涯を追ってみたいという方にはお勧めだろう。03年8月読了。

後日対応

タイトル 一従軍兵士の手記 ドイツ人の見たフランス革命
著者 フリードリヒ・クリスティアン・ラウクハルト著、上西川原 章訳
出版社 白水社 1992年12月25日発行
感想等

 本書は、1796-97に出版された「フランス遠征中の出来事、見聞及び覚え書」(3巻)の約2/3の抄訳であり、その内容は、「プロイセン軍の一兵士としてフランス侵攻に従軍した元大学講師が、密命を受けフランス側に潜入し、脱走兵の名目で各地を転々、目撃・体験した対仏戦争の悲惨と革命下のフランスの実態を語る興味つきない手記、貴重な歴史の証言」だ。密命(知人であるフランス軍指揮官を説得し、ランダウ要塞を開城させること)を、こともあろうに皇太子から受けることなど、本書の信憑性を疑わせる(私の個人的な見解である。)内容もあり、どこまでが本当で、どこからが脚色なのかはっきりしないものの、当時の様子を知る一方策として本書を選択肢の中にいれておいてよいと思われる。文学の分野では本書は全く評価されていないようだが、文化・風俗史ではそれなりに注目すべき資料として扱われているようだ。03年11月読了。

タイトル ナポレオン
著者 ポール・ジョンソン著、富山芳子訳
出版社 岩波書店 ペンギン評伝双書 2003年3月28日 第1刷
感想等

 「いやぁ、これはすごい」というのが読後感。何がすごいって、完全な反ナポレオンの立場で書かれているのだ。最期の最期までナポレオンとは書かず、ボナパルトと記述しているほどだ。鶴見氏の著作の正反対といってよい。両書を、なんの予備知識もなく読んでしまった読者は、相当に混乱するだろう。相反する立場から書かれた本を読み比べることは意義あることと考えているので、その意味ではこの本を読んでみてもいいかもしれない。ただ、このように偏向した内容のものがペンギン評伝双書として出版されるというのは、影響が大きすぎるような気がするのだが、どうだろう。04年5月読了。

後日対応

タイトル 悪の天才 タレイラン
著者 長塚隆二
出版社 読売新聞社 1990年2月12日 第一刷
感想等

 タレイランの一生をざっと眺め、その人となりを知るには十分な内容となっており、おすすめだ。それにしても、こうも同時代人から悪し様に言われる人物とは、本当のところ、一体全体どんな人物だったのだろう。不思議でならない。また、 ウィーン会議での活躍(敗戦国フランスとしては、各国の思惑もあったものの、かなり上出来の外交戦だったのではなかろうか)は別として、ナポレオン時代の外相として はそれほどの業績を上げていないように思われるのだが、なぜナポレオンはタレイランをあれほどまでに必要としたのだろう。ほかにも人物がいそうなものだが。本書を読んで、いろいろと疑問が生じた。 オリユーの著作は高いが・・・。04年7月読了。

タイトル アレクサンドル一世 ナポレオンを敗走させた男
著者 アンリ・トロワイヤ 工藤庸子訳
出版社 中公文庫 2003年12月20日 諸版発行
感想等

 以前読んだ日本の研究者の論文とは違い、私の知っている(より一般的だと思われる)アレクサンドル1世の姿がここにはあった。何事も決断しない優柔不断な(処世術としての不決断)彼は、自身の神聖さ、絶対性に気づき、何事も己の考えで進もうとする(進まないことも彼の考えである)わけだが、その理由は何だったのかを考えると、やはりナポレオン戦争での勝利ではなかったか、と考える。

 ピョートル大帝の時代以来、ロシア人(ここにはいわゆる庶民は含まれていない。そのような社会ではなかったのだから。)はフランスを見て生活をしてきた。ロシア語のような野蛮な言葉は使用されず、すべてがフランス語であった。本書の中でもトロワイヤは盛んに「フランス語で書かれた手紙」、「フランス語で話す」という表現を使う。すべてのロシア人がフランス語で話し、フランス語で書いていたのだ。また、自由思想を持つラアルプが家庭教師であったことも影響があろう。このような中で育った人間が見たのは、思想としては共感できる(ロシアの為政者となった彼は否定する側になるが。)自由主義を奉じ、その思想を広く世界へ広めようとするフランスであり、(形を変えてしまっているが)ナポレオンだったのではないか。(エルフルトのころから既にナポレオンを嫌っていたとされてはいるが)軍事的天才、常勝のナポレオンを打ちのめしたときに、彼の胸に去来したものがなんであったのかを考えるとき、アレクサンドル1世の変質の理由の一端を見ることができるような気がする。04年9月読了。


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自費出版本ですが人気があるようで、増刷したそうです。でも、部数は少ないので、お求めはお早めに

タイトル ナポレオンの元帥たち:栄光を追い求めた26人
著者 R・F・デルダフィールド著 乾野実歩訳
出版社 牧歌社 2008年7月14日 初版第1刷発行
感想等

ネイ元帥というサイトを運営されている乾野氏による自費出版本。イギリス、アメリカでは何度も版を重ねるナポレオニックファン必携本とのことだが、確かに読んでいて面白いものとなっている。
帝国元帥26人のエピソードをちりばめながら、バスティーユ襲撃からナポレオンの死までという大まかな流れが書かれているのだが、ナポレオンを中心とした書は日本であってもそれなりの数があるものの、こうしたナポレオンの周りの人間たちを扱ったものは数も少なく(実質的には無いかも)、各元帥の人となり(実際はどうあれ、どう見られているのか)を知ることができ、有用だと思う。ナポレオン戦争に興味があって様々本を読んだり、ゲームをしてきた私にとっても、意外な人物が高評価だったりしてなかなか興味深く読むことができた。
また、ナポレオン戦争というものを知らない人たちにとっても、個々の会戦の経過などよりはずっとわかりやすく、ナポレオン戦争の経過を大きく捉えることが可能であり、最初に手に取るにはいいかもしれない。ただ、元帥たちに興味を持っても、さすがに日本では元帥個人を扱った本がなく、この先の一歩を踏み出すことができないのが残念だ。(個人的には、ダヴーを扱った本(Iron Dukeだったかな)を読んでみたいのだが、とても私の語学力では絶対に無理。)ここはひとつ、乾野氏にもう一肌脱いでいただき、よりナポレオン戦争色が濃そうな「マルボの回想録」の訳出を是非ともお願いしたい。ナポレオニックゲーマーの増加をきたいしつつ、2008年08月読了。


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タイトル クラウゼヴィッツのナポレオン戦争従軍記
著者 クラウゼヴィッツ著 金森誠也訳
出版社 ビイング・ネット・プレス社 2008年7月14日第1刷発行
感想等 クラウゼヴィッツの論文等の翻訳であり、出典は以下のとおりである。このようなものが出版される時代が来るとは! それも乾野氏の翻訳本と同じ日ではないか! 2008年9月読了。
  • 第1章 イエナ・アウエルシュテットの戦い
    >>1806年10月の大戦争についての歴史的書簡
  • 第2章 ナポレオンのロシア遠征
    >>1812年のロシアにおける戦い(論文)
  • 第3章 名将シャルンホルスト論
    >>シャルンホルスト将軍の生活と性格(論文)
  • 第4章 ワーテルローの戦い前後
    >>妻への手紙

第1〜3章はクラウゼヴィッツ戦記選集(1981ベルリン)から、第4章はクラウゼヴィッツの妻とグナイゼナウへの書簡集(1953ベルリン)からとったものだそうだ。

第1章はイエナ・アウエルシュテットの戦いの状況、そして敗因を書簡の形で発表したもののようだ。地図がなければ部隊の位置関係が理解できないだろうから、イエナ・アウエルシュテットの戦いを解説した資料を手元において読んだ方がいいだろう。ホーエンローエがかなり厳しく批判されている。
 
第2章はロシア側の軍使としてヨルクとの停戦交渉を行った経緯等が期されている。停戦交渉部分もなかなか興味深いところもあるが、ナポレオンのロシア遠征失敗の理由が分析されている点が重要かと思う。モスクワに20万の兵士で腰を据えるべきだったというのが彼の意見である。
 
第3章は、クラウゼヴィッツが心酔するシャルンホルストに関する論文である。この章は、部分的に非常に難解であった。この時代の文章記述法がこのようなものだったのかもしれないが、また寝る前の活動が鈍った頭で読んだのが悪かったのかもしれないが、理解するのに苦労する部分があったことを認めなければならない。なお、この章の主題はシャルンホルスト万歳である(笑。
 
第4章はワーテルロー前後における妻への書簡である。戦闘に関する記述は少ないものの、ワーテルロー後の様子も語られており、その意味においてとても興味深い内容となっている。