◎英和辞典を買おう(2007年年末篇)
なかなか、英和辞典を良し悪しを比較したようなページがないので、「英和辞典を買おう」と名づけて、自分で比較してみようと思い立ちました。
新英和中辞典・第4版(四訂版・1977 年)の約30年の愛用者なので、小学館のプログレッシブの波(初版1980年(「小学館英和中辞典」)も、第2版1987年)、大修館のジーニアスの波(初版1988年、改訂版1994年、第3版2001年)も、最近のコーパスの波(ウィズダム第2版・2006年、ロングマン英和・2007年)も、一切知らないような状態です。そんなような真っ白な状態で、比較してみました。
とりあえず、古いものから新しいものへ、9点を選択してみました。それぞれにつき、まず、基本情報を記載します。
○プログレッシブ英和中辞典・小学館・第4版・2002年・3200円(3360円)
1800+4600+8100=約14500語
収録項目11万7千語(見出し語数・記載なし)
コーパスではない
○アドバンストフェイバリット英和辞典・東京書籍・2002年・3100円(3255円)
1100+2000+5000=約8100語
見出し語(収録語)8万6千、成句14000、合計の収録語数10万語
コーパスではない
○新英和中辞典・第7版・研究社・2003年・3200円(3360円)
2000+5000+8000=約15000語
見出し語(収録語)10万語超
コーパスではない
○レクシス英和辞典・旺文社・2005年・3200円(3360円)
1300+1900+6000+1700=約10900語
総項目数9万8千(成句・句動詞3万、用例8万)(見出し語数・記載なし)
コーパスではない(一部コーパス?)・プラネットボード(70項目)が特長(ネイティブ100人に聞きました)
○ルミナス英和辞典・第2版・研究社・2005年・3200円(3360円)
2000+5000+8000=約15000語
収録語句10万(見出し語数・記載なし)
コーパス(一部。コーパス・キーワード・21項目)
○ウィズダム英和辞典・第2版・三省堂・2006年・3300円(3465円)
900+2700+3800+8000=約15400語
見出し語(収録語)58000、収録項目9万2千
コーパス
○ジーニアス英和辞典・第4版・大修館・2007年・3300円(3465円)
1150+3100+5300=約9550語
収録語句96000(見出し語数・記載なし)
コーパス
○ロングマン英和辞典・桐原書店・2007年・3300円(3465円)
学習用単語の表示なし
収録語句102000、例文83000(見出し語数・記載なし)
コーパス
○アンカーコズミカ英和辞典・学研・2008年・3300円(3465円)
1300+3500+4500+7000=約16300語
収録項目90000項目(熟語・連語を含む)(見出し語数・記載なし)
コーパス
大辞典またはそれに類するものは除外しました。また、明らかに高校生向きのもの(例えば、ライトハウスやスーパー・アンカーなど)も除外しました。高校生向きであってもいい辞書はあると思うのですが、社会人が買うものとしては、適切ではないだろうという趣旨です。
(1)評価項目
まず、英和辞典の良し悪しを何で判断するか、ですが、一般的には、次のようなものが考えられます。
1.情報量(収録語数、収録例文数、収録熟語(連語・語句)数)
2.正確な内容(訳その他)、適切な例文
3.動詞、名詞、形容詞などにおける文型などの表示、名詞のU・C表示、前置詞との結びつきなどの説明、語法・文法解説、類似語の使い分け
4.「一口メモ」「語法説明」といった囲み記事・コラム的な内容(特に、日本人が気づかないような、基本的なポイント、英米の習慣なども含む)
5.学習用単語の表示(合計でどの程度必要なのか? 例えば、12000語から15000語か?)
以下、このあたりをベースに、各論を展開します。
(2)目的とレベル
英和辞典を使う目的によって、評価が大きく分かれると思います。単に英語を読むだけ? それとも、翻訳? むしろ、会話? それとも、大学・TOEIC・TOEFL・英検の受験? 手紙(E-mail)などビジネス文書を書く? 留学のときに持っていく? 英語で小説でも書く? これにより、必要となる辞書も変わってくるでしょう。
レベルはどうしましょうか? 大学受験レベルを超えるものとしましょう。しかも、英語を読むだけではなく、書くことも多い、というか、書くことの方が多い、という前提で。
(3)比較方法
ネット上の情報(例えば、Amazonにおける「カスタマーレビュー」)を見ても、いろいろなご意見があり、一概に優劣をつけることが困難であることがわかります。抽象的なコメントばかりではなく、具体的に、単語や例文を挙げて、ここが優れている、ここがいい、と書いておられる方もありますが、それは、その方にとって偶然にも、その(それらの)点が「壷にはまった」だけかもしれません。自分には、あまり関係ない可能性もあります。間違いなくいえるのは、例えば10万語収録されている辞書を検討するのに、数語から十数語の記載を見て(比較して)結論を出すということには大きな危険があるということです。結局、1つの辞書に頼り切るということ自体に無理があるという、悲観的な結論に達せざるを得ません。
悪い例を挙げます。例えば、「categorically」という副詞があります。意味は「絶対に」というようなものですが、それほど一般的な語ではなく、「Categorically yes.」とか「Categorically no.」とか「He categorically denied the rumor.」と「deny」と一緒に使われるとか、使用される場面は限定的です。したがって、「categorically」を使って英語を書く場合には、英和辞典にこのような「使用される場面」がわかるような例文が出ていることが重要になってくるわけです。調べてみますと、「categorically」については、上記の辞典の中では、「プログレッシブ英和中辞典」と「ジーニアス英和辞典」と「ルミナス英和辞典」にしか例文が出ていません(残りの、アドバンスト・フェイバリット、アンカーコズミカ、ロングマン、レクシス、ウィズダム、研究社・英和中辞典には例文はありません)。このことのみから、この3つの英和辞典が他の英和辞典よりもすぐれているという結論を出せるでしょうか? 出せないと思います。その結論はあまりにも性急です。ちなみに、持っていながら、まったく愛用していない、LongmanのDictionary of Contemporary English (New Edition, 1987)には、例文が出ています。(なお、OxfordのOALDCE (Third edition, revised and updated, 1980)にも、研究社・新英和中辞典・第4版にも出ていません)
以上から、なるべく、個別の単語・単語の記載だけにとらわれずに、比較していきたいと思います。
以下、各比較項目について、考えていきます。
(4)収録語数・情報量
収録語数ですが、「書く」ことを考えると、10万語も必要か、という気がします。そんなに多くの語を使いこなせますか? 例文もなしで? 逆に「読む」場合には、10万語で足りますか? 収録語が多い辞書が必要であれば、リーダーズ英和辞典など、もっと収録語が多い辞書があります。結局、10万語というのは、中途半端ではないかという気もします。
また、「10万語」レベルの辞典と「6万語」レベルの辞典を比べることは、無理がありますので、今回は、その観点からも、収録項目(または見出し語)が10万程度のものに絞りました。
なお、収録語数が他の辞書より多くても、本のページ数が増えなければ(値段が高くならなければ)、文字が小さくなるか、例文や解説が減るということでしかありません。その辺りも注意しなければなりません。版が新しくなって、収録語数が増えたけど、その代わりに、例文が減った、ということも、あるようです。
なお、不思議なことに、「見出し語数」を明確に示していない辞書が存在することがあります。「収録語句数」とか「収録項目数」になっているのですね。これは、どういう意味なのか、よくわかりません。例えば、ウィズダムは、見出し語は、58000語くらいのようですが、収録項目は9万あるそうで、この2つの関係はよくわかりません。単純に、見出し語数に、熟語や連語の数を加えたら、9万になるのでしょうか? しかし、3分の1が熟語や連語だというのも、多すぎるように思います。何の説明もないとは解せません。他の辞書でもそんなものなのでしょうか?
そこで、おおよその感じを得るために、辞書の最後の部分(「z」で始まる単語のこれまた終わりの部分)の見出し語を見ることで、比べてみました。一見して見出し語が多いのか少ないのかがわかり、2つに分けることができました。
見出し語が多いもの:ジーニアス、研究社・新英和中辞典、プログレッシブ、アドバンスト・フェイバリット、レクシス
見出し語が少ないもの:ウィズダム、ロングマン、ルミナス、アンカーコズミカ
多いものと少ないものを、ジーニアスとウィズダムで比べてみました。多い少ないが、一目瞭然だということがおわかりいただけると思います。ご参考までに、私の手許にある研究社の「新英和中辞典・四訂版」についても比較してみました。
| ジーニアス | ウィズダム | 新英和中辞典・4版 | |
| zucchini | ○ | ○ | × |
| zugzwang | ○ | × | × |
| Zulu | ○ | ○ | ○ |
| Zuni | ○ | × | × |
| Zurich | ○ | ○ | ○ |
| zwieback | ○ | × | ○ |
| Zwingli | × | × | ○ |
| Zwinglian | × | × | ○ |
| zwitterions | ○ | × | ○ |
| Zyban | ○ | × | × |
| zydeco | ○ | × | × |
| zygospone | ○ | × | ○ |
| zygote | ○(zygoticも) | × | ○ |
| zymase | ○ | × | ○ |
| zymogen | ○ | × | ○ |
| zymology | ○ | × | ○ |
| zymotic | ○ | × | ○ |
| zymurgy | ○ | × | ○ |
| zzz, z-z-z | ○ | ○ | ○ |
| 見出し語数[収録語数] | 8万(学習語+70450) | 58400(学習語+43000)[9万] | 6万 |
ウィズダムは「9万項目を収録」とうたっており、あたかも、見出し語について、ジーニアスと同じレベルにあるかのようにも受け取れますが、上記の比較から明らかなように、「見出し語」ということからは、明らかに劣っていることがわかります(見出し語数は、各辞典の冒頭のページ(「本書の使い方」というページ)の記載から計算しました)。また、研究社の新英和中辞典との比較を見ると、ウィズダムは見出し語数がほぼ同じレベル(のはず)なのに、異様に×が多いように感じます。何故なのでしょうか? もちろん、「z」のしかもごく一部分だけを見て、すべてがわかるとは思えませんが、「z」の部分だけ、特に見出し語が多いとか見出し語が少ない、などということはないでしょうから、一般的な「傾向」は、見て取れると思います。
要するに、「見出し語」や「収録語句」という言葉を、そのまま同じように考えてはいけない、ということが言えそうです。公表されている数字だけを鵜呑みにせずに、実物を見て、もっと慎重に比較しなければなりません。なお、これを調べていて、手許の新英和中辞典(4版)の間違いを発見してしまいました。新英和中辞典では、「zymotic」が「zymology」の後ろではなく前に置かれていました。ABC順についての間違いですね。
(5)新しさとコーパス
新しいものの方がいい、ということは一般的に言うのであれば間違いなくいえると思います。他の辞書がすでに取り入れたアイデアを踏襲することができ、さらに、新しいアイデアも盛り込めるわけです。例えば、「コーパス」は古いものでは、まず入っていません。これから、5年間くらいのうちに、多くの辞書で取り上げられるだろうと思います。例えば、プログレッシブ英和中辞典や研究社・新英和中辞典の次の改訂(ここ1〜2年中の改訂?)では、「コーパス」の利用が期待できるかもしれません。ただ、コンピュータではありませんが、新しいものの方がいい、だけれどもいつまでも待ってはいられないので、どこかであきらめて、比較的新しい辞書を購入するということでしょうか?
個人的には、ウィズダムの上級書を望みます。(収録語句ではなく)「見出し語」が10万語くらいで、コーパスをつかった例文満載の辞書を。ただ、上記の予想のように、プログレッシブや研究社・新英和中辞典といった他社に先を越されるかもしれませんが。
なお、辞書の出版年ですが(これは辞書に限らず、書籍一般にいえることですが)、発売日・刊行日と奥付記載の年月日は、通常必ずずれています。これは何故なのでしょうか? 特に問題なのは、12月に発行されたのに、奥付の発行日が翌年の1月になっている場合、刊行年は、どちらを取ればいいのかよくわからなくなる点です。厳密には、後に残る、奥付に記載の年が刊行年として認められるのではないかと思います。
ちなみに、レクシスは、コーパスを使っているようなのですが、何故か、その点を前面には出していないようです。したがって、ここでは、ルミナスと同様に、コーパスを一部のみ利用という取扱いをしています。
(6)学習基本語・重要語の表示
上記の各辞典の基本情報の2行目は、学習基本語の表示のある単語の数です。10000語ない辞書もありますが、ほとんどは10000語を超える学習基本語を掲載しています。しかし「学習語」の表示も10000語レベルくらいになると、いい加減になりますね。全体が15000語くらいのもので考えると、前半にあたる7000語程度は、2〜3段階のレベルに分けてくれていたのに、後半の7000語程度は急に分類が荒くなって、7000とか8000とかが一括されて同じレベルとなっています。これでは、たいへん困ります。ここでは、先に書きましたように、10000語を超えるレベルで、英単語を見ていこうと考えているわけですが、その大事な部分であまりに大雑把なレベル分けをされては、直ちに使えないものとなってしまいます。このあたり、後半部分も、2〜3段階くらいに分けていただけると、とてもよいのですが。ちなみに、どうして、15000〜16000語程度が限度なのでしょうか? 20000語くらいまでできないものでしょうか? また、今回比較した9冊のうち、ロングマンのみが、学習語の表示がまったくないのですが、これは基本は「翻訳もの」ですから、日米の辞書に対する考え方の違いが出ている、ということなのかもしれません。第2版では、必ず、表示がなされるようになるに違いないと思っています。
また、学習語について一番数が多いのは、アンカーコズミカの約16300語です。ところが、このうち、第4レベルの7000語については、単語にマークが入っているとか、単語が色違いになっているとかいうわけではなく、訳語が太字か細字かということだけで区別しています。これは、見るときには、非常に区別しにくいと思います。他の方法の方が望ましいと思います。1つ新しい記号を入れたらそれですむのに、どうしてそういうことをしなかったのでしょうか? 次の版では改善を望みます。
なお、10000語に達していない辞書については、次の改訂時には、ぜひとも15000語から20000語に増やしていただきたいものです。
(訂正)
上記で、ロングマン英和辞典につき「ロングマンのみが、学習語の表示がまったくない」と書いてしまいましたが、これはまったくの誤りです。それぞれの英単語の「前」に何ら重要語・頻度等に関する記号が付されていなかったので、勘違いしました。実際には以下のとおりです(桐原書店のWebページから引用)。
(7)例文の量と質
例文の量ですが、おそらく、プログレッシブが多いのでしょう。それと、ジーニアスやアドバンスト・フェイバリットでしょうか? とにかく、歴史的には、プログレッシブが、情報量の飛躍的拡大を図ったということだと思います。すなわち、研究社・新英和中辞典を凌ぐ、圧倒的な情報量(語数・訳語・例文・用例)+語源を持ち込み、「この辞書が1冊あれば、十分」といえる時代をもたらしたのだと思います。しかし、情報量という意味では、もうすでに他の辞書にも追いつかれ、次の段階(他のポイントをむしろ重視しなければならない時代)に入っていると思います。
とはいえ、例文(例句)の有無について、比較してみました。アルクのSVL12000に含まれていない単語をランダムに10個選び(ただし、いずれも、何らかの単語集に収録されているというレベルの単語です)、それぞれの辞書において、例文があるかどうかを調べてみました。ご参考までに、Longmanの英英辞典もあわせて調べてみました。結果は、以下のとおりです。
| ジーニアス | ルミナス | プログレッシブ | ウィズダム | アドバンスト・フェイバリット | アンカーコズミカ | レクシス | ロングマン | 研究社・新英和中辞典 | Longman英英 | |
| pecuniary | ○ | ○ | × | × | × | ○ | × | ○ | ○ | ○ |
| assiduous | ○ | ○ | ○ | △ | × | ○ | ○ | △ | × | × |
| interlocution | (なし) | (なし) | × | (なし) | × | (なし) | × | (なし) | × | (なし) |
| fraternize | △ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | ○ |
| captious | × | × | × | × | × | ○ | ○ | × | × | ○ |
| postmortem | △ | ○ | × | ○ | ○ | × | ○ | ○ | ○ | ○ |
| delineate | × | × | × | × | × | × | × | × | × | × |
| ameliorate | × | × | ○ | × | × | ○ | × | × | × | ○ |
| hydrophobia | ×(○) | ×(○) | × | × | ×(○) | × | ×(○) | ×(○) | × | ×(○) |
| epigram | ×(○) | × | ×(○) | ×(○) | ×(○) | × | ×(○) | × | ×(○) | ×(不適) |
○:例文または例句の記載あり
△:結びつく前置詞のみの記載があるような場合
×:例文なし
(なし):その語の収録自体がない
hydrophobiaで、(○)とあるのは、「rabies」という同義語の記載があることを意味する
epigramで、(○)とあるのは、意味が3つ以上記載されていることを意味する(プログレッシブは、語源の記載もあり)
この表を見るとわかるのは、次のようなことです。例文が特に多いのではないかと思っていたプログレッシブが、必ずしも多いともいえないようであるということ、また、辞書によりかなりばらつきがあるということ、でしょうか。結局、この表だけからでは、どの辞書が決定的に優位にあるというようなことはいえないように思います。
なお、ここで、個人的には、単語の選び方に失敗したと思っています。例えば、「interlocution」など、そもそも、ほとんどの辞書に掲載されていませんでした。また、名詞である最後の2つの単語については、例文がほとんどありませんでした(rabiesに言及しているかどうかを調べることができたのは、偶然です)。一般に(難しいレベルの)名詞は、例文等がないことが多いようですので、全面的に選択からはずすべきかもしれません。次に比べる場合には、選択にもっと注意したいと思います。それにしても、ロングマンの英英は、本当に例文が多いですね(とはいえ、「完勝」ではないのですが)。
ちなみに、例文の質については、私に能力がなく、きちんと比較および評価ができていません。なお、ジーニアスでは、間違った使い方を間違いだと明確に記載するということをしています。非常に特徴があり、いいことだと思います。他の辞典が同じ方向を取ることはないのでしょうか?
最後に、もし多くの例文が必要なのであれば、いっそのこと、研究社の英和活用大辞典(38万例)を使えばいい、使わねばだめだ、という考え方もあります。
新選・英和活用大辞典(Amazon)(http://www.amazon.co.jp/dp/4767410355/)
それを考慮するならば、中型の辞典で、余り例文の「量」にこだわっても意味がないのかもしれません。
(8)「囲み記事」(コラム)・レイアウト
例文・訳語・語彙数という情報量拡大の次の段階は、ジーニアスによる「語法」という情報量の大いなる追加でしょう。語訳・語義よりも語法といった流れです。そして、これをレイアウト的に推し進めた最近の流れが、「囲み記事タイプ」の内容でしょう。現在では、このような内容が含まれていないことは、辞書の価値を下げる方向に効くように思います。ようするに、囲み記事は必須であるかのような風潮です。各辞典の囲み風記事の有無をまとめました。
あり:ルミナス、アンカーコズミカ、ウィズダム、ロングマン、アドバンスト・フェイバリット、ジーニアス、ルミナス
あるけど少ない:プログレッシブ
ない:研究社・英和中辞典
「ある」場合において、囲み記事の内容について、どの辞書がどの辞書より優れているかという比較は無理でしょう。あまりに内容や形式が様々に過ぎるため、どれがどれよりもいいのかを、一概に言うことはできないように思います。
レイアウトを含めて、ランダムに書いてみますと。
研究社・新英和は見づらい。メリハリがほとんど利いていない。プログレッシブも字が小さいのか、行が詰まっているのか、見づらい。
ルミナスは、囲み記事など書き方に工夫がされている。
レクシスには、「プラネットボード」という、「ネイティブ100人に聞きました」と「コミュニケーション・エクスプレッション」があって面白いのですが、それ以外の語法関連記事は、あまり目立たないように思います。
ウィズダム、アンカーコズミカ、レクシスは、「囲み記事一覧」「コラム索引」というものがあってわかりやすい。逆に、ない辞書は、今後ぜひ作っていただきたい。
特にウィズダムは一段上の工夫が感じられる。ジーニアスのおだやかなレイアウト・ページ構成がが平凡に見える。
(9)版数
版が多すぎるのはよくないような気がします。人間と同じで、残念ながら、歳をとると、衰えてくるのではないでしょうか? せいぜい、3〜4版くらいまでかもしれません。現在も、新しい辞書(新しい名前の辞書)がどんどんと出版されていますが、まさにそのことを物語っているのではないでしょうか? こう言ってはひどいですが、研究社・新英和中辞典は、そろそろ、その役目を終えたのではないでしょうか?
(10)色刷り
いわゆる「2色刷り」が一般的になっているようです。具体的には、以下のとおりです。
フルカラー:ロングマン
1色刷り:研究社・新英和中辞典
2色刷り:その他
例えば、個人的には「フルカラー」の辞書など、考えられません。それはそうでしょう。「新英和中辞典・第4版」に慣れきっているのですから、せいぜい「太字」のレベルしか見たことがないわけです。そういう者にとっては、「フルカラー」など、子供向け(失礼)というイメージしかもてません。そういう人間が、「フルカラー」の辞書を高く評価するわけありませんし、高く評価できないでしょう(せいぜい、「2色刷り」が限界でしょう)。それは、それでいいと思います。他の方がいいと言っておられても、私には、「フルカラー」の辞書は合わないのです。そんな人間が、無理して「フルカラー」の辞書を使わなくてもいいのです(もちろん、使ってもいいのですが)。
また、2色刷りでも、辞書により差があります。2色をどこまで使っているのか。見出し語、訳語、囲み記事やコラムの見出し等々。これがレイアウトとあいまって、見やすさや感じのよさを作り出していけるかどうかでしょう。
上記のとおり、あまりに2色刷りばかりなので、単色のものは、さすがに物足りなく思えます。やがては、フルカラーでないとだめ(物足りない)、という時代が来るのかもしれません。
(11)同義語・類義語
まず、手始めに、ふと思いついた「tired」に同義語・類義語の比較が記載されているかを調べてみました。
ある:ウィズダム、アンカーコズミカ、ルミナス、プログレッシブ、レクシス、研究社・新英和
ない:ロングマン、アドバンスト・フェイバリット、ジーニアス
これだけで辞書の良し悪しを判断するのは、いかにも危険です。しかし、個人的には、こんな基本的な類義語も記載されていないというのは、どういう価値判断によるものなのか、その点を知りたいと興味を持ちました。
次の3つの辞典については、巻頭にいろいろの項目についての一覧(目次)が掲載されており、その中に、類義語も含まれています。その数を数えてみました。
さて、以上の3つの辞書にジーニアスを加えて、具体的に、Aから始まる最初の方の部分について比較してみました。また、ご参考までに、手許にある「研究社・新英和中辞典・四訂版」も比較してみました。
| アンカーコズミカ | ウィズダム | レクシス | ジーニアス | 新英和(4版) | |
| abandon | ○ | ○ | ○ | ||
| abhor | hate | ||||
| ability | ○ | ○ | ○ | ○ | talent |
| able | ○ | ○ | |||
| abnormal | irregular | ||||
| abominate | hate | ||||
| about | ○ | × | |||
| above | ○ | × | |||
| abridge | shorten | ||||
| abrupt | sudden | ||||
| abstain | ○ | ||||
| absurd | ○ | ||||
| abuse | wrong | ||||
| accede | consent | ||||
| accept | ○ | receive | receive | ||
| accomodate | adapt, contain | ||||
| accompany | ○ | ||||
| accomplish | perform, reach | ||||
| accord | agree | ||||
| account | explain | × | |||
| accurate | ○ | correct | |||
| accuse | charge | ||||
| accustomed | usual | ||||
| ache | pain | ||||
| achieve | ○ | perfore, reach | |||
| achievement | exploit | ||||
| acid | sour | ||||
| acknowledge | admit | ||||
| acquaint | inform | ||||
| acquire | get | ||||
| across | ○ | ○ | × | ||
| act | ○ | ○ | ○ | ||
| action | ○ | act | act | ||
| active | ○ | ||||
| actual | true | ||||
| acute | sharp | ||||
| adapt | ○ | ○ | |||
| address | speech | ||||
| adequate | sufficient | ||||
| adhere | stick | ||||
| adherent | follower | ||||
| adjust | adapt | ||||
| administer | govern | ||||
| admire | respect | ||||
| admit | ○ | ○ | |||
| admission | admittance | × | |||
| admittance | ○ | × | |||
| admonish | advise | ||||
| ado | stir | ||||
| adore | worship | ||||
| adorn | decorate | ||||
| adult | ripe | ||||
| advance | development | ○ | |||
| advanced | progressive | ||||
| advantage | ○ | ||||
| adversity | misfortune | ||||
| advice | ○ | × | |||
| advise | ○ | ||||
| advocate | lawyer, support | ||||
| affect | influence | ○ | |||
| affection | love | love | |||
| affinity | likeness | ||||
| affirm | ○ | ○ | |||
| afflict | torture | ||||
| affront | offend | ||||
| afraid | ○ | ||||
| after | ○ | × | |||
| age | ○ | period | |||
| aged | period | ||||
| agitate | disturb | ||||
| ago | ○ | × | |||
| agony | distress | ||||
| agree | ○ | ||||
| agreeable | pleasant | ||||
| ahead of | in front of | × | |||
| aid | help | help | |||
| aim | purpose | 1) intend, 2) intention | |||
| alarm | 1) fear, 2) frighten | ||||
| alert | watchful | ||||
| alien | foreigner | ||||
| alive | ○ | living | |||
| alliance | ○ | ||||
| allocate | allot | ||||
| allot | ○ | ||||
| allow | ○ | ○ | ○ | × | let |
| allude | refer | ||||
| almost | ○ | × |
○は、類義語の記載があることを、×または空欄は、類義語の記載がないことを、他の単語を記載している場合は、その語の部分に類義語の記載がまとめてなされていおり、そちらを見るように指示があることを、それぞれ意味します。
以上から、まず、手許にある新英和中辞典・4版は、類義語の情報が異様に多いということがわかります。また、ジーニアスは、tiredに類義語が記載されていませんでしたが、必ずしも、類義語の掲載数が極端に少ないわけではないようです(でも、上記のとおり、一般的には少ないといっていいでしょう)。しかし、その選択について、他の辞書との差異が大きいようで、tiredとかallowといった、当然の如く類義語の記載がある語(他の多くの辞典には記載がある語)について、記載がなく、なぜか知りませんが、他の辞書とずれが生じているようです。それから、レクシスについては、全体の数はかなり多いのですが、上記の表を見る限りは、それは感じられません。不思議ですね。なお、アンカーコズミカ、ウィズダム、レクシスについては、巻頭の目次しかチェックしておらず、各ページの語句それぞれをきちんと見ていませんので、これ以外に、他の語を参照している単語(例えば、「ache」の部分で「類義語についてはpainを見よ」という記載があるような場合)が存在するかもしれません。
なお、掲載数は少ないですが、類義語1つ1つの説明については、ジーニアスが、他を圧して詳しいといえます(例文も多い)。
なお、同義語・類義語に関しては次の本が役に立つと思います。
Choose the Right Word
A Contemporary Guide to Selecting the Precise Word for Every Situation
S. I. Hayakawa, Eugene Ehrlich(revising editor)
Harpercollins(second edition)
1994年
ISBN-10: 0062731319
ISBN-13: 978-0062731319
Choose the Right Word(Amazon)(http://www.amazon.co.jp/dp/0062731319)
項目だけで、1000余りのあるようです。レクシスの倍近くですね。allowまでで、20語が見出し語になっています(なお、allowは、permit参照となっている)。以上、ご参考になれば。
(12)文型表示・U・C表示
動詞等の文型表示・名詞のU・Cの区別については、調べていません。もうこの時代になれば、当然に、すべての辞書記載されているだろう、と思ったからです。
研究社・新英和第4版のときは、U・C表示などは「売り」だったのに、今は、ひどくありふれたものになってしまいました。
(13)その他
研究社の場合、英和辞典の役割分担が不明確だと強く感じました。研究社のホームページを見ても、明確に記載があるようなページは見つかりませんでした。具体的には、「中辞典」的な英和辞典は、次の4冊あります。
特に、新英和中辞典とルミナス英和辞典の役割分担がよくわかりません。ルミナスが、かつてのカレッジ・ライトハウスの後身だとしたら、一般的には、新英和中辞典の方が上級辞典なのでしょう。しかし、どなたかが書いていましたが、すでに、ルミナスが新英和中辞典のレベルに追いついてきており、新英和中辞典の役割・存在意義は終わったのではないかともいえます。新英和中辞典が次の改定で、コーパスを取り入れるなどして、riviveする可能性はあるのでしょうか?
また、ウィズダムについては「Dual Wisdom英和辞典」と銘打って、購入者へのサービスとして、Web版の辞書が使えるようなサービスが組み込まれています。魅力的な、面白い試みです。若い方などは、せっかく「紙の辞書」を購入しても、Web版をメインに利用するようになってしまうのかもしれません。
Dual Wisdom英和辞典(http://wisdom.dual-d.net/wdej.html)
なお、購入せずとも試用版を見ることができますので、ご興味のある方はお試し下さい。一部の語については、発音もしてくれます。面白い機能です。ただ、「試用版」を使った感じですが、検索自体はありきたりでした。せっかくですから、「Aランクの重要語のみ」「Dランクの重要語のみ」を検索できるとか、「発音」で検索できるとか、見出し語のみならず、本文中に記載された語(訳語のみならず、派生語・同義語・反対語等を含む)などでも検索できるとか、類義語のみならず本文中のリンクをもっと増やすとか、検索後の表示を15行に固定せずに、もっとふやせるようにする(100でも200でも)とか、Web版ならではの様々な検索その他の機能を付加していただきたかったなと思います。
(14)比較の手段
やはり、書店で実際に手に取って、見やすさ、持ちやすさ、使ってみたいなと思うかどうか、自分が辞書を買う目的に合致した内容か、など、自分が気に入る辞書を選ぶことが大事ではないでしょうか? 先にも書きましたように、コンピュータほどではないですが、英和辞典もどんどんと革新的ないい辞書が刊行されているようですが、ある時点で選ぶことは可能だと思います。一般的に評判がいい辞書(最低でも5冊はあるでしょう)であれば、大きな「はずれ」はないと思います。そして、使っているうちに、問題点は必ず出てくるでしょうから、それは、カスタマイズして補う(メモをたくさん挟み込むなど)、もう1冊別の辞書を併用する、など個別に対応するということでしょう。
今回も何度も書店(5店以上)に足を運び、たくさんメモを取りました。書店の店員さんから見れば、かなり不審な人間に見えたことでしょう。
(15)評価
さて、以上のようなことから、私がどう評価を下したか、ということですが・・・。
上記から予想可能ですが、まず、私にとっては見にくい「ロングマン」(フルカラー)が落ちました。次に、レイアウト的にも見にくいと感じた「研究社・新英和中辞典」も落ちました。
そして、情報量としては申し分ないのでしょうが、「囲み記事」等の部分で、やや古い感じのする「プログレッシブ」が落ちました。
残るは、「ルミナス」、「アドバンスト・フェイバリット」、「ジーニアス」、「ウィズダム」「レクシス」「アンカーコズミカ」になりますが、このうち、コーパスとなると、「アドバンスト・フェイバリット」と「レクシス」と「ルミナス」が落ちます。
残った3つ(ジーニアス、ウィズダム、アンカーコズミカ)では、正直甲乙つけがたいところがあったのですが、レイアウトの斬新さとDual Wisdomへの興味から、「ウィズダム」を購入してみようと決めました。ちなみに、この3つでは、ウィズダムは、中学生からでも使えるような気がします。一方、中学生では、ジーニアスは、使いにくいと思います(難しい?、癖がある?)。アンカーコズミカは、その中間でしょうか。この点は、ウィズダムの長所でもあり、おそらく短所でもある(上級者の使用に耐えうるのか?)と思います。ちなみに、中学生向けを考えるのであれば、ライトハウスやスーパー・アンカーも比較しなければなりませんから、ウィズダムが適切なのかどうかは、ここでは判断できません。 また、ウィズダムについては、情報量の不足が大きな課題ではないかと思いますが、それは、個別に補っていこうと思います。ウィズダムのより具体的な使い心地につきましては、購入・使用後、別途リポートしたいと思います。
(16)まとめ
以上で、この話題はおしまいですが、楽しんでいただけたでしょうか? ここの評価は間違っているとか、これは事実と異なるとか、ぜひともご批判ください。また、他に比較すべき辞書(英和辞典)があれば、ぜひお教えください。今回の比較で、かなり気になったのは、適切な辞書が存在しなかったため、岩波書店と講談社の英和辞典を比較に加えられなかったことです。何故なのでしょうか?
英和辞典の比較は、皆さんにもぜひしていただきたいと思います。私のように、何十年も同じ辞書を使うというのもいいのですが、新しいものには古いものにはないいいところがあるはずです。そして、辞書を選ぶということをすると、自分が辞書に何を求めているか、英語が自分にとってどういう位置付けなのか、どういう必要性があるのか、どのように接しているのか、ということを考えることができ、自分と英語の関係を見直すことができるいい機会となります。私自身は、今回の比較を楽しむことができました。
新しい辞書もどんどん出版されるでしょうから、また、2〜3年経ったら、同じように英和辞典の比較をやりなおしてみるつもりです。
最後に、なぜ、今更、「紙の辞書」で、電子辞書ではないのかという点について簡単に書いておきます。
1)カスタマイズできない
電子辞書は、与えられたものを使うだけで、情報を追加するためのメモをはさむなど、自分用のカスタマイズができません(それとも、できます?)。掲載されていなかった単語・語意・例文等を追加するようなイメージです。
2)年寄りには無理では?
年寄りが使い慣れないものを使うのは、どうでしょうか? 「食わず嫌い」だけなのかもしれませんが。この点についてもご意見いただければ。
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2007年12月29日(土)作成開始
2008年2月16日(土)最終更新
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