甘い放課後、誰かの思惑

 


 

授業が終わり、真っ先に部室に向かった憧が見たものは、

部屋の隅に置かれたソファに丸くなって眠る玄の姿だった。

それは、まるで無防備な猫のようだ。

憧はカバンを置いて、ソファの空いたスペースに座る。

他の部員はまだ誰も来ていないようだ。

「………」

「zzzz」

憧がソファに座っても、玄が目を覚ます様子はなかった。

憧はしばし玄の様子を観察する。

呼吸のたびに微かに上下に動くお腹。

子供のような、あどけない寝顔。

黒いニーソックスとスカートの間に覗く白く健康的な太もも。

それらを見ているのは、とても楽しかった。

「くろー」

「zzzz」

「くーろー」

「zzzz」

憧が二回呼びかけても、玄は目を覚まさなかった。

そんな玄を見て憧の心に悪戯心がむくむくと湧きあがる。

よく見ると玄の短いスカートは若干めくれ上がり、

あと少しでその中身が見えそうだった。

普段から行儀の良い玄がここまで無防備な姿を晒すのは珍しかった。

そんな玄に、憧は手を伸ばした。

が、そこで一瞬思い止まる。

憧はその手を宙で止め、しばし考える。

そして一言呟いた。

「白」

そしてスカートの裾を軽く持ち上げた。

玄のスカートの中身が露わになる。

「おぉ〜」

感嘆の声を上げる憧。

スカートの下には、白い下着が見えた。

「よし、正解っ」

自ら出題した玄の下着の色当てクイズに正解し、小さくガッツポーズをする。

正解しても、褒美も称賛もない、無意味なクイズだ。

それでも憧の心の中に微かな喜びが広がった。

 

元々、玄の下着を見る、という行為に特に深い意味はなかった。

ただの暇つぶし、しかも玄に気付かれないうちに止めるべき密かな悪戯だ。

だから悪戯はこの辺りでやめておくべきだった。

それなのに、憧は玄の下着に若干変な気分になってしまっていた。

それは全くの計算外の出来事であった。

憧は思わず玄の白い下着を凝視してしまう。

そして、そうするのが当然と言わんばかりに、下着に手を伸ばした。

玄を起こさないようにお尻を触る。

下着越しに触るお尻は柔らかく、温かかった。

少し力を入れれば、どこまでも指が食い込んでいく。

それくらい柔らかく丸みを帯びたお尻は、

同じ女である憧ですら艶めかしいと感じてしまうほどだった。

そして手をそのまま下着の中へ忍び込ませようとした次の瞬間―

「憧ちゃん?」

「……っ」

玄が起きてしまった。

というより、うたた寝をしている最中に、下半身をまさぐられて起きない訳がなかった。

慌てて手を引っ込める憧。

スカートを直しながら玄が尋ねる。

「何をしているのかな?」

玄は、滅多に怒らない。

というより、怒った所を見た事がなかった。

そんな玄の声色に、憧はいつもにはない感情が込められているのを感じた。

憧は慌てて言い訳をする。

「えっと…部室来たら、玄が気持ちよさそうに寝てて…」

「うん」

「全然起きないから、つい…」

「つい、でお尻触っちゃうんだ?」

「ご、ごめんなさい…」

憧の謝罪を聞いた玄は、すぐに笑顔に戻った。

そしていつもの柔らかい口調で、憧に注意をする。

「もー、ダメだよー?人の下着勝手に見たり触ったりしたら」

「うん…ごめんなさい…」

憧も全面的に自分に非があるため、素直に謝る。

これで元通りだ。

玄は憧を許し、憧ももう二度と同じ事はしないだろう。

これくらいの事で二人の友情に亀裂が入ることはない。

 

そして先ほどまでのやり取りなどなかったかのように、憧が玄に尋ねる。

「ってかさ、まだ誰も来てないの?」

「え?だって憧ちゃん、今日部活休みだよ?」

「え?嘘?そうだっけ」

「聞いてなかった?」

「うん。なんで休みなの?」

「赤土先生が出張なんだって」

「へー、そうなんだー」

部活が休みである事は憧には伝わっていなかった。

どうやら連絡ミスがあったらしい。

阿知賀は少人数の部であるため、連絡体系などは結構アバウトだったりする。

大方、穏乃あたりが連絡を忘れたのだろう、と憧は予想した。

だが、すぐに一つの疑問が浮かび上がる。

「あれ?じゃあ玄はなんでここにいるの?」

休みであれば、当然玄も部室にはいないはずだ。

玄はその疑問に答える。

「私はほら、今日掃除当番の日だから」

「え、あれまだ続けてるの?」

「うん。もう習慣になっちゃってるからね」

小学生の頃に決めた掃除当番。

玄は木曜日の当番だ。

それを誰にも言われずに玄は今も続けているのだ。

憧は正直な感想を漏らす。

「へー、玄は偉いね」

「そんな事ないよー」

「いやいや、誰も真似出来ないよ、マジで」

「そうかなー、えへへへ」

砕けた口調で褒める憧。

だが、憧はそんな玄を心の底から尊敬していた。

玄がこの部室を守り続けていてくれたから、この麻雀部は復活出来た。

もちろん穏乃や灼や宥や晴絵、全員がいたおかげでもある。

それでも、一番の功労者は玄だと憧は考えていた。

憧はそんな玄を尊敬し、そして感謝していた。

 

 

ソファに座ったまま、足をぶらぶらさせる憧。

そしてつまらなそうに言う。

「そっかー、じゃあ今日は誰も来ないのかー」

急に楽しみを奪われた形になってしまった憧は口を尖らせる。

そして玄に尋ねる。

「宥姉も帰っちゃったの?」

「うん、お姉ちゃんはもう帰ったし、灼ちゃんも家の手伝いするって言ってた」

それを聞きながら、憧は携帯を開く。

「あ、しずからメール来てた。山行くから先帰るって」

「しずちゃんは本当山が好きだね」

「本当にねー」

それから二人は、とりとめもない会話を続ける。

麻雀の事、他の部員の事、インターハイの事。

そして玄の性癖の話になった。

「ってか、玄は人の胸に興味持ちすぎっ」

「えー、そうかなー?」

言われた玄は、心外だ、とでも言いたげな表情を浮かべる。

「皆だって人のおもちに興味あるでしょ?」

「え……、いや、どうだろう…むしろ少数派なんじゃ…?」

「えー、そんな事ないよー」

自信たっぷりに言う玄。

その根拠はどこから来るのか。

少なくとも憧は、玄ほど人の胸に興味を示す女の子に会った事はなかった。

「でも玄が実際に揉むのって宥姉だけだよね」

「うん、そうだね」

「なんで宥姉以外の胸は揉まないの?」

「え、だってそれはさすがにしたらマズいでしょ?」

どうやら玄にも、最低限の良識はあるらしい。

憧はその事に素直に感心してしまった。

例外として宥の胸だけは揉む、というのは姉妹という間柄のせいか。

間柄が引き金になるのであれば、もしかしたら仲良くなれば、

玄は誰の胸でも普通に揉んでくるのかもしれない。

そう推測した憧は、それに恐怖を感じ、同時に少しだけ寂しさも覚えた。

自分はまだ胸を揉むほど心を許してもらえていない、という事になる。

途中間が空いてるとは言え、幼馴染と言っても差支えないくらい長い付き合いであるにも関わらず、だ。

とは言え、もちろん胸を揉まれる事自体は何があっても許容出来ないのだが。

 

憧は玄に素朴な疑問を投げかける。

「玄はなんでそんなに胸が好きなの?」

「ん〜?なんでだろう?」

以前、憧は宥から、玄が胸が好きな理由は母親がいない寂しさのせいだ、と聞いた事があった。

だが玄自身はその理由に思い当たらないようだ。

小さい頃、気付いたら胸が好きになっていたと言う。

「でもそれだけ好きで、よく宥姉の胸だけで我慢してられるね」

「まぁ、そこは我慢しないとねー」

「そっか」

「本当は皆のおもち揉みたいけどねっ」

鼻息を荒くして、玄が身を乗り出す。

指はわきわきと、何かを揉むような仕草をしている。

憧は念の為、胸を揉まれないように若干距離を取った。

「で、でもさ、玄だって胸揉まれたら嫌でしょ?」

「え?私は別にいいよ、お友達になら」

「そうなの?私でも?」

「うん、別にいいよー。揉む?その代わり私も揉むけどっ」

「あー、うん、別にいいや…」

「そう……残念…」

本当に残念そうだった。

だが次の瞬間、玄の表情が変わった。

「でも、さっき憧ちゃん、私のお尻、勝手に触ったよね?」

「……え?」

「お返しにおもち揉ませてもらおうかなー?」

「う……」

憧はそのセリフに、背筋が凍る。

玄がそれを本気で言っているのか、憧には判断が付かなかった。

だが、若干いつもの玄とは雰囲気が違う事だけは分かった。

憧は恐る恐る、玄に尋ねる。

「……玄、もしかして怒ってる?」

「あんな風に寝てる時に触られたら、私だってさすがに怒るよ?」

「う……」

「だから、今回はおもちで水に流してあげましょう」

玄は憧ににじり寄る。

憧の額に冷や汗が流れる。

しなくてもいい悪ふざけで玄を怒らせてしまった。

このままでは胸を揉まれてしまう。

それだけはなんとしても拒否したいところだった。

だが、玄を怒らせてしまったのもまた事実だった。

その償いとして胸を揉まれるのは、仕方がない事のように思えた。

憧は躊躇いながらも、玄の言葉に頷く。

「う……じゃ、じゃあ…ちょっとだけなら…」

「……え?い、いいの!?」

憧からの予想外の承諾に対し、素で驚く玄。

憧はその反応を見て、すぐに激しく後悔した。

どうやら玄は冗談で言っていたらしい。

判断ミスから、胸を揉ませる羽目になってしまった。

考えてみれば、玄が本気でそんな事を言うはずがなかったのだ。

憧は今からでも冗談で済ませようかとも考える。

だがキラキラと輝いた玄の表情を見ると、そんな事言い出せそうになかった。

 

 

 

「じゃあ…触るね…?」

「う、うん…」

ソファの上で向かい合う二人。

玄は胸を揉めるという大いなる期待から、

憧は胸を揉まれるという若干の恐怖から、

それぞれに緊張していた。

玄は一度だけ生唾を飲み込んだ後、遠慮がちに憧の胸に手をやった。

そして二度、三度と胸を揉む。その指使いはしなやかで繊細だった。

「やわらか〜い」

玄は素直な感想を漏らす。

憧は恥かしさから、顔を背ける。

そして照れ隠しに玄に聞く。

「でも小さいでしょ…?」

「そんな事ないよー。すごく綺麗な形だよ」

玄の慰めの言葉。

だが憧は自分で分かっていた。

自分の胸はボリュームに乏しく、同年代の多くと比べても貧相であると。

それでも、玄はそんな自分の胸を触って喜んでくれていた。

そんな玄のイキイキとした表情を見ると、不思議と自分の胸に自信が持てる気がした。

それと同時に奇妙な喜びが心の中に生まれている事に、戸惑いを感じていた。

 

「…ねぇ、憧ちゃんも触る?」

「え?」

「いいよ、憧ちゃんなら…」

しばらくして、玄は憧にそう促した。

そして憧は言われるままに玄の胸に手を伸ばしてしまった。

憧には断るという選択もあったはずだった。

何より、もう玄が胸を触り始めて10分ほどが経過していた。

そろそろこの行為を打ち切るにはいい頃合いだった。

だが、憧はその選択肢に気付かず、玄の胸を触る事を選んだ。

いや、無意識のうちにその選択肢を破り捨てていたのかもしれない。

「ん……ハァハァ…んっ…」

「ぁ……っ、ん…ぁ〜…」

二人は無言で、時折小さな喘ぎ声を漏らしながら、

ただひたすらに互いの胸を揉み続けた。

 

それから更に10分。

その行為を終わらせるタイミングを、二人は既に見失っていた。

あまりにも触り心地がよく、いつまでも触っていたいと思ってしまった事。

そして、いつまでも触っていて欲しいと思ってしまった事。

その二つの理由から、二人の判断力は著しく低下していた。

そして玄が一つの提案を憧に持ち掛けた。

「ねぇ……ハァハァ…憧ちゃんの…直接触りたい…」

「……っ」

憧はその言葉に激しく揺さぶられる。

実はちょうど今、憧も全く同じ事を考えていたのだ。

制服越しではなく、直接触りたい。直接触られたい。

憧は少しだけ迷ったふりをする。

「え…でも…」

白々しい演技。

拒めるはずもないのに。

それに気付き、憧は唇を噛む。

そして無言で頷いた。

 

 

 

二人は器用に服を着たまま自分のブラを外し、それぞれのカバンに入れた。

それから互いの服の中に手を入れた。

若干汗ばんだ玄の肌に、憧は指を滑らせる。

そしてすぐに胸まで辿り着いた。

素肌は想像通りになめらかで、胸は想像以上に柔らかかった。

それと同時に、玄の指も憧の胸に到達していた。

「んっ…あっ…」

玄の指が、ほんの少し乳首に触れただけで憧の口から声が漏れた。

その声に、憧は自分で驚く。

「(ちょっと触られただけなのに…)」

だが玄はその声に気付いていないようだった。

玄は必死に憧の胸をまさぐっている。

そして口の中で呟かれる言葉。

「おもち…おもち…」

玄の、きっと自分でも気付かないうちに漏れているであろう独り言。

憧はぼんやりと、考える。

「(玄って…本当に胸が好きなんだなぁ…)」

夢中で胸を触っている玄を見て、憧の中に今までにない感情が湧きあがる。

「(玄…可愛い…)」

二人はそのまま、しばらく互いの胸を堪能した。

 

少しして、憧が異変に気付いた。

玄の右手が憧の胸を離れ、背中を撫で始めたのだ。

そしてそのまま、脇腹からお腹を経由し、腰から太ももへ。

少しずつ、下の方へ移動していく。

そしてやがて内ももまで到達した。

玄は優しく、くすぐるような細やかなタッチで憧の太ももを撫で上げる。

それだけで憧の背筋にゾクリと、痺れるような快感が走った。

そして、その手は少しずつ、スカートの中へ潜り込んでいく。

玄の手がどこに向かおうとしているのか、

憧がそれに気付いた時には既に手はその目前にまで来ていた。

憧はその手を咄嗟に払いのけようとした。

だがその意思とは裏腹に、体は動かなかった。

その理由は、自分でも分からなかった。

そこに、ある種の期待が含まれていた事は、憧本人すら自覚出来ていなかった。

玄の手が憧の下着に軽く触れる。

「く、玄…ダ、ダメだよ…」

憧は辛うじて言葉で、玄を制止しようとする。

だがその声は玄には届かない。

既に玄は、自分の行為に、指先に、神経を集中させていた。

玄の指が、下着越しに撫でる。

「あっ、ん…っ…や…」

憧は思わず声が出てしまう。

胸よりも圧倒的に敏感なその場所。

そこを撫でられて声が出てしまうのは仕方のない事だ。

だがそこは、悪ふざけでは済まされない場所だった。

「ん……っ、や…」

玄の指が優しく下着の上を往復するたびに、憧の声が上ずる。

触られている場所は、憧にとって一番良い所ではなかった。

さらに下着の上から触られている為、刺激もさほど強くはない。

だがそれでも、意思とは無関係に体が反応してしまう。

なぜこんなに簡単に翻弄されてしまうのか。

他人の指でされる、というだけでこれほどまでに違うものなのか。

憧はその事実に恐怖すら覚える。

これで本当に気持ち良い場所を触られたら、

下着越しでなく直接触られてしまったら、

自分の体がどうなってしまうのか―、

想像する事すら怖かった。

 

だが、玄には憧の性感帯を見つける事は出来なかった。

通常であれば、相手の反応を探りつつその場所を見つけるのだが、

玄にはそれをするだけの余裕がなかった。

さらに触っている場所の形状の複雑さも関係していた。

経験に乏しく、興奮によって冷静さを失っている玄にとって、

その作業は全力疾走をしながら障害物を飛び越え、

さらに同時に精密機械を組み立てるに等しい難易度だった。

だがそれは憧にとっては安堵すべき状況だった。

今、ここで玄にその場所を探り当てられてしまったら、

もう戻れなくなる予感がしていたからだ。

それでも、同じように経験のない憧には、この刺激は強すぎた。

下着越しに触られている快感。

それでいて一番気持ち良い所には触れてもらえないもどかしさ。

幼馴染に触られているというこの状況。

全てが憧の興奮を加速度的に増幅させた。

既に声を我慢出来るような余裕はなかった。

「あ〜、あっ、や…、んっ…あ〜…」

だらしなく開かれた口から出る声。

それは、自分ですら知らない声だった。

「憧ちゃん…」

「ハァハァ…く、玄…ダメ…ハァハァ…」

何度も何度も、玄に許しを請うが如くうわ言のように繰り返される言葉。

だが、手を払う訳でもなければ、玄を押しのける訳でもない。

ただの言葉。

そんなもので玄を止められるはずもなかった。

だからと言って、それ以上の拒絶など、今の憧には出来るはずがなかった。

 

 

そして下着越しに触っていた玄の指が、そっとその場所から離れた。

絶え間なく刺激を与え続けられながら未だ満足させてもらえていない憧は、少しだけ残念そうに玄を見る。

「(もう、終わりなの…?)」

ぼんやりとそんな事を考えながら、玄の手の行方を気に掛ける。

無意識のうちに、もっと触っていて欲しい、と憧は願ってしまう。

玄の手は、スカートのさらに奥へ入り込み、憧のおへその辺りを撫でた。

まるで何かを探すような動き。

すぐに玄の手は目的の物に辿り着いた。

そして次の瞬間、玄の手が憧の下着の中に侵入する。

憧がようやく玄のしようとしている事に気付いた時、

玄の手は憧の襞を掻き分けようとしていた。

そして、玄の指が直接その部分に触れる。

「〜〜っっっ」

憧は声にならない悲鳴を上げる。

と、同時に、掻き分けられたそこから、くちゅりという水音が響いた。

憧にとってみれば、自分のがどういう状態になっているかは、確かめるまでもなかった。

今までに経験がないくらいの醜態を晒している事だろう。

それが知られてしまうという事は、消えかかった理性を取り戻すのに十分な出来事だった。

それなりに経験のある大人であれば、それを別段恥じる事などないだろう。

だが、そのような状態のその場所を、他人に触られ暴かれるのは、

経験のない憧にとってはこれ以上なく恥ずかしい事だった。

あっという間に我に返る憧。

この瞬間に至って、憧はようやく羞恥心が快感を上回った。

慌てて玄から離れる憧。

そして強い口調で玄を押し止める。

「ちょ…、それ以上はマジでヤバいって…!」

憧は玄の手を掴み、下着の中から引っ張り出した。

玄は自分の指先を見つめる。

指は光の加減でキラキラと光っていた。

若干ぬめり気を帯びたそれは、疑いようもなく憧の体液だ。

そして、玄は無言のまま、その指を口に咥えた。

それを見た瞬間、憧の頭の中は一気に沸騰した。

「ちょ…き、汚いでしょっ…!」

慌てて玄の手を掴み、口から指を出させる。

だが既に指を口に入れてしまった後では、何の意味もなかった。

玄はすがり付くような潤んだ目で憧を見つめる。

そして憧に抱きついた。

「憧ちゃん…」

「く、玄…」

憧の耳元で、玄は吐息混じりに囁く。

「お願い…ダメ…?憧ちゃん…ハァハァ…」

「……っ」

そして玄は憧の手を取り、その手を自分のスカートの中へ導いた。

憧はされるがまま、さっきまで玄がそうしていたように、下着越しに玄を触る。

そして、憧は息を飲む。

下着越しでも、濡れているのがはっきり分かった。

「こんなになっちゃった…憧ちゃんのせいだよ…」

「玄…」

「憧ちゃん……切ないよぉ…」

憧は、自分にしがみつくように抱きついている玄を引きはがす。

そして、真っ直ぐ、玄の目を見つめた。

よく見ると涙が浮かんでいた。

「憧ちゃん…」

憧は心の中で、この状況に至ってしまった事を後悔した。

もう、後戻りは出来そうになかった。

「憧ちゃん…憧ちゃん…」

玄は憧の名前を何度も呟く。

それはまるで、憧に助けを求めているようだった。

憧は玄から視線をそらす。

「(あー…もう…。そんな顔でお願いされたら…拒めないじゃん…)」

目を閉じ、考える。

既に気持ちは傾きかけていた。

「(でも、まぁ…玄なら……うん………)」

覚悟を決め、そして玄に聞く。

「…絶対に、内緒にするって約束出来る?」

「え……、う、うん…っ、する!約束する!」

「今日だけ、だからね?」

「うん!うん!」

「じゃあ…しちゃおっか…?」

「うんっ」

弾けるような玄の笑顔。

これからする行為とのギャップに、憧は思わず笑みがこぼれた。

 

 

 

憧は立ち上がり、扉のカギをかけた。

そしてそのまま窓際へ移動する。

校庭には人は誰もいなかった。

阿知賀は元々部活動が盛んな学校ではない。

校舎にももうほとんど人は残っていないだろう。

だからおそらく、この行為が人に見つかる事もない。

そう自分に言い聞かせ、憧はカーテンを閉める。

全てのカーテンを閉めると怪しまれそうだから、という理由で、

外からソファが見える窓だけ閉めることにした。

そして、玄が待つソファへ向かう。

 

これから、この部室で、友達とセックスをする―

 

その現実感のなさに、憧は笑ってしまいそうになる。

だが、もう既にそれに近い事はしてしまっている。

そう。状況は、もう笑えない所まで来ているのだ。

だがその迷いは既に憧の中にはない。

もう、すると決めてしまったのだ。

ソファに戻った憧を玄が出迎える。

玄は憧に抱きつく。

それは普段の玄ならば絶対にしない事だった。

どうやら発情している時の玄は、甘え癖があるようだ。

しっかり者の玄にそういった一面がある事に、憧は意外さを感じる。

もしかしたら玄はいつも誰かに甘えたいと思っているのかもしれない。

「(色々我慢してるのかな…)」

玄の境遇も含め、そんな事をぼんやりと考える。

だが憧はそんな玄を見て、可愛いと思ってしまっていた。

可愛がってあげたい、と思ってしまった。

憧は、既に玄の事をセックスをする対象として見ている自分に苦笑いをする。

 

再び向き合い、憧がぽつりと呟く。

「……制服しわになっちゃうね」

「うん…」

「脱いじゃおうか…?」

そしてそれぞれ、自分の制服を脱ぐ。

一つずつボタンを外し、一枚ずつ服を脱いでいくたび、露わになっていく肌。

それは否応なく、互いの興奮を高めていった。

先にタガが外れたのは、玄だった。

憧がカーディガンとスカートを脱いだ所で、玄が憧を押し倒す。

「憧ちゃん…っ」

「んっ…あっ…」

玄も、ブラウスと下着は着たままだった。

玄は憧の素肌にキスをする。

玄の舌が首筋を這う。

それだけで憧の体は電気が流れるように痺れた。

玄は一つずつ、憧のブラウスのボタンを外しながら、舌を移動させていく。

そして玄の大好きな胸に到達する。舌で乳首を転がし、時折口で吸う。

それはさっきまでの触られていただけの愛撫とは全く違った。

憧は抑えきれず声を出す。

「やっ……な、何…っ、んっ、や〜、ん…ぁ…」

「憧ちゃん…っ」

興奮しきった玄は、欲望のままに憧の体を貪る。

普段のおっとりした雰囲気は、どこにもなかった。

先手を取られ、受け身に回ってしまった憧は、苦し紛れに抵抗する。

腕を目一杯伸ばし、玄の下着の中へ手を侵入させた。

そこは、憧の比ではないくらいに濡れていた。

憧は素直に感想を言う。

「玄…ハァハァ…濡れやすいんだね…」

「やだ…っ、そ、そんな事…」

玄は憧の胸にむしゃぶりつき、憧は指で玄の中を掻き分ける。

「んんっ、…っ…ぁ…く、玄…ん…」

「あ、憧ちゃ…ん〜!…や…そこ…ダメ…あ〜っ、あっ、あっ」

互いに刺激し合い、それと共に漏れる声。

だが、刺激を受ける場所の違いからか、明らかに玄の方が声に余裕がなかった。

憧は一旦玄の下着から手を出し、玄の下着を脱がす。

それと同時に自分も下着を脱ぎ、耳元で玄に囁く。

「ねぇ、玄も……ねぇ、お願い…」

憧は玄の右手を掴み、誘導する。

玄も憧の意図を汲み、素直に指を這わせた。

二人は向い合せに座ったまま、互いの性器を撫でる。

そしてごく自然に、互いを欲しているかのように、キスをした。

二人の喘ぎ声は互いの口に塞がれ、代わりに聞こえてくるのは、

口元から、そして掻き分ける指から聞こえる水音だけだった。

下着の上からとは全く違う。自分で触るのとは全く違う。

初めての感覚に、二人はあっという間に何も考えられなくなった。

「く、玄…気持ち良い?私の指、気持ち良い?」

「うん…っ、すごく良いよ…っ、どうしよ…う…っ、イキ…そ…っ」

「私も…っ、気持ち良いよっ、玄の指…イイ…っ」

玄の言葉に呼応するように、憧も登りつめる。

「あっ、や…っ、イク…玄…イクよ!あっ、あっ、ひっ、んんっっ」

「わ、私も……っ、イキ…そ……んっ、ゃ…っ」

二人はほぼ同時に絶頂に達してしまった。

全力疾走をした後のように、上下に揺れる肩と心臓の鼓動。

そこに襲い掛かる圧倒的多幸感。

こんなにまでも満たされた事は今までになかった。

二人はいつの間にか繋いでいた手をさらにギュッと握りしめた。

 

 

先に回復したのは玄だった。

憧の肩に、首筋に、頬に、キスをする。

そして若干恥ずかしそうに俯きながら、囁く。

「憧ちゃん……続き、いい…?」

玄はまだまだ満足していなかった。

だがそれは憧も同じだった。

「うん……もう大丈夫。しよう…?」

そう言って体を起こそうとする憧を、玄が制止する。

「憧ちゃんはそのままでいいよ。私がしてあげる…」

「え…?」

そう言うと玄は憧の足元に跪く。

そして憧にの膝に手をやり、足を開かせた。

「え…っ、ちょ…玄…」

玄の大胆な行為に戸惑う憧。

だが憧の僅かばかりの抵抗は何の意味も成さなかった。

玄は憧の足と足の間に体を入れ、そのままそこにキスをした。

「ひぃっ…んっ…やっ…そんなとこ…舐めちゃ…や…」

玄はなんの躊躇もなく、舌を這わせ、そして音を立てて舐め上げる。

唾液と混じり合う、下品な水の音。

だがその音を聞き、憧は自分でも信じられないくらい昂っていく。

恥かしさがさらに興奮を高めていくようだった。

その快感の波に、憧は初めのうちはなんとか耐えていた。

だがそれは完全に無駄な抵抗だった。

玄は、憧の固く膨らんだその場所を探し当てると、指や舌で刺激した。

そして「吸う」という行為が憧には最も効果的だという事に気付く。

「やっ…な、何して…あっ、やっ、く…ふっ…ひっ、ん、んあっ」

憧の声が今までにないくらい派手に暴れる。

それと同時に、憧の中から羞恥心が完全に消失する。

広げた足をさらに大きく開く。

玄の舌を受け入れる、ただそれだけに特化した体勢。

自分の性器を友達の顔に押し付けている事に対する負い目など、既に欠片ほどもない。

そして玄もまた、その行為に興奮していた。

玄は口の回りが汚れるのも気にせず、憧を舐め続ける。

むしろもっと汚して欲しいとさえ思う。

自分の顔が憧の中から溢れる液体で汚されている事に興奮を覚える。

そして絶え間なく聞こえる憧の声がさらに興奮を増幅させる。

「や、玄…っ、やっ、あっ、ひぃっ、あ…やっ、んっっ、あ…っ」

もう何も意味を成さない憧の言葉。

ただの喘ぎ声。

もう二人に時間の感覚は消えていた。

絶頂までかかった時間はたったの5分。

だが二人には永遠のような、幸せな5分間だった。

 

「ハァハァ…玄…なんで、ハァ…そんなに上手いの…」

体に力が入らない憧は、玄の腕の中で横たわる。

そんな憧を、愛おしそうな目で見る玄。

「気持ち良かった?」

「うん…ヤバかった…」

「そっか、嬉しいな」

そう言いながら、憧の頭を撫でる玄。

憧は、それだけでさらに幸せな気持ちに包まれていくのを感じた。

そして玄に抱きつき、玄の体温に包まれる。

それは、この世で最も心地の良い温かさのように思えた。

 

しばらくして、憧が復活する。

「よし、じゃあ今度は私の番ねっ」

「え?まだする?」

「だってまだ玄を気持ちよくさせてあげれてないじゃん」

「でも憧ちゃん、もう疲れたでしょ?」

「もう大丈夫だよ。休んだし」

「本当に?」

「うん。それに、このままじゃ玄にやられっぱなしだし!」

憧はおどけたようにそう言って笑う。

玄は恥かしそうに頷く。

そして、期待を隠して言う。

「うん……じゃあ、お願いしようかな…」

その1分後、玄は激しい後悔に襲われる事になる。

 

 

 

どうしてこんな事に―

それが玄の正直な感想だった。

2回戦は、憧の「ねぇ、ちょっと玄の見せて」というお願いから始まった。

玄は一瞬、その言葉の意味を測りかねたが、すぐに憧の言わんとする事を理解した。

そして次の瞬間には、あのまま終わりにしなかった数分前の自分を恨んだ。

 

玄は大きく足を開いたまま、顔を真っ赤にして憧を見つめる。

その瞳は、もう許して欲しいと哀願していた。

一方憧は、だらしなく開かれたその場所をまじまじと見る。

「足、閉じちゃダメだからね?」

「は、恥ずかしいよ…」

目に涙を浮かべる玄。

声は震えている。

そんな玄などお構いなしに、憧は感想を言う。

「へー、こういう風になってるんだー」

「じ、自分のを見ればいいんじゃないかな…?」

「えー、でも自分のって鏡とかないと見れないじゃん?」

「鏡、使えばいいんじゃないかな…?」

玄の抗議は当然の如く受け入れられなかった。

そして、独り言のように呟く。

「すごい…玄の、やらしい…」

「……っ」

玄はその言葉に、心をかき乱される。

初めて人に見せるその場所を「いやらしい」などと言われ、

自分がとてもはしたない女になってしまったように思えた。

やがて憧は見ているだけでは物足りなくなり、手を伸ばす。

そして玄のを指で開いた。

「うわ…すご…っ」

憧の口から思わず率直な感想が漏れた。

言われた玄は羞恥に身悶える。

「ひぅ…」

「奥の方までトロトロだよ」

「や…言わないで…」

「ねぇ、なんでこんなに濡れてるの?」

「そ、そんなの知らないよぉ…」

意地悪な憧の質問に、涙声で答える玄。

「玄って濡れやすいの?」

「だ、だからそんなの知らないってばぁ」

「普段、一人でしたりする?」

「…………」

「あー、まぁそうだよねー」

「な、何も言ってないけど!?」

玄が恥ずかしがるであろう質問を的確に選ぶ憧。

その反応を楽しみながら、憧は興奮を高めていく。

その後もしばらく観察を続け、ぽつりぽつりと感想を言う憧。

早くやめて欲しくて、必死に許しを請う玄。

その観察はいつまでも終わる気配はなかった。

もちろんこの行為を終わらせるのは簡単だった。

玄がその足をすぐに閉じればいいだけだ。

だが、玄はそれをしなかった。

憧が最初に言った「足、閉じちゃダメだからね?」という『命令』に、玄は背けずにいた。

そこには、服従させられる事に喜びを感じてしまう、という玄の性癖が関係していた。

玄は若干マゾヒスト寄りの性質を持っていたのだ。

それはまだ玄自身気付いておらず、憧もそれを見抜いていた訳ではない。

だが二人の性癖は偶然にも一致していた。

そう、憧はどちらかと言えばサディストだった。

つまり、二人は性的な意味でこの上なく相性が良かった。

 

玄はすがり付くような目で何度目かの哀願を行う。

「憧ちゃん…そろそろ、いいでしょ…?」

「え〜、もうちょっといいじゃん〜」

「恥かしいんだけど…」

「玄、心頭滅却すれば火もまた涼し、だよ」

「が、我慢しろって事かなぁ…?」

全く取り合う気のないような憧の言葉に涙目になる玄。

それでもなおも玄は憧にお願いをする。

「もう十分見たよね?だから、もう足閉じてもいいかな?ねぇ、憧ちゃん…」

「玄、馬の耳に念仏、だよ」

「聞く気ないね!?」

その観察はその後もしばらく続き、そして何の前触れもなく終了した。

憧が突然、その場所にキスをしたのだ。

「ひゃ…!?」

「ん…ふっ……ぴちゃ…ん…ちゅ…」

「あ、憧ちゃ…あっ…あっ、あ…っ、やっ…」

そしてそのまま、舌と唇を駆使し、刺激し始めた。

「あっ、やっ…ん…あ…っ、ふっ、あ…わっ、はぁ…っ」

「んふふふふ、さっきのお返し」

憧は、さっき玄にされた事を自身の経験値とし、同じ事を玄に試した。

だが、憧は同じ行為をしているつもりでも、効果はそれ以上だった。

玄は憧よりも敏感であり、また憧は玄よりも上手かった。

憧は固い膨らみを舌で転がし、口で吸う。

そして同時に指で襞を掻き分け、擦る。

「あっ、や…っ、憧ちゃん…それ…ダメ…!ひっ…ゃ…んっ…イク…!イッちゃ…う…っ」

強く、弱く、そしてまた強く、緩急をつけながら憧は巧みに刺激する。

それだけで玄はもうなす術もなく、何の抵抗も出来ず、体を痙攣させてしまう。

さっき憧が5分かかった絶頂へ、玄はその半分の時間で辿り着いた。

 

激しい運動後のように、肩で息をし、ぐったりと横たわる玄。

だが憧はこれで終わりにするつもりは毛頭なかった。

玄の呼吸が少しずつ整ってきたところで、憧はもう一度指を這わせる。

「あっ…んっ、ひゃ…!?」

もう終わりだと勝手に思い込んでいた玄は驚いた声を上げる。

そしてその声はすぐに艶めかしい色を帯びていく。

くちゅくちゅと、玄の中から溢れてくる水の音が響く。

そして、憧はゆっくりと指を挿入していく

「や…っ、憧ちゃ…それ、ダメぇ…」

「怖い?」

「少し……」

不安そうな瞳で見つめる玄に、憧は優しく言う。

「痛かったらすぐやめるから」

「……うん、じゃあ…」

ゆっくりと指を挿入していく。

憧は数ミリ毎に玄に確認を取る。

「大丈夫?痛くない?」

「うん…平気…」

玄の中は温かく、柔らかかった。

自分のとは全く感触が違うように思えた。

指が第二関節まで入った所で、憧は指を曲げ、膣壁を押す。

「んっ…あ…っ!」

玄の声が跳ねる。

憧は慌てて確認する。

「ごめん、痛かった?」

「う、ううん…痛いんじゃなくて…」

「気持ち良いんだ?」

「……っ」

憧は、なるべく痛くしないように、慎重に指を動かした。

そんな心配をよそに、玄から痛がる様子は見られなかった。

憧は指を徐々に大胆に動かす。

その度に、玄の体は面白いように反応し、声を上げて悦んだ。

そして憧は指をもう一本追加する。

「んっ…ぁ…や……っ、あっ、あっ」

2本の指を交互に動かし、絶え間なく膣壁を刺激する。

肉厚で、狭く、柔らかく、熱いその場所を、指が縦横無尽に動き回る。

その細かい指の動きに、玄は憧の期待通りの反応を見せる。

そして玄からのリクエスト。

「もっと…お腹の奥の方まで触って欲しい…」

その要求に応えるべく、憧は指をさらに奥へと入れる。

「こう?」

「んっ、んんっ、ふ、深っ…い」

「痛くない?」

「へ、平気……もっとして…っ、んっ、あっ、あっ、あっ」

憧が中で指を動かすたび、玄は嬌声を上げる。

その声を聞きながら、憧は体を玄の下半身へ移動させる。

そして指と同時に、口で玄を責める。

「ひっ、や…、それ…強すぎ…る…っ」

同時に襲い来る快感に、玄は戸惑いを見せる。

どちらか一方ですら、過去に経験した事のないほど強い刺激だった。

それが同時に、である。

玄はあっという間に絶頂の一歩手前まで連れて行かれる。

玄の声に本格的に余裕がなくなってきたのを感じ、憧もまた昂っていく。

「あっ、憧ちゃ…っ、やっ…んっ」

「玄……すごいいやらしい顔してる…」

「……っ、み、見ない…で…っ」

玄は咄嗟に両手で顔を隠す。

だが憧がその手を掴む。

そして玄の顔を覗き込む。

「ダメだよ。ちゃんと玄の気持ち良い顔、見せて」

「……っ」

その『命令』に、玄の背筋がゾクゾクと痺れた。

「玄のやらしい顔、見ててあげるからね」

「やぁ…見ないでぇ…」

「あぁ…玄、可愛い…可愛い…可愛い…」

玄は明らかに見られている事に興奮していた。

半開きの口からはよだれが垂れ、切なげな瞳で憧を見つめる。

その表情に我慢出来なくなった憧は、玄にキスをする。

そして、玄には気付かれないよう、自分の下半身に指を這わせ、

いつもしているように自分を慰める。

二人は舌を絡め合い、互いの口の回りを汚しながら、互いを求め合う。

憧は両手の指をさらに激しく動かす。

それに呼応し、さらに激しく声を漏らす玄。

玄の反応の全てが愛おしく思え、憧はさらに昂る。

そして憧の口から無意識のうちに言葉が漏れる。

「玄…好き…っ」

それを聞いた瞬間、玄は一段と高い声を上げる。

舌で、指で、かき回され、さらに言葉で心の深い場所に触れられ、

玄はさっきよりも深く激しく絶頂に達した。

 

 

 

 

傾いた夕日が部室に差し込む。

二人は魂が抜けたかのようにぐったりと抱き合っていた。

しばらくして突然憧がむくりと体を起こして叫んだ。

「やばい…やばいよ!」

「憧ちゃん…?」

「どうしよう!しちゃったよ!」

「うん、しちゃったね…」

「しかもすごい気持ち良かったし!」

「う、うん…そうだね…」

そう笑ってから、玄は沈んだ声で謝る。

「憧ちゃん…あの…ごめんなさい…」

「え?なにが?」

「私のせいで…こんな事しちゃって…」

それを聞いて、憧はキョトンとした表情を浮かべる。

そして言う。

「やめてよ」

「え?」

「別に謝るような事じゃないでしょ」

「…え?」

「玄とするのが嫌だったら、私だって絶対にしてないわよ」

「……」

「だから、謝られる事なんて何もないんだから」

「あ、憧ちゃん…」

そう言って、憧は玄をそっと抱きしめた。

「…そろそろ服着よっか」

「…うん、そうだね」

 

制服を全て着て、最後の一枚であるパンツを握り締めて憧が言う。

「うわー、この下着はくのやだなぁ…」

「うん…でも仕方ないよね…」

下着は既にその機能を果たせないくらいに汚れてしまっていた。

だが二人は我慢してそれを着ける。

「次は、替えの下着も用意しておかないとねー」

「え……」

憧の言葉に、玄の顔が赤くなる。

「ん?どうしたの?」

「う、ううん、なんでもないっ」

慌てて誤魔化す玄。

だが憧は自分の発言を思い返し、

玄の考えている事を素早く見抜く。

そして玄の耳元で囁く。

「次…いつしよっか?」

「……っ」

「またする事、想像しちゃったんでしょ?」

「も、もうっ、憧ちゃん!」

意地悪な憧の言葉に恥じらう玄。

憧は、そんな玄を心の底から愛おしく思った。

 

 

「あー、それにしても、しずにはちゃんと言っとかないと」

「え?」

「あいつ、部活が休みって連絡くらい、ちゃんとしなさいよねー」

憧は休みの連絡を忘れた、ここにはいない穏乃に文句を言う。

「まぁ、そのおかげでこんな事になっちゃった訳なんだけどねー。でもそれとこれとは話が別」

それを聞いた玄が、口ごもる。

「あ…そ、その事なんだけど…」

「ん?」

「今日部活ないっていう連絡…ね?」

「うん」

「本当は私が伝えないといけなかったの…」

「え?」

「でも、憧ちゃんと二人きりになりたくて…わざと連絡しなかったの…」

「え……?」

玄からのなかなかに衝撃的な告白に固まる憧。

そして、混乱しながらも頭の中を整理する。

「……って事は…今日のは、全部玄が仕組んだ事…?」

「し、仕組んだって、人聞き悪いよぉ…」

玄は慌てて否定するが、その語気は弱く、肯定しているようなものだった。

憧はさらに踏み込む。

「もしかして、最初寝てたのも…」

「え…?」

「あれ、もしかして私に手出させる為に寝たふりしてた…?」

「そ、それは違うよ…?」

目を泳がせながら否定する玄を、憧は強い口調で問い詰める。

「玄があんな風に居眠りするなんて今まで見たことないもん!」

「う……」

「白状しなさい!あの時、起きてたでしょう!?」

「う……あの…その…」

言い淀む玄。

だがすぐに観念し、絞り出すように答える。

「うん……寝たふり、してた…」

「じゃあ…初めからこうなる為に…」

「ご、ごめんなさい…」

正直に白状し、謝る玄。

だが憧はそれを聞いて、許すどころか憤慨する。

「あ、謝れ!!謝りなさい!」

「えっ、さ、さっきと言ってる事が違うよ?」

「あー、もう!騙された!」

「だ、騙した訳じゃ…」

そして憧は罰を玄に言い渡す。

「絶対許さない!次はもっと恥ずかしい事してやるっ」

「えっ、それは本当に許して…」

「ダメ!絶対に許さない!」

「あれ以上されたら、私死んじゃうよ〜」

そう言いつつ、玄の表情は明らかに緩んでいた。

それを見て、憧は呆れたように溜息をつく。

「ってか…玄、なんか期待しちゃってない?」

「し、してないよ!?」

「もしかして玄って、恥ずかしいの好き?」

「そ、そんな事ないよっ」

「さっきだって、恥ずかしい恥ずかしい言いながら凄かったし」

「な、何が!?」

「すごい濡れてたし」

「い、言わなくていいからっ」

玄は顔を真っ赤にしながら憧の口を塞ぐ。

だがやはり、その表情はどことなく嬉しそうだった。

そんな玄を見て、憧は急速に怒りが削がれていく。

一つ溜息をついて、諦めたように言う。

「まったく…玄がこんなやらしい子だったとはねぇ…」

「や、やらしくないよ…」

「寝たふりしてエッチ誘っちゃうような子が?」

「うっ…言わないでよぉ…」

そして憧は玄の手をそっと握る。

「まぁ…それはそれとして、これからよろしくね」

「え?」

玄は顔を上げ、憧を見る。

憧はさっきまでとは打って変わり、優しく微笑む。

「あんな事しちゃったんだから、今まで通り友達のままなんて無理だよね」

「え…」

「こんな関係から始まるってのもなんか微妙だけどさー」

「え…、そ、それどういう…」

憧の言葉の意味が分からず、戸惑う玄。

憧は少しだけ頬を赤くさせながら、不満顔で言う。

「…玄って結構鈍い?」

「え……」

「だーかーらっ、分かるでしょ?」

「…え?」

「こういう事よ」

憧は玄の頬に手を添え、目を閉じた。

そして唇を重ねる。

さっきのとは違い、優しく口の中をくすぐるような、甘いキスだった。

30秒間、部室から音が消えた。

「…これからよろしくね、玄」

「憧ちゃん…」

 

そうして、二人は恋人同士になった。

 


 

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