フォズの日々 −休日の朝−

 


 

朝、フォズの寝室から叫び声が木霊した。

「なんで起こしてくれないのー!?」

どたばたと、着替えながらフォズは女官を責める。

「もう8時半じゃん!間に合わないよー!」

フォズはいつも7時半に起床し、身支度をする。

それでも割と時間には余裕がないのだ。

8時半ではとても間に合う時間ではかった。

フォズが慌てるのも無理はない。

そんなフォズをやや冷めた目で見る女官。

そして静かに告げる。

「フォズ様」

「なに!?」

「今日は日曜ですが、何かご予定でも?」

「!?」

フォズの動きが止まる。

脱ぎかけのパジャマを左足に引っ掛け、

片腕を通していない修道服を床に引きずったまま、固まった。

物凄い勢いで汗が噴き出し、目が泳ぐ。

そしてしどろもどろになりながら、辛うじて言葉を紡ぐ。

「し……知っ、て、た…よ?日曜日、だもんね、うん」

「はい、そうです。今日は日曜日です」

まるで教科書の例文を読むかのように言う女官。

「あー…、もうちょっとだけ寝ようかなぁ〜、うん、そうしようっと」

「おやすみなさいませ」

恭しく頭を下げる女官。

だが口元は確実に笑っていた。

「お、おやすみ〜」

そう言って布団を被って再び寝ようとするフォズ。

だが二度寝は出来なかった。それどころじゃなかった。

恥ずかしさで死にそうになっていたからだ。

フォズは顔を真っ赤にして、布団の中でのた打ち回っていた。

それから20分もしないうちに、フォズはベッドから出てきた。

恥ずかしそうに、それでいて何事もなかったかのように女官に挨拶をする。

「……お、おはよう。今日も良い天気だね〜…」

「おや、フォズ様?さっきのはなかった事になさるおつもりですか?」

「スルーしてよ!恥ずかしいじゃん!」

「フォズ様、言葉遣いが下品ですよ」

「う、うぅ〜……」

その日の昼過ぎにはその話はダーマ中に広まっていた。

女官が皆に言いふらしていたのだ。

 

 

夕方になり、フォズが女官の部屋に乗り込んできた。

「フォズ様?いかがなされましたか?」

「ねぇ!なんか朝の話みんな知ってるんだけど!?」

「はい、私が全て話しましたから。全てです」

悪びれる事もなく、女官は言った。

フォズは子供らしい仕草でポカポカと女官の胸を叩いた。

「ちょっと!やめてよね!なんで言うの!?」

「面白いから…(ボソッ)」

「ちょっ…!今なんて言ったの!?」

「いえ、なんでも」

「も〜!恥ずかしくて明日部屋から出られないよ〜!」

「それは困ります、フォズ様」

「やだ!明日はもう何があっても絶対に起きないから!」

「絶対にですか?」

「絶対に!」

「そうですか…。フォズ様」

「なに!?」

「明日の朝はホットケーキですよ」

「本当!?やったー!」

「………」

「…そ……そんなんじゃ騙されないんだからね!」

「ソウデスネ」

 

なんだかんだ言っても、絶対に騙されるのであった。

 


 

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