やさしい話
あまりいい話が続かなかったので私が好きな話を紹介したいと思います。以下の話は日刊スポーツのコラムを引用した物です。
僕らが所属していたジャイアンツは、シーズン161試合目の9月28日にプレーオフ進出を決め、翌29日の最終戦、400打席にあと6打席足りなかった新庄さんは6番センターでスタメンだった。
試合前のベンチでは、ダスティ(ベーカー監督)が珍しく新庄さんに詰め寄ってきた。
「何で今まで黙っていたんだ!あと6打席だろ!そしたら今日だって1番に入れたのに!」
新庄さんはいつもの笑顔で、しかし冷静に力強くこう切り替えした。
「チームが最後まで(ワイルドカード枠を)争ってたから、
個人的なことでチームに迷惑を掛けたくなかったのです。」
400打席のインセンティブ契約を結んでいた新庄さんは、数十万ドル獲得にあと6打席必要だった。
そんな最終戦、新庄さんは走った。MLBの未来を担う輝くルーキーのために。
8番・ショートでメジャー初スタメンだったコーディ・ランサムは、レフト線に二塁打をかっ飛ばした。1塁ランナーの新庄さんはセカンドベースを蹴った辺りからギアをトップに入れ、もの凄いスピードでホームベースを駆け抜けた。風のように速かった。
8回裏には代打でランスフォードが登場した。2002年の開幕を1Aで迎えたランスは、2A、3Aとたった5カ月でマイナーリーグを駆け上がり、周囲も驚くスピードでセプテンバー・コールアップを手にした22歳の若手捕手だ。
再び1塁ランナーだった新庄さんは、右中間に飛んだランスの当たりを耳だけで捉えると、打球には全く目をくれず、すごい形相でホームベースに滑り込んだ。泥だらけの左膝を切りながら。
新庄さんは僅かに足らない「2打席」を決して嘆くことはせず、言わば消化ゲームの誰にも評価されない「2得点」に果敢に挑んだ。名もなき2人の笑顔のために。
試合後のクラブハウスでは、アトランタとのプレーオフを睨み意気揚々のナインとは対照的に、即座にロッカーを空っぽにして、秋季リーグに向かうコーディとランスが、そろって声を掛けてきた。
『Thank you, Shinjo. You're my hero!(サンキュー新庄、あんたは僕らのヒーローだぜ!)』
あなたの優しさは、多くの人には伝わらないかもしれないけど、当事者たちは知っています。あなたがとっても優しいってことを。あなたの優しさが本物だってことを。
小島克典(NYメッツ通訳)
日刊スポーツ コラム
小島克典 #23 「やさしい話」
新庄さんは他にも借金をしてまでメジャーに行ったり、ミリオネアで獲得した1000万円を日本ハムに寄付したり、甲子園出場の母校にバスをプレゼントしたりと常人には考えられないことをしています。
プロ野球選手の契約更改のニュースはどれもこれも醜いです。「ファンサービスをしてるから金よこせ。」など高慢な態度をとっていることが人気の低下につながっていることを彼らはわかっているのでしょうか。球団合併の時に古田選手が「選手会側も血を流す覚悟」と何度も言いましたが、それはどうなったのでしょう。新庄さんのような人がもっと現れてくれれば人気の低迷も防げるのではないでしょうか。
2004/12/31