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アルファベット・カタカナ・ひらがな・数字
カリグラフィーとレタリング
著者 矢島周一 
昭和50年11月 1日 印刷時報社発行
著書の「はしがき」より
 、…大正中期には、近時流行する前衛書はまだまだ台頭していない。著者はこの頃から新形式を試み、幾何学的線の興味を加え、デザイン文字を大成して発表し、たちまちベストセラーとなってから、すでに半世紀もすぎた。デザイン文字の元祖である。ローマ字の書法については、大正末期の頃故武田五一博士に奨励され、京都建築学教室図書室で、ルネッサンス書法を物色中に OLD NEW ALPHABETS と言う書を発見したのが、書風考究を始めた動機になった。この書はウイス・エフ・デー氏著で文字学的のように詳細な、推移経過をギリシャから古代ローマにかけて、発音と文字の変遷経過や、フェニキァ、北欧のルーニック、エジプトのコプト語にも言及してあったことを記憶する。その頃入手した書籍の「欧州諸国の歴史文字」と題した SCHREIBSCHRIFTFORMEN ヘルマン・デリテシュ氏著や HOFFMANNS SCHRIFTATLAS ヘルベルト・ホフマン氏編は書風推移について詳しい書であるが、其の他の書籍でも、概ねアンシャルを起点にして述べてあるが、それでよいと思った。
  先生の渡仏された帰途にトルコで、碑銘をわざわざ撮影して、当時持出しの厳しい折にもかかわらず、お持ち帰り下さったほどの奨導も授けられ、先生の校閲で処女作「図案文字大観」つづいて「図案文字の解剖」を著したころである。
 たまたまわが国へは、1セットのみ輸入された THE HISTORY OF THE ART OF WRITING 大秩2幀に垂涎して、貧しい財布をはたいて奮発した。この書は大英博物館とそのコレクションで、200点余りの欧州中近東諸民族をはじめ、印度、蒙古、中国など東西にわたる古代文字彙集で、現物を彷彿させるコロタイプや色刷りの限定版であった。これら古人の作に嘆美傾倒して、マニアのようになって忙中閑を裂き読みふけり、研精を試みつづけたこの小さな経験の、若き日の集積を拾い集めて、綴ったものが本書である。しかし、こころない人々のために、愛好した数多き蔵書の大部分は、盗難と災禍で雲散し、いまここに割愛せねばならぬことを悔やむ。 …、、

表紙と外函

奥付け

矢島周一のはしがき と 絵扉
 
 映画を活動写真といったころ、デザインとした文字だけをレイアウトして、イラストのないタイポグラフィーを、著者が映画界に始めて試みたのは、1920年ごろである。
 この試みは共鳴者が次第にふえたが、初期はみなれない幾何学的線の応用が、習慣的な一部の人の目には、読みにくいというそしりもあった。
 そのころから数年を費やして著作し、1924年秋に完結して、…

 デザイン文字が普遍化してきたキャリアはあってもカリグラフィックの根底となる書法の著書は、寡聞にして見えない。このことはコンベンションを偏重する書道芸術家の先鞭でなく、われわれデザイナーの手で、誰かがやらねばならない専攻である。
 著者はデザイン文字発祥50周年を記念して、初心の文字考案芸術家たちのために、ルネッサンス芸術家たちや、中国古来の諸能書家等の成し遂げた研究をあさり、ますます美の、根底をなす基盤であることに関心をもたないでは、優れた傑作は生まれまいし、多様化もマンネリとなろう。古臭いとははじめにきめつけて、過去の完全性を否定して、知るべき知識を心得ていないと、阿蒙編の作と嘲笑のそしりを受けることもあろう。軽々しく過去を拒否することは無謀で、大きな損失招くであろうことを初心のヤング諸君に忠告しておく。
 矢島 周一 識

アルファベット書体の変遷過程

ルネッサンスの書法と古ローマ碑文
セリフと効果
鋳造活字とアルファベット

・ ルネッサンス書法、独アルブレヒト・ヂュラー作典型(1525年)ころ
・ ルネッサンス書法、伊セバスティアン・セルリオ作典型(16世紀初期)
・ 独グーテンベルグの鋳造活字印刷1454〜1456年(42行経典)
・ ベニス・ライト・フェース
・ ガラモンド・セリーズ
・ カスロン・オールド
・ ポトニ・ブック
・ チェルテナム・ボールド
・ フーツラ・ライト

鋳造活字とアルファベット

・ 活版印刷前に用いた木版摺(ブロック本)
・ ゴシック活字体のラテンに推移過程(ローマン体未完成期467年)
・ アルダス・マヌチウス作品(ローマン体活字台頭初期1499年)
・ オールドローマン体(現代活字)
・ モダン・ローマン体(現代活字)
・ 見出し活字の台頭(グロテスク体系)
・ スクウェアセリフ(エジプシァン)の活字初期(独試鋳1836年)
・ 飾りのあるサンセリフ活字の初期(独試鋳1850年)


ローマ字機構の変転

・ 1928〜1930年の活字より(モダン・バンハードやフーツラ体も見える)
・ デュードリィ・ハーディ作(1894英ポスター文字模写)
・ 第一次大戦プラカード(独1916年ころ)
・ スタンラン作(1895年仏アフィッシュ文学)
・ エドワード・ベンフィールド作(1895年米ポスター文字模写)
・ ブーテ・ド・モンヴェル作(1891年仏アフィッシュ文字模写)
・ 著名な貼紙エルネ・メンドロン(1886年仏)初期のポスター


・ モーリス・グリフェンハーゲン作(1890年作英ポスター文字模写)
・ 18世紀に用いた商業カード文字
・テ・ゴートローブ作(仏 1899年アフィッシュ文字模写)
・ ド・ツゥルーズ・ロートレック作(仏1893年アフィッシュ文字複写)
・ フィル・メイ作(英1894年エルネ・メドロンのポスター文字複写)
・ エ・グラッセ作(仏1894年中央雑誌広告文字模写)
・ グリューン作(仏1898年アフィッシュ文字)
・ キュネイ・フォームをモチーフとした装幀文字
・ ユーゴー・タイトルページより
・ 雑誌広告面および装幀文字1928〜'29年(ドイツェ・クンスト、レクラメ、ノイエ・デコラチョン、英モダン・ブック・プロダクションより)



・ 1928〜1929年(ドイツェ・クンスト、レクラメ、オフセット・ボッホ、ゲブラウス・グラフィック、ノイエ・デコラチョン、アフィッシュ、コマーシャル・アート誌広告その他より)
・ プラスチックハンガー
・ 刺繍カタログ表紙
・ 1930〜'31年海外雑誌広告文字集(ボグー、クンスト、レクラメ・ゲブラウス・グラフィックより)


10

・ 1937〜’55年海外雑誌広告文字拾集(マドモアゼル、カイエダルト、ワールド・アウトルック、ボグー、レッド・ブック、エスカア、コスモポリタンその他より)
・ 1965〜’70年の海外雑誌広告文字拾集

・ 著者作品 1955〜’70年(カタログ、パンフレットに用いた文字、商標)
・ 著者作品 1952年(カタログに用いた文字)

レタリングとスペーシング

・ 形態と視覚
・ 配列と字形
・ リガッチェと字間と高さの調整

ゴシック体と黒体文字

・ 造型と測定
・ 配列とスペーシングのあり方
・ ゴッシック形式と黒体形式の差
・ ゴシック文字の美観

モノグラムとイニシャル

・ ゴッシク黒体字の配列
・ ラウンド・タイプとベンド・タイプの対比



・ 近代化して読みずれ苦なったドイツ黒体文字(ラテン様式に移行しつつある過程)1929〜’30年のドイツ雑誌その他より拾集
・ 黒体文字のモノグラム(1921〜’30年のドイツ雑誌より拾集)

ゴシック文字のラウンド・スタイルとベンド・スタイルの頭文字

・ 上は円形ゴシック、下はドイツ屈折文字と黒体ゴッシック体、文章中に用いたイニシャル。(上は前期、下は後期に属す)12〜16世紀
・ 巻頭を用いたイニシャル拾集
  (ゴシック、黒体、カローリンその他12〜16世紀)

ミニスキュールとイタリック

・ スペインとラテンのイタリック文字(16世紀)
・ フランスのイタリック文字(17世紀)
・ 17〜19世紀のスペイン、オランダ、英、獨、 ラテン・スクリプト体)
・ 近代傾向のアメリカン・スタイルのカーシブ体(1960〜1970年の海外雑誌広告文字より拾集)

 

モイルース幾何学的書法図解

・ 幾何学的書法について
・ モイルース書法について
・ モイルース書法

アルファ
ベット書体 A、B

 中央図はセルリオ方式に従って作成したオールド・ローマン体の幾何学的書法、標準を示す美観的典型である。

ニウメラルについて
ローマ風アラビア数字形の変遷過程 その1

・ 13〜16世紀中のユニークな字形のみを選別して拾集
・ 古代絵画文字の数字1〜10まで(上はメソポタミア、下はエジプト)
・古アラビア、マレイの数字(他にも異形がある)チベット、インドの古い数字にきわめて近似形が強い。
・ 1世紀ごろの古アラビア数字

ローマ風アラビア数字形の変遷過程 その2
ローマ風アラビア数字形の変遷過程 その3


数字 3、4

 中央典型は著者の独創によるシステムで作成した書法でローマン体と歩調をあわせて、しかも区別のできる字体を選択した。

カタカナ文字の発生について

・ 神代文字と称する真偽不詳の文字
・ 北海道手宮洞窟内の文字
・ 鳥居博士の古代文字比較研究テーマ

カタカナ文字の体制

・ カタカナ文字の骨格

標識・型摺文字の拾集

・ A. 著者作1927年実用新案登録(片仮名組立構成と型摺文字)
  大阪商業美術家協会第一回展(1927)出品作品
・ B. ヴルダー・ファイト作(独型摺文字)
・ C. ヴルダー・シーリアックス作(スイス型摺文字)
・ D. パウル・クレィン作(独標識文字)
・ E. ヨセフ・アルバース作(独型摺文字)
・ F. A.・M・カッサンドル作(仏標識文字)

この他にもエルンスト・ポヘム独、モーリ・ナギー独の半試作的なものもある。

カタカナ  ア、イ

・中央典型書法は標準を示す字体として、著書の独創システムによる作成である

ひらがな文字について

・ 36人集歌合せ(いせ)
・ 久海切・伝紫式部集
・ 伝 西行法師集
・ 伝 藤原行成卿集

刷毛書ひらがな文字手法

 ・ 刷毛の運行と転換

ひらがな あ、い

  中央典型書法は標準を示す書体として、活字体を著書の考案で故工学博士武田五一先生校閲1927年作成発表せし作品の再録である。用途は巨大建造物設計用の造型にも利用できる試作で、標準形についてはこの書法に拘泥する必要はない。

漢字の起源とその推移過程

 ・ 漢字書風の変遷

装飾に用いられた篆書

 ・ 変形篆書類集
 ・ 印章と篆書
 
印章篆刻について

 ・ 著者試刻作品集

ユニークな書風拾集 1、2

 

ユニークな書風拾集 3、4

・ 山縣有朋書
・ 後藤象二郎書
・ 西郷隆盛書
・ 紫煙帖、三宅萬年書
・ 犬養木堂書
・ 貫名海屋書

ユニークな書風拾集 5,6

・ 現代相撲番付文字(初期は太くない)次第に肥満して読みやすくない。
・ 竹彫文字
・ 清酒菰樽刷毛書き髯文字
・ 勘亭流のデフォルメ
・ 歌舞伎の刷毛書き文字
・ 現代の謡曲本文字(嵯峨本でない)
・ 飛白書(弘法大師刷毛書き文字、平安時代)
・ 日本最初の活字印刷(秀吉戦利品の朝鮮活字使用出版慶長勅版1594年)
・ 浄るり本文字(勘亭流は落筆から終筆まで切断しない特徴の草書風、これが規矩的になって読苦しい太文字歌舞伎調文字に転化する。

徳川期以降の庶民用書風 1、2

・ 一般日常文字(大雅と三岳記行帳子、大年筆
・ 明治、大正期の広告用文字
・ 将棋の駒(木彫文字)
・ 其角戯作、光陰鼡の道行(文化12年)
・ 江戸文字(徳川期)
・ 徳川文字飛白
・ 虫食い文字(明治、大正期)
・ 雨傘屋文字(明治大正期)
・ 凧文字(現代)
・ 広告用芝居文字(明治・大正期)
・ 提灯屋文字(明治・大正期)
・ 牡丹文字風呂敷暖簾用(明治・大正期染物)

著者制作タイトル文字集(1930〜’65年作より)
現代書の前衛作展望

 ・ 著者制作タイトル文字集
 ・ 現代書試作品集 1

現代書試作品集 2、3

・ 少数字書 清風
・ 詩文書 紫陽花
・ 現代象書 心緒

多様化作例 1.
多様化作例 2.

・ 刷毛書きテーマ試案
・ 篆書風をモチーフの試案

多様化作例 3.
多様化作例 4.

・ 金文款識をアイデアとしたアブストラクト試案 
・ 規矩的アブストラクトによる標識型摺文字の試案

多様化作例 5.
多様化作例 6.

・ オーナメンタルな構成の試案
・ 八分書法の波を強調するテーマの試案

多様化作例 7.
 多様化作例 8.

・ 北書の楷書筆勢をモチーフの試案
・ 字画をガーニッシュしたアラベスク調の試案
 

多様化作例 9.
 多様化作例 10.

・ 曲線と直線の配合によるアトラクティブ試案
・ 宋体風のイメージをモチーフとしたデフォルメ試案

多様化作例 11.
 多様化作例 12.

・ 行書、草書をモチーフとしたテーマ試案1
・ 行書、草書をモチーフとしたネオン・サイン試案1

漢字の部分形と構成上の書法

・ 八面九宮図(陳繹曽書論)間架調均とバランス、穿挿法参照
・ 永字形(欧陽詢書、蘭亭記拡大)
・ 書聖王義之行書

作例6.
作例7.

・ 作例6.ソフトな刷毛書きテーマ
・ 作例7.直線の流動感をテーマ 

作例12.
作例13.

・ 作例12.隷書のデフォルメ
・ 作例13.相撲文字のイメージ
 著者が1928年(昭和3年)4月に彰文館書店から『図案文字の解剖』を発行。この復刻改訂版として昭和50年11月 1日発行予定していた直前に不運にも出版元出火のために世に送り出すことを断念せざるを得なかった、幻の貴重な著書となってしまった『カリグラフィーとレタリング』です。