DATSUN BLUEBIRD 1600 DX 4door sedan ( Middle type )



1967年、日産自動車の看板モデルであるブルーバードは、画期的なモデルチェンジを行い衝撃的なデビューを飾りました。 これまでのP410型と言われる先代モデルが、イタリアの有名デザイナーであるピニンファリーナによってデザインされ、ファッショナブルで小粋なセダンボディを纏ってデビューしていましたが、残念ながら、日本のユーザーには貧弱に見える尻下がりのトランク部分などが不評となり、販売上では失敗という結果に終わっていました( P410ブルは、初めてコロナに販売で負けたという不名誉な結果を残しました )。

当時の日本は盲目的な欧米崇拝が当たり前でしたから、このP410ブルーバードの失敗は、日産に計り知れないダメージを与えた事は容易に想像出来ます。日産はかつてない背水の陣をひいて、新型ブルーバードの開発に取り組みます。それは採算度外視という過剰性能のシャーシであり、贅を尽くしたデザインであったように思われます。それは未だに伝説となっている「全車4輪独立サスペンションの採用」であり、上級車と遜色ないインテリア、エクステリアの造詣に現れていると思われます。

1967年当時、4輪独立サスペンションというのは一部のスーパースポーツや海外の高性能スポーツモデルにしか見られない高価な最先端技術であり、国内のライバルのコロナやスカイライン( S50 )はおろか、一般のスポーツモデルでさえ、リヤサスはリジットのリーフサスという旧式のものが一般的でした。( 現代の基準でこれをあてはめると、オールアルミのモノコックボディの4輪マルチリンクサス「当然ダブルジョイントの総鍛造アルミサス」を2L〜1.6クラスに持ち込む事に相当すると思います。 )

インテリアに関しても、全車の三角窓を廃止して多大な開発費を投じたベンチレーションシステムを搭載。これはクーラーが標準の高級外車以外では初めての事でした。

北米では、「プアマンズBMW = ファイブ・テン(510)」と広く認識されるようになり、瞬く間に日本車初の人気モデルへと成長しました。国内でも同じように、510(ゴーイチマル)ブルーバードは硬派な走りのセダンというイメージで広く市場に認識され、大人気モデルとなったのです。 発売当時のカーグラフィック誌では「ただ残念なのはこの実用的なスポーツサルーンでさえも、フルに性能を発揮できる道路環境が、この日本にはまだ存在しないことだ」と書かれています。如何に時代に先んじた画期的な自動車であったかが伺える内容です。





P510ブルーバード、1600DXのカタログです。当時は1300ccがブルーバードの基準であったようで、1.6Lモデルは上級車であり輸出モデルのベースであったようです。輸出モデルは1600SSSがベースになっていますが、SUツインキャブで100PSのところが北米モデルでは同一エンジンで96HPという表示に変わっています。単に当時の馬力表示の差というよりは、輸出仕様の96HPの方がパワーがあったように思われます。1600DXはシングルキャブで92PSという馬力表示(レギュラーガス)だったという事です。


 1970year 1600Dx 4door sedan ( P510 ) DATA
Motor  L4 SOHC 2VALVE 1595cc (83x73.7mm) 8.5:1
MaxPower  92PS/6000rpm ( JIS-gross )
MaxTorque  13.2kgm/3600rpm( JIS-gross )
MaxSpeed  155km/h
Weight  930kg
我が家にあったP510ブルーバード 1600DX はベンチシートのコラムシフト車でした。カタログで調べると一番スタンダートなモデルで3速コラムが標準、その上にセパレートシートでフロア4速マニュアル、3AT が用意されていたようです。








P510ブルーバードのカタログを見ていて新しい発見がありました。我が家の1800SSS クーペは流れるテールフラッシャーが付いていて、てっきり1800SSS クーペ専用のアイテムだと思っていたのですが、何と1600SSS クーペのカタログにも流れるテールフラッシャーランプが載っていました!!。1600 ではオプション設定だったようです。同じように1800SSSに装着されているホイールキャップもオプションで選べたようです。

SSS(スリーエス)というグレード名が、スーパースポーツセダンという頭文字を取って付けられた事は良く知られていますが、由来は P410 ブルーバードで登場した 1300SS (スポーツセダン)という名称からが始まりのようです。この後に、フェアレディ1600( SP311 )の1.6L、OHV の R型ユニットを搭載した P411 ブルーバード1600SSS が登場したのです。これはまさしく、スポーツカー用のエンジンを搭載したスーパーなスポーツセダンだった訳ですが、なぜかあまり知られていなかったようです。





  1600SSS 4door sedan ( P510TK ) DATA
Motor  L4 SOHC 2VALVE 1595cc (83x73.7mm) 9.5:1
MaxPower  100PS/6000rpm ( JIS-gross )
MaxTorque  13.5kgm/4000rpm( JIS-gross )
0-100km/h  13.9sec
0-400m  18.2sec
1st   52km/h ( 6500rpm )3.657
2nd   85km/h ( 6500rpm )2.177
3rd  132km/h ( 6500rpm )1.419
MaxSpeed  165km/h ( 5890rpm )1.000
Weight  915kg ( Max:1190kg ) 最終減速比:3.900


1600SSS セダンのメーカー公表値はゼロヨン17.7秒、最高速度165km/hであったという事です。面白いところではステアリングギア比が15:1(3.2回転)と、当時の基準では非常にクイックなステアリングが装着されているところです。また前後の重量配分が 54.6 / 45.4 というバランスの良さが、当時の日産がこの P510 ブルーバードに賭けた意気込み強さを感じます、ちなみにこの重量配分は定員乗車( 5 名 )では、50 / 50 になるように設計されています。1970年代に入って、最終モデルとなった1600SSSは、105PS 迄パワーアップを果たしましたが車重も930kgに増えています。尚、デフの最終減速比はオプションで、3.700 という高いタイプが用意されていたようです。


L型エンジンファンには良く知られている事なのですが、この L16 型エンジンのボアストローク比 ( 83 x 73.7mm )は、直列 6 気筒エンジンの L24 型のボアストローク比と同じです。ようするに直 4 エンジンの L16 型にそのまま 2 気筒プラスしたものが 名機 L24 なのです。日産の L 型エンジンは、一般的に「大きく重たく眠い」と散々に言われていましたが、この L16 と L24 に関しては良い評価と「 一番回る L 型 」というユーザーの実際上の評判があったのはよく知られています。その昔、L型エンジンのチューニングが一世を風靡した時代がありましたが、この頃良く言われた事が、L24改2.6Lエンジン(ボアアップ)が最高に良いという風評でした。これに比べて日産純正のL26エンジンはストロークアップで2600ccとしていたので、回らない上にパワーも出せない、L28以下ダ!!、などという厳しい噂もありました(笑)。

これは余談になるとは思いますが、日産の2.6Lエンジンと言えば、名機 RB26DETT が有名ですが、このユニットのスペックは、2568cc の排気量と、86x73.7mm のボアストローク比になっています!!!。 メーカーが一番良く知って居た訳ですね、L24改2.6L が最強であることを(笑)。






P510ブルーバードの基本モデルである、1300DXのカタログです。素晴らしいと思うのは、発売当時の最高級モデルである1600SSSと比べても、メカニカル的に違うのはダンパーの減衰力のみであり、ストラット/セミトレーニングアームという形式やパーツはおろか、ばねレートやフロントスタビライザーのサイズ、タイヤのサイズや銘柄までが全く同一であったという事実です( 従って車高も同値 )。この事実を踏まえた上でも、1600SSSはL16ツインキャブのエンジンパワーに対して大きなセーフティマージンがあったという事です。このようなオーバークオリティは当然の事ですが、現在の自動車ではあり得ません。

このP510型ブルーバードの時点では、L型4気筒エンジンはブル専用のエンジンでした。未だプリンス製のS50スカイラインは当然としても、C10ハコスカやC110ケンメリの前期モデル、C30、C130前期モデルのローレルなどにもプリンス製 G型エンジンが搭載されていました。結局、L型4気筒シリーズが他車へ転用されるのは、排気ガス規制が厳しくなった1973年からです。しかしプリンス自工との合併後、最初にプリンス開発陣が携わったエンジンが、このL型4気筒シリーズであったとも云われています。ダットサン211や初代P310ブル、P410ブルの単純明快なスペックから見れば、P510ブルが明らかに技術的に異なる思想で作られたのは明白です。でも、RB26DETTの原点がL16型であったとはねぇ(笑)。




DATSAN 510 BLUEBIRD Power-spec
 1800SSS premium-gas  L18 SU-twin 9.5:1 1770cc( 85x78mm )  115ps/6000rpm 15.5kgm/4000rpm
 1800SSS regular-gas  L18 SU-twin 8.5:1 1770cc( 85x78mm )  110ps/6000rpm 15.0kgm/4000rpm
 1600SSS premium-gas  L16 SU-twin 9.5:1 1595cc( 83x73.7mm )  105ps/6200rpm 13.8kgm/4200rpm
 1600Dx regular-gas  L16 single  8.5:1 1595cc( 83x73.7mm )   92ps/6000rpm 13.2kgm/3600rpm
 1400Dx regular-gas  L14 single  9.0:1 1428cc( 83x66mm )   85ps/6000rpm 11.8kgm/3600rpm
 1300Dx regular-gas  L13 single  9.0:1 1296cc( 83x59.9mm )   72ps/6000rpm 10.5kgm/3600rpm
※ 1600SSSはパワースペックは、1971年以降の後期モデルの値です。




初期型のセダンです。端正なスタイルはやはり初期型が一番のように思います。しかし、この写真のP510は、SSSモデルと同じホイルキャプを装着していますが、フェンダーミラーがSSS用の砲弾型ミラーでは無いので違います「カタログには1300スポーツと紹介されています」。このようなカスタマイズモデルがカタログを飾るくらいですから、普通のブルーバードを購入して、SSS風のホイルキャップというのは、当時では良くある事だったのでしょう。