***** プジョー604SL 3AT *****







PEUGEOT  604 SL



ダイムラーと並んで最も古い自動車メーカーであるプジョーの歴史は、1888年に蒸気自動車を発表した頃にまで遡ります。1892年には世界で初めてゴムタイヤ(ミシュラン)を装着したガソリンエンジン車を発表。1894年にはパリ、ルーアンの往復レース(ラリー?)に優勝しています。1912年には世界初のDOHCエンジン(しかも4VALVE!! )を発売しています。流石に老舗の歴史の重みを感じずには居られません。

戦前には多くの豪華な大型高級車を製作、販売していたプジョーが、戦後初めて上級サルーンクラスに返り咲いた記念すべきモデルが604シリーズです。発売当時はフランスで随一のプレステージサルーンであった為、大統領専用車やローマ法王専用車としてカスタマイズされて使用された事もありました。ボディデザインはピニンファリーナによるもので、保守的なプジョーのオリジナリティを踏襲しながら当時のトレンドを取り入れていたように思います。プジョーという会社の製品は、近年こそ個性あるデザインや走行性能を売り物にしたモデルが多く、トレンドリーダー的な存在にもなりつつありますが、過去には保守的ながら頑強さが売り物のタフな自動車というイメージであり、まるで宇宙船的のような斬新なデザインやシステムを採用するシトロエンなどとは対極に位置するメーカー、自動車でした。




エンジンは、1975年当時では最先端だったと思われる総軽合金製のV6ユニットを搭載していました。このエンジンはプジョー、ルノー、ボルボの共同開発エンジンであり、その意味を込めて頭文字を取り、P-R-VのV6エンジンと呼ばれていました。チェーン駆動のSOHC、90度のバンク角を持つ総アルミのV6ユニットは88mmx73mmというボアストローク比を持ち、2664ccの排気量でした。また90度のバンク角から発生する不等間隔爆発を制御するために、左側バンクのバルブ開度変えて、右側より長く開いているようになっています。EC仕様の604SLでは、圧縮比8.65:1から136HP/5750rpm、21.1kgm/3500rpmのパワーを発揮、標準モデルの4速マニュアルでは1455kgのボディを182km/hの最高速度迄引っぱりました( 3ATモデルは178km/h )。




しかし、このクルマの最大のセールスポイントは、やはり、元祖猫足が実現する素晴らしい乗り心地の良さだと思います。どんな悪路でも必ず一発で路面の不正を吸収して、その振動を乗員に伝えません。一度など、高めの歩道に20km/hくらいで乗り上げた事があるのですが、全くショック等が無くて普通に道路を走っているように、無振動で乗り越えてしまって驚いた事があります。また、そのままクルマを停車させたのですが、ロングストロークが見事にバランスを保って綺麗に水平状態になっていたのには、さすがに驚きました!。高目の歩道に片足を乗り上げてしまっても、クルマが水平を保てるほど、サスペンションストロークが豊かにあるなどというのは、猫足のフランス車ならではでしょうね。

もっとも、フランスの「古い」クルマというのが適切なのでしょうが・・・。



604SLのリヤサスペンション図です。これをセミトレと呼んで良いのか?。
巨大なトレーニングアームにも見えます。ジオトメトリー変化は少ないのでしょう?。





スピードメーターは200km/h迄刻まれています。このメーターで140km/hを超えると、
SOLEXのサウンドが飛び込んで来て、とてもスポーティーでした(笑)。

同時にアクセルレスポンスも良くなり、パワーバンドに入った感じだったので、
結構高回転を好むエンジンだったように思います。アルピーヌルノーの
A310 V6もこのエンジンだった訳ですからねぇ、当然なのかも...。





当時のメルセデスSクラスからパクッたと思われる、ワイパーの形式。
デザインでは無くて、機能をパクるのだから良しとしよう...(笑) 。





日本で正規販売された604SLの性能諸元表です。
この最高速度には確固たる裏づけがあるのだろうか?(w。





604SLに搭載された、PRVのV6、2.7Lエンジンです。如何にも古いというか、
ここまで贅沢に作られた総アルミエンジンというのも、貴重なのかも知れません。

記憶を辿ると、始動時に限らず、いつも金属的な音がしていたように
思いますが、この写真を見て思わず納得しましたョ(爆)。



1977年から日本に輸入、販売されたプジョー604SLは51年度排気ガス規制に適合した自動車でした。例によって排ガス規制によりパワーダウンしたエンジンと3速ATのみという構成で販売された604SLは、本国版のようなパワーは望むべくもありません。カーグラフィック誌のテストでは、最高速度164.01km/h、0-400mは18.83秒、0-100km/hは13.68秒というものでした。当時のトヨタマークII2600グランデ( 3AT )が156.52km/hの最高速度という事ですから、性能的には殆ど差が無いようにも思います( マークII2600は、1215kgの車重と135PS/20.5kgmのスペック )。

しかし、ここまで性能的にダウンした604SLをカーグラフィック誌では筑波サーキットに持ち込み、テストを行っています。するとメルセデス280SE(185HP)をも凌ぐラップタイムを刻み、ポルシェ924に迫るタイムを記録出来たと書かれています。604SLのサスペンションはBMW的(ドイツ的)なスポーティーなセミトレーニングアームとは対極に位置する、猫足サス(セミトレ)で、シトローエンのハイドロサスに匹敵する快適で素晴らしい乗り心地と、ドイツ車を駆逐する程の高いポテンシャルを持っていたようです。



















後期モデルの604SLです。ウインカーが輸出モデルと同じになり、アルミホイールを装着しています。




これは、後期モデルの604TIです。インジェクション化によって144HPのパワーを得て、
新たに5速マニュアルミッションを標準装備して200km/hオーバーであったと思います。













発売当時(1975年)に、当時のコンパクトメルセデス( 現在のEクラス )と並んで...

604SLの方が断然スタイリッシュで斬新な感じがします。流石ピニンファリーナデザイン!!!。


ステアリングには、GMサギノウ社製のラックアンドピニオン17:1を使用していますが、当時のCG誌では現時点でのベストハンドリングカーという意見があったようです。ブレーキは4輪ディスクブレーキですが、フロントはATEのベンチレーテッドディスク、後輪はガーリング社製のソリッドディスクを装備していましたが、筑波サーキットの走行でメルセデス280SEやポルシェ924が早々にフェードを起こす中、メルセデスを寄せ付けない走りをしながらフェードが発生しなかったと書かれています。オペルや欧州フォードなどもそうですが、意外なところに素晴らしいポテンシャルを発揮するクルマが隠れている欧州車というのは、なかなか面白く奥が深いように感じます。定番必ずしもBESTに非ず(笑)。