あるとき、幼い愛の神キューピッドが、かたわらに
心を燃えあがらせるたいまつをおいて眠っていた、
そこに純潔の生涯を過ごすと誓ったニンフたちが
おおぜい軽やかな足どりで通りかかった。
そのなかでいちばん美しいニンフが、乙女の手で
無数の真心を燃えあがらせたたいまつをとりあげた、
こうして火のような情熱を支配する幼い将軍は
眠るうちに処女の手で武器を奪われた。
彼女はそのたいまつを冷たい泉につけて消し、
泉は愛の神の炎から永遠の熱を受けた、
その結果そこはたちまち温泉に変わり、
病める人たちを健康にもどす治療所となった。
恋の病にとりつかれた私はそこに治療にきて知った、
愛の炎は水を熱くするが水は愛をさましはしないと。
Shakespear's Sonnets 小田島雄志・訳
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