「雪の音」




歌い手がイメージさせる季節というものがある。

チューブ・サザンは夏。aikoなら春から初夏。

秋はオフコース・古内東子・竹内まりあ。

冬、それも雪の降り積もる夜なら、柴田淳だ。



子供の頃、雪が降る夜になると窓際で寝そべって空を見ていた。

空から降ってくる雪を見ていると、まるで雪の中を飛んだ気分になった。

とてもいい気分で、好きだった。



7年程前、東京で雪が降った。

その頃、新宿の撮影スタジオで仕事していて、外にでるとタクシーも無く、

京王線のホームで動かなくなった電車が動くのをずいぶんと待った。

深夜2時近くになり、臨時で冷蔵庫のように冷えた電車が動き、世田谷まで帰った。

駅前から、車も通らなくなった道を凍った雪を踏みながら20分ほど歩いた。



当時、一緒に住んでいた女性とはだめになる予感があり、

以前の彼女とは違う・・まるで他人になったような顔が見るのが嫌で、

マンションの近くの公園で、雪の中煙草を何本か吸ったのを覚えている。



したくもない喧嘩をして、言いたくないことを言い、

下したくない結果を出して、マンションを出たのも雪の日だった。



ふわふわと軽い雪。吹き付ける雪。氷の結晶のような乾いた雪。

あれから何度も雪がふったが、あの時の雪ほど沁みた雪は無い。



冬は好きな季節だが、雪は単純には好きといえなくなった気がする。



願わくば、いつか、本当にいつか隣に誰かがいてくれる日がきたら、

雪の夜、2人で窓際に寝そべって、「なっ、雪の中飛んでるみたいだろ」と空を見上げたい。



 「雪の音」 柴田淳

  君の大好きな雪が降ったよ

  きっと今頃どこかで笑ってる

  昔は君のため祈った

  今は誰が降らせているだろう


  舞い降りてくる雪の粒は

  君と過ごした日々のかけら

  アスファルトに消えてしまう 僕たちの記憶


  街は銀の色 音のない白

  君は聞こえると言った雪の声

  立ち止まりひとり耳を澄ます

  こんな小さな音聞いていたの


  僕の肩に降りた雪を

  なぜか愛しく感じていた

  君は今も僕の中で降り続いている


  今夜もまた 雪の君は

  僕の手のひらで消えてしまう

  ずっと笑っていてほしいから

  雪よ止まないで




  君は今も僕の中で降り続いている





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